ソニー VLOGCAM ZV-E1速報レビュー|水咲奈々

水咲奈々
ソニー VLOGCAM ZV-E1速報レビュー|水咲奈々

はじめに

 2023年4月21日、ソニーのVLOGCAMの最高峰ともいえる「ZV-E1」が発売されました。同社のレンズ交換式VLOGCAMはAPS-Cフォーマットの「ZV-E10」があり、こちらもレンズ交換可能なコンパクトなボディで、多彩な動画、静止画を生み出してくれる人気の機種ですが、この「ZV-E1」は35mmフルサイズ機! よりムードのあるVlog撮影をお望みの方、ソニーレンズ資産がある方は特に、心を揺さぶられる製品でしょう。今回は、本機を人物撮影をメインにレビューしたいと思います。

まったく迷子にならない信頼できるAF

撮影機材:ZV-E1 + FE 28-60mm F4-5.6
絞りF5.6 1/160秒 ISO250 AWB クリエイティブルック:ポートレート

 今回の静止画はすべてJPEGで撮影し、調整などせずにそのまま掲載しています。まず体感として、AFの顔と瞳の認識精度が高すぎて、液晶を見なくても撮影できてしまうくらい。さすがに、構図や光の状態を見るので液晶は見ていますが、いちいちピントが瞳に合っているかを確認しなくても、カメラにお任せできるレベルです。

 筆者はポートレート撮影時は強い逆光を使って、ふんわりした写真に仕上げるのが好きなのですが、天気の良い日は光が強すぎて、メーカーや機種によっては、瞳の認識が迷うこともあります。ですが、本機は驚くほどのAF性能で、撮影中にAFが迷子になったことはありませんでした。

動画機能

シネマティックVlog + スロー

撮影機材:ZV-E1 + FE 28-60mm F4-5.6

 本機の動画機能で試してみたかったのが、「シネマティックVlog設定」です。その名の通り、映画のような動画を直感的な操作で撮影できる便利機能です。今回は王道の画作りを目指して、シネマティックVlog設定(Look:S-Cinetone/ Mood:AUTO / AFトランジション速度:Low)、撮影モード「S&Q」(撮影フレームレートを60fps/記録フレームレート24fps)で撮影しました。

 今回使用した画作り設定の「S-Cinetone」は、強い逆光でも人物の肌色をとても綺麗に再現してくれました。特に、ハイライト部が目に痛い明るさにならないようなソフトさを兼ね備えているのが好印象。

 動画で、特に人物がメインの場合は、コントラストが高すぎないほうが、よりシネマティックな映像になるので、ワンタッチで設定できる「S-Cinetone」のルックは、使いやすさとその美しさの両方で大満足です!

 本機は光学式5軸手ブレ補正をボディ内に搭載していますので、手持ちでもジンバルを使用しているかのような、滑らかな動画が撮影できます。少し画角が狭くなりますが、手ブレ補正モードの「ダイナミックアクティブモード」を使用すると、手持ちとは思えないほどの映像が撮影できます。

複数人顔認識機能&オートフレーミング

撮影機材:ZV-E1 + FE 28-60mm F4-5.6

 「複数人顔認識機能」は、フレーム内に複数の人物がいる場合、顔認識した複数人の顔がはっきり映るように、カメラが自動で絞りを変えてくれる機能です。

 この機能作例動画のように、フレーム内にひとりの人物しかいないときは絞りは開いています。後方からもうひとりの人物が登場し、カメラが顔認識をすると、絞りの数値が徐々に絞られていき、自然にふたりの顔にピントが合いました。顔認識をしない位置まで離れていくと、残された人物のみにピントが合い、絞りの数値も小さくなりました。

 この一連がとても自然な画になっていて、三脚さえあれば、ワンオペでなんでも撮影できるカメラだと体感しました。

 「オートフレーミング」機能は、常に人物を中央に捉え続ける撮影が可能です。クロップレベルが3段階あり、人物をどれくらいの大きさで写し続けるかの設定ができます。顔を中心としたアップの「大」、上半身の「中」、全身の「小」のすべてを、ちょっと意地悪なブランコを使用して撮影してみましたが、見事に捉え続けていました。

 100%の速度なので、ちょっと酔いそうな画になっていますが、編集でスローモーションにしたらいい感じになりそうです。Vlog撮影もですが、動き回る小さなお子さんをカメラに追いかけてもらうのにも、便利そうな機能だと思いました。

撮影しやすい大きさ・形状

撮影機材:ZV-E1 + FE 28-60mm F4-5.6
絞りF5.6 1/160秒 ISO250 AWB クリエイティブルック:ポートレート

 街中でポートレート撮影をするときは、撮影機材のコンパクトさが重要になることがあります。三脚を使用せず、歩きながら自然な表情や、突発的なリアルな表情を撮るためには、機動力が必要です。

 本機は、高さ71.9mm、幅121mm、奥行き54.3mmと、フルサイズ機ながら片手で持てるくらいコンパクト。ただ小さいだけではなく、右手のグリップ部分は握りやすく楕円状に突出しているので、手の大きな男性でもホールドしやすい形状をしています。

 重さは約483gで、キットレンズを装着しても小型・軽量で撮影はもちろん、持ち歩きやすいのもメリットのひとつ。せっかく所持していても、持ち歩かない大きさ、重さではしょうがないですからね。

白飛びギリギリのハイライト部も綺麗なグラデーションで表現!

撮影機材:ZV-E1 + FE 28-60mm F4-5.6
絞りF5.6 1/160秒 ISO250 AWB クリエイティブルック:ポートレート

 センサーは裏面照射型、有効約1210万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載。画像処理エンジンは最新のBIONZ XRを採用しており、「ZV-E10」に搭載されている画像処理エンジンBIONZ Xと比べると、最大約8倍の高速処理能力とのこと。

 6月以降に提供予定(カメラのアップグレードサイトから無料のライセンスキーを入手してアップグレードが必要)の、4K120p動画撮影を考えると、頼もしい処理エンジンを搭載しています。

 また、静止画撮影時に感じたのが、色の再現性の高さ。白飛びギリギリのモデルのブラウスも、質感のグラデーションがしっかりと出ています。キットレンズでこれだけ描写してくれるので、最新のGマスターの大口径のレンズを組み合わせたらと考えると、ワクワクしちゃいますね!

直感的に操作できるメニュー

撮影機材:ZV-E1 + FE 28-60mm F4-5.6
絞りF5.6 1/250秒 ISO250 AWB クリエイティブルック:ポートレート

 メニュー系統で便利になったと感じたのが、「静止画/動画/S&Q切換スイッチ」です。「ZV-E10」もカメラの上部の同じような位置に付いていたのですが、こちらはボタン式でした。押すたびにメニューが変わる形式なので、一気に行いたい撮影モードに切換ができないもどかしさがありました。

 ですが、本機はスライド式のスイッチになったことで、静止画からS&Qへの切換が一気に行えます。S&QのスローモーションはシネマティックなVolgにお勧めなモードですので、この切換がワンアクションで行えるのはとても便利でした。

 また、レンズ交換式カメラに慣れていない方でも、スマホのように画面をタッチして、さまざまな設定を変更することができるので、スマホ撮影からレベルアップしたい方は、一気にフルサイズ機のこちらに手を出してしまうのがいいでしょう。

 カメラや写真の用語がわからなくても、たとえばタッチした箇所の明るさを基準に、カメラが自動的に明るさを決定してくれたり、自分で明るさを調整したければ、明るさ調整バーをスライドさせて明るくするなど、直感的に操作できます。

ナチュラルに美しくしてくれる美肌効果

撮影機材:ZV-E1 + FE 28-60mm F4-5.6
絞りF5.6 1/160秒 ISO250 AWB クリエイティブルック:ポートレート

 特に女性のVloggerにお勧めしたい機能が「美肌効果」です。どんなに肌が綺麗でも笑ったときにぐっと刻まれる目尻の笑いジワや、頬の下の線などを、撮影時に目立たなくしてくれます。しかも、スマホアプリのやりすぎな補正ではなく、とってもナチュラルに補正してくれるので、自分で見ても違和感を感じないほど。レベルは3段階ありますが、中レベルの「MID」か最大効果の「HI」がお勧めです。

 総じて、動画も静止画もストレスなく構図に集中して撮影できる、いいカメラだと感じました。特に動画撮影は、今までチャレンジできなかったムードやシチュエーションでの撮影もしてみたいと思わされました。静止画も今回はキットレンズのみの撮影でしたが、次は大口径のレンズを使って撮影してみたいです! Vlog撮影だけでなく、いろいろな撮影に持ち出したい、魅力的な機種に仕上がっていました。

 

 

■モデル:山上ひかり

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

 

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