動画&連写性能に優れた富士フイルム X-H2S|星空撮影でも画質向上!

成澤広幸
動画&連写性能に優れた富士フイルム X-H2S|星空撮影でも画質向上!

はじめに

今年7月に発売され、APS-C機であるにも関わらず驚きの動画性能・連写性能で話題となった富士フイルム「X-H2S」。積層型センサーを搭載した、富士フイルムAPS-C機のフラッグシップともいうべき存在のカメラですが、その他の部分、特に高感度性能についてはどうなのか?富士フイルムユーザーであり、星空写真家でもある成澤広幸が実際に星空を撮影してみた感想をお伝えします。

先に結論を言うと、極端に高感度ノイズが良くなっているわけではないですが、画質は従来のトップモデルであるX-T4よりも格段に向上していると言えそうです。それでは実際の作例を見ながら検証をしていきましょう。

 

「X-T4」との高感度性能をチェック

今でも根強い人気を誇るX-T4。現在使っている方でも正直X-H2Sは気になる……という方は多いのではないでしょうか。これら2機種を使いほぼ同一構図で星空を撮影しましたので、比較してみましょう。

左:X-T4 右:X-H2S

上の画像は左がX-T4、右がX-H2Sです。レンズはXF18mm F1.4 R LM WRを使用。フィルムシミュレーションはETERNAにしています。カメラの設定はどちらもISO12800、F1.4、SS6.5秒、AWBです。これだけでもけっこう違うなと思いますが、さらに細かく見ていきましょう。まずは星の部分を拡大してみます。

左:X-T4 右:X-H2S

正直、ノイズレベルに関しては大きな進歩はないようですが、ノイズの出方がランダムなX-T4に対して、X-H2Sはノイズが整列しているというか、フラットに写っている印象があります。また、非常に細かいことを言うとX-H2Sのほうが星が小さく写っています。私のピント合わせがミスしたのでなければ、X-H2Sのほうがよりシャープに写ると言うことでしょう。HⅡ領域と呼ばれる赤い星雲の写りも、一見X-T4のほうが良いように見えますが、HⅡ領域がよく写るというよりも天の川の部分が「赤カブリ」しているようにも見えます。赤い星雲自体はX-H2Sのほうが若干ですが濃いように感じています。

続いて地上風景の部分・シャドー部分を見ていきましょう。

左:X-T4 右:X-H2S
左:X-T4 右:X-H2S

ここがもっとも大きな違いがでています。X-T4はシャドー部分に対して緑カブリが多いのに対し、X-H2Sにはそれがなく暗い中でも地上風景の色を素直に表現しているのがわかります。より暗部の風景描写に優れているということでしょう。

 

X-H2Sの高感度性能をまとめると…

X-H2Sの高感度性能はいわゆるJPEG撮って出しで威力を発揮するというよりは、後処理のしやすいノイズの形という印象です。JPEG撮って出し・画像処理なしで夜景やスナップを高感度で撮影するというスタイルのユーザーよりは、レタッチで仕上げていくユーザーのほうが相性が良さそうです。そう、きっとこのカメラは「絵を作り込んでいく」ことを前提にしているカメラなのだと感じました。

 

X-H2Sでの星空作例

ここでの作例は、カメラの性能が伝わるよう、画像処理を最小限におさえています。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF18mmF1.4 R LM WR
■撮影環境:ISO6400 F1.4 SS10秒 AWB
■フィルムシミュレーション:ETERNA
Photoshop CCで画像処理
KENKO プロソフトンクリア使用

夜半を過ぎる頃には冬の星座が昇ってくるようになりました。ソフトフィルターで星を滲ませ星座感を演出しています。地上風景が湿度でガスっていましたが、幻想的な印象を醸し出しました。空の至るところに赤い星雲の存在がわかるのも星空好きにはたまらないポイントです。(撮影地・北海道新冠町)

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:ISO6400 F2.8 SS30秒 AWB 焦点距離8mm(35mm換算12mm)
■フィルムシミュレーション:ETERNA
Photoshop Lightroom Classicで画像処理

広い草原とカラマツの木に星空を組み合わせた北海道らしい景色です。左にある明るい星は木星。35mm判換算12mmというワイドレンズのおかげで、星空も風景もめいっぱいに入れることができました。(撮影地・北海道新冠町)

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF18mmF1.4 R LM WR
■撮影環境:ISO6400 F1.4 SS8秒 AWB
■フィルムシミュレーション:ETERNA
Photoshop Lightroom Classicで画像処理

同じくカラマツの木と星空を35mm判換算27mmという少し狭めの焦点距離で。背景となる空全体にノイズムラが少ないことがよくわかる作例です。いい意味でAPS-Cっぽくないですね!(撮影地・北海道新冠町)

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:ISO8000 F2.8 SS320秒 AWB 焦点距離8mm(35mm換算12mm)
■フィルムシミュレーション:ETERNA
Photoshop Lightroom Classicで画像処理

特別に許可された、牧場内での作例。厩舎とカシオペヤ座付近のひっそりとした天の川の作例です。この作例は少しシャドー部分を明るく補正しましたが、ノイズはあるものの処理しやすそうなノイズの形をしており、ノイズ低減ソフトとの相性が良さそうな感じがします。(撮影地・北海道様似町)

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:ISO400 F2.8 SS900秒 AWB 焦点距離8mm(35mm換算12mm)
■フィルムシミュレーション:ETERNA
Photoshop Lightroom Classicで画像処理

星の軌跡を表現してみました。900秒の露出をして画像処理でシャドー部分を明るく補正しています。通常は風景部分にポツポツとノイズが出たりするものですがほとんど見当たりません。ホットピクセルらしきものが3、4ヶ所見受けられますが(わかりますか?)、近年の動画機能に特化したカメラは実はこういった部分に恩恵があり、熱対策がされているため熱ノイズがでにくいという特徴があるのです。

私自身、まだまだ写真機としては使い慣れていないX-H2Sですが、新しい表現の可能性を出してくれそうなカメラです。富士フイルムは3616秒までのバルブ撮影が可能ですが、この感じならさらに露出を伸ばしてみても問題なくいけそうです。(撮影地・岩手県宮古市)

 

星空撮影でも役立ち!冷却ファン「FAN-001」

背面に別売りアクセサリーの冷却ファンを装着することができる

夏や湿度の高い夜の星空撮影での悩みは、盛大な熱ノイズ。画像の片側に赤カブリが出たり、ホットピクセルが大量に発生したりします。実はそんな環境でおすすめなのが、動画用に開発された冷却ファン「FAN-001」。これは長時間の動画記録時に発生するボディの熱を下げる効果のあるものですが、実はこれが星空撮影でも役立ちます。

高感度・長秒露出での撮影が基本となる星空撮影では、同じく夏の暑い時期や湿度の高い日に熱ノイズが多く発生します。これはダークノイズとも呼ばれ、ボディの小さな機種になると顕著に現れるのですが、X-H2Sではこの冷却ファンを装着できるため、撮影時の熱ノイズを大幅に減らすことができるので動画撮影以外でもおすすめなアクセサリーです。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF18mmF1.4 R LM WR
■撮影環境:ISO200 F2.8 SS1800秒(900秒x2枚を比較明合成) AWB
■フィルムシミュレーション:ETERNA
冷却ファンFAN-001使用

冷却ファンを使用し1800秒の露出で。この作例に関しては、色味の調整や明るさの補正・強調などは一切していません。真夏の暑い日での撮影でも、冷却ファンは熱ノイズによる画質低下を防ぐアイテムになりそうです。

 

F-Log2の使いやすさ

さて、今回は星空撮影の観点から写真機としてのレビューを試みましたが、やはり動画性能もピカイチなのを最後に付け加えておきましょう。

カラーコレクション(全体の明るさ・色味の調整)やカラーグレーディング(部分的な調整)がしやすい記録形式として、「Log」というものがあります。これまで富士フイルムに搭載されていたF-Logでは、実は少し調整が難しい部分があったのですが、X-H2Sに搭載されたF-Log2で調整してみたところ、今まで苦手だったカラコレ・カラグレがこんなにも楽しいものだったのかと気付かされました。私自身もまだまだカラコレ・カラグレについては勉強中の身ですが、Log撮影に少し恐怖心があるという方にはぜひ一度試してもらいたいです。

左がF-Log2、右がカラーグレーディング後。彩度を上げ、トーンカーブを調整、ハイライトに黄色味を少し入れて、シャドーに青を入れてみた。こうした調整がとてもやりやすくなっている。

DaVinci Resolveでの調整画面。上記の4つをいじっただけなので、参考までにこちらも紹介しておきます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?動画・連写性能に加えて、星空撮影の面でも非常に万能な機種であると感じました。私のYouTubeチャンネルでもX-H2Sの高感度性能について検証している動画があります。こちらもぜひご覧ください。

 

 

■写真家:成澤広幸
1980年5月31日生まれ。北海道留萌市出身。星空写真家・タイムラプスクリエイター。全国各地で星空撮影セミナーを多数開催。カメラ雑誌・webマガジンなどで執筆を担当。写真スタジオ、天体望遠鏡メーカーでの勤務の後、2020年4月に独立。動画撮影・編集技術を磨くべくYouTuberとしても活動している。
・著書「成澤広幸の星空撮影塾」「成澤広幸の星空撮影地105選」「プロが教えるタイムラプス撮影の教科書」「成澤広幸の星空撮影塾 決定版」「星空写真撮影ハンドブック」
・月刊「天文ガイド」にて「星空撮影QUCIKガイド」を連載中
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)正会員

 

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