第10回フィルムカメラを始めよう!二眼レフのベストセラーRICOHFLEXシリーズ:RICOHFLEX NewDia編
はじめに
こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はフィルムカメラを始めよう!シリーズ第10回として、以前レビューしたヤシカフレックスから引き続き、おすすめの中判フィルムカメラを紹介していきます。今回は最も売れた二眼レフとも言われるリコーフレックスシリーズから、完成形とも言えるRICOHFLEX NewDia(リコーフレックス ニューダイヤ)の魅力を紐解いていきたいと思います。
リコーフレックス大ヒットの歴史

二眼レフについてはヤシカフレックスの記事に詳細を記載しておりますが、ここでは簡単に概要だけ触れていきたいと思います。二眼レフはその名の通り、カメラ前面にレンズが2つ付いている主に箱型のカメラを指します。レンズは上下に並んでおり、構図を決めるビューレンズ(上)と撮影を行うテイクレンズ(下)に分かれています。
「レフ(reflex)」と名前に入っているとおり、ビューレンズを通った光がミラーに反射しファインダーからそれを覗くことで、カメラを通して世界を見ることができます。そして構図を決めた後、シャッターを切ることでテイクレンズを通った光がフィルムに当たり、撮影が行われるというわけです。
一眼レフはビューレンズとテイクレンズの役割を1つのレンズが担うことにより成り立っていますが、二眼レフはこのようにそれぞれの役割を持ってレンズが配置されています。
二眼レフの元祖とも言えるローライフレックスは1928年に誕生したと言われており、リコーフレックスが誕生したのはそれよりも約10年以上あとの1941年。当時二眼レフの定番となっていたローライフレックスの普及版であるローライコードのコピーとして発売されましたが、このリコーフレックスはより使い易く独自の進化を遂げていくことになります。
リコーフレックスIIIBは当時のカメラ平均価格の1/3程度の値段でリリースされ、爆発的なヒットを記録します。そのまま後継機が作られリコーフレックスVI~VIIの時代には品不足でプレミアがつく事態となり、絶頂期を迎えます。そんな中リコーフレックス ニューダイヤは二眼レフのスタンダートとも言える、Bay1バヨネットを初搭載。スクリーンにフレネルレンズを内蔵したことで明るくピントを掴みやすくするなど、既存のリコーフレックスをブラッシュアップした新標準機として世に送り出されたのでした。
リコーフレックス上位モデル:リコーフレックス ニューダイヤの誕生

1956年発売のニューダイヤは、スタートマーク合わせのフィルム装填と自動巻き止め機構、カウンター自動リセット機構、セルフタイマー等、当時の二眼レフが持つ基本スペック同等以上の機能を持つ機種です。
1957年には最上位モデル(名前はニューダイヤのまま)のSEIKOSHAラピッドシャッター付となり、レンズも3群3枚のRICONARから、オールドレンズファンにはなじみの深い3群4枚のRIKENONに進化。ニューダイヤシリーズは1959年のリコマチック225が発売されるまで、フラッグシップとして君臨したのでした。

柔らかくも発色豊かなRICONARレンズ。RIKENONはややシャープに改良されています。
ヤシカフレックス等とスペックは同等ですが、特にピントを合わせはニューダイヤオリジナルのシーソー方式を採用しており、カメラを抱えながらピント合わせができる優れもの。
相当台数生産されたとあって、今でも中古市場にはそれなりの数が存在し、ヤシカフレックスやミノルタオートコードよりも性能同じくして1ランク安い部類なのがおすすめできる理由のひとつでもあります。
レンズの周辺機構も二眼レフアクセサリーを共通使用可とするBay1バヨネットを採用、これによりレンズフードや最短撮影距離を短くする接写レンズも使用することが可能です。セミオートマット方式を採用しており、フィルムを巻き上げると1枚ずつセットされる仕組みを持っています。ただし、撮影した後も再度シャッターが切れるため、すぐに巻き上げないと、意図しない多重露光の発生や撮影せずにフィルムを送ってしまうなどのミスが起こりやすいですので注意して使いましょう。
基本的なスペックは以下を確認してください。
理研光学工業(現:RICOH) / RICOHFLEX New Dia
| 形式 | 6×6cm判レンズシャッター式二眼レフカメラ |
| 発売年 | 1956年 |
| 使用フィルム | 120ロールフィルム16枚撮り |
| レンズマウント | レンズ固定式 |
| 使用レンズ | CITIZENモデル:RICONAR 80mm F3.5 SEIKOSHAモデル:RIKENON 80mm F3.5 (35mm判換算:44mm相当) |
| 絞り | F3.5~F22 |
| 最短撮影距離 | 1.0m |
| ファインダー | フレネルレンズ入りマット(ルーペ付き) |
| シャッター | CITIZENモデル:1秒~1/400秒、バルブ SEIKOSHAモデル:1秒~1/500秒、バルブ |
| 巻き上げ方式 | セミオートマット(スタートマーク合わせ自動巻き止め) |
| 多重露光 | 可能 |
| レンズバヨネット | Bay1バヨネット |
| セルフタイマー | あり(約10秒) |
| 質量(重さ) | 約1005g |
RICONAR/RIKENONが誇る描写力

ニューダイヤにはCITIZEN(シチズン)シャッターモデルと、SEIKOSHA(セイコーシャ)シャッターモデルがあり、前者は1956年、後者は1957年の発売です。レンズも異なっており、前者がRICONARを採用、後者がRIKENONを採用しています。SEIKOSHAラピッドシャッター&RIKENONレンズモデルの方がより高級機の扱いですので、見かけたらそちらを購入するのが良いでしょう。
前述の通りRICONARは3群3枚、RIKENONは3群4枚とレンズ構成に差があるものの、描写はほぼ同等に感じられます。作例の写真はRICONARで撮影したものとなります。特に赤や緑の発色が豊かで、やや彩度の浅いヤシカフレックスと比べると比較的現代的な描写が特徴です。開放での最短撮影距離の描写はヤシカフレックスと同様、非点収差によるぐるぐるボケが見られますが、中判カメラは絞って使うのが基本となりますので開放撮影時は背景に気を付ければ問題ないと考えられます。わざとそのような描写を狙ってみるのも面白いですね。
最高性能はF8~11程度となり、四隅までシャープに写したい場合はかなり絞る必要がありますので、フィルムの選択はISO200~400が適していると考えられます。
それではリコーフレックスの描写力をご覧いただきましょう。豊かな発色と陰影の表現は多くの銘玉をリリースしたRICOHならではと感じることができます。

F8程度で撮影。水平垂直を取るのが二眼レフでは一番難しい部分です。

F3.5絞り開放での1枚。背景にぐるぐるボケが見られます。

F3.5絞り開放最短撮影距離での撮影。最短撮影距離は1mですが、この程度まで寄って撮影することが可能です。

F5.6程度で撮影。RICONARはポートレートにも十分な性能を発揮するレンズです。

古い時代のレンズですので、ハイライトはフレアを纏い飽和しがちな特徴があります。

赤と緑の発色は定評があり、色鮮やかに写し出してくれます。
リコーフレックスおすすめの機種

リコーフレックスは最も売れた二眼レフのひとつであり、市場には数多く存在します。最もよく見かけるタイプがリコーフレックスVI及びVIIで、価格も1万程度で販売されていることが多く、購入しやすいのがメリットです。
ですが、今回紹介しているニューダイヤよりもスペックは劣り、ファインダーが暗く、SSも最高1/100と日常使いしにくいのが難点。ニューダイヤの前のモデルにニューが付かないリコーフレックス ダイヤがありますが、こちらは過渡期のモデルとなり性能的にもあと一歩。
2~3万円程度でニューダイヤが購入できるため、筆者おすすめはニューダイヤとなります。CITIZENシャッターモデルと、SEIKOSHAシャッターモデルで価格差はほぼありませんので、1/500が使えるSEIKOSHAモデルがあればそちらを購入するのが良いでしょう。

カメラのキタムラ:クラシックカメラ話「リコーフレックス」より引用
https://www.kitamura.jp/photo/tanekiyo/2012/ta083.html
余談ですがリコーフレックスの頂点にある機種としてリコマチック225が存在し、こちらはフィルム巻き上げと同時にシャッターをセットするセルフコッキング方式に加え露出計を採用。かなりレアで、中古市場でも販売は稀な機種なため、リコーフレックスが好きでたまらない人が最終ゴールとして目指す機種になるでしょう。なお、リコーフレックスの最終モデルはリコーオート66ですが、輸出モデルのため更にレアな機種となります。
ヤシカフレックスやミノルタオートコードなど競合となる二眼レフは数多く存在しますが、性能と価格のバランスで特に推せる本機。ヤシカ、ミノルタ、ローライには知名度で一歩及びませんが、非常にバランスの良い名機ですので、気になった方はぜひお手に取ってみてください。
まとめ

以前紹介したヤシカフレックスとはまた異なる二眼レフの魅力を知っていただけたのではないでしょうか。筆者が初めて手にしたのはヤシカフレックスですが、真四角フォーマットで撮れる写真の楽しさを今でも覚えています。憧れの機種としてローライシリーズがありますが、今回紹介したリコーフレックス ニューダイヤは二眼レフの使い心地を知るためには良い機種だと考えています。ぜひお店で手に取ってファインダーを覗いてみてください!真四角の世界はとても新鮮に見えるはずです!
筆者も出展する「帰ってきた国産二眼レフ写真展」が2025年9月24日(水)まで都内で開催中ですので、ぜひ足を運んでみてください。リコーフレックスをはじめとする様々な中判カメラの写真を知ることができるチャンスです。
また、2025年10月7日(火)からは同じく都内で筆者が主催する「オールフォーマットフィルム写真展」という展示が開催されます。ハーフから大判まで様々なフィルムフォーマットを使った展示で、これからフィルムカメラを始めたいという方必見の展示となる予定です!
実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるフィルムワークショップ「フィルムさんぽ」にもご参加いただければ嬉しいです!ではまた、次の記事でお会いしましょう!
写真展情報
■帰ってきた国産二眼レフ写真展
開催日時:
2025年9月12日(金)〜9月24日(水) 10時~20時(木曜定休)
場所:
フォトカノン戸越銀座店
東京都品川区戸越2丁目1−3
公式サイト
https://amemiya-hair.tokyo/kokusan-nigan2025/
■オールフォーマットフィルム写真展
開催日時:
2025年10月7日(火)~10月13日(月祝) 13~21時(最終日13~19時)
※10月11日(土)、12日(日)はカメラ用品のフリーマーケットを開催
場所:
写真企画室ホトリ
東京都台東区浅草橋5-2-10
公式サイト
https://fotori.net/?p=35898
■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。



















