初心者におすすめのカメラ 『ハーフサイズフィルムカメラ PENTAX 17』|写真家 こばやしかをる
はじめに
2024年7月に発売されたハーフサイズフィルムカメラPENTAX 17は、令和の時代に新しく登場したことで、古いフィルムカメラの良いところと、デジタル時代の使いやすさが融合した魅力的な一台になっています。
「これからフィルムカメラを始めたい!けど不安…」そんな初心者の方におすすめできるカメラとして、軽い、小さい、簡単!な、PENTAX 17の扱いやすさや撮影のコツなどをお伝えします。
PENTAX 17 初心者におすすめのポイント
PENTAXブランド初のハーフサイズカメラPENTAX 17は、「クラシックなフィルムカメラの楽しさ」と「現代の技術による高い信頼性・利便性・高画質」を融合させた、現代にフィットした新しいハーフサイズカメラです。特に「スマホ世代にも馴染みやすい縦位置デフォルト」と「新品で安心して使える信頼性」は、初心者にとって最大のメリットになっています。

ハーフサイズフォーマットで枚数が2倍撮れる
PENTAX 17は、35ミリ判フィルム1コマ(36x24mm)の約半分(17x24mm)を使用するハーフサイズフォーマットを採用しているので、1本のフィルムで通常の約2倍(36枚撮りなら約72枚)の写真を撮ることができます。フィルム代や現像代のコストを抑えられ、たくさんシャッターを切って練習したい初心者にはぴったりです。
カメラをそのまま構えると、自動的に縦位置(構図)になります。縦構図の撮影は、スマホカメラで慣れ親しんだ方も多く、違和感なく同じ感覚で構図を決められる点もメリットではないでしょうか。
そして、ファインダーをのぞいて撮影する。これこそがカメラで撮影する醍醐味。

操作がシンプルで分かりやすい
撮影モードはわかりやすく、基本撮影は「AUTO」でOK。自分自身で意図した撮影をしたい時には「P」プログラムモードで撮影します。モードダイヤルの白枠内はフラッシュなし、黄色枠内はフラッシュを使った撮影となっています。
撮影時の露出(明るさ)は基本的にカメラが自動で調整してくれるため、主にカラーネガフィルムの場合は露出の失敗が少なく気軽に撮影できますので、神経質にならなくて大丈夫です。

フィルム装填が心配。という方もご安心を。「イージーローディング方式」が採用されており、初めての方でも失敗せずに簡単にフィルムをセットできます。

フィルムカメラらしい操作感
フィルムの巻き上げや巻き戻しが手動(マニュアル)なので、シャッターを切るたびに巻き上げレバーを操作する、この〝ひと手間〟はデジタルカメラやスマホカメラにはない感覚で、フィルムカメラで撮影することの楽しさを教えてくれます。

感覚的なピント合わせ「ゾーンフォーカス」
フォーカスリングにマクロ(最短撮影距離25cm)から遠距離までのアイコンが表示されており、撮影したい被写体までの距離に応じ、アイコンを自身でセレクトする。というピント合わせの「ゾーンフォーカス(目測)」方式です。
オートフォーカス(AF)ではないため、被写体までの距離を自分で設定する(目安を覚える)必要があり、少し慣れが必要な部分もありますが、撮影距離に慣れてきたら、ゾーンフォーカスを活用した撮影が楽しくなるはず。


最短撮影距離25cmの接写(マクロ)性能も活用して、テーブルフォトや花など、被写体にグッと寄った迫力のある写真を撮ることもできますし、「BOKEH(絞り開放優先)」モードを使えば背景をぼかした撮影が可能です。
ちなみに、「AUTO」ではゾーンフォーカスが無効になり、パンフォーカスで全景にピントが合うようになりますし、暗い環境下では自動でフラッシュも発光します。

右)「AUTO」モードは、全体的にピントを合わせてクリアに写したいときに
撮影時の注意点として、スマートフォンやデジタルカメラのように、PENTAX 17には手ぶれ補正はありませんので、カメラをしっかりと構えて丁寧にシャッターを切りましょう。
最新技術によるレンズの写りの良さ
PENTAXのデジタル一眼レフで培われたHDコーティング技術がレンズに採用されていることから、ゴーストやフレアが抑えられ、逆光時の描写も非常に優れていて、昔のフィルムカメラにはないクリアでシャープな描写が得られます。初めて撮影した写真の仕上がりを見て驚いたほどです。

レンズ一体型のコンパクトカメラで、ズーム機能のない単焦点レンズのため、レンズをあれこれと取り揃えなくてもすぐに始められるのもいいところ。

■フィルム:Kodak Gold 200
内蔵ストロボの利便性
昔のハーフサイズカメラはストロボがないものがほとんどでしたが、PENTAX 17はストロボを内蔵しています。これにより、暗い室内や夜間の撮影、日中シンクロ(晴れた日にあえてフラッシュを焚いて撮る)など、撮影シーンが格段に広がります。
至近距離で撮影するよりも、2mくらい離れた位置から撮影するとより効果的。ただし、屋内外問わず、フラッシュ撮影は撮影が禁止されている場所もあるので、状況判断をしながら撮影を行いましょう。

■左右とも Pモード:至近距離
■フィルム:Kodak ColorPlus 200

■フラッシュON Pモード:中距離
■フィルム:Kodak ColorPlus 200
撮影環境と光の方向を意識して撮影にトライ
フィルムカメラ(主にカラーネガフィルム)の撮影のコツは、まず晴天の屋外で撮影すること。そして、順光で撮影します。この2点をおさえれば失敗写真を回避できます。
もちろん、カメラ側が適切な測光を行ってくれるので、雨の日も、日陰でも、逆光でも、室内でも撮影は可能ですが、〝イイ写り〟を期待したいとき、明るくクリアに写したいなら晴れた日、日差しのまぶしい季節を意識して撮影を心がけてみてください。

■Pモード:遠距離
■フィルム:Kodak Gold 200

■Pモード:中距離
■フィルム:Kodak ColorPlus 200

■Pモード:遠距離
■フィルム:Kodak Gold 200
偶然性が面白い「2in1」の組み写真
個人的には「2コマで1つ」に写る、組み写真のような仕上がりを楽しむのもハーフサイズフィルムカメラの醍醐味だと感じています。
わざわざ狙って初めから2コマで1つの写真になるように撮影することはせず、偶然一緒に写った2枚が、面白さやテーマ性、ストーリーを生み出すというわけです。デジタルカメラでは意図的に組み合わせてしまうこともできますが、思いがけない偶然性はひときわ楽しいですよ。

■左右とも AUTOモード
■フィルム:Kodak Gold 200

■左)AUTOモード/右)Pモード:至近距離
■フィルム:Kodak ColorPlus 200

左)AUTOモード/右)Pモード:テーブルフォト
■フィルム:Kodak Gold 200
旅のお供に連れて行こう
PENTAX 17は、290gととても軽いので、旅に持っていくのに最適。私自身も遠出をするときには連れて歩く確率が高いです。メカメカしい姿のカメラとは違って、カメラを構えていても人を遮って撮影するようなことはほとんどなく、首から下げていても重くてつらい。。ということもないので、とにかく肩ひじ張らず、普段通りの撮影ができるのも気に入っている理由の一つ。
大阪を訪れた日、電車の出発時間までに余裕があったので心斎橋~なんば界隈をぶらり。雨のぱらつく日でしたが、そんなしめやかな雰囲気もしっかりと写し込んでいます。

■Pモード:中距離
■フィルム:Kodak Gold 200

■Pモード:遠距離
■フィルム:Kodak Gold 200

■Pモード:至近距離
■フィルム:Kodak Gold 200

■フィルム:Kodak Gold 200
こちらは、2in1でハマってくれた写真。見た目にもすぐ大阪とわかる感じ、街のパワーがすごいなと思いました。

■左右とも Pモード:中距離
■フィルム:Kodak Gold 200

■左右とも Pモード:近距離
■フィルム:Kodak Gold 200
撮影後のお楽しみ。現像・データ化・プリント
フィルム1本撮影が終わったら、フィルムを手動で巻き上げます。巻き上げ方法は、カメラの底面にある黒い小さなボタンを押して、クランプレバーをくるくると回し、フッと手元が軽くなったら巻き上げ完了。


現像、データ化は写真店にお任せするプロセスですが、PENTAX 17で撮影したフィルムを現像に出す際には、「ハーフサイズフィルムカメラで撮影している」旨を受付のスタッフさんに伝えることを忘れずに。
ハーフサイズフィルムカメラで撮影された写真のデータ化やプリントは、「1コマずつ」または「2コマで1つ(組み写真)」を1枚の画像として扱うか否かによって料金が変わるので、この辺りは店頭のスタッフと相談して決めましょう。
現像サービスもいろいろとあります。
「現像のみ」=シート状のネガフィルムにするだけは比較的安価ですが、ネガのままでは撮影した像はカラー写真として見ることができません。
「現像+CD-Rに焼く」「現像+データ転送サービス」は、ネガフィルムをスキャンしてデータ化してくれるサービスで、スマートフォン、PC、タブレットなどのデジタルデバイスで閲覧される方におすすめです。

そして、全部プリントしなくても、お気に入り写真を数枚プリントしておくのがおすすめ。写真って手に取ると一層愛着が湧きますし、ハーフサイズフィルムカメラのかわいさを実感できますよ。
おわりに
操作については、ざっくりとした説明でちょっと心配になるくらいですが、難しく考えずに撮影できて、失敗が少ない。そんなカメラですPENTAX 17。
私自身も1年以上愛用してきましたが、気ままに自分の好きなものに出会った瞬間パチッと1枚を撮る。そういう気軽な感覚を忘れたくないなぁ。と、思わせてくれる上に、写りもバッチリ。少しピントが外れても、それも味と許せてしまうし、また挑戦したくなる。
いろんな要素がフィルムカメラ初心者さんにぴったり。
初めてのフィルムカメラとしてぜひ使ってもらいたい1台です。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
日本作例写真家協会会員・PhotoPlus+主宰














