冬の猛禽類を撮影しよう|最適な撮影術で失敗回避!
はじめに
精悍な表情や力強い飛翔で根強い人気を誇る猛禽類は、誰もが一度は撮影してみたい憧れの野鳥です。
しかし、初めての方は、どんな場所を探せば良いのか?見つけても、どのように撮影すれば良いのか?イマイチよく分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回はそんな悩みにお答えするべく、実際の写真を交えて解説していきたいと思います。
猛禽類を探そう
猛禽類とはいっても、大型から小型の種類や生息環境の違いなどにより、さまざまな分類があります。また、個体差はあるものの猛禽類は基本的に警戒心が強い部類に入ります。アプローチを間違えると簡単に飛ばれてしまい撮影に至ることができません。
フィールドで不意に見つけても、まずは丹念に観察しましょう。撮影する際に大きな動きは禁物です。車から見つけた場合は、急に停止すると周りの交通の危険になる場合や猛禽類に違和感を与え、飛ばれてしまう可能性が高くなります。現場から十分距離を取ってから安全な場所に駐車しましょう。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2 + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO125 F8 1/600 AF-S/シングル 手持ち撮影
遠距離から猛禽類を観察しつつ、併せて最適な撮影場所や隠れながら被写体まで接近できる良好な接近経路も事前に探しておくと、主導性を発揮した撮影が可能となります。
また、遠景でもシチュエーションの良い撮影場所を足で稼いで探すことにより、本来なら証拠写真程度の距離でも、違ったテイストの写真が撮影できるので作品の幅が広がります。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO2500 F8 1/200 AF-S/シングル 手持ち撮影
猛禽類は獲物や天敵に気付かれないようにじっと動かず、周囲の環境に溶け込んでいる場合もあります。中々探し出す事ができなかったり、被写体までの距離があるからといって悲観せず、双眼鏡を使用して細部までじっくり隈なく捜索したり、構図などの工夫を凝らしてフィールド撮影を楽しみましょう。
観察やアプローチ時に大切なことは、大きく2つあります。
1つ目は発見した猛禽類が「こちらを注視していないか?」を見極めることです。こちらを気にしている場合は、警戒している証拠です。飛ばれる可能性が高くなっています。撮影者が猛禽類から違和感のある危険な物と認識されているので、大きな動きをしなかったか?アプローチの速度は速くなかったか?をチェックして下さい。普段から意識して実践しないと上達しない能力です。

■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF5.6-8 R LM OIS WR + XF1.4 X TC WR
■撮影環境:ISO800 F8 1/450 AF-S/シングル 依託撮影
遥か遠くからでも、こちらの存在を察知する猛禽類。先に見つかってしまった場合、気付かないふりをしてやり過ごしたり、相手が注意を逸らすまで、じっと動かずフリーズしたりと、さまざまな対処方法がありますが、一番重要なことは、どうすれば相手が警戒心を解いてくれるのか?を常に考え行動することです。
2つ目は、観察の段階から被写体に隠れて撮影できる場所や、被写体に発見されずに近傍まで接近できる経路がないか?を見つけることです。このように撮影場所を早期に発見することが、今後の継続した撮影に結びつけるためには極めて重要になってきます。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1250 F8 1/500 AF-S/シングル 手持ち撮影
遠くで発見した被写体に接近するために、白紙的に活用するのは地形と植生になります。できるだけ低い姿勢を追及し、速度と音に注意しつつ焦ることなく長時間をかけて接近します。
この際、重要になってくることは、接近する前に撮影のイメージを思い描き、カメラの設定を完了させ、あとは撮影するだけの状態にしておくことです。これにより、不意に被写体が動いても最速で対応ができ、シャッターが切りやすくなります。
猛禽類を探す場合、農耕地・河口・渓谷などの地域がキーワードとなりますが、その際、猛禽類の餌場と視察が良好な場所という点は押さえるべき重要なポイントです。
猛禽類の餌となる魚類やネズミ・小鳥といった小動物が多く集まる地域に常日頃から関心を持っておくと良いでしょう。
また、それらを狙う猛禽類は視察が良好な場所で待機している場合が多いので、止まり木や鉄塔の頂部などを普段からチェックするように心掛けましょう。
撮影者も高台や高地などの視界が開け、全般が見渡せる見晴らしの良い場所で定点観察するのは猛禽類を探すには有効な手段です。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO2000 F18 1/1000 AF-C/シングル 手持ち撮影
農耕地でスズメの大群を見つけ、周囲の猛禽類が待機しそうな場所を双眼鏡でチェックすると、複数の猛禽類を発見しました。引き続き、獲物に狙いを定め飛び出すまで継続して観察を続け、飛び出してからカメラにスイッチして追従を開始します。猛禽類に追い詰められたスズメの大群が一斉にガードレールに逃げ込みます。
高速飛翔を得意とする猛禽類の一連の行動を、終始継続して観察・撮影できる地点を探すことは、被写体のロストを減らす意味において、とても大切になってきます。
止まりものを狙う
警戒心の強い猛禽類の枝止まり等を狙うには、猛禽類が普段から休息や待機によく利用している場所を事前に把握し、その場所を隠れて撮影できる地点を見つけることが大切です。
ここで重要なポイントは、人間のシルエットを猛禽類に見せないように着意することです。発見されてしまうと撮影がより困難になるおそれがあります。
そのため、状況によっては、車内から撮影することも人間のシルエットを猛禽類に見せないという観点から有効な場合があります。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1250 F22 1/500 AF-S/シングル 依託撮影
海岸の木杭に佇むオジロワシ、撮影する際に身を隠すものが周りにない場合や被写体がこちらに注視している場合は、直接的なアプローチを避け、車からの撮影にシフトすることにより、被写体に違和感を与えず撮影することが可能となります。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1000 F8 1/280 AF-S/シングル 手持ち撮影
野池の藪に潜み、カモ類を狙うオオタカ、このようなシチュエーションでは、カメラのフォーカスモードをAF-S(シングルAF)に切り替え、AFモードをシングルポイントに設定し、瞳にピントを合わせ撮影します。
その後の飛び出しを予期し、被写体検出AFを「鳥」やフォーカスモード・AFモードをAF-C(コンティニュアスAF)/ゾーンに移行しながら撮影するのも良いでしょう。
モードダイヤルのカスタムモードを使用し、あらかじめ任意の設定を記憶させておくと、止まりものから飛び出しを狙う際、設定の切り替えが短時間でスムーズに行えるようになるのでオススメです。
飛びものを狙う
猛禽類の飛び出しや飛翔を撮影する際は、カメラのフォーカスモードをAF-C(コンティニュアスAF)に切り替え、AFモードをゾーンに設定して撮影するのが基本となります。
また、被写体検出AFを「鳥」に設定するのも良い方法です。シャッターは高速連写を選択し、プリAF機能を使用してシャッターを切ると、約1秒前からシャッターが切れている状態で撮影が可能ですので、被写体が飛び出すタイミングでシャッターを切るのが遅れてしまった場合のリカバリーに最適です。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO640 F8 1/1600 40fps連写 被写体検出「動物」手持ち撮影
大きな猛禽類は比較的飛び出しや飛翔速度が遅いので、初めての撮影でもダイナミックなシーンが撮影しやすいのが魅力です。
冬の飛びもの撮影はバッテリーの消耗が激しいので、予備バッテリーは確実に携行するようにしましょう。
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO400 F8 1/500 AF-S/シングル 手持ち撮影
直立していた被写体が「前傾になる」「糞をする」「身体を動かす」などの動きを始めた場合、いよいよ飛び出す兆候です。カメラの設定を動体が撮影でき、継続して追従が可能なモードに切り替えて、その時を待ちましょう。
雪降りなど荒天時の撮影
雪降りや荒天時はAFが雪粒や低温時の空気の歪みに引っ張られてしまうなど、ピントが合わなくなる可能性が高まります。そのため通常の撮影より綿密にカメラの設定をする着意が必要です。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1600 F8 1/2500 40fps連写 被写体検出「鳥」手持ち撮影
フォーカスモードとAFモードがAF-C(コンティニュアスAF)/ゾーン、または被写体検出「鳥」でもAFが合いにくい強い雪の場合は、AFカスタム設定で被写体保持特性などの数値を上げて対応しましょう。

■撮影機材:FUJIFILM GFX100 + GF250mmF4 R LM OIS WR + GF1.4 X TC WR
■撮影環境:ISO1250 F5.6 1/1600 AF-S/シングル 手持ち撮影
大粒の雪が舞う条件では、雪が被写体の瞳と被ってしまう可能性があるので、フォーカスモードとAFモードをAF-S(シングルAF)/シングルポイントに設定し、フォーカスエリアを瞳に合わせ連写でシャッターを切り、雪が被写体の瞳と被らないカットが撮影できるような設定にしましょう。
まとめ
ここまで、冬の猛禽類の最適な撮影術を写真を交え解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
美しい雪降りの飛翔や銀世界と猛禽類を切り取ったダイナミックな写真は野鳥写真愛好家のみならず、カメラが初めての方も一度は撮影してみたいシーンだと思います。
そのためには、猛禽類の特性を理解し、失敗回避のアプローチやカメラ設定を万全にして撮影に臨まなければなりません。
探鳥で自分だけの撮影地を開拓し、じっくり猛禽類を撮影してみるのも良いのではないでしょうか。
■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員















