佐藤俊斗 × ポーレートVol.19|街の色と光を活かしたポートレート撮影

佐藤俊斗
佐藤俊斗 × ポーレートVol.19|街の色と光を活かしたポートレート撮影

はじめに

今回は街中のさまざまなロケーションを使いながら、ポートレート撮影を行いました。
特別なスタジオやセットを用意しなくても、街の中にある壁や建物や光を活かすことで写真の雰囲気は大きく変わります。

街を歩いていると、何気ない場所でも「この壁いいな」「この光きれいだな」と感じる瞬間があります。
そうした場所を見つけて、その空気感ごと切り取っていくのが街撮りの面白さです。
今回は実際のカットをもとに、ロケーションの見つけ方や構図の作り方、光の扱い方、モデルさんとのセッションについてまとめました。

壁の色と抜け感を意識したカット

■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:60mm 1/250秒 f/2.8 ISO320

最初のカットでは、壁の色と写真の抜け感を意識して撮影しました。
この場所はレトロで少し珍しい壁模様が印象的で、見つけた瞬間に使えると感じた場所です。懐かしさと今っぽさが同時にある空気を、そのまま写真に落とし込むことを意識しました。

街撮りでは背景の情報量が重要です。
派手すぎると被写体が埋もれ、シンプルすぎると印象が弱くなる。
この壁はそのバランスがちょうどよく、被写体を引き立てながら空気も作ってくれる背景でした。視線を少し外してもらうことで余白が生まれ、自然な流れを感じるカットにまとまります。

タイルの光と空間を活かした撮影

■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:46mm 1/250秒 f/4.5 ISO320

この場所は光が当たったときにタイルが少し反射して、独特の質感が出るのがポイントです。
その光の表情を活かしながら、空間の奥行きを意識して撮影しました。
建物の中に少し入ることで、写真に立体感が生まれます。背景に奥行きがあるだけで、写真はぐっと立体的になります。

また、このカットでは先ほどよりも少しファッション寄りのイメージを狙いました。ポージングに動きをつけてもらい、マフラーはあえて手持ちにしています。
マフラーを巻いてしまうと写真の情報量が多くなりすぎるので、ここでは引き算を意識しました。
撮影では「何を足すか」よりも、「何を引くか」がとても大切だったりします。

レトロな場所の雰囲気を活かす

■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:35mm 1/250秒 f/2.8 ISO200
■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:37mm 1/250秒 f/2.8 ISO200

この場所では、とことん「レトロかわいい」雰囲気を意識して撮影しました。
年季の入った看板や煉瓦の壁が空気を作ってくれるので、構図も決めすぎずに切り取りました。
特に引きではラフな動きのあるポージング、寄りでは少しローアングルにすることで平面的にならないようにしています。

・服のブラウン
・煉瓦の赤
・手前の緑

レトロだけど、どこか写真が締まって見えるポイントはこの配色にあります。
写真は配色のバランスも意識することで、写真の完成度は大きく変わります。街撮りでは「色を見る」こともとても大事なポイントです。

シンプルな壁と構図の作り方

■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:40mm 1/250秒 f/4.5 ISO200
■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:40mm 1/250秒 f/4.5 ISO200

一見すると何の変哲もない壁ですが、撮り方によって印象は大きく変わります。
1枚目では少し引きの構図にして、被写体の周りに余白を作りました。さらに画角を少しだけ右に傾けることで、ファッショナブルで抜け感のある雰囲気を表現しました。

では2枚目はどうでしょうか?同じ場所でも少し寄りでシンプルに撮ると、また違った見え方になりますよね。
悪い写真ではないのですが、縦横線の主張が若干強く感じます。
このような背景は一見簡単そうに見えて難しいんです。
だからこそ、どんな写真を撮りたいかを事前に共有し、モデルさんと認識を合わせておくことが重要です。

木漏れ日を使った柔らかい写真

■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:41mm 1/250秒 f/4.5 ISO200
■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:50mm 1/250秒 f/4.5 ISO200

ここでは雰囲気を変えて、柔らかさを意識しました。
木漏れ日はとても綺麗ですが光自体は硬いのが特徴でもあるので、当たり方と影の出方を見ながら調整しています。
やや正面の直線的な光と、少し右横からの光で撮り分けることで印象に変化をつけています。

影の出方が変わるだけで写真の見え方はかなり変わります。
また、直射光は眩しいのでモデルさんへの配慮もとても大切です。なるべく負担をかけないように短時間でベストな角度を探ることも心がけましょう。

そして、1枚目のモデルさんの顔振りがこれまでとは違い、左向きなことに気が付きましたか?
眩しい光を避けて左を向いた瞬間に撮影した1枚です。
少し微笑んで、顔振りが異なるだけで木漏れ日の雰囲気も相まって印象がガラッと変わりますよね。
細かな一瞬も逃さず切り取れるように心掛けましょう。

奥行きを活かした構図

■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:28mm 1/400秒 f/4 ISO200
■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:66mm 1/200秒 f/4 ISO200

1枚目は角に立ってもらうことで、空間の立体感を表現しています。
2枚目は建物の奥行きを使って、斜め前から撮影しました。
この場所でも煉瓦の色と服の色の相性を意識しています。

また、2枚目は少しフィルムライクな雰囲気で写真全体に抜け感を出したかったので、目線を外してもらっています。
もしこの建物が真っ白や真っ黒だったら、写真の印象はまったく違っていたと思います。
こういう場所との出会いを見つけていくのも、街撮りの醍醐味ですね。空間とのフィット感を意識して先ほどとはマフラーの巻き方を変えてるのもポイントです。気が付いた方は流石です。

緑背景でシンプルな表現

シンプルな背景では、被写体そのものの見え方がダイレクトに表れるので、表情やポージング、目線のわずかな違いがそのまま写真に影響します。
そのためテンポよく撮影しながら変化を拾っていくのがおすすめです。
今回はあえて服と反対色になる緑を背景に選び、この日全体の中で印象の変化を狙いました。
女優さんやタレントさんの写真集・カレンダー撮影では、全体の構成も考えながら撮影します。
皆さんも、普段のポートレート撮影でもし余裕があれば、バリエーションなども広い視野で撮影してみてください。

温度感と距離感

次は少し動きを入れたカットです。
モデルさんと一緒に歩きながら、表情や仕草の動きを撮影しました。
このようなカットはその人らしさが出やすく、写真で温度感と距離感を表現できます。
背景と抜け感をシンプルにスッキリさせ、夕方前の柔らかい逆光で撮ることでよりエモーショナルな演出ができるので試してみてください。

ここでも、モデルさんの細かな変化を拾うように撮影していくと、後から写真を見返した時も楽しく変化を感じられると思います。

光の角度でニュアンスを変える

■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:70mm 1/250秒 f/2.8 ISO200
■撮影機材:SONY α7R V + FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:70mm 1/250秒 f/2.8 ISO200

最後に光の違いを使い分けています。
サイド光ではコントラストが出て立体感が強くなり、半逆光では柔らかさが出ます。
どちらが良いというより、表現したい方向性に合わせて選択することが大切です。
光の向きを少し変えるだけで、写真の印象は大きく変わります。

おわりに

街でのポートレート撮影は特別な場所がなくても成立します。
壁の色、光の向き、空間の奥行き、背景との配色。こうした要素を意識するだけで写真の表情ははっきり変わります。
一枚一枚を丁寧に撮ることに加えて、全体の流れを意識することも重要です。

街を歩きながら場所を見つけ、光を見て、空気を感じて撮る。それを積み重ねていくことで、自分なりのスタイルも見えてきます。
ぜひ街の中で、自分なりのロケーションを探してみてください。

 

■モデル:今村朱里

 

■写真家・フォトグラファー:佐藤俊斗

 

 

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