紅葉撮影でのフィルターワーク|井上嘉代子

井上嘉代子
紅葉撮影でのフィルターワーク|井上嘉代子

はじめに

 秋も深まり各地の紅葉がピークの季節になりました。今回は秋の紅葉撮影でのフィルターワークについて紹介していきます。
 
 ひとことで「フィルター」と言っても様々な種類があります。中でも紅葉撮影でよく使用するCPLフィルター、ハーフNDフィルターについて作例と共にお話ししていきます。

CPLフィルターの効果

 フィルターの中でよく聞かれるのがCPL(サーキュラーポラライズドライトの略)ではないでしょうか。円偏光フィルターとも言われます。効果としては、フィルターに使われている偏光膜が反射のコントロールをして、本来の色を出してくれるものです。「空を青くする」とか「色を濃くする」と言われますが、それも反射を抑えることによって効果が出ます。CPLフィルターは現像などの後処理ではできないことを撮影時にやっておける、お助けフィルターなのです。

 山の紅葉を見下ろす角度で撮影してみました。

▼フィルターなし

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:1/20秒 f11 ISO100 焦点距離105mm

 CPLフィルターを外した状態で撮影をしました。紅葉した葉と地面の緑が昼間の太陽光に照らされ多いに反射しています。これでは、本来の紅葉の色も出ていません。

▼フィルターあり

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 24-105mm F4 G OSS
■フィルター:H&Y 100mm K-Series フィルターホルダー Mark II + H&Y 100mm K-SeriesドロップインCPLフィルター
■撮影環境:1/20秒 f11 ISO100 焦点距離105mm

 CPLフィルターを装着し、反射をコントロールして撮影しました。紅葉した葉の色も鮮やかになり、緑の反射も抑えられています。

 この時に注意することは、CPLフィルターを装着したらファインダーを覗きながら一方向に回して効果を確認します。一方向でないと効果の確認がわかりづらくなってしまいますし、何度も回し続けると外れて落としてしまうこともあるからです。

CPLフィルターを使用して水辺の紅葉を撮影

 渓流や湖面など水辺の紅葉を撮影する機会も多くあります。その場合、紅葉の色ばかりが気になり水面が疎かになりがちですが、しっかりCPLフィルターを使って反射をコントロールします。

 日中の湖面と紅葉を入れて撮影してみました。

▼フィルターなし

■撮影機材:ソニー α7R III + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:1/50秒 f8 ISO100 焦点距離123mm

 フィルターを外した状態で撮影しました。雲の多い空だったので、雲の部分が白く反射してしまい白飛び気味になっています。

▼フィルターあり

■撮影機材:ソニー α7R III + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■フィルター:H&Y 100mm K-Series フィルターホルダー Mark II + H&Y 100mm K-SeriesドロップインCPLフィルター
■撮影環境:1/50秒 f8 ISO100 焦点距離123mm

 CLPフィルターを装着し、最大限に効かせた状態で撮影しました。水面の反射がなくなり、暗くのっぺりとした表現になってしまいました。

▼フィルターあり

■撮影機材:ソニー α7R III + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■フィルター:H&Y 100mm K-Series フィルターホルダー Mark II + H&Y 100mm K-SeriesドロップインCPLフィルター
■撮影環境:1/50秒 f8 ISO100 焦点距離123mm

 CPLフィルターを装着し、反射を適度にコントロールした状態で撮影しました。白飛びを抑えて尚且つ波紋が残り、主役である紅葉が引き立つ表現ができました。

▼フィルターあり

■撮影機材:ソニー α7R III + ソニー α7R IV + FE 24-105mm F4 G OSS
■フィルター:H&Y 100mm K-Series フィルターホルダー Mark II + H&Y 100mm K-SeriesドロップインCPLフィルター
■撮影環境:10秒 f16 ISO100 焦点距離41mm

 紅葉の色が映り込んだ渓流の流れを、CPLフィルターを使い撮影しました。ファインダーを覗きながらCPLフィルターを回すと、オレンジ色が濃くなったり薄くなったりします。ここは自分の好みと、辺りの岩の反射なども考慮して決めます。

 このようにCPLフィルターを使用して反射をコントロールすることで、自分の思い通りの表現ができます。

ハーフNDフィルターの効果

 ハーフNDフィルターはホルダーに装着して使用する角形フィルターと、レンズに直接装着する丸型フィルターがあります。角形フィルターは、ハーフNDだけでも多くの種類が販売されていて、どれを購入しようか迷っている方もいるのではないでしょうか。

 今回はND(中性濃度)と透明の境目にグラデーションが入ったソフトNDフィルターを使用します。通常のNDフィルターは全面を減光するために使用しますが、ハーフNDフィルターは半分もしくは一部分だけ減光することができます。例えば空と地上に輝度差がある場合、空だけにNDフィルターをかけることで輝度差を埋めることができるのです。

 または山の斜面など一部分に太陽光か当たり、白く霞んでしまう時があります。そんな時もハーフNDフィルターで日の当たっている部分を減光すると、霞が除去され色も出てきます。

 夕方の斜光で、奥半分に太陽光が当たっている状態を撮影しました。

▼フィルターなし

■撮影機材:ソニー α7R III + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:1/5秒 f16 ISO100 焦点距離241mm

 ハーフNDフィルターを外した状態で撮影しました。前半分のディテールを出そうとすると、奥半分は白く霞んだ状態になってしまします。

▼フィルターあり

■撮影機材:ソニー α7R III + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■フィルター:H&Y 100mm K-Series フィルターホルダー Mark II + H&Y 100x150mm K-SeriesソフトGND8 マグネットフレーム付き
■撮影環境:1/8秒 f16 ISO100 焦点距離241mm

 ハーフNDフィルターを装着し、奥半分を減光しました。輝度差が埋まり、バランス良くなっています。この時ハーフNDフィルターは日の当たっている部分だけに効果を持たせるため、ホルダーに装着した状態で斜めに傾けます。

紅葉の映り込み

 紅葉が映り込んだ水面は本当に美しいです。しかし撮影をする時には映り込みの部分が暗くなってしまいます。その場合、映り込みを明るくして地上部分を減光します。

▼フィルターなし

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:4秒 f11 ISO100 焦点距離68mm

 ハーフNDフィルターを外した状態で撮影しました。上部は日光が当たり美しいのですが、映り込みはどんより暗くなってしまっています。

▼フィルターあり

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 24-105mm F4 G OSS
■フィルター:H&Y 100mm K-Series フィルターホルダー Mark II + H&Y 100x150mm K-SeriesソフトGND8 マグネットフレーム付き
■撮影環境:2秒 f11 ISO100 焦点距離68mm

 ハーフNDフィルターを装着し、上半分を減光します。下半分を適正露出にして、美しい紅葉の映り込みが撮影できました。

おわりに

 今回使用したフィルターはどちら(CPL・ハーフND)もH&Yフィルター K-Seriesです。レンズにホルダーを取り付けて使用し、ハーフNDフィルターはマグネットフレーム付きなので前面に近づけるだけでアシストされ、とても簡単に装着できます。

 またCPLフィルターはドロップイン式なので、角形NDフィルターと重ねることも可能です。フィルターの回転は左上にあるギアを回すだけなので、ファインダーを覗きながら、そしてピントを合わせた後でも安心して調整することができる優れものです。

 

 

■写真家:井上嘉代子
1967年岐阜市生まれ。インテリア・デザイン業界にて広告・風景撮影業務に従事。2009年交通事故の後遺症により右上肢の機能を失ったのをきっかけに写真家として独立。
現在は八ヶ岳を拠点に全国各地で風景、星景、野生動物、鉄道、花火を撮影。企業カレンダー、ポスター、書籍新聞への寄稿、ラジオテレビ出演、写真教室、セミナー講師等幅広く活動している。また自身の経験を生かし、障がい者アーティストや作品を撮り続け発信している。

 

 

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