カメラのキタムラスタジオマリオカメラのキタムラ

デジカメプリント・フォトブック・カメラのことはおまかせ!

閉じる

種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー

2011.06.17【Vol.016】

クラシックカメラ話 ZEISS IKON ボックステンゴール

一見ブリキのおもちゃのように見えるカメラですが、ブローニーフィルム(120)使用のれっきとしたドイツ製カメラです。所謂ボックスタイプのカメラといわれるもので、主に写真入門機種として多くのカメラメーカーでさまざまな種類が製造されました。
今回ご紹介するカメラは、ドイツのツアイスイコン(カールツアイスグループ)が1926年から1958年までの32年間にわたって製造、販売していたボックスカメラ、「ボックステンゴール」です。

ZEISS IKON ボックステンゴール

ZEISS IKON ボックステンゴール

もともと、ドイツの大手カメラメーカー4社(イカ社、ゲルツ社、エルネマン社、コンテッサネッテル社)が1926年に合併してツアイスイコン社は誕生したのですが、その中の一つ、ゲルツ社の製品にボックステンゴールがありました。要するに、合併当初のツアイスイコン社は、かつてのカメラメーカーの製品を継続販売していたわけです。
当時のカメラは木製や厚紙で出来ていました。しかしこのゲルツ社のボックステンゴールはプレス加工の全金属製でできていて、その後のカメラ製品の先を行くものでした。安価でかつ堅牢な入門カメラはこうしてツアイスイコン製カメラの最長寿カメラとしてスタートするのです。

しかし、この入門カメラがどうして32年もの長きにわたって生産されたのか。一つは現在のカメラの価格と当時の価格では、その価値が大変かけ離れていたためでしょう。今ではカメラといっても一ヶ月の小遣い程度でコンパクトデジカメは購入可能です。しかし、当時のカメラはたとえ高級カメラでなくても小遣い程度ではとても買えません。おそらく入門カメラであっても今の価値で10万円ぐらいにはなります。そう考えると、当時の高級カメラがどんなに高かったかがわかると思います。ですが、写真を撮りたいと思う気持ちは今も昔も変わりません。高いカメラは持てないけど、入門用カメラであれば手に入る、そういう大衆のニーズにうまくマッチした結果32年も生産され続けたのでしょう。

それともう一つの理由として、写真の出来上がり(写り)がすばらしいという点でしょう。
このカメラには最初のモデルから最後のモデルまで「フロンター」というレンズが使われています。初めのころは一群2枚構成のフロンターでしたが、後に単玉(一枚)に変更されます。ただレンズが一枚だとレンズ中心部分ではピントがきますが、周辺はぼやけてしまいます。要するに開放で撮影しても写真にならないということです。その対策として開放F値がF5ぐらいの直径を持つこのレンズを初めから開放F11に制限して撮影することで、画面全部にピントが合うようにしているのです。簡単に言えばレンズの一番いい部分をメインに光を通して写真を撮影できるので、大変シャープな画像を得ることが出来るのです。もちろんカラーリバーサルで撮影してもきれいな描写をしてくれます。

ただしボックスカメラという点から、シャッター速度はバルブとインスタント(約1/50~1/100ぐらい)の2速ですし、絞りも開放F11とF16、F22の三種類(最後のモデルのみ開放F9です)しか選べません。あくまでも入門用カメラですので機能的には大変シンプルにできています。しかし写真を撮影する最低限の機能はもちろん備えているわけで、最近のデジタルカメラがいかに撮影とあまり関係ない機能を備えているかをうかがうことが出来ます。
このカメラ、一部機種をのぞいて数多く生産されています。もっとも一般的なのは6×9サイズで撮影できるタイプで、大体7000円程度から中古で手に入ります。