ニコン Z9の実力を探る|アフロスポーツ 松尾憲二郎さんにインタビュー

ShaSha編集部

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はじめに

 ニコンから10月28日に発表されたミラーレスカメラのフラッグシップモデル「Z 9」。事前に公開されていた性能と、当日の公式オンラインライブ配信で発表された新たな機能や作例、11月予約開始時に案内された価格から大きな反響を呼んでいます。

 この度、株式会社アフロの協力で、1万人以上の視聴者を集めた公式オンラインライブ配信や、後日のスペシャルライブで多くの作例と説得力のあるレビューで話題を呼んだアフロスポーツ所属のスポーツフォトグラファー、松尾憲二郎さんにインタビューを行うことができました。スポーツ撮影の第一線で活躍するフォトグラファーはZ 9についてどのように感じたのか。生の声を包み隠さず聞かせて頂きました。

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アフロスポーツ所属 松尾憲二郎さん

D5・D6から違和感なく移行でき、撮影の自由度が格段に上がった

― Z 9を使うまでにどんなカメラを使われていたのですか

 ずっとニコンのD5を使っていました。今回Z 9発売イベントへの出演が決まった段階でD6を使っていないと語りきれない部分がある、ということになり2ヶ月ほど集中して毎日のようにD6使っていましたので、D5同様に違いを語れると思います。

― すでにZ 9をかなり使用されていると思いますが、第一印象やこれまでのカメラと比べ何か違和感はありましたか

 使う前に説明を受けた時は「すごいカメラが出てきたな」と。それが第一印象でしょうか。とはいえ実際に使ってみないとわからない。特にミラーレスのフラッグシップはニコンとして初めてじゃないですか。正直なところ、半信半疑な部分は大きかったですね。今使用しているD5やD6で十分すぎるほど僕の仕事はこなせていたから、ということもあります。

― 発表会でも仰ってましたが、そのような中ぶっつけ本番でモトクロスの撮影を試された。そういった半信半疑的な部分はどう変わっていったのでしょう

 これまで使っていたカメラとの違和感がほとんどなかったことに驚きました。一眼レフがミラーレスに変わり、どこか自分なりに変化に対応する必要があるだろうと思っていましたが、本当になかった。撮影に対する不安が一瞬でなくなりましたね。

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■撮影機材:ニコン Z 9
■撮影環境:非公開
松尾さんがZ 9を使って最初に撮影したモトクロスのシーン。D5やD6と同じ感覚で使えたという。

― 逆に便利に感じた機能はありますか

 ファインダーがEVFになったことです。今回の作例撮影のような「撮って出し」「ノートリミング」が求められるシビアな現場で、ファインダー内に水準器やヒストグラムなど欲しい情報が写っている。思った以上に便利でした。一発で撮影を終わることができる。テスト撮影のフローを省けます。

― D5・D6と比べて、同じフルサイズセンサーでも測距点の数やエリアが広くなっています。その点についてはいかがですか

 この写真は一眼レフだとこの画角では撮れないと思います。おそらく測距エリアにギリギリバイクが入っていない。測距点の数やエリアが広くなったことで撮影の自由度が格段に上がりました。実際このような写真はこれまでもあったんです。でもそれは、トリミングしたものを提出することが多かった。置きピンでの撮影でこの画角を狙うことはありましたが、自分が熟知している現場でかつ、「ここに来る」と読めていないといけないですよね。今回の作例はそこを気にせず狙って撮れた。Z 9を使った最初の現場ですよ。元々一眼レフの測距点は狭いと感じていたので、ミラーレスである良さを痛感しました。

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■撮影機材:ニコンZ 9 + AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR + マウントアダプター FTZII
■撮影環境:400mm F2.8 1/2000秒 ISO200 AFエリアモード ワイドエリアAF(L)
一眼レフでは困難な画角の撮影もミラーレスであるZ 9ならスムーズに対応できる

電子シャッターはスポーツ撮影にとって「革命」

― Z 9ではメカシャッターを廃し、電子シャッターのみ搭載となりました。ローリングシャッター歪みなどデメリットの印象もある電子シャッターですが、シビアな撮影シーンで使われてどう感じましたか

 一言で回答できますね。デメリットは一切感じないです。むしろ(メカシャッターが)なくなったことはすごくポジティブに捉えていて。現場で一番困るのはカメラが壊れること、特に後戻りが出来ない報道の現場ではあってはならない。シャッターユニットは現場では一番酷使され、いつかは限界が来るわけです。一番壊れる可能性が高い。僕はそれを経験したことはありませんが、物理的に存在しないのは安心感に繋がります。

 よく言われる「歪み」についても、どこまで言っていいかわかりませんが「出ない」とは言えない、完全にゼロになっているわけじゃないと思います。ただ、それは自分がしたい表現を阻害するものではないレベルまで下がっている。僕にとっては問題なく仕事で使えます。

― 電子シャッターによる恩恵は他にも色々ありますね。Z 9は1/32000秒で切れるシャッターやサイレント撮影、ブラックアウトフリー撮影など電子シャッターを活用した機能が搭載されています

 スポーツ撮影にとって「革命」ですよ。まずサイレント撮影。すでに他社はフラッグシップ級のミラーレスを発売していたのでその恩恵を受けていた人はいるのですが、ニコンもようやく「スポーツで無音」が出来るようになった。スポーツの現場では本当に「緊張の一瞬」という場面があります。撮りたいんだけど状況を考えると音を出せない、アスリートファーストというところがある。今後は思うがままに写真を撮ることが出来ます。スポーツの現場では大会運営側もどのメーカーのどのカメラにサイレント撮影が搭載されているか把握している。今後はサイレント撮影が搭載されているカメラでしか撮れない場所が増えてくる可能性もあります。

― よりアスリートに近い場所で撮れるようになるわけですね。1/8000秒より早い速度でシャッターが切れる点についてはいかがですか

 パッと思いつくのは、水を扱うスポーツで表現の幅が広がりますね。後は雨が降っている時。雨の状況にもよりますが、1/8000秒は雨粒が微妙に動いていたんですよ。これを1/10000秒にしたら止まって写った。これまでは雨の「線」だけの表現が「点」も選べるようになる。表現の幅が広がることで、今まで妥協しないといけなかった点をどんどんなくしていける。発想のままに絵が撮れる。これも新しい革命だと思います。

「3Dートラッキング」はD6と同等かそれ以上

― 進化したAFについてもお伺いします。今回ミラーレスでは初めて「3Dートラッキング」が搭載されました。レスポンスやAF精度についてはいかがでしょうか

 D6と同等かそれ以上に感じました。僕はD5からメインのAFエリアモードは「3Dートラッキング」で、9割以上このモードで撮っています。その特性を掴んでいる僕から見ても何ら違和感はない。これまで以上に敵なしの機能だと思います。

※3D-トラッキングとは
選んだフォーカスポイントで被写体にピントを合わせると、シャッターボタンを半押ししている間は被写体の動きに合わせて、フォーカスポイントを自動的に切り換えて被写体にピントを合わせ続けるAFエリアモード。左右に動く被写体を自由な構図で撮影するのに適している。

― ユーザーの皆さんが一番聞きたかった言葉だと思います。私が面白いと思ったのが、そんな松尾さんがZ 9発表後のスペシャルライブで「3Dートラッキングだけでなく被写体によって他のAFモードを切り替えることが重要」と話されていました

 切り換えないと撮れないシーンはあります。そこは僕の経験や自分ならこう撮れる。という技術もあるので、「こういう時はこの設定、このモード」とお伝えしにくい部分ではあるのですが、「3Dートラッキング」とそれ以外のモードを切り替える基準は、「被写体を補足してからシャッターチャンスまでの時間」が目安になると考えています。

 この時間がそれなりにあれば「3Dートラッキング」が使えます。補足してから即シャッターを切るようなシーンは別のモードを使ったほうが良い。そのようなシーンで一番使えるのは「ワイドエリアAF(L)」もしくは「オートエリアAF」。例えば前段にお見せしたモトクロスで急にバイクが出てきているシーン。これは「3Dートラッキング」よりも「オートエリアAF」のほうが強いシーンです。逆に「3Dートラッキング」を使用した作例は、被写体が出てきてから追い掛ける時間が十分にあるシーンです。この時間の長さが一つの目安になると思います。

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■撮影機材:ニコンZ 9 + AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR + マウントアダプター FTZII
■撮影環境:400mm F2.8 1/3200秒 ISO500 AFエリアモード 3Dートラッキング
3Dートラッキングを使用して撮影した写真。松尾氏は「被写体を追いかける時間」を目安にAFエリアモードを選択するという

― 被写体検出機能についても聞かせてください

 スポーツ撮影では十分に使えますし、使わないといけない場面が増えています。ただ、これについては一言お伝えしたいことがあって。ニコンのレフ機は昔から検出精度は高かったんです。確かD5からAFエリアモードを「3Dートラッキング」を選択した時に顔認識をするかしないか選べるんです。この時点ですでに他社と比べてもかなり高い精度で人物の顔を検出して瞳にピントが来ていたんですね。なので僕は昔からこの機能はずっと使っていたのでZ 9でも全く違和感はなかったですね。

― その話はご購入されたお客さまからも伺ったことがあります。非常に精度が良いと

 元々ベースにあった機能がZ 9でさらに磨きがかかって、精度も検出する種類も増えています。被写体認識があることによって多少AFポイントがズレてもカメラがわかってくれているので、撮影の補助をしてくれるんですね。狙いを助けてくれるイメージです。

― 120コマ/秒をはじめ、進化した連写性能も話題です

 追い込まれているシーンであれば、1秒間に切れる数が多ければ多いほど心強いです。鬼に金棒の金棒が来た!というイメージです。ですが毎回金棒を使うかというとそうではなくて。

― 発表会でもお話されていました。MAX値で使うことはあまりないと

 僕のフィールドでは秒間10コマか15コマで十分な場面が多いです。Z 9はD5やD6同様、連写モードのコマ数を選べるので自分に合った連写コマ数に設定して使っていますね。Z 9に搭載されている「クイック設定ポジション」は撮影中にコマ数を設定できるので使いやすいです。連写モードLもHも使わなくなりました。

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ボディの左肩に配置されているレリーズモードダイヤル
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「クイック設定ポジション」を使えば撮影中でもコマ数を細かく設定できる

 これはスポーツを撮影される方には共感頂けると思うのですが、連写速度に頼ってしまうと本当に良い瞬間を狙うことや被写体を追うことを怠ってしまい、アスリートの動きを観察しなくなるんですね。全てをカメラ任せにすると本当に狙った瞬間を撮る力は段々失われていってしまう。

 Z 9の話でこういったことを伝えてしまって良いのか悩んでしまいますが、スポーツ撮影の理想は「ワンショットで狙った構図を撮ること」だと考えています。ただ競技によってはアスリート側も予測にない動きをします。そこには連写機能やシャッターのレスポンス、レリーズタイムラグを考慮し、対応幅が広いZ 9やD5・D6といったフラッグシップを選ぶ理由が出来る。とはいえ、追い詰められる現場では秒間120コマを始めとした高い連写性能が備わっていることは非常に心強いです。

一番の魅力はEVFの見やすさ

― 光学ファインダーと比べZ 9のEVFは見やすさ、またスポーツ撮影でのレスポンスなどはいかがでしょうか。特に表示遅延について気になる方も多いと思います

 僕がZ 9で一番良い部分は、このEVFの見えが良いところだと思っています。Z 9の魅力を語るのにむしろAF性能部分がいらないくらい、このEVFはすごく良いです。EVFになり構造上遅延が出ている可能性はありますが、これまでと違和感なく撮れています。

 むしろ遅延よりもEVFになって使えるようになった機能、先にお伝えした撮影をサポートする情報が画面に出るという部分ですね。これが非常に便利なのでEVFの恩恵は大きいです。Z 9を検討されている方でこの部分が気になるという方には、自信を持って「気にしないでください」とお伝えできます。

ノイズに臆せず高感度領域を使ってほしい

― スポーツ撮影の分野では撮って出しのJPEGで納品するシーンが多いと伺います。RAWで編集できない現場での人肌の再現性や高感度時のノイズはD6等と比べていかがでしょうか

 僕が撮影するスポーツの現場ではJPEGでしか撮らないのですが、これまで撮った中で肌色など画質面で気になったことはないです。高感度ノイズについてもD5やD6の時から(設定で)使える高感度領域はどんどん使っていて。この点については人がどう感じるか次第だと思っているのですが、その時からノイズが気にならなかった僕からするとZ 9も同様に悪くないですね。EVFの遅延のように気になっている人ほど僕は「臆せず高感度を使ってくれ」と伝えたいですね。

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■撮影機材:ニコンZ 9 + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S + Z TELECONVERTER TC-1.4x
■撮影環境:165mm F4 1/1600秒 ISO6400 AFエリアモード 3Dートラッキング
ISO6400で撮影された撮って出しの写真。水面や選手のキャップなどノイズが目立ちやすい場面だが、A4サイズにプリントしてもノイズはほとんど見られなかった

 画質や高感度ノイズを気にする人は一度「ピクチャーコントロール」の設定を色々試してほしいです。僕は新しいカメラを使う時はここの設定をかなり詰めます。「JPEG撮って出し」用の機能ですがRAWで詰めるよりも好みの画質になったり、高感度ノイズが目立たなくなりますよ。作品づくりでRAW編集を楽しまれている方も、ぜひ一度「RAW+JPEG」同時記録を使って「ピクチャーコントロール」の絵とぜひ見比べてみてほしいです。Z 9はモニターのカラーカスタマイズも出来るので僕は普段使っているPCとモニターの色を合わせています。

縦横4軸チルトでアスリートとのコミュニケーションが取りやすくなった

― 発表会でお話されていた縦横4軸チルト液晶の使い勝手についても聞かせてください

 最高ですね。発表会でもお見せした写真ですが、こういったシーンでも地面スレスレにカメラを置きながら楽な姿勢で撮影できるようになりました。しかも液晶画面を見れば水準器などの情報も確認できる。この作例は動画チームと一緒に撮影していましたので、周りを気にしながらアスリートともコミュニケーションを取って撮影しました。

 今まではファインダーを見ながら寝そべって構えて、その状態でアスリートとコミュニケーションを取らなければいけなかった。そんな姿勢だとアスリート側も動きにくくなったり、コミュニケーションが取りづらいですよね。正直(コミュニケーションが)出来ない場面の方が多かった。勘に頼って何も見ずに撮ることも出来ますが、報道の現場ではそれはできるだけ避けたい。これも1つの革命だと思います。Z 9の縦横4軸チルトでアスリートとのコミュニケーションが格段に取りやすくなった。

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■撮影機材:ニコンZ 9 + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:18mm F2.8 1/2000秒 ISO100 AFエリアモード オートエリアAF 
縦横4軸チルトを活用して撮影した写真。姿勢だけでなくアスリートとコミュニケーションをとりながら撮れるようになった

― フラッグシップモデルに搭載されたことも大きいですね

 便利さ以上に、頑丈さ、壊れないというのは僕がカメラに求める条件です。フラッグシップを使う理由として、堅牢性に対する信頼感があり、これまでのD5でも応えてくれた。ですからZ 9の縦横4軸チルトを過酷な状況でも使っていきます。また、購入される方はぜひ試してもらいたいのですが、モニターを上に向けて確認するとき、そのまま上に向けるより、モニターを引き出して上に向けたほうがファインダーの突起に干渉しないので圧倒的に見やすいです。ぜひ試してみてください。

ボタンのカスタマイズは「AFエリアモード」を中心に設定

― D6やZ 7II・Z 6IIと比べ、カスタマイズできるボタンが増えています

 カスタマイズできるボタンは全て使っています。Z 9はファンクションボタンに直接AFエリアモードをそれぞれ割当することが出来ます。Z 6やZ 7はAFエリアモード選択をファンクションボタンに設定することが出来ますが、実際のモード選択にはさらにダイヤル操作が必要で、ダイレクトにAFモードを設定できない。

 先程「3Dートラッキング」について話をした通り、現場では瞬時の判断で適切なAFエリアモードに選択することを求められます。ボタンに直接AFエリアモードを割り当てできる機能は、仕事で使う判断基準になるくらい重要な機能です。ボタンをカスタマイズできる部分はこの機能を中心に設定しています。

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Z 9はAFエリアモードをダイレクトにボタン割当可能。松尾さんは横位置、縦位置同じ撮影フローにするためFn1とFn3ボタンに同じ「ダイナミックAF(S)」を割り当てている

 「撮影機能の呼び出し」を登録して、「日射と日陰」、「会場と表彰式」のように現場で露出が変わる場面に対応するため、露出が違う撮影機能を呼び出しています。また、スペシャルライブでコムロミホ先生が設定されていた「ライブビュー情報表示の消灯」も現場で使えるすごく良い機能だったので早速、動画撮影ボタンに割り当てて使おうと思っています。

 このようにカスタマイズできるボタンの量が増えたことで、今後使っていく中でまた新たな撮影フローが出来るかもしれない。新しい考え方が出来る楽しさ、嬉しさがありますね。

話題の作例はZ 9を使って緻密な計算の元撮影

― 最後の個人的な質問です。発表会で松尾さんが紹介された、ハンドボール選手がシュートする瞬間をとらえた写真。発表会当日も作例が出た際、視聴者から驚きの声がチャット欄に続々と投稿されていました。この作例はZ 9とレンズ性能に加え、松尾さんの技術が凝縮された写真だと感じました。この写真はZ 9をどのように使って撮られたものかお聞かせ頂けますでしょうか

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■撮影機材:ニコンZ 9 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■撮影環境:24mm F2.8 1/2500秒 ISO2500 AFエリアモード 3Dートラッキング
頭に描いたシーンを再現するため、Z 9のAF、連写、操作性全てを活用して撮影された作例

 この作例は、ハンドボールの撮影で必要なカットは全て撮り終わった後に撮ったテスト写真なんですね。他で紹介されている作例など必要なものがスムーズに撮り終わって、僕が撮りたいイメージの写真を撮れる時間的な余裕ができた。元々このシーンはイメージがあったので、120コマ連写を使用し複数の選手に全力で動いてもらいテストしました。実際の競技での撮影ではありませんが、アスリートを追い詰めて、本番と同様に動いてもらわないと本当のパフォーマンスは出ない。選手によってはフェイントなども混ぜて動いてもらいました。

 そうして撮影した画像をコマ送りして確認し、撮影する瞬間のイメージが出来たので、今度は縦横4軸チルトでモニターを引き出してアングルやAFエリアモードを変えてテストしました。次に、選手との距離感や安全面を考慮しながら使うべきレンズを選定。最初頭の中では「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」を想定していたんですが間合いが近すぎたため、最終的に3Dートラッキングモードで「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」を使用して撮影しました。

 なお、モデルになる選手をテスト撮影して選ぶ段階で、ピントの精度を確認していました。何人も撮る中でずっとピントが来てるんですよ。すごいなと。そうやってようやく準備万端で撮影に望んで撮った写真がこちらです。Z 9の機能面で信頼がおけたので、難しい撮影ですが構図と選手の動きだけに集中できました。

― 相当なテストと計算の元撮影された作例だったのですね。話題になるのも納得です。本日は長時間、色々とお聞かせ頂きありがとうございました。

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インタビューは実際に撮影した写真をA4サイズにプリントし、それを見ながら実施した

さいごに

 今回、松尾さんにはZ 9を使用して感じたポイントを自身の撮り方を交えながら詳細に語って頂きました。インタビューを通じて感じたのは、第一線で活躍するスポーツフォトグラファーがカメラに求める水準の高さと、その水準を超えた上で、これまで以上に撮影をサポートすることができるZ 9の性能でした。本文には掲載していませんが、インタビューの途中途中で松尾さんは「Z 9は使っていて楽しい」と言っていたのが印象的でした。

「どうせ撮るなら楽しく使えるほうが良い。Z 9はこれから使いこなしていく楽しみを持ちながら現場の撮影がこなせるんです」

 この言葉にZ 9への愛着と新しく生まれる写真への期待が感じられました。ニコン初のフラッグシップミラーレスカメラ「Z 9」は、プロフォトグラファーも大きく満足できるカメラであることは間違いありません。
 
※本記事は(株)ニコンイメージングジャパン協力の元、松尾さん撮影の公式データを提供頂いております。
※本記事に登場するニコンZ 9は試作機をお借りして撮影しています。

■松尾憲二郎さんプロフィール
1985年東京生まれ。都立工芸高校デザイン科卒業。バックカントリースキーの撮影にあけくれ雪山を登ってきた。2014年より「アフロスポーツ」に所属。現在は様々なスポーツを報道・広告撮影している。
・国際スポーツプレス協会 (AIPS) 会員
・日本スポーツプレス協会 (AJPS) 会員

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■アフロスポーツ
Twitter  https://twitter.com/aflosport
Instagram  https://www.instagram.com/aflosport/

取材場所:新宿 北村写真機店

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