ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II レビュー|鳥がいる風景撮影には欠かせない一本

山田芳文
ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II レビュー|鳥がいる風景撮影には欠かせない一本

はじめに

今回はソニーの望遠ズームレンズ、FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIを野鳥作品を通じてレビューします。僕はレンズを常時8本ほど使って野鳥を描き分けていますが、その中でもこのレンズの使用頻度は高く、ここ数年は全撮影の3割ぐらいをこの70-200mmを使って撮影しています。

そんなお気に入りのレンズ、発売から3年以上経つということもあって、高性能であることはすでに十分に認知されているかもしれませんが、どこが気に入っているのかなど、個人的な感想も含めて改めてご紹介します。

定番の望遠ズームの画角

その昔、80〜200mmだった時代も含めると、ずいぶんと長い年月たくさんの人から使われている定番のズームレンズですが、今回改めてズーム域を70mm、135mm、200mmと変えてモズを撮影しましたので、画角の違いを見ていただきます。

※1 撮影距離がほとんど同じになるように、カメラ位置は三脚で固定して撮影しています
※2 撮影者による鳥への負荷を小さくするために撮影はカメラから離れて遠隔操作で撮影しています

▼70mm

■使用機材:SONY α1 + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:70mm F5.6 1/125秒 ISO400

▼135mm

■使用機材:SONY α1 + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:135mm F5.6 1/125秒 ISO250

▼200mm

■使用機材:SONY α1 + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:200mm F5.6 1/500秒 ISO200

画角がいちばん広い70mmでは杭が4本写っていますが、135mmと200mmでは杭が1本しか写っていません。また、70mmでは画面上に橋が、下に地面が写っているので、このモズが暮らしているところの環境がよく分かると思います。一方で、200mmまでズームすると写る範囲が狭くなり、生息環境は伝えられないものの画面はスッキリと単純化された作品を撮ることができます。

APS-C機と組み合わせて超軽量サンニッパのイメージで撮る

I型のFE 70-200mm F2.8 GM OSSは公式サイトでは質量が約1480g(三脚座別)とあります。70mmから200mmまでをカバーして、開放F2.8通しのズームレンズとしては軽いと思いますが、そこからII型になったFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIはさらに軽くなり、約1045g(三脚座別)と約400gも軽量化を実現しています。

これはちょっと驚きの数字です。
そして、僕が数字以上に大切にしているのが実際に使った時の「体感」なのですが、その体感ではもっと軽く感じます。軽量であることは僕が超お気に入りのところで、ソニーのαを愛用している理由のひとつでもあります。

ここで、僕からのご提案です。
APS-Cのボディとこのレンズを組み合わせて、200mmにして撮ることで換算300mm相当と同様の画角となるため、超軽量サンニッパのようなイメージで使うことができます。ぜひお試しください。

下はAPS-C機のα6700にこのレンズをつけて手持ちで撮影したウミネコです。

ウミネコが飛んでくる前に三脚をセットして、事前にフレーミングして「決め打ち」するべく待っていたが、いつもと違うコースから飛んできたので、作戦を変更して手持ちに切りかえて撮影した。軽量で機動力があるがゆえに瞬時に対応することができた。
■使用機材:SONY α6700 + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:200mm F4 1/2000秒 ISO160

衝撃の解像力

FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIの解像力が凄まじいことは既に広く認知されているかもしれません。
今さらかもしれませんが、あまりにもスゴいので、改めてご報告したいと思います。

ズームレンズのレビュー記事でよく使われる「単焦点なみの描写力」というフレーズにもう聞き飽きたという人もいらっしゃるかもしれませんが、あえて言いたくなるぐらいの解像性能です。実際に僕はこの70-200mmを使うようになってから、このレンジをカバーしている単焦点レンズの出番が減りました。単焦点との違いは明るさぐらいかなとさえ思っています。

ルリビタキを撮影した結果をご覧ください。

背景の木々の高さを伝えるために縦位置にして、ルリビタキを画面下におき、70mmにして小さく写した。鳥を小さく写すとレンズの本当のポテンシャルがよくわかるが、気持ちいいぐらいよく解像している。
※左がトリミング無しのフル画面、白枠で囲ったところを拡大したのが右
■使用機材:SONY α1 II + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:70mm F5.6 1/30秒 ISO250

鳥たちの風景

「このレンズをどんな時に使っていますか」と聞かれたら「野鳥を風景的に撮る時です」と即答します。
70mmから200mmという焦点距離は鳥を風景的に撮る場合、ど真ん中のレンジですので、鳥がいる風景がライフワークの僕にとって絶対に外せないレンズとなっています。

ここからはウェブギャラリーのようなイメージで、FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIで撮影した鳥たちの風景を9点ご覧ください。

太陽が小さく写り過ぎないように200mmにした。このレンズでいちばん狭い画角なので、画面のさばき方次第で写真を見る人に窮屈な印象を与えてしまう。そうならないように、画面の左上と右下にナベヅルが飛んだ瞬間にシャッターをきった。
■使用機材:SONY α7R IV + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:200mm F8 1/2000秒 ISO100
70mmにしてカメラ位置を低くすることで、遠くにある満開の桜を画面に取り入れて、シロハラがいる春の風景にした。これによって、シロハラの生息環境も伝わる写真にした。200mmで撮影した上のナベヅル、70mmで撮ったこちらのシロハラ、ズームレンジを最大限に活用することによりレンズ1本でいろいろな表現ができるところが気に入っている。
■使用機材:SONY α1 + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:70mm F5.6 1/125秒 ISO100
イワツバメが巣材に使う泥を集めにきているシーン。群れで集めに来ていることと混みいっている感を伝えるため、200mmにして距離感を圧縮した。地面にスポンジを置いて、その上にカメラを置いて、グレーのシートでカメラを隠して遠隔で撮影しているが、こんな時軽量でコンパクトなα7C IIとこのレンズの組み合わせはカメラを隠しやすく、撮影前の事前準備がしやすい。
■使用機材:SONY α7C II + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:200mm F4 1/1000秒 ISO400
緑が濃くなってきた季節のスズメがいる風景。スズメがとまっている柵以外にも画面の中にはたくさんの人工物を入れているが、被写界深度を浅くすることで、人工物の存在感を弱めた。柔らかなボケのレンズなので、躊躇なく深度を浅くする決断ができる。
■使用機材:SONY α9 III + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:74mm F4 1/2000秒 ISO320
撮影前の観察でカワラヒワが水浴び前にいったんこの石に止まることがわかったので、遠隔で撮るべく来る前にカメラを周囲にカモフラージュして、来た時に撮影したカット。カメラをセットする場所に制限があったが、焦点距離を調節してイメージ通りの絵になるようにした。
■使用機材:SONY α9 III + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:164mm F4 1/1600秒 ISO500
こちらも遠隔で撮影したシジュウカラが水浴びをしているシーン。AIプロセッシングユニット搭載で被写体認識AFの性能が確かなα9 IIIとAFスピードが速いFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIが相まって、遠隔による撮影もAFで問題なくできるようになった。ピントが水飛沫に引っ張られることもない。かつては遠隔による撮影は全て置きピンでしていたのを思うと隔世の感がある。
■使用機材:SONY α9 III + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:155mm F4 1/250秒 ISO320
こちらは手持ちで撮影したコハクチョウ。それなりに長い時間撮影していたが、軽量のレンズなので身体的な負担を感じずに快適に撮影することができた。開放がF2.8通しの望遠ズームレンズで、約1045gという軽さは本当に有り難い。
■使用機材:SONY α1 + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:200mm F5.6 1/3200秒 ISO160
2025年の今、描写性能という点で問題のあるレンズはもしかしたらないのかもしれないと思うほど、どのようなメーカーのどのようなレンズでもくっきりはっきり綺麗に写る。しかしながら、ボケの柔らかさや滑らかさとういう点では、ちょっと違うと僕は感じている。このレンズは(Gマスターの全てのレンズでも言えるが)、シャープに像を結ぶだけでなく、ボケが柔らいところが特長で、これが僕のお気に入りのところ。こちらのジョウビタキでそれが伝わるのではと思っている。
■使用機材:SONY α1 + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:70mm F5.6 1/60秒 ISO400
落葉した季節に晴天の硬い光で撮影したニシオジロビタキ。縦位置かつ74mmにして撮ることで、背景の木々を画面にたくさん取り入れた。背景が溶けてしまわない程度の被写界深度にすることで、縦のラインの木々が心地よくボケているかどうかチェックしたが、期待通りの結果となった。
■使用機材:SONY α1 + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:74mm F5.6 1/125秒 ISO200

まとめ

FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIの描写性能はほぼ単焦点レンズと考えて差し支えなく、開放F2.8の単焦点レンズを何本か持っているような感覚になります。明るいズームレンズであるにもかかわらず軽量なので、機動力を活かして手持ちでもどんどん撮影できます。野鳥風景だけでなく、どのような被写体を撮る人にもおすすめのレンズです。

 

 

■写真家:山田芳文
「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。ライフワークは鳥がいる風景写真。主な著書は『SONY α7 IV 完全活用マニュアル』(技術評論社)、『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)、『写真は構図でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディエヌコーポレーション)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)など。最新刊は『SONY α7C II 完全撮影マニュアル』(技術評論社)。

 

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