マクロで撮ろうサザンカ・ツバキ|クニさんの季節の花レシピ

マクロで撮ろうサザンカ・ツバキ|クニさんの季節の花レシピ

はじめに

冬になるとだんだん花も減ってきて、花撮影には寂しいシーズンですね。
そんな彩りのない季節に鮮やかな姿を見せてくれるのが、サザンカやツバキ。
サザンカとツバキは同じ種類の仲間なので一見すると違いがわかりませんよね。
一番の違いは花の散り方。サザンカは花びらが一枚ずつ散っていくのに対し、ツバキは花が丸ごとポトッと落ちます。
違いはありますが、撮影のポイントとしては共通しているので今回はひとまとめにしてお話ししたいと思います。

撮影に大切なことはサザンカやツバキでもいつも通り変わりません。
まずは花をしっかり観察して、魅力的な部分や面白いと感じる部分を見つけましょう。
そして、その感じた部分をいかに表現するかをしっかり吟味して撮影しましょうね。

しっかり観察して花の特徴を掴もう

サザンカやツバキは綺麗に咲いている期間が短く、すぐに花びらが変色したり虫に喰われて穴が空いたりします。
こういう傷んだ部分は目で見ているとあまり気になりませんが、写真を撮って見るとすごく目立ちます。
ですので、よく観察して傷みの少ない花を選んであげることが大事です。
その上で花びらやシベ、葉っぱなど、魅力的だと思えるところを見つけましょう。

■撮影機材:OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(-0.3)・ISO400・Portrait

花びらにもシベにも傷みのない綺麗な一輪を見つけました。
背景のボケを意識して真横の位置から狙います。
葉っぱや枝などがあると目立ってしまい主役の花の印象が弱まるので、手前の葉っぱを少し前ボケとして入れました。
背景の薄い緑や赤のボケは、葉っぱや花に陽が当たって反射したものです。

光の反射を活かそう

サザンカやツバキの葉っぱは表面がツヤツヤと光っています。
そこに光が当たって反射すると光のボケが得られますので、よく状態を見て反射光を活かした画作りをしましょう。

■撮影機材:OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+2.3)・ISO400・Portrait

花を中心に左右に色が分かれていますね。
左側の白い部分はなんだと思いますか?
正解は、右も左も葉っぱです。
左側に強く光が当たっているので、このように反射して白く見えるのです。
まるで、まばゆい朝の陽射しが差し込む部屋で布団の中から顔をのぞかせたような姿に思えました。

■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5・ISO400・Portrait

咲き始めた一輪を真横から捉えました。
まるで太陽の陽射しを浴びて「うう~ん」と伸びをしているようです。
背景のキラキラ煌めく光のボケが清々しい雰囲気を感じさせて、花が思い切り深呼吸しているようにも見えてきます。
背景に散りばめられた光のボケは、葉っぱの反射。
このときは天気が良く陽射しが強めだったので、光の反射も力強くくっきりしたボケになりました。
主役はもちろん大事ですが、撮影するときには主役だけでなくその背景や手前に何があるか、どんな状況かをよく観察しましょう。
撮影ポジションをいろいろ変えながら、イメージにあった背景になるような場所を探っています。

葉っぱの特徴を活かして撮ろう

主役になるのは花だけではありません。
蕾や葉っぱも、そこに魅力を感じたなら立派な主役にしてあげましょう。

■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5・ISO400・Portrait

光を浴びた葉っぱを主役に。
上で載せた葉っぱの写真を見ていただくと、葉っぱの周囲がギザギザになっていることに気づくと思います。
そのギザギザ部分に光が当たると、反射して小さな丸い光のボケを作ってくれるんです。
どのような光のボケになるかは、撮影する前後左右、高さなど撮影するポジションによって変わってきます。
いろいろな角度から観察して、できるだけたくさんの反射光が入るポジションを探して撮影しました。
また、ピント位置をいろいろ変えながら光のボケが大きくなるような場所を探っています。

花びらの美しいラインを切り取ろう

■撮影機材:OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5・ISO400・Portrait

ひらひらした花びらも魅力的ですね。
面白いと感じる花びらのラインの部分に真横からピントを合わせて撮影しました。
マクロレンズを使い、絞り開放で撮ることで被写界深度(ピントが合ったように見える範囲)が極端に浅くなります(つまりボケる部分が大きくなる)。
手前の花びらにピントを合わせれば、すぐ奥の花びらですらこんなに大きくボケてくれます!
このボケがマクロでクローズアップする面白さなんですね。
まるで花が光の中に溶け込んでいくようで、ちょっと不思議なイメージの一枚になりました。

■撮影機材:OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(-1.7)・ISO400・Natural

興味を惹かれた花びらのラインにさらにググッと迫ってみました。
花びらのラインの部分だけを画面いっぱいに写し込んで構成しました。
被写界深度の浅さの影響でピントを合わせた花びらのフチにもボケがかかって、多重露光したようなふわっと柔らかな印象になりました。
このように部分だけを切り取る場合は、他の要素をすべて排除することがポイントです。
画面の端に花びらのフチや葉っぱなど入っていると、とたんに主役に選んだ花びらのラインの印象が弱まってしまいます。思い切り寄って見せたい部分だけを切り取りましょう。

シベも主役にしよう

もちろんシベを主役にしてもOKです!
特にツバキはたくさんのシベがくっついて密集しているので、どれか一本のシベだけを主役にするというのはちょっと難しい場合もあるかもしれません。
そんなときにはシベ全体をひとつのかたまりとして主役にしてしまいましょう。
たくさんのシベを画面に入れる場合には有効な考え方なので覚えておいてくださいね。

■撮影機材:OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+1.0)・ISO400・Portrait

サザンカのシベを主役にしてクローズアップしました。
こちらを向いて咲いている一輪を背景に配置。
背景の花のシベが黄色いボケになって、まるで主役のシベがスポットライトの中にいるかのようです。
右手前にできたひとつの小さな光のボケが「キラーン!」と輝く指輪のようで、いいワンポイントになってくれました。

■撮影機材:OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(-0.3)・ISO400・Portrait

葉っぱのボケの隙間からちらっと顔を出したような一輪の花。
そのシベの先に大きな光のボケができています。
まるで冬の間に溜め込まれたパワーをシベから放出しているようなイメージに感じました。
花の周囲の緑の部分は、手前の木の葉っぱが前ボケになっています。
そして丸い光のボケは、これも手前にあるツボミ。
奥の主役の花は日陰、手前の葉っぱやツボミは日向にあります。
そのツボミに当たった光が反射してこのような不思議なボケを作ってくれたというわけです。

アウトフォーカスで遊んでみよう

アウトフォーカスとは、意図的にピントを外してボケた部分を作ること。
なんのことはない、いつもお話ししている前ボケや後ボケのことですね。
でもそれだけでなく、主役までもボカしてしまう場合もあるんです。ほんとに。

■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+0.3)・ISO200・Portrait

ぴょこんと飛び出したシベが面白くて主役に選び、真横から捉えました。
背景には木漏れ日や光の反射がボケになって写り込んでいます。
その光のボケと主役のシベが重なる位置を探って、スポットライトを浴びているようなイメージで撮影しました。
ところでこの写真、どこにもピントが合っていないように見えますよね?
そんなのでいいの? 失敗作じゃないの? と思われるかもしれません。
でもいいんです。ピントを外すことでふんわり不思議なイメージになるなと思い、狙って撮った一枚です。
「ピントを合わせようとして外れてしまった」なら失敗ですが、あえてピントを外す意図で撮ったのならそれは正解。自信を持って表現しましょう。

光を活かして季節感を表現しよう

■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5・ISO400・Portrait

長い冬が過ぎてすこしずつ陽射しが柔らかくなってきたころ、「もう春かな?」とひょっこり頭の先だけ出して様子を見ている葉っぱくん。
そんなイメージの一枚です。
まだまだ寒い時期ですが、画面にたくさんの光のボケを入れることで春先のような暖かさが感じられる一枚になったのではないでしょうか。
このようなイメージで撮るには、逆光方向を向いて撮影するのがポイントです。
手前から差し込む光が花びらや葉っぱを透過して、透明感ある作品にすることができます。

おわりに

寒い冬は外出も億劫になるもの。
サザンカやツバキは家や道路の垣根など、比較的身近な場所でもよく見られます。
ちょっと散歩がてら、あるいは買い物のついでにマクロレンズ一本持って出かけてみませんか。
花一輪でも見つければ、素敵な作品を撮ることができますよ。

ここに挙げた撮り方はほんの一例です。
いろいろな撮影方法にチャレンジしながらぜひ自分なりの撮り方を見つけてくださいね!

 

■写真家:くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、マクロレンズで花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく描く。各種写真教室では、マクロ撮影の面白さを楽しくわかりやすくお伝えすることを意識している。

写真展 2020年、2022年「花色の息吹」(大阪・東京)、2021年「花の鼓動~Life~」(大阪)、2023年、2024年「Nature Flowres」(東京)
写真集「花色の息吹」(風景写真出版)

日本風景写真家協会 会員
一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
フォトマスターEX(総合)
カメラのキタムラ写真教室/OM SYSTEMゼミ/リビングカルチャー倶楽部 他講師
クニさんの花マクロ写真塾 主宰

 

 

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