フォクトレンダー APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical レビュー|見惚れるほどの描写能力!

水咲奈々
フォクトレンダー APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical レビュー|見惚れるほどの描写能力!

はじめに

コシナの「APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical」は、フォクトレンダー史上最高性能の準広角レンズと謳われる、フルサイズミラーレスカメラ用のレンズです。今回は、Nikon Z 8と本レンズの組み合わせで、ポートレートとスナップをテーマにその魅力に迫りたいと思います。

高い解像感とコントラストで被写体の質感まで感じさせる描写

撮影機材:Nikon Z 8 + APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
絞りF2 1/200秒 ISO400 WB:5200K ピクチャーコントロール:ポートレート

本レンズは「APO-LANTHAR」の名称が表すとおり、色収差に対して高い補正能力を持ち、解像感とコントラストの高い鮮明な画を産み出してくれます。

このポートレートでも、ピントを合わせた右目はマツゲの一本一本まで数えられるくらいくっきりとシャープに描き、その浅い被写界深度から外れたマツゲの先端はナチュラルにボケています。

広角の画角で、強い逆光での撮影という厳しい条件でも色収差は見られず、ヌケの良いクリアーで美しい描写となりました。特にコントラストが見事で、肌の柔らかい質感を損なわずにメリハリの効いた画作りは、ハマると抜け出せなくなるレンズだと感じました。

マニュアルフォーカスを合わせる作業が楽しくなるレンズ

撮影機材:Nikon Z 8 + APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
絞りF2 1/640秒 ISO1250 WB:5200K ピクチャーコントロール:ポートレート

マニュアルフォーカスのレンズなので、ピント合わせは手動で行います。アップのときは良いのですが、これくらいの引きの画になるとフォーカスピーキングも見えにくくなるので、勘を織り交ぜてピントを合わせました。

等倍に拡大して、ピントを合わせて、全体が見られる設定に戻して構図を修正して、シャッターボタンを押す……の流れですが、その間、手持ちでカメラ位置を死守することはなかなか困難です。ですので、自分が前後に動いて最終調整をして、ジャストピントを目指します。

こう書くと、なんて面倒臭いことをしなくちゃならないのだ!と思われる方もいらっしゃるでしょうが、これが楽しいのですよ。

本レンズ、開放F値はF2なのですが、撮影しているとそうとは思えないほど被写界深度が浅く感じます。ピントの合っているところが他のレンズよりもキリッとした描写のせいなのか、被写界深度から外れたいわゆるボケの部分への移行が、ジェットコースターのように急なのです。

このFUJIYAMAレベルのジェットコースターに乗って、最高速度の瞬間に両手を挙げるチャレンジをする気持ちでピント合わせをして、イメージ通りの写真が撮れたら、それはもう楽しいですよね。

ゴースト、フレアー、歪曲なし!

撮影機材:Nikon Z 8 + APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
絞りF2 1/160秒 ISO1000 WB:5200K ピクチャーコントロール:ポートレート

レンズ構成は9群11枚で、異常部分分散ガラス5枚、両面非球面レンズ2枚を採用しています。とにかく強い逆光でのポートレート撮影が好みの筆者には、とてもありがたい設計と言えます。

浅い被写界深度内に収まった瞳と髪の毛、衣装の質感は丁寧に描写されており、レンズのほぼ真正面から受ける光に対しての耐性も強く、画面内にゴーストやフレアーは見当たりません。

また、広角レンズのポートレートでは、歪曲がどれだけ低減されているかがとても気になりますが、本レンズは問題なく合格レベルです。画角としては準広角ですが、歪曲を気にすることなく標準レンズのような気分で撮影できます。

写欲を刺激する高級感のあるボディ

撮影機材:Nikon Z 8 + APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
絞りF2 1/160秒 ISO100 WB:5200K ピクチャーコントロール:ポートレート

コシナのレンズ全般に言えるのですが、レンズボディの高級感ある質感が写欲を刺激します。じっくりとトルクを操作しながらピントを合わせたくなる、被写体と真摯に向き合いたくなる、そんな気持ちになれるレンズです。

撮影時は室内に強い光が差し込んでいて、明暗の差が激しい状態でした。影になっている部分を思いっきり落とした描写も、アンダー部がベタッと重くならずに情報を残すべく粘っているので、写真として破綻しない良いバランスで描いてくれました。

ポートレート撮影では十分な最短撮影距離

撮影機材:Nikon Z 8 + APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
絞りF2 1/160秒 ISO1000 WB:5200K ピクチャーコントロール:ポートレート

最短撮影距離は0.35mなので、ポートレートではモデルさんに手が届きそうなくらい近付いて撮影できます。かなり暗い状態でしたが、大口径レンズに助けられてそれほどISO感度を上げなくても撮影できました。

電子接点搭載でさまざまなアシスト機能を使用可能

撮影機材:Nikon Z 8 + APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
絞りF2 1/200秒 ISO160 WB:5200K ピクチャーコントロール:ポートレート

本レンズは電子接点が搭載されているので、レンズとカメラボディの間で電気通信がなされます。つまり、対応機種のカメラであれば、撮影時のExif情報の記録はもちろん、ボディ内手ブレ補正(3軸)が有効となり、フォーカスポイント枠色変化、フォーカスピーキングの表示、拡大ボタンによる拡大表示の、3種類のピント合わせサポート機能を使用できます。

対応機種については、コシナの公式サイトの該当ページをご覧ください。

心地良い緊張感を与えてくれるピーキーなピント

撮影機材:Nikon Z 8 + APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
絞りF2 1/320秒 ISO125 WB:自然光オート ピクチャーコントロール:スタンダード

街なかのスナップにも持ち出してみました。メリハリの効いた画は、真夏のコントラストの高い街とよく似合います。太陽が高くなりきる前の午前中は、影と日向が沢山出現するビル街の撮影が楽しいです。

ピントは手前のビールの食品サンプルに合わせて、日傘の方の映り込みの位置を見ながらシャッターを押しました。上のヒマワリにピントを合わせたカットも撮影しましたが、F2よりも浅いのではないか?と思ってしまうほどピーキーなピントは、撮影時に心地良い緊張感を与えてくれます。

見惚れるほどの質感の表現力

撮影機材:Nikon Z 8 + APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
絞りF2 1/800秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール:スタンダード

ポートレートではモデルの肌色が綺麗に見えるように、明るめの露出を心掛ける写真が多くなりますが、スナップでは黒い部分がしっかりと黒く見えるような、メリハリのある写真が最近の好みです。エスカレーターに反射した光と、手すりで影になった四隅の明暗の差が美しいと感じました。細かい縦ラインと滑り止めのブツブツした質感、ものすごい暑い日でしたがそうとは思えないようなクールな金属感を表現してくれました。

食わず嫌いマニュアルフォーカスなら、ぜひ一度は手に取って欲しい!

撮影機材:Nikon Z 8 + APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
絞りF2 1/160秒 ISO1250 WB:オート1 ピクチャーコントロール:スタンダード

居酒屋のチーズ掛けポテトフライを、こんなにエモーショナルに撮れるレンズはなかなかないでしょうね。ポートレートも、スナップも、居酒屋ショットも楽しめるこのレンズは、マニュアルフォーカスのレンズになんとなく苦手意識がある方こそ、一度味わって感動していただきたいレンズだと実感しました。

 

■モデル:実嶺
instagram twitter

 

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

 

関連記事

人気記事