マクロで撮ろうコスモス|クニさんの季節の花レシピ
はじめに
秋を代表する花といえばコスモスではないでしょうか。形も色もさまざまなコスモスは被写体としても魅力的です。
ただ、漠然と撮ってしまうとありがちな写真になってしまい、もうひとつ面白みがありません。
まずは花をしっかり観察して、魅力的な部分や面白いと感じる部分を見つけましょう。
そして、その感じた部分をいかに表現するかをしっかり吟味することで、ひと味違った個性的な作品が作れますよ。
しっかり観察! 花の特徴を掴む!
コスモスの特徴はどこでしょう?
カラフルでひらひらした花びら、シベ、蕾、などなど、見る人によって感じ方は様々です。
もちろん花全体の形も特徴的で魅力があります。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.7)・ISO200・Portrait
逆光に照らされた一輪のコスモス。
コスモスの花びらを光が透過して、透明感のある花びらになりました。
背景にも陽射しが当たっているため、明るく華やかな印象です。
それだけでは物足りないので、主役のコスモスの真後ろに一輪のコスモスを配置しました。
光が当たって明るくなった花が大きくボケて広がって、まるで主役の花を光のオーラで包みこむような表現になりました。

■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+1.7)・ISO400・Portrait
コスモスには様々な色や形をした多くの種類があります。
こちらは白いコスモスですが、花びらのピンクの縁取りがとても可愛らしい種類です。
もっとも魅力的だと感じるこのピンクの縁取り部分を強調するように撮ってみました。
花びらのラインにピントを合わせてクローズアップ。
絞り開放の効果で、ピントを合わせた花びらの縁以外がふわっと大きくボケています。
ところで、花を撮影するときの基本として「ピントはシベに合わせましょう」という話を聞いたことがないでしょうか。
でもこちらの作品、シベが完全にボケています。
「えっ、これっていいの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
はい、もちろんこれでいいんです。
ピントを合わせるのは「見せたいところ」。
しっかり観察して「魅力的だな」「面白いな」「特徴的だな」、そんなふうに感じた部分にピントを合わせましょう。
そうすることで、何に感動して撮影したのかが伝わる一枚になりますよ。
シベにも注目してクローズアップ!
今度はシベに注目してみました。
コスモスのシベ、漠然と見ているだけだと「真ん中に黄色い丸いところがあるなぁ」ぐらいの印象しかないかもしれません。
でもよく観察してみると、面白い形をしていることに気づくと思います。

■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+1.0)・ISO200・Portrait
とんがったロケットのような形をしたシベの中に、ゼンマイのような眼鏡のような形をしたシベを見つけました。
こちらの様子をうかがってちょこんと顔を出したようにも見えますね。
遠目に見ているだけでは、このようなちょっとした形の違いになかなか気づくことができません。
マクロレンズでクローズアップするからこそ見えてくるものがあるのです。
クローズアップ撮影に慣れていないうちは距離感がなかなか掴めないので、どこまで近づいて撮ればいいのか難しく感じるかもしれません。
でも思い切って「寄り過ぎかも?」と思うぐらいグッと寄ってみましょう!
肉眼では見えなかったマクロならではの世界を体験することができますよ。
蕾だって撮ってほしい
被写体として魅力的なのは咲いている花だけに限りません。
咲きかけの初々しい姿も素敵ですし、枯れた姿に哀愁を感じることもあります。
そしてこれから咲こうと一所懸命パワーを溜め込んでいるかのような小さな蕾もまたかわいらしいものです。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.7)・ISO200・Portrait
まるで小さな花の子供がお母さんの後ろからこちらの様子をうかがっているように見えました。
手前の花を大きくボカすことで、主役の蕾だけに視線が集まるようにしています。
花は真横から見ることが多いかもしれませんが、ぜひいろいろなアングルや角度を変えて観察してみてください。
いままでまったく気づかなかった姿を見つけることができますよ。
前ボケを使って主役を活かす

■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+0.3)・ISO200・Portrait
今にも空に向かって飛び出していきそうなシベ。
手前と奥に、二輪並んで咲いているコスモスを重なるように撮っています。
手前の一輪を前ボケにして奥の花のシベ以外の部分を隠し、視線が主役のシベに集まるよう配慮しました。
前ボケがないと、花びらや葉っぱなど主役以外のものが視界に入るため主役の印象が弱まってしまい、伝えたいことが伝わりにくくなります。
また、前ボケを大きく入れることで、ふんわりやわらかな印象になる効果も狙いました。
光の方向を意識する
たくさんのキラキラ輝く光に包まれたコスモス。
光が入ると爽やかでみずみずしい印象になります。
このように輝くイメージを撮るには、逆光方向から撮ることが必須です。
花びらも透過光で透き通った印象になります。

■撮影環境:絞り優先AE・F4.0・ISO200・Portrait
画面にたくさん浮かんでいる丸い光のボケは、コスモスの蕾。
硬い蕾は表面がテカテカしているので、光が当たると白く反射します。
それを背景に入れることで、光を散りばめたようなイメージを撮ることができるのです。
秋は朝夕の光が低く、美しい逆光線が撮りやすい季節ですよ。
雨の日は撮影日和
雨の日には外に出るのもおっくうになりますね。
でも、雨の日だからこそ撮れる写真もあるんです。
真っ先に思いつくのは、雫の中に花を入れた写真ではないでしょうか。みなさんも撮ってみたい一枚ですよね。
雫の中に映し込む花は、コスモスなど「子供が描く花の絵」のようないかにも花らしい形のものが向いています。
そして雫がまん丸のときに、一番綺麗にはっきり映り込みます。

■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+1.0)・ISO200・Portrait
こちらの一枚は、あえて歪んだ雫に花を映し込んでみました。
歪んだ雫の形に合わせて花がびよ~んと伸びて、面白い画になりました。
セオリーを外してみるのも、思いがけない発見があって面白いものです。
雨の日は機材を濡らさないように気を遣わないといけないし、なかなか撮影に集中できないかもしれません。カメラ用レインコートや三脚に傘を取り付けるアンブレラホルダーなど、しっかり準備をして臨むことが大切です。
そんなときに活躍するのがOM SYSTEMの機材。強力な防塵・防滴機能を備えているので、雨の中での撮影も気にせず撮影に集中できます。
ただし、帰宅したあとは機材の水分をしっかり拭き取って乾燥させることが大事です。
「見立て」で表現のバリエーションを広げる
一見すると、二つの蕾と咲きかけの花を撮っただけの写真。
でもよ~く見ると、なんだか他のものに見えてきませんか?

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8・ISO200・Natural
僕には「ギョロっとした目にピンク色のクチバシを持った妖怪」のように見えました。
このように、実際のものとは違うものに置き換えて見ることを「見立て」と言います。
花を花として撮ろうとするのではなく、しっかり観察して妄想を働かせることで、このようにまた違ったものが見えてくることがありますよ。
その時、「私はこう見えたと思ったけど、合ってるかな?他の人にはそう見えないんじゃないかな?」なんて心配になることがあるかもしれません。
でも大丈夫。自分が感じたイメージをどうすれば表現できるか、しっかり吟味して撮影することで伝わる写真になりますよ。
ストーリーをイメージしてみる

■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+0.7)・ISO200・Portrait
仲睦まじく寄り添うような二輪のコスモス。
じっと見つめ合っているのか、ひそひそと内緒話をしているのか。
そしてそんな二人を遠くから見守る周囲の花たち。
いろいろ想像が膨らみますよね。
この時、主役の周囲に他の花や葉っぱなど煩雑なものが入ってしまうと見る人の視線が奪われてしまい、主役の二輪の印象が弱まってしまいます。
邪魔者は前ボケで隠し、背景もシンプルになる場所を選んで、主役の二人だけの世界を作ってあげましょう。
この作品も、目の前の状況をそのまま捉えるなら「花と蕾」でしかありませんが、このように人に見立てることでいろいろなストーリーが感じられる表現になります。
虫との出会いもまた楽し
いろいろな虫たちと出会えるのもマクロ撮影の楽しさのひとつ。
虫を見つけるとついつい慌てて近づいてしまいがちです。
大きな動きをすると虫がびっくりして逃げてしまうので、虫を見つけたらスローモーションで動くようにしましょう。
じ~っと止まって「私はあなたに危害を加えませんよ」とアピールをするのも効果的です(笑)

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.3)・ISO200・Natural
虫を撮るときのポイントは、表情や仕草がよくわかるように撮ること。
蝶やバッタ、トンボなど、よく見るととても個性的で愛嬌のある表情をしています。
ですが漠然と撮ってしまうと、ただ虫を撮っただけの写真になりがちです。
しっかりとよく観察して、活き活きとした表情を捉えるように意識してみてください。
おわりに
コスモスは植物園や公園など、身近な場所でよく見られる花です。
色も形も様々でいろいろなバリエーションの撮り方ができるので、マクロ撮影の練習にはもってこいです。
まずはしっかり花を観察し、特徴的な部分や面白いと感じる部分を見つけましょう。
そして気になる部分が見つかったら、思い切ってクローズアップ!
肉眼では見えないマクロならではの世界をぜひ楽しんでください!
ここに挙げた撮り方はほんの一例です。
いろいろな撮影方法にチャレンジしながらぜひ自分なりの撮り方を見つけてくださいね!
写真展「Nature Flowers 吉住志穂×くにまさひろし」開催のお知らせ
OM SYSTEM PLAZAにて「Nature Flowers 吉住志穂×くにまさひろし~望遠レンズ VS マクロレンズ」を開催。撮影するレンズを2種類に限定し、望遠レンズを吉住志穂氏、マクロレンズをくにまさひろし氏が担当。展示のほかにクリエイティブビジョンでのスライドショーや動画作品、二人による作品解説トークなど。
・開催日時:2025年10月16日(木)~27日(月)10:00~18:00 入場無料 ※最終日 15:00まで ※休館日 10月21日(火)・22日(水)
・開催場所:OM SYSTEM PLAZA(旧 オリンパスプラザ東京)クリエイティブウォール / クリエイティブビジョン
・トークイベント:10月25日(土)15:00-17:10 OM SYSTEM PLAZAイベントスペースにて 観覧無料
・所在地 東京都新宿区西新宿 1-24-1 エステック情報ビル B1F
・HP:https://note.com/omsystem_plaza/n/n6f2e442955ae
■写真家:くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、マクロレンズで花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく描く。各種写真教室では、マクロ撮影の面白さを楽しくわかりやすくお伝えすることを意識している。
写真展 2020年、2022年「花色の息吹」(大阪・東京)、2021年「花の鼓動~Life~」(大阪)、2023年、2024年「Nature Flowres」(東京)
写真集「花色の息吹」(風景写真出版)
日本風景写真家協会 会員
一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
フォトマスターEX(総合)
カメラのキタムラ写真教室/OM SYSTEMゼミ/リビングカルチャー倶楽部 他講師
クニさんの花マクロ写真塾 主宰













