安定した画質はそのままでプロダクトデザインを刷新したシンプル&コンパクトな単焦点レンズ M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II

はじめに
OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIは、マイクロフォーサーズ規格に準拠した単焦点レンズだ。35mm判換算にして34mm相当、開放絞り値はF1.8の明るいレンズである。このレンズはこれまでラインナップされていたM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8の改良モデルだ。基本的なレンズ設計はそのままで、外装デザインの刷新と防塵防滴構造への仕様変更がなされている。そこでここでは、旧モデルレンズとの外観比較に加え新モデルレンズの特徴について検証することにしよう。
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIの主なスペック
■マイクロフォーサーズ規格マウント
■焦点距離:17mm (35mm判換算34mm相当)
■レンズ構成:6群9枚(DSAレンズ1枚、非球面レンズ2枚、HRレンズ1枚含む)
■最短撮影距離:0.25m
■最大撮影倍率:0.08倍(35mm判換算 0.16倍相当)
■フォーカシング機構:Movie and Still Compatible(MSC)機構
■絞り羽枚数:7枚(円形絞り)
■開放絞り値:F1.8
■最小絞り値:F22
■大きさ:最大径57.6mm 全長37.6mm フィルターサイズ46mm
■質量:112g (レンズキャップ、レンズリアキャップを除く)
■防塵防滴仕様:保護等級1級 (IPX1) OM SYSTEM / OLYMPUSの防塵防滴仕様カメラとの組み合わせに限る
レンズ外観

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIを手にする。最大径57.6mm 全長37.6mmと掌にすっぽりと収まるコンパクトなサイズ。質量も112gととても軽量。なお旧モデルのM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8のサイズは最大径57.5mm x 全長35.5mm、質量は120gと僅かに異なる。

OM SYSTEM OM-1Mark IIに装着したM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II。OM SYSTEMの現在ラインナップされているカメラのなかで最も大きいOM-1 Mark IIとの組み合わせではグリップに隠れてしまうほどのミニマムなサイズ感だ。

スタンダードクラスのレンズながら堅牢な金属マウントを採用。頻繁にレンズ交換を行なっても摩耗による不具合の心配は少ない。周辺部にはマウント部に水滴や埃の侵入を防ぐラバー製リングが埋め込まれている。

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIと旧モデルのM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8をOM-1 Mark IIに装着し外観の違いを見る。サイズもほぼ同じであることから、ぱっと見では似通った印象だが、細部のデザインおよびリングのレイアウトが変更されていることがわかる。

旧モデルからの大きな変更点は新モデルではフォーカスリングの幅が広くなったことと、スナップショットフォーカス機構が省かれたことだ。それに伴いフォーカスリングのスライド機構と距離指標もなくなった。これらの構造変更もあり結果的に旧モデルからはおよそ8gの軽量化がなされている。

新モデルにはレンズフード(LH-49B)が付属する。レンズ先端の切り欠きに合わせ捩じ込み装着する。なお旧モデルではレンズフードは別売となっており、代わりにレンズ先端部をカバーするデコレーションリングが付属していた。
実写による解像力の検証
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIをOM SYSTEM OM-1 Mark IIに装着して、絞りを開放F1.8からF22まで変えながら撮影した画像を、等倍に拡大して中央部および周辺部の画像の解像具合を確認する。

まず画像中央部の画像の解像感を比較。開放絞りF1.8ではほんの僅かに色収差が見られるが実使用に影響する程ではない。F2.0~F5.6の間で解像力がもっとも高まり、F11を超えると小絞りの影響が出てくるようで解像感が徐々に低下し、F22では解像感が大きく下がる。
次に周辺部を確認する。開放絞りF1.8では色収差が見られるうえ像が少々流れており解像感はあまり高くないが、F4.0からは向上しF8.0までの間で解像力がもっとも高まる。F11を超えると中央部同様に小絞りの影響により解像感が徐々に低下し、F22では影響がさらに大きくなる。
これらの結果から中央部および周辺部ともに開放F1.8~F2.0あたりまでは色収差による滲みが発生するが、開放から絞りを2~3段絞ることで解像力が大きく改善する。反面F11以上に絞ると小絞りの影響が顕著となるので、F4.0~F8.0の間の絞り値で撮影すると良い結果を生むものと考えられる。
ただしこれはPROレンズのような上位モデルの画質を基準としての判定となるため、スタンダードクラスのレンズとしては決して低い画質だとは言えない。むしろ開放絞りから1~2段の絞り値の間の柔らかめな描写を活かした撮影を行うこともできるレンズだとも言えるだろう。
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II実写作例

■撮影環境:F1.8 1/1600秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F5.6 1/250秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F2.0 1/2500秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F4.0 1/160秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F5.6 1/160秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F5.6 1/250秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F4.0 1/100秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F1.8 1/8000秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F8.0 1/13秒 ISO200 絞り優先モード -0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F5.6 1/800秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto

■撮影環境:F5.6 1/800秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto
安定した画質と共にスタイリッシュなデザインも獲得した単焦点レンズ
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIは旧モデルの特性と画質はそのまま引き継ぎつつ、スナップショットフォーカス機構を省いたことで軽量化を実現したスタンダードクラスの単焦点レンズだ。数値にするとわずか8gの軽量化ではあるが、山歩きなどのフィールドワークに携行する際には、少しでも機材が軽くなることは歓迎したい。それでいて強力な防塵防滴性能を獲得できたことは、屋外での撮影を進めるユーザーにとってはとても心強い進化だ。
レンズの画質としてはさすがにPROレンズ同等とまではいかないが、適切な絞り値を選択することでOM SYSTEMカメラが持つ高画質を的確に引き出してくれるレンズであることは疑いない。
何よりシンプルなプロダクトデザインと極めてコンパクトなサイズは、スナップ撮影などにおいては最適なレンズ選択となる。さらに、このレンズと同時に発売されたOM SYSTEM OM-3のようなクラシカルデザインのカメラと組み合わせることで、これ以上ないほど魅力的なスタイルとなる。このM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIは画質はもちろんのこと、そのスタイリングにより「カメラを持ち歩く楽しみ」といった魅力を内包した最新のレンズであるというわけだ。

■写真家:礒村浩一
広告写真撮影を中心に製品・ファッションフォト等幅広く撮影。著名人/女性ポートレート撮影も多数行う。デジタルカメラ黎明期よりカメラ・レンズレビューや撮影テクニックに関する記事をカメラ専門誌に寄稿/カメラ・レンズメーカーへ作品を提供。国境離島をはじめ日本各地を取材し写真&ルポを発表。全国にて撮影セミナーも開催。カメラグランプリ2016,2017外部選考委員・EIZO公認ColorEdge Ambassador・(公社)日本写真家協会正会員