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種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー

2011.08.26【Vol.026】

クラシックカメラの話「ロボット」

ロボットというとたいていは、機械で出来た人間とか、工場で作業する機械を思い浮かべるでしょう。旧チェコスロバキアのカレル チャペックが彼の書いた戯曲の中でこのロボットという造語を初めて使用して約90年になりますが、今では多くの人が当たり前に使う言葉になっています。

そのロボットという名称をつかったカメラがドイツにあります。ドイツの中西部デュッセルドルフに工場をもつオットーベルニング社が1934年にロボットⅠ型の生産を始まるのですが、いったいロボットというカメラがどんなカメラなのでしょう。

ロボット

ロボット

まず使用するフィルムですが、現在でも一般的な35mmを使います。画面サイズですが24×36ではなく24×24の正方形に写真が写ります。たて位置でも横位置でも同じに撮れたり、巻き上げに負担が余りかからないように画面を小さくしたと言われています。そして最大の特徴ですが、ボディーを見てもわかるのですが、上部に大きな円筒があり、これを巻いてカメラ内部のゼンマイにテンションをかけて巻き上げの動力にします。カメラ内部にスプリングモーターを内蔵しているため、連射ができるのです。カメラの大きさは種類によって差が出ますが、大体今のコンパクトカメラの一回り大きいぐらい、大きな種類でライカのM型ぐらいです。今ではモータードライブが殆どのカメラに備わっていますがこの当時は連射機能というのが大変画期的で、あのライカも外付けのモータードライブしかありませんでした。レンズは交換式で、主にドイツのシュナイダー社製の交換レンズが用意されていました。付属品などのアクセサリーなども多く、システムカメラとしては一応成功したようです。

ゼンマイをいっぱいまで巻くと24枚まで連射が出来る(後のモデルは50枚の連射ができるものもあります)ロボットですが、もちろん民間向けのカメラとして初めは生産されたのでしょう。しかし時代的な背景もあり、当時のドイツ軍がそのカメラの特徴を最大限に生かすべくロボットを大量に納入しました。主にドイツ陸軍や海軍はライカが使われて有名ですが、ロボットは主に空軍で大量に使用されます。戦闘機や爆撃機、高射砲にロボットを据え付けて実際の戦果を写真で確認するために使用されたのですが、最大の使用理由は現場の兵士があいまいな戦果報告をしないためだったといわれています。実際当時の空軍大臣へルマン ゲーリングの名前を採って「ゲーリングの眼」と言われたそうです(戦果に応じて勲章を授与するかしないかを判断するため)。また、小型で連射できるという点からスパイ用にも使用されていた歴史があります。

そんな少し暗い過去を持つロボットですが、戦後もすぐに生産を始めます。戦前のスタイルを維持しつつも内部の機械に改良をしたり、24×36の画面が撮れるロボットを開発したりして、ドイツの高級カメラとしてヨーロッパでは有名になっていき、様々な民間分野、無人証明写真ボックスのカメラや高速道路の速度監視カメラ、下水道管の整備カメラとしても使われていきます。

そして現在ですが、主にデジタル化された交通監視システム機器や、レーザー照明の機器を製造する会社の一部にロボットの名称がわずかに使われています。残念ながら、カメラの生産は行われていないようです。