富士フイルム XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR|旅写真家が選ぶ望遠ズームはどれ?

三田崇博

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はじめに

 こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回は富士フイルムの望遠ズームレンズ「XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR」をレビューします。前回の記事で「XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR」との比較を行いましたが、超望遠域が必要な方には必修のレンズです。今回は特に最望遠側の400mm側の使い勝手を中心に、テレコンバーターを使ったさらなる望遠撮影にもチャレンジしてみました。

「XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR」との比較はこちら
富士フイルム XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR|旅写真家が選ぶ望遠ズームはどれ?
https://www.kitamura.jp/shasha/article/481546377/

レンズの特徴

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 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRは富士フイルムのラインナップの中で最望遠のレンズ。フルサイズ換算で152mm~609mmをカバーしています。1375gと決して軽量とはいえないレンズですが、約5段の手振れ補正や防塵・防滴・-10℃の耐低温構造、フッ素コーティングによる撥水・防汚性能を備えています。100mm-400mmの焦点距離を持つレンズは各社から発売されていますが、実はAPS-C専用に特化したものはこのレンズだけです。

テレコンバーターについて

 テレコンバーターとはレンズの焦点距離を更に伸ばすアダプターで、レンズとボディの間に挟むように装着します。現状400mm以上の焦点域を持つレンズは富士フイルムにはありませんので、それを補うためにテレコンバーターが用意されています。現在、富士フイルムのXレンズに装着可能なテレコンバーターは2種類発売されています。

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(右)フジノン テレコンバーター XF1.4X TC WR(1.4倍テレコンバーター)
(左)フジノン テレコンバーター XF2X TC WR(2倍テレコンバーター)

 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRに「XF1.4X TC WR」を装着したときの焦点距離は1.4倍の140mm-560mm(フルサイズ換算:213mm-853mm相当)、「XF2X TC WR」を装着すると2倍の200mm-800mm(フルサイズ換算:305mm-1,219mm相当)になります。

 テレコンバーターは手軽に焦点距離が伸ばせる反面、どうしても若干の画質劣化があるので使用には注意が必要です。また、開放F値が「XF1.4X TC WR」 だと1段(望遠端で開放F8)、「XF2X TC WR」 だと2段(望遠端で開放F11)暗くなります。AFの速度も遅くなるので動体撮影には不向きです。特に「XF2X TC WR」装着時には、X-T4等でも高速な位相差AFが使えずコントラストAFのみとなります。

テレコンバーターの使い勝手

 私の住む奈良県生駒市の生駒山の上から大阪城を狙ってみました。直線距離で約13kmです。まずはテレコンバーターなしの400mmで撮影。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F8 SS5秒 ISO160 焦点距離400mm

 背後の梅田のビル群の中に堂々と佇む大阪城ですがさすがにここまで離れると400mmでも小さくしか写りません。次に「XF1.4X TC WR」を使って撮影してみました。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR + XF1.4X TC WR
■撮影環境:F11 SS9秒 ISO160 焦点距離560mm

 ビル群の背後と手前の光の少ない部分がカットされ、画面の隅々までビル群が配置され、より都会の中に建っている雰囲気になりました。個人的には一番バランスが良い構図だと思います。今度は「XF2X TC WR」を使って撮影してみました。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR + XF2X TC WR
■撮影環境:F13 SS12秒 ISO160 焦点距離400mm

 こうなると大阪城が主題になり背後のビル群が脇役に変わりました。望遠の圧縮効果がとても生かされた作品になりました。

 次にテレコンバーター使用による画質の劣化を見ていきたいと思います。以下の画像は、上の3枚の写真から大阪城の天守付近をそれぞれ300ピクセルで切り出したものです。左からテレコン未使用、「XF1.4X TC WR」使用、「XF2X TC WR」使用の順に並べています。

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左からテレコン未使用、「XF1.4X TC WR」使用、「XF2X TC WR」使用

 やはり、テレコンバーターを使用することで解像度とコントラストが低下していることが分かります。特に2倍を使用した際はその影響が大きくなるので、個人的には本レンズ使用時は1.4倍を使用することをおすすめします。しかし、手軽にフルサイズ換算で1000mm以上の焦点距離を得られるのはXF2X TC WRの強みです。超望遠の撮影をするならぜひ持っておきたいアイテムですね。

 ちなみに富士フイルムXシリーズのレンズでテレコンバーターが使えるレンズは他に「XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro」、「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」、「XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR」があります。

超望遠で撮るべき被写体

① 動物

 私のライフワークとしている世界遺産の撮影では超望遠域を使うことは少ないのですが、自然遺産の中で動物や鳥を撮るときには望遠レンズが活躍します。動物園でもない限りなかなか野生動物に近づいて撮影できることが少なく、警戒心の強い動物や鳥は遠くから撮影せざるを得ません。以前タンザニアや南アフリカの国立公園を旅していたときは200mmまでのレンズしか所有しておらず、もう少し望遠があればと何度も悔しい思いをしました。

 今は新型コロナの影響で海外に行けないので、国内で撮影できる野鳥やサルを撮影してみました。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F5.6 SS1/500秒 ISO1600 焦点距離400mm
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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F5.6 SS1/250秒 ISO800 焦点距離400mm
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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F5.6 SS1/300秒 ISO160 焦点距離400mm

② 飛行機

 また、海外に行くときに必ず利用する飛行機も超望遠撮影の定番です。コロナ禍になってから一度も乗っていませんが、旅の気分だけでも味わいたいと思い伊丹空港に行ってきました。帰りに千里川土手の有名な撮影スポットに寄ってみると、大砲レンズを構えた方が大勢撮影していました。もちろん、単焦点の超望遠レンズは写りはピカイチですが、価格やサイズも重量級のため飛行機などを専門で撮る人でなければなかなか所有できないと思います。

 夜の撮影では感度を上げる必要はありますが、滑走路を移動する飛行機をかなりの迫力で画角に収めることができました。作例は「XF1.4X TC WR」を併用しています。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR + XF1.4X TC WR
■撮影環境:F8 SS1/210秒 ISO8000 焦点距離560mm

③ 月

 家からでも手軽に撮影できる被写体として「月」があります。満月のときもいいのですが、月の立体感が出るので私は少し欠けた状態のほうが好きです。月を画角全体に入れるのはこのレンズでも焦点距離が足りず難しいのですが、PCでの鑑賞や小さなプリント用途であればトリミングすることにより画面いっぱいに映し出すことも可能です。欠けた部分との境界付近ではクレーターもはっきりと確認することができます。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/250秒 ISO400 焦点距離400mm(1500ピクセルにトリミング)

 また、三日月のときに家から見える山に建つ電波塔と一緒に撮ってみました。これも超望遠ならではの作品だと思います。肉眼ではほぼ見えませんが、三日月の暗い部分には地球照という太陽の光が地球に反射して月を照らす現象も写し出されています。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F5.6 SS1/2秒 ISO3200 焦点距離400mm

④ 夕日

 太陽も写真ではほぼ月と同じ大きさに写ります。下の写真は、太陽が沈む直前に水平線に歪んで見える「だるま夕日」です。秋から冬にかけておこる現象で、日本のウユニ塩湖と呼ばれている香川県三豊市にある父母ヶ浜で偶然撮影できました。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/640秒 ISO160 焦点距離400mm

⑤ ビル群

 圧縮効果を強く出したい時にも超望遠撮影は有効です。テレコンバーターの作例と同じ生駒山から大阪のビル群を撮影しました。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F8 SS7秒 ISO160 焦点距離400mm

⑥ 動画撮影

 超望遠レンズで動画というとあまりピンとこないかも知れませんが、動きのある鳥や動物を大きく撮るのはもちろんですが、雲や水の流れなども画角が狭いほうが見た目の動きが早くなるため望遠レンズで切り取ると迫力が出ます。

 自宅から生駒山に流れる霧を撮影してみました。鳥のさえずりも映像にアクセントを加えてくれました。

 日本三大名瀑でもある和歌山県の那智の滝。133mの高さから流れ落ちる様子を400mmで切り取るとものすごい迫力でした。

400mmで撮る世界遺産

 最後にこのレンズの400mm側で撮影した世界遺産の写真を紹介いたします。

 「古都奈良の文化財」は、奈良市内にある東大寺や平城京など8件の構成遺産からなる世界遺産です。そのうちの薬師寺を望む大池から薬師寺の西塔を撮影しました。塔の上の相輪(そうりん)の模様まで確認することができます。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F10 SS1/480秒 ISO200 焦点距離400mm

 「紀伊山地の霊場と参詣道」は、3つの霊場と参詣道を登録対象とする世界遺産で、登録範囲は和歌山県・奈良県・三重県にまたがっています。積雪のあったこの日、奈良県吉野の桜景色で有名な展望台から霧でかすむ金峯山寺蔵王堂を狙いました。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/640秒 ISO160 焦点距離400mm

 富士山も「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」として世界文化遺産に登録されています。富士山から100km以上離れている長野県塩尻市の高ボッチ高原から、朝焼けの富士山を狙いました。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F9 SS1/20秒 ISO200 焦点距離400mm

 「明治日本の産業革命遺産」は山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島・岩手・静岡の8県に点在している世界文化遺産です。明治から昭和にかけて海底炭鉱によって栄え、その形から軍艦島として知られている長崎の端島を野母崎より狙いました。4km以上離れていますが、まるで船上から撮影したかのような作品に仕上がりました。

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■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:F5.6 SS1/140秒 ISO1250 焦点距離400mm

まとめ

 旅写真という視点で考えるともっと軽量のレンズの方がいい場合もありますが、目的が動物や鳥などの撮影であればその重さを許容してでも持っていきたいレンズです。「XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR」とどちらを選ぶか迷うかもしれませんが、望遠側を重視するのであれば「XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR」をおすすめします。

 特に今現在200mm前後の望遠レンズを使われている方にとっては、新しい表現のできるレンズになることでしょう。テレコンバーターについては「XF1.4X TC WR」がおすすめですが、まずはレンズ単体で撮影してどうしても必要だと感じたときに導入するのがいいと思います。

■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。旅好きが高じ、現在までに100を超える国と地域で350か所以上の世界遺産の撮影を行う。作品は各種雑誌やカレンダーへの掲載に加え全国各地で写真展を開催している。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer・アカデミーX講師

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