フロントフィルター装着可能な超広角レンズ「Schneider Kreuznach x LK SAMYANG」ダブルブランドの「AF 14-24mm f-2.8 FE」

坂井田富三
フロントフィルター装着可能な超広角レンズ「Schneider Kreuznach x LK SAMYANG」ダブルブランドの「AF 14-24mm f-2.8 FE」

はじめに

今回紹介するレンズは、CP+2025 でLKサムヤンブースからサプライズ登場していた「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」です。このレンズはドイツのレンズメーカーであるSchneider Kreuznach(シュナイダー・クロイツナッハ)とのコラボレーションモデルで、レンズには「Schneider-Kreuznach x LK SAMYANG」のダブルネームが冠されています。

シュナイダー・クロイツナッハは大判や中判カメラのレンズなどでは有名ですが、久しく名前を聞く機会がありませんでした。それがCP+2025 で、いきなりシュナイダー・クロイツナッハの名の入ったレンズがLKサムヤンブースに登場したことは本当にサプライズでした。この時まだLKサムヤンの本国(韓国)でも発表されておらず、日本のCP+2025 が初お目見えのレンズとなりました。実を言うと筆者は、CP+2025 でLKサムヤンのブースをお手伝いしていたのですが、初日にブースに入って初めてこのレンズの存在を知らされた状態で、本当にびっくりした事を今でも覚えています。正直いきなりブースに置かれても説明のしようが無い状態で少々困ってしまったのも事実です。

CP+2025 の4日間いろいろな方とお話をさせて頂きましたが、特に筆者と同年代の年配の方は「Schneider Kreuznach」の名に惹かれている方が多かったように感じました。今回はそんな魅力ある「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」を先行して使用する事ができたので、レンズの魅力とスペック、そしてその写りを紹介いたします。

LK SAMYANG AF 14-24mm f-2.8 FE の基本スペックと魅力

Schneider Kreuznach(シュナイダー・クロイツナッハ)とのコラボレーションモデルのレンズ「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」は、とても魅力的なスペックを有しています。焦点距離14-24mmF2.8というスペックに対して、コンパクトで非常に軽量なレンズになっています。最大のポイントはフィルター径が77mmになっており、レンズの前面に通常の77mm径のフィルターがそのまま装着可能な点です。このクラスのレンズになると、出目金レンズと称される前玉が出っ張ったレンズになり、通常のフィルターが装着できないものがほとんどです。絞り開放F2.8で焦点距離14mmスタートのレンズで77mm径のフィルターが装着できるのは、このレンズ最大の魅力ポイントと言ってもいいでしょう。

ケンコーCPLフィルター「ZX C-PL N」77mmを装着した状態

フィルター径が77mmなので、一般的なサイズの多くのフィルターを自由に使うことができます。特にこのレンズのスペック、性格を考えると風景写真であれば、使用頻度の高い円形の「PLフィルター」や「NDフィルター」などを焦点距離14mmの画角に使うことが可能です。実際に筆者が持っている77mm径のフィルターを装着して撮影して非常にメリットを感じました。

また「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」レンズは、非常に軽量であるのも魅力の一つです。500gを切ったレンズ重量445gというのは、同一スペックの他社のレンズよりも圧倒的に軽くなっています。この「軽量」というのは、サムヤンの他のレンズにも言える戦略的なポイントとなっています。

「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」のスペックと同一スペックレンズとの比較です。
※Eマウントでのライバルは、SIGMA「Art14-24mm F2.8 DG DN」になりますが、参考の為ニコン 「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」も比較対象にいれてみました。

LK SAMYANG
AF 14-24mm F2.8 FE
SIGMA Art
14-24mm F2.8 DG DN
ニコン NIKKOR Z
14-24mm f/2.8 S
焦点距離 14-24mm 14-24mm 14-24mm
レンズ構成 11群15枚 13群18枚 11群16枚
開放絞り 2.8 2.8 2.8
最小絞り 22 22 22
フィルター径 77mm 112mm※要付属のバヨネットフード
絞り羽根枚数 9枚 11枚 9枚
最近接距離 0.18m 0.28m 0.28m
最大撮影倍率 0.17倍 0.14倍 0.13倍
手ブレ補正
全長×最大径 98.63×88.8mm 133×85mm(Eマウント) 124.5×約88.5mm
重量 445g 約795g(Eマウント) 約650g
発売 2025年5月 2019年8月 2020年10月
LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FEのMTF曲線図
レンズ構成 11群15枚(特殊レンズ:HRレンズ5枚、ASPレンズ 3枚、EDレンズ3枚 使用)

フィルターが使え、軽量といった点に加え「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」のもう一つのアピールポイントは最短撮影距離です。「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」の最短撮影距離は、0.18mと短く、なおかつズーム全域で最近接距離の変化がないという点です。どの焦点距離でも最短撮影距離が変わらないというのは接写をする際には非常に使いやすいポイントになります。
実際に蝶々に寄って撮影をしてみましたが、フードや自分自身の影の影響がでるくらいに寄れてしまいます。実際にここまで寄って撮影する機会は少ないかもしれませんが、最短撮影距離の短さが役に立つシーンでは非常に有効性は高い性能です。

ズーム全域で最短撮影距離0.18m。撮影中に焦点距離を変えても最短撮影距離が変化しないので、近接撮影でのメリットは大きい
■撮影機材:SONY α7R c + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/2500 絞りF4 ISO1600 焦点距離24mm
※AF被写体認識「昆虫」
「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」レンズフード未装着の状態
「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」レンズフード装着の状態
ワイド側14mmの状態。少しレンズが繰り出す
USBポートがレンズ本体装備となり「レンズステーション」を別途用意することなく、USBケーブル経由で直接ファームウェアのアップデートが可能
レンズ左側にAF/MF切り替えスイッチとホールドボタン

フィルター径77mmで様々な円形フィルターが使用可能という点は先にも紹介しましたが、「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」は焦点距離14mmの超広角レンズでありながら、筆者が所有している角形のフィルターシステムも問題なく使用できました。どのメーカーの角形システムに対応しているか、現時点ではフィルターメーカーも検証できていないと思うので、ここではご参考程度という形にはなりますが少しご紹介します。

今回、筆者所有の角形フィルターシステムでケラレが発生しなかったものは、「Cokin」のフィルターホルダーシステム「NXシリーズ」です。「NXシリーズ」は超広角レンズで角型フィルターを使いたいユーザー向けに、ホルダーの超薄型設計及び専用フィルターフレームの採用で広い画角を確保しています。メーカーサイトでは各社の16-35mm超広角レンズでもケラレない事を謳っていて「LK SAMYANG AF 14-24mm f-2.8 FE」で使用してもケラレが発生しませんでした。

LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FEに、コッキン KTI16NXS NX ディスカバリーキット Lを装着

実際に「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」に角形フィルターシステム「コッキン KTI16NXS NX ディスカバリーキット L」を使用して撮影したものが下の写真になります。肉眼で見えた状態では、少し雲が多く白っぽい空になっていたので、コッキンの角形ソフトGND8フィルターを使用して空の表情をよりはっきりと出るように露出を調整してみました。

■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/200 絞りF16 ISO200 焦点距離14mm
※コッキン KTI16NXS NX ディスカバリーキット L(ソフトGND8フィルター使用)

角形フィルターシステムが使用できると、撮影の幅が大きく広がります。実際に使っていて普段使用している16-35mmのレンズと同じような感覚で、焦点距離14mmでもフィルターシステムが使用できるのは、非常にメリットを感じました。

今回使用したコッキンの角形フィルターシステムNXシリーズは、問題なく使用できましたが同シリーズ以外のものや、他メーカーの角形フィルターシステムに関しては、今後の各メーカーからのアナウンスをご確認ください。

LK SAMYANG AF 14-24mm f-2.8 FE でストリートスナップ撮影

■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/800 絞りF16 ISO800 焦点距離24mm

最初に「LK SAMYANG AF 14-24mm f-2.8 FE」を持ち出し、都市風景や建築物を中心としたストリートスナップ撮影をしてみました。レンズ重量が「445g」とこのクラスのレンズとしては軽いので一日中首から下げて持ち歩いても苦にならず、スムーズに撮影する事ができました。また画角に関しては、筆者が普段よく使用する16-35mmのレンズの焦点距離16mmと数字上の差はわずか2mmですが、超広角では1mmが非常に大きな差をもたらすので14mmの焦点距離は、建築物撮影において大きなメリットを感じました。

■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/10 絞りF8 ISO800 焦点距離14mm
■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/50 絞りF16 ISO200 焦点距離14mm
■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/400 絞りF11 ISO200 焦点距離14mm
※ケンコーCPLフィルター「ZX C-PL N」
■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/5 絞りF2.8 ISO200 焦点距離14mm
■撮影機材:SONY α1 + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/50 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離14mm
※ケンコー「ブラックミスト No.05 N」フィルター使用
■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/640 絞りF2.8 ISO100 焦点距離24mm
■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/13 絞りF8 ISO800 焦点距離14mm

カメラ側の歪曲補正もよく効いていて、建物を撮影していても気持ちよい直線描写をします。絞り開放での周辺の解像感は少々落ちますが、少し絞り込めば周辺までシャープで気持ちのよい描写をしてくれます。

気になった点で言えば、上の写真の様な画角内に強い点光源があった場合に、撮影する角度によってはゴーストや色収差が発生する場合が何度かありました。超広角レンズでは広い画角ゆえにこういった強い光源が画角内に入ってくることも多くなるので、少し注意が必要なポイントになるかもしれません。

LK SAMYANG AF 14-24mm f-2.8 FE で風景撮影

■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度1/250 絞りF16 ISO200 焦点距離14mm
※ケンコーCPLフィルター「ZX C-PL N」使用

続いて撮影フィールドを変えて自然風景の撮影をしてみました。こちらの撮影では先に紹介したフィルターを積極的に使用しています。普段から使用しているフィルター類がそのまま使用できる「LK SAMYANG AF 14-24mm f-2.8 FE」は、フィルターを屈指して撮影しているユーザーにとっては、多くの恩恵を与えてくれるレンズです。シチュエーションによって使用できるフィルターの選択肢が広がり、撮影者イメージに合わせた撮影が可能になります。

例えば下の様なシーンでは、水面の描写に関してはPLフィルターで水面反射を強める方に調整して青空をより反射させ、水面と空の明暗差を調整するためにハーフNDフィルターを使用し空の明るさと水面に反射した空の明るさをできる限り合わせ、高濃度NDフィルター1000を使用して水面に落ちた花びらに動きをもたらしたり、画角内に入り込む人などが長秒露光内に動くことによって存在を薄くすることができました。これを14mmの焦点距離でできることにびっくりしました。

■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度 30秒 絞りF16 ISO100 焦点距離14mm
※CPLフィルター + ソフトGND8フィルター + ND1000フィルター使用
■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度 1/30秒 絞りF11 ISO800 焦点距離14mm
■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度 1/400秒 絞りF13 ISO200 焦点距離14mm
■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度 1/320秒 絞りF16 ISO200 焦点距離14mm
※コッキン KTI16NXS NX ディスカバリーキット L(ソフトGND8フィルター使用)
■撮影機材:SONY α7R V + LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE  
■撮影環境:シャッター速度 10秒 絞りF10 ISO100 焦点距離14mm
※ケンコーNDフィルター「PRO ND1000 N」使用

「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」をフィールドに持ち込んで撮影してみて感じたことは、14mmの超広角の焦点距離でありながら、フィルター類が簡単に使えることによる表現の自由度が大きいという点です。普段からよく使用しているCPLフィルターやNDフィルターなどがそのまま使用できる点は、追加のアクセサリー投資費用もかからずコストパフォーマンスも高いと言えます。

まとめ

「LK SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」を使用して感じたことは、焦点距離16-35mmのレンズと同様の感覚でアクセサリーなども使用でき、それでいて軽く扱いやすくコストパフォーマンスが非常に高いレンズということです。「Schneider-Kreuznach x LK SAMYANG」のダブルブランドの第1弾となるレンズですが、CP+2025 の会場ではすでに第2弾のレンズも開発中とされていたので、今後も「Schneider-Kreuznach x LK SAMYANG」のレンズに注目したいところです。

 

 

■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。

・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師

 

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