これぞミラーレス時代の新標準!最新ズームレンズ、ソニー FE 28-70mm F2 GM
はじめに
こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。
今回はSONY αレンズシリーズ初となる全域開放値F2を誇るFE 28-70mm F2 GMをレビューしていきたいと思います。もはや全域単焦点レンズ並みの明るさを誇る本レンズ、どのような描写を見せてくれるのか、さっそく見ていきたいと思います。
クラス最軽量の次世代ズームレンズ
FE 28-70mm F2 GMは、2024年12月SONYから発売された、未だかつてない大口径ズームレンズです。ミラーレスが主流になり、一眼レフ時代にはなかった焦点距離、高解像度のレンズが多々発売されていますが、本レンズはその中でも全ユーザーに衝撃を与えた1本なのではないでしょうか。実は2018年、CanonがRFマウントレンズを本格展開する際に、同スペックのレンズ「RF28-70mm F2 L USM」を発売しています。その当時のインパクトも凄まじかったと記憶しているのですが、Canonレンズは重量1430gと標準レンズの枠を軽く飛び越えた超大型レンズとなり、40万円程の価格も相まって一般ユーザー向けとは異なり「業務用」レンズとして市場に受け入れられたのでした。
それから約6年の月日が流れ、登場したのが本レンズです。Canonの同スペックレンズと明らかに違うのはその重量。FE 28-70mm F2 GMはなんと918g!500g以上の軽量化が図られた、本レンズはCanonレンズとは似て非なるものです。勿論、描写についてはそれぞれ良し悪しがあるため、一概には言えませんが、こと重さだけ見れば全く別物と言って良いくらいの重量差があります。
しかし、本レンズもレンズ単体としてはかなり重い部類。こちらも中々日常使いには厳しいのではないかと考えていましたが、α7 IVとのバランスは非常によく、「思ったほど重くない、むしろ軽い?」と思わせてくれるような感想を持ちました。インターネットやSNSを見ても、筆者と同様の意見の方が多く、本体と合わせても標準的なカメラの重量に収まっており、既存の24-70mm F2.8標準ズームレンズと同等の感覚で使えるのは非常に嬉しいところです。
では、細かなレンズスペックを見ていきましょう。
| 対応マウント | ソニー Eマウント |
| サイズ | 最大径Φ92.9×全長139.8mm |
| 質量 | 918g |
| 焦点距離 | 28-70mm |
| フォーカス | AF |
| レンズ構成 | 14群20枚 |
| 対応撮像画面サイズ | 35mmフルサイズ |
| 最短撮影距離 | 0.38m |
| 絞り | F2-F22 |
| フィルター径 | 86mm |
| 手ブレ補正 | なし |
レンズ構成も14群20枚と近年のミラーレスカメラ用レンズによくみられる超弩級の構成になっていますが、AF性能は高く、高速で正確なピント合わせが可能です。特に静音性に優れたフォーカス駆動システムにより、動画撮影においても非常に有効。重量やわずかな焦点距離の差こそありますが、既存の24-70mm F2.8よりもよりプロフェッショナルなレンズに仕上がっており、ズームをメインに使用する商業系カメラマンにとっては新時代の標準ズームレンズと言っても間違いはないでしょう。

■撮影環境:焦点距離70mm f2 1/30秒 ISO200 WBオート
開放F2では髪の毛程度の奥行きでも大きなボケが生まれます。

■撮影環境:焦点距離28mm f2 1/160秒 ISO100 WBオート
28mm、最短撮影距離かつF2の描写です。マクロ的な使い方は既存の24-70mmに軍配が上がります。

■撮影環境:焦点距離28mm f8 1/13秒 ISO100 WBオート
F8ともなれば、複雑な背景も難なく描き切ります。
どこを切っても単焦点?現行最高水準のレンズ

■撮影環境:焦点距離28mm f2 1/80秒 ISO200 WBオート
さて、その描写力はどうでしょうか。個人的にはF2.8とF2では特にボケによる力の差が顕著に現れると感じており、撮影の結果もそれを感じることができるものとなりました。開放値が小さくなることにより、描写もより繊細になるかと思いきやそこは現代レンズ。描写も開放F値からも破綻の無い描写で、SONY公式で記載している、全域単焦点レンズに迫る高い解像性能を持つというのは、決して誇張ではないと言い切れるほど。普段オールドレンズを主体に撮影をしている筆者からすれば、写りすぎると感じてしまうことも多くあったため、特にポートレートをメインにしている方は肌補正などの技術も求められることも念頭に置きましょう。
また、描写についてはほぼ全くと言っていいほど甘くなる部分がなく、収差による破綻もごく小さいためレンズの特徴で勝負するのが難しいレンズでもあります。いわゆるアポクロマート仕様のレンズに近く、空間そのものを切り抜くかの様な鋭さがあるのは特徴と言えるかもしれません。
F2という開放値は単焦点レンズでも非常にバランスの良い値として知られており、破綻の無さから人によっては使いづらく、面白みのないレンズとして写ってしまうことが多いと考えています。ですが、被写体を正しく捉えることには右に出るズームレンズはないくらいの力があるため、ウェディングフォトやイベントなどに向いているとも考えられます。これら撮影環境に制約がある中での開放F2は、F2.8よりも一段分、ボケ、SS、ISOを稼げるという所に非常に大きなメリットがあると感じました。
今回は屋内スタジオを中心にポートレートを撮影しており、ここからはその作例を載せていきます。

■撮影環境:焦点距離28mm f2 1/160秒 ISO100 WBオート
わずかな自然光のみで撮影できるのも開放値が小さいレンズだからこそ。コントラストが高くなりすぎるのにも注意が必要です。

■撮影環境:焦点距離70mm f2 1/30秒 ISO200 WBオート
70mmの開放F2では、既存のF2.8ズームレンズよりもより大きなボケが期待できます。

■撮影環境:焦点距離70mm f2 1/100秒 ISO100 WBオート
明暗差を押さえることでコントラストを低くし、ポートレートに深みを与えることができます。

■撮影環境:焦点距離70mm f2 1/100秒 ISO100 WBオート
ポートレートでは定番構図に逆らうことで、バリエーションが生まれます。敢えて顔にピントを合わせないことで、雰囲気を重視することができました。

■撮影環境:焦点距離46mm f4 1/60秒 ISO100 WBオート
屋内、屋外問わず万能に使えるレンズ。ズームレンズはレンズ交換でモデルを待たせなくて良く、その場で画角が変えられることによるシームレスな撮影は、ことポートレートにおいて熱量を維持した撮影を継続できるメリットがあります。
定番標準ズームレンズFE 24-70mm F2.8 GM IIとの比較

■撮影環境:焦点距離28mm f2 1/250秒 ISO100 WBオート
SONYの「FE 24-70mm F2.8 GM II 」と「FE 28-70mm F2 GM 」は、どちらもGMレンズとして最高水準の性能を誇る標準ズームレンズですが、コンセプトと特性が異なり、必ずしも上位互換と言えないところがあります。ここではいくつかのポイントを押さえ、解説していきましょう。
1.基本コンセプト
基本となるコンセプトも両レンズで若干異なっています。FE 24-70mm F2.8 GM IIは F2.8通しの標準ズームレンズとして広角24mmからスタート、あらゆる撮影シーンに対応できる汎用性と高い描写性能を両立した「万能レンズ」という位置づけです。
FE 28-70mm F2 GMはF2通しという非常に明るい開放F値を特徴とする、まさに「ズームできる単焦点レンズ」のようなコンセプトのレンズです。価格も16万円程度の開きがあるため(2025年7月現在)、値段と広角を取るか、高くてもF2の明るさを取るかでレンズ選択が変わってくると考えます。
2.サイズと重量、携帯性
これらは描写に匹敵するくらい重要な項目です。FE 24-70mm F2.8 GM IIは約695gと、F2.8通しの標準ズームレンズとしては驚異的な小型軽量化を実現しています。I型との体積比で約18%の小型化が図られており、長時間の手持ち撮影や持ち運びにおいて非常に有利です。
一方、FE 28-70mm F2 GMは約918gと、FE 24-70mm F2.8 GM IIより約223g重いですが、先述の通りF2通しのズームレンズとしては驚くべき軽量化が図られており、カメラとのバランスも良く体感、重さを感じにくいメリットがあります。この約223g差をどうとるかも選択肢の一つになりそうです。
3.最短撮影距離
最後は最短撮影距離の比較です。FE 24-70mm F2.8 GM IIは最短撮影距離がワイド端で0.21m、テレ端で0.3mと短く、最大撮影倍率も0.32倍と高いため、ハーフマクロに匹敵する撮影も得意です。一方、FE 28-70mm F2 GMは最短撮影距離0.38m、最大撮影倍率は0.23倍です。寄りに関しては、24-70mmに軍配が上がり、より汎用的に使えるのは前者という結果になっています。
さて、どちらを選ぶかという結論ですが、一つの答えとしては汎用性と携帯性を最優先するなら「FE 24-70mm F2.8 GM II」、重さを犠牲にしてもより大きなボケと描写力を最優先するなら「FE 28-70mm F2 GM」という所になるでしょうか。2025年7月時点で、価格差も16万円程度あることから、描写だけではなく金額、そして重量も加味した選択ができればよいでしょう。
まとめ

■撮影環境:焦点距離70mm f5.6 1/50秒 ISO100 WBオート
今回はポートレートの作例を基に、FE 28-70mm F2 GMの性能、そしてFE 24-70mm F2.8 GM IIとの比較についても述べてみました。F2.8通しの通称「大三元レンズ」を超えるスペックを有する本レンズですが、これから先は新スタンダードレンズとして標準ズームレンズ界に君臨することになるでしょう。F2.8通しズームレンズも、各社から様々なバリエーションが販売され、しのぎを削り合い、良いレンズが生まれて行った歴史がありますので、今後各メーカーからF2通しのズームレンズが出てくるのでは?と期待が持てますね!
この記事を通して、全く真逆の単焦点で柔らかいレンズも気になる!という方は、僕が執筆している「ポートレートのためのオールドレンズ入門」そして「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」に数多くのオールドレンズの作例と詳細な設定等解説を載せておりますので是非ご覧ください。また、実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるオールドレンズワークショップ「フランジバック」にもご参加いただければ嬉しいです!では、次の記事でお会いしましょう!
■モデル:あまね(@amane._.0324)
■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。















