真のプロフェッショナル・ミラーレス機|ニコン「Z 9」見参!

三井公一

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ついに登場したニコン「Z」のフラッグシップ

 待ちに待ったニコンのミラーレス一眼カメラ「Z」の最高峰機が登場しました。その名は「Z 9」です。デジタル一眼レフのフラッグシップ機「D6」同様に、バッテリーグリップ一体型のボディはとても精悍なデザインになっています。「Z 6」、「Z 7」シリーズの特徴的なフォルムは、この「Z 9」のための流れだったのか!と納得のシルエットに仕上がっています。

 手にするとズッシリ、カッチリとした印象でとても頼りがいがある造りを感じます。電源スイッチ同軸のシャッターボタン、節度感の高いダイヤルやボタン類、新採用の縦横4軸可動式の液晶モニターの動き、横位置でも縦位置でも深く握りやすいグリップ、防塵防滴、5軸ボディ内手ブレ補正機能など、フォトグラファーが最高の瞬間を捉えるために考え抜かれたカメラボディになっていると言えるでしょう。

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Z 9のスペックは桁外れ!まさにプロ仕様

 スペックも驚異的です。有効画素数は4571万画素。もちろんフルサイズのニコンFXフォーマットとなります。ニコン独自の積層型CMOSセンサーで、「Z 7II」の約12倍もの高速読み出しを誇り、ローリングシャッターの歪みを極限まで低減。これによってメカシャッターを過去のものにしています。

 さらに、新画像処理エンジン「EXPEED 7」は「Z 7II」比で約10倍の高速処理を達成。センサーからのデータを個別処理し、メモリーカードに記録するための静止画データと、電子ビューファインダー、画像モニターに表示するライブビューデータを同時に演算処理して、ブラックアウトフリーの「Real-Live Viewfinder」を実現しました。このファインダーは本当に見やすくて快適です。

 また、「EXPEED 7」の高速処理性能によって、正確かつ高速なAF性能、約120コマ/秒のハイスピードフレームキャプチャ+、驚きの8K UHD / 30P 内部収録、4K UHD / 120P などさまざまな高次元な撮影を可能にしているのです。

世界最多9種類の被写体を検出する高速オートフォーカス

 「Z 9」はオートフォーカス性能もピカイチです。ディープラーニング技術を活用して、世界最多9種類もの被写体を検出してカメラ任せでフォーカシングし続けることができるのです。その被写体とは「人物、犬、猫、鳥、車、バイク、自転車、列車、飛行機」となります。ファインダーでのぞき、フレーミングをしっかりとしながら、シャッターチャンスに専念することが可能なのです。うれしいことにニコン一眼レフで評価の高かった「3D-トラッキング」もついに復活。動く被写体を確実に追尾してピント合わせができるようになりました。これは大歓迎ですね!

動体撮影に強い!高速連続撮影機能

 「Z 9」は高速連続の書き込み可能な記録メディア「CFexpress Type B」カードをデュアルで採用しています。これと「EXPEED 7」の高速処理性能とで、約20コマ/秒の高速連続撮影を実現。しかも1000コマ以上の連続撮影も可能です(JPEG FINE(L)または高効率RAW)。

 さらに「ハイスピードフレームキャプチャ+」は、約120コマ/秒で約11メガピクセルの静止画を撮影可能になりました(AF/AE追従。JPEG NORMAL)。これによってゴルフスイングのインパクトや、カワセミのダイブなど決定的瞬間を捉えることができるのです。

 スポーツシーンはもちろん、あらゆるシチュエーションで高速AFと高速連続撮影は活躍します。

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動画撮影機能もスゴい!

 「Z 9」は動画撮影性能も素晴らしいものになっています。なんと8K UHD 30pの動画を最長125分も「CFexpress Type B」カードに記録可能となっています。ProRes 422 HQ 10ビット、 H.265(HEVC)10ビットおよび8ビットでの内部記録、さらにSDR、N-Log、HLGでの収録もできるのでプロの現場で活躍することでしょう。また、4K UHD / 120pのハイフレームレート撮影も内部収録できるのでスロー表現も楽しめますね。

 手持ちでも高精細な4K、8K 動画が撮影できます。音声もとてもクリアですね。

Z 9でブラブラ実写スナップ!

 「Z 9」はプロ仕様機ですが、さまざまなシチュエーションで快適な撮影が楽しめます。見やすくブラックアウトのないファインダー、高速で正確なオートフォーカス、途切れることがない高速連写、高画素で豊かな表現力、使いやすいカメラデザインなど、ニコンの撮影に対する哲学を存分に堪能できます。写真が好きなフォトグラファーなら手にしてシャッターを切ればお分かりいただけることでしょう。

 「Z 9」を持って年末の多摩川河川敷を撮り歩きました。グラウンドでは少年ラグビーの試合が行われていました。父母が見守るその光景を撮影しましたが、メリハリのある情感豊かなカットになりました。解像感、色合いがいい感じですね。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
■撮影環境:F8 1/250秒 ISO100

 土手でランニングをしている二人とすれ違いました。振り向きざまに「Z 9」を向けてシャッターを切り続けましたが、正確かつ高速にフォーカシングしながら撮影ができました。ブラックアウトしないファインダーは動体が撮りやすいですね。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
■撮影環境:F6.3 1/1600秒 ISO1100

 「Z 9」のファインダーはとても見やすいです。逆光時でも白飛びや黒つぶれがなく、正確に被写体を確認できるのがうれしいですね。横位置と縦位置で情報表示が切り替わるところも気に入りました。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
■撮影環境:F8 1/320秒 ISO100

 強い寒風の中、2匹のシロネコが身体を寄せ合ってうずくまっていました。そんなシーンも「Z 9」はしっかりとキャプチャーしてくれました。毛の質感と、寒々しい空気感が思った通りに撮影できましたよ。メカシャッターレスで静かなのでネコを驚かせることがありませんでした。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
■撮影環境:F6.3 1/200秒 ISO2800

 「Z 9」は高性能でユニークな数々のニコン「Z」マウントレンズを使えるのがメリットです。開放値「1.2」を誇る「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」の薄いピントと立体感は、「Z 9」の解像力とボディ内手ブレ補正機能とでより表現力を発揮してくれます。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
■撮影環境:F1.2 1/1600秒 ISO100

 「Z 9」と「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」のカップリングは実に見事。笹の印象的な前ボケとピント面の祭壇のコントラストがいい感じですね。「Z 9」のホールドしやすいグリップは重量級のレンズでも安心してフレーミングに集中できていい感じです。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
■撮影環境:F1.2 1/500秒 ISO100

 ブラックアウトフリーの「Real-Live Viewfinder」は画面が消失しないだけでなく、長時間撮影していても眼が疲れません。とても見やすいと感じました。きっとマニュアルフォーカスの「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」でもピント合わせしやすいでしょう。「Z」マウントでのオールドレンズ遊びも楽しめることと思います。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
■撮影環境:F1.2 1/640秒 ISO100

 「Z 9」は縦横にチルトする4軸可動式の液晶モニターを採用しています。これにより思い通りのアングルで撮影を楽しめます。手を伸ばしての撮影や、縦位置のローアングルなど自在です。このカットでは広がりのあるポイントで撮影ができました。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
■撮影環境:F8 1/80秒 ISO100

 「Z 9」のオートフォーカス性能は本当にスゴいです。飛んでくるユリカモメにレンズを向けて、オートエリアAFでシャッターを20コマ/秒で切りましたが、どのカットもユリカモメの目にピッタリとフォーカスしたカットを得られました。高倍率ズームレンズでもこの威力なのですから驚きました。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
■撮影環境:F6.3 1/2500秒 ISO320

 走り回るタイワンリスを撮りました。とてもすばしこいのでフレーム内に捉えるのが難しいのですが(笑)、フレーム内に収められれば「Z 9」は正確にピント合わせしてくれました。リス認識はないのですがその精度にビックリです。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
■撮影環境:F6.3 1/2500秒 ISO1100

 「Z 9」はそのスゴいスペックのせいで、主にスポーツや報道シーンで活躍するカメラという認識ですが、その俊敏性と堅牢性、確実性はすべてのプロフェッショナル・フォトグラファーと写真を愛する人に向けられていると感じます。確実かつ正確に、思った通りに思った瞬間を記録できる、そんな「写真機」に仕上がっています。あらゆる被写体を静止画、動画で捉える人々に手に取って欲しいですね。

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■撮影機材:ニコン Z 9 + NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
■撮影環境:F14 1/800秒 ISO100

ニコン「Z 9」の主要諸元

レンズマウント:ニコン Z マウント
総画素数:5237万画素
有効画素数:4571万画素
撮像素子:35.9×23.9mmサイズCMOSセンサー、ニコンFXフォーマット
ボディ手ブレ補正:イメージセンサーシフト方式5軸補正
記録媒体:CFexpress カード(Type B)、XQDカード
ファインダー:電子ビューファインダー、1.27cm/0.5型 Quad-VGA OLED、約369万ドット
視野率:上下左右とも約100%(対実画面)
シャッター:電子シャッター、電子シャッター音あり、センサーシールドあり
シャッタースピード:1/32000~30秒
フラッシュ同調シャッタースピード:1/250秒または1/200秒以下の低速シャッタースピードで同調
連続撮影速度:・低速連続撮影:約1~10コマ/秒
・高速連続撮影:約10~20コマ/秒
・ハイスピードフレームキャプチャ+(C30):約30コマ/秒
・ハイスピードフレームキャプチャ+(C120):約120コマ/秒
ISO感度:ISO 64~25600(増減感可能)
フォーカスポイント:493点
モニター:チルト式8cm/3.2型TFT液晶モニター(タッチパネル)、約210万ドット
寸法(幅×高さ×奥行き):約149×149.5×90.5mm
質量:約1340g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディーキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)

まとめ

 日本のカメラ業界を一眼レフカメラ「F」シリーズで牽引したニコン(昔は日本光学)が、真っ先にプロフェッショナル向けフラッグシップ機でメカシャッターレス機を出すとは思いませんでした。まさにこれは新しいカメラの世界を切り拓く大事件だと言えるでしょう。

 「Z 9」のスペックは静止画、動画ともにスキはなし。カメラの造りもニコンらしく質実剛健で、まさにプロが使うカメラに仕上がっています。写りも極上で、撮影体験も同様です。まさに新世代のミラーレス一眼カメラの誕生です。

 その証拠に「Z 9」は世界中で人気を博し、入手難が続いています。早くこの「Z 9」で撮影を楽しみたい人は、いますぐカメラのキタムラで予約を入れることを強力にオススメいたします。いやぁ、本当に「Z 9」は素晴らしいカメラですよ。ニコン、スゴい!

■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。

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