スナップレンズの真骨頂|ペンタックス HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited レビュー

スナップレンズの真骨頂|ペンタックス HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited レビュー

はじめに

HDコーティングと円形絞りが採用されたHD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited。発売より年数が経過しているものの、スナップレンズとして圧倒的な人気を誇っています。

私自身はこれまで、PENTAX KPとsmc PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limitedの組み合わせで愛用してきましたが、ボディもPENTAX K-3 Mark IIIへと変わり、新たにHD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limitedを迎え入れましたので、ファーストインプレッションとしてレンズレビューをお届けします。

レンズデザインが美しいLimitedレンズ「DA」シリーズ

APS-Cフォーマット専用設計となるLimitedレンズ「DA」シリーズは、すべてがコンパクトでデザイン性に優れ、鏡筒とキャップ、フードはアルミニウムの削り出しを採用したソリッドで質感の良い仕上り。高品位ながらも手ごろな価格も大きな魅力となっています。

小型レンズは軽量ばかりを求めて安っぽく見えてしまうものが多いですが、Limitedレンズシリーズにはそれがなく、手に触れるたびLimitedレンズならではの存在感を感じられます。

また、Limitedレンズシリーズには、〝3つのポリシー〟が掲げられ、
「本質」撮る行為、そのものを楽しむ
「感性」数値では測れない、空気感を写しだす
「不変」所有し続けることに悦びを 

これらを目指した官能表現重視のレンズと位置付けています。
このポリシーも、私の求める表現にフィットし、PENTAXボディで撮影を楽しむ意義を感じており、特に気に入っているレンズの1本です。

Limitedシリーズにレンズにはブラックとシルバー2色あり、私はブラックボディにシルバーレンズの組み合わせが好み

HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited

優れた携帯性と、上質で個性的な外観デザインのHD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limitedは、厚さ25mmのパンケーキ型小型軽量レンズ。フード付でも32mmという薄さであり、金属でありながら質量わずか134gを実現していることから、携行性抜群で旅や散歩に相応しいレンズになっています。

左)smcコーティングは緑のリング、右)HDコーティングの赤のリング 艶消し黒の質感も人気が高い
smc版の発売は2006年 HD版は2013年の発売

レンズフードも独特で、内側に四角い切り欠きがあるデザインは、レンズの表面を指で触ったりする事も無く、保護してくれるのでキャップを外して持ち歩いても安心な設計。

フードの内側に43mmフィルターを装着すればレンズ全長は変わらず、また、レンズ前面に49mmフィルターを装着することもできます。

キャップも、フードもアルミニウムの削り出し。デザインが踏襲されていて高品位

スナップ撮影に相応しい画角とPENTAX K-3 Mark IIIで高まる描写力

フィルムカメラの頃から私の常用レンズになってくれる35ミリ換算32mmという画角は、どんなカメラでもまず一番先に入手する焦点距離。室内でも屋外でも使いやすい32mmという画角は、広角28mmだとちょっと広すぎると感じる人にとって、広すぎず、狭すぎず、程よい広角レンズになってくれます。

街を歩きながら気になった場所をパシャパシャと、感じるままにどんどんシャッターを切ることのできる、まさにスナップのためのレンズ。視線の先を自然な画角でサクッと軽快に切り取ることができます。

■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited(焦点距離32mm)
■撮影環境:SS1/1000秒 絞りF4.5 ISO100 -0.3V WB太陽光
■カスタムイメージ:風景
ボケに深みと表情があるのが広角レンズの良さ
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited(焦点距離32mm)
■撮影環境:SS1/50秒 絞りF3.2 ISO200 ±0EV WB マルチパターンオート
■カスタムイメージ:人物
サクッと片手でタイミングを逃さず撮影
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited(焦点距離32mm)
■撮影環境:SS1/1000秒 絞りF6.3 ISO200 -1.7V WB 太陽光
■カスタムイメージ:雅

少し絞り込むだけでパンフォーカスが楽しめることに加え、カスタムイメージが豊富なPENTAX K-3 Mark IIIとの相性の良さは抜群で、高コントラストでキレの良い描写、色のりの良いヌケ感のあるクリアな画作りはフルサイズ機をしのぐほどの魅力を感じます。

緻密な解像力と広角レンズらしい表現

PENTAX K-3 Mark IIIの約2573万画素のイメージセンサーと画像処理エンジンPRIME Vにより、解像性能を最大限に引き出すことができ、被写体の質感やディテールを再現する力強さが魅力で、画面全域にシャープさが行き届いている緻密さと、絞り込み過ぎずとも細部までしっかり写し込む描写は見事で、今までのPENTAX KPとsmc PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limitedの組み合わせでは感じられなかった解像力の高さは圧巻でした。

■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited(焦点距離32mm)
■撮影環境:SS1/160秒 絞りF8 ISO400 -0.7EV WB AUTO
■カスタムイメージ:風景
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited(焦点距離32mm)
■撮影環境:SS1/50秒 絞りF5 ISO100 -0.7V WB 太陽光
■カスタムイメージ:銀残し(GN)
高感度耐性の高いPENTAX K-3MarkIIIとの組み合わせでナイトスナップも楽しい
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited(焦点距離32mm)
■撮影環境:SS1/50秒 絞りF5 ISO1600 ±0EV WB太陽光
■カスタムイメージ:銀残し(Y)

歪曲収差は単焦点レンズとしては少々目立ちますが、ボディ側のレンズ補正機能「ディストーション補正」をオンにすることで回避することができます。それでもほんのり歪曲収差が残るところに広角レンズらしさを感じますが、Limitedレンズの官能表現として受け入れるべきところでしょう。ただ、一段絞り込めば気にならない程度です。

正対して撮影していると、ほとんど感じることのないパースペクティブは、レンズを少し上下左右の方向に振りフレーミングすることで急にパースのかかった描写となり、広角レンズらしさが表現できる面白さ。扱いやすい焦点距離ながら、広角レンズらしい奥行感がグッと引き出す撮影もこのレンズの楽しみ方です。

■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited(焦点距離32mm)
■撮影環境:SS1/20秒 絞りF6.3 ISO3200 -0.3V WB 昼白色蛍光灯
■カスタムイメージ:銀残し
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited(焦点距離32mm)
■撮影環境:SS1/50秒 絞りF6.3 ISO3200 -1.0EV WB太陽光
■カスタムイメージ:風景

近接撮影で発揮される美しいボケ

最短撮影距離は20cm。フレアーやゴーストの発生をより低減し、クリアでコントラストの高い描写を実現したHDコーティングは、逆光時に特に威力を発揮します。ピントが合っている部分は驚くほどシャープで、蜜蜂がまとった花粉の一つ一つまで見事に描写さており、逆光耐性が高くなったことによるハイライト側のトーンも滑らか。透明感の高さと、アクセントとなる円形絞りのボケの美しさは印象的で、smcコーティングでは感じられなかった表現だと実感した一枚です。

絞りは7枚の奇数羽で、F3.2~F4で円形絞りとなる。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited(焦点距離32mm)
■撮影環境:SS1/1000秒 絞りF4 ISO200 +0.7EV WB太陽光
■カスタムイメージ:雅

F3.2の開放F値が暗いと言われることもありますが、広角レンズの作法のひとつ“一歩踏み込んで撮る”を考慮した光学設計は、「寄り」でボケを活かし、背景を取り込む構図での撮影が欠かせません。

パンフォーカス効果と解像性能の高さもあいまって、日常を切りとるスナップ撮影に最適なレンズであることを実証してくれました。

おわりに

今まで使っていたsmc PENTAX-DA 21mm F3.2 AL Limitedの緩やかなボケ、柔らかいトーンも魅力的でしたが、HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limitedは、PENTAX K-3 Mark IIIの画作りの良さを引き出す力を持ったレンズであることをひしひしと感じた今回の撮影。

描写力の高さはもとより、撮ることが楽しく、何はなくとも日頃からシャッターを切りたくなる。そんな気持ちを思い起こしました。人気の高さも納得のスナップレンズ。改めて好きになってしまったことは言うまでもありません。

 

■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。

 

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