写真家に教わるスマートフォン撮影のコツ!|人物を撮る編

三井公一

スマホで人物撮影

はじめに

 誰でも手軽に美しい写真が撮影できるスマートフォン。いつでも、どこに行くときも常に携帯しているので、フォトジェニックなシーンを撮り逃しません。今や人々に「一番使われているデジタルカメラ」と言ってもいいでしょう。これだけ多くの人たちに使われるようになった理由に「操作が簡単だから」ということがあります。撮りたいものにスマートフォンを向け、シャッターボタンを押すだけでいいのですから。

 何気なく撮影してしまうスマートフォンですが、ちょっとした気配りでより見栄えのする写真を撮ることが可能です。この連載ではそのコツを皆さんにお伝えしていきます。

 第4回目は「人物を撮る」編です。家族や友だち、仕事仲間など人物を撮る機会はもっとも多いのではないでしょうか。iPhone 11 ProやPixel 4を使って、その場でパッとキレイな写真が撮れるコツをお教えします。キモはズバリ、構図と光とレンズワークです。

グリッド線を使って安定感ある構図を

 久しぶりに友人と会ったとき、ちょっとしたお出かけで記念写真を撮るときなど、スマートフォンは気軽なため、手にしたそのままの状態でシャッターを切りがちです。
 第1回の「基本設定編」第2回の「都会を撮る編」第3回の「風景を撮る編」でもお伝えしたように、グリッド線をディスプレイに表示させ構図の参考にしてみましょう。ほんの少しだけスマートフォンを動かして、フレーミングを変えるだけでグッと見栄えが良くなった写真が撮れるはずです。

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Pixel 4のカメラ画面にグリッド線を表示させました。9つあるブロックの中央にモデルの顔を配置した「日の丸構図」でシャッターを切りました。オーソドックスな構図ですが安定感を感じられますね

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このカットは、グリッド線の左下交点にモデルの顔を配置したものです。このように、交点に被写体を置くと印象的な写真になるので覚えておきましょう

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次のカットは、左上の交点にモデルの顔を配置しました。前のカットとだいぶ見た感じが変わりましたね。先ほどのカットは「桜とモデル」という印象でしたが、こちらは「モデルと桜」という雰囲気になり、写真の主題が桜からモデルに感じられるようになりましたね

またスマートフォンの高さを変えると、より画面に変化をつけることが可能です。立った状態から、手を伸ばしたりしゃがんだりして撮影すると違った写真に仕上がります。

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Pixel 4のポートレートモードを使い、川を背景にしてシャッターを切りました。目線の高さで撮っているので奥行きを感じる仕上がりになりました

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このカットはPixel 4を高く掲げて同じ場所で撮ったカットです。高さが少し変わるだけで、拡がり感がある写真に変わりました。同じ場所で撮ってもアングルを変えると写真の出来が変わるのがお分かりいただけたと思います。

 このように人物を撮影する時に「いいな!」と思う背景の場所では、グリッド線を活用して構図を変化させ、なおかつスマートフォンの高さを変えることによって、豊かなバリエーションをいくつも撮ることが可能になってきます。

 またモデルの顔も、正面、右向き、左向きというように動かしてもらってシャッターを切るといいでしょう。たくさん撮影してお気に入りのワンカットを選びましょう。

明るさと光を意識する

構図とアングルが決まったら次は明るさを意識してみましょう。人物写真はやはり顔が命。顔が暗くならないように露出を補正してちょうどいい明るさにしましょう。

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Pixel 4を構えてシャッターを切りましたが、やや顔が暗くなり表情が沈んだ印象です。やはりもう少し明るく撮影したいところです

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こちらはPixel 4の撮影画面ですが、右側に2つのスライダーが表示されていますが、上はハイライト部、下はシャドウ部の明るさを調整できます。自分好みに別々に調整できるのが便利ですね

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両方のスライダーを明るくスライドさせて、桜とモデルの表情もわかりやすくなりました。女性を撮る場合は明るめに仕上げると喜ばれることが多いので、プラスに補正するのがオススメ

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今度はiPhone 11 Proで撮ってみました。超広角カメラで太陽を背にしているので、モデルが逆光状態になっています。従ってやや暗く写ってしまっています

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ディスプレイをタップして明るくプラス補正をして撮ったカットがこちらになります。超広角カメラのパースペクティブと、独特のレンズフレアが爽やかで、とてもいい雰囲気を演出してくれました

人物を撮影する場合、モデルの立ち位置にも注意したいものです。立つ場所によって光の当たり方が異なる場合があるからです。

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 モデルが日陰に入っているカット。フラットで肌のトーンを優しく写し撮ることができました

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 同じ場所でモデルに一歩動いてもらいました。すると右側から太陽光がダイレクトに当たりました。コントラストが高くなり、立体感が豊富になったのがお分かりいただけるでしょう。男性を撮る場合はこのような光でもいいと思いますが、女性の場合は日陰の方が好ましい感じがしませんか?

 このようにスマートフォンの機能で明るさをコントロールする「露出補正」と、被写体の立ち位置によって変化する「光線状態」を見極めて撮影に臨みましょう。両方がうまくシンクロすると、きっと素晴らしい人物写真になることでしょう。

レンズワーク

 iPhone 11 Proは3つ、Pixel 4は2つのカメラを搭載しています。そのカメラを使って、異なる印象の人物写真を撮ってみましょう。基本的に人物をスタイル良く見た目に近く撮影する場合は望遠側のカメラを使うといいでしょう。
 なぜなら、超広角カメラや広角カメラの場合は大きく人物が歪んでしまうからです。もちろん意図して使用する場合はこの限りではありません。

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iPhone 11 Proの広角カメラでモデルと桜を撮影しました。見上げて撮ったので拡がりのある印象のカットになりました

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次は望遠カメラです。望遠といってもフルサイズ換算では52mm相当なのですが、広角レンズによるデフォルメ感がなくなって、モデルのスタイルが見た目に近く撮影できました。

ポートレートモードを駆使する

 iPhone 11 Pro、Pixel 4の両機種とも背景をぼかすことが可能な「ポートレートモード」機能を搭載しています。人物撮影でこれを使わない手はありません。背景をぼかすことができるということは、モデルの後ろにうるさい背景があってもぼかして気にならないようにすることができるということです。人混みなどモデルが埋もれがちなシーンで有効的に活用しましょう。

 iPhone 11 Proの場合は「ポートレートライティング」機能を使えば、モデルの顔を明るくすることもできます。Pixel 4の場合は後ボケだけでなく、前ボケも思いのままにコントロールできるのが特徴です。

アプリで楽しくレタッチする

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うまく人物撮影ができたらアプリでより美しく印象的に仕上げてみましょう。オススメのアプリはグーグルの「Snapseed」です。iOSもAndroid版もあり、無料なのにさまざまな写真の加工が可能です。プリセットの「効果」をかけるだけでも作例のような写真に仕上げることができます。

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プリセットの「Faded Glow」をかけました。ソフトフィルターが優しくかかり、モデルと背景がふんわりと仕上がりました

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元気よくジャンプしたモデルにプリセットの「Morning」を適用して、春らしい爽やかに印象づけました。フィルターにあった動きをモデルにしてもらって撮るのもいいでしょう

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ガード下でシャープな表情を見せるモデルに「ツール」内の「ドラマ」フィルターをかけました。ワイルドでダークな雰囲気に仕上げることができました。Snapseedはさまざまなフィルターと調整機能を持っていますので、いいカットが撮れたら思う存分アプリをいじくって作品にしてみるのもオススメです。

まとめ

 人物も基本的には第1回の「基本設定編」、第2回の「都会を撮る編」、第3回の「風景を撮る編」のテクニックが使えます。肝心なのは構図と光とレンズワークです。これらを念頭に置いて、いいロケーションで人物を撮影してみましょう。あとは人物をリラックスさせるトークとコミュニケーションを意識すれば、きっとモデルにも喜ばれる素晴らしいカットが撮れると思いますよ。

※本記事の作例は全て緊急事態宣言前に撮影されたものとなります

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