野鳥と花々との共演|春の花絡みを狙う!
はじめに
全国各地から花便りが届く季節となりました。里山のフィールドも春の息吹が感じられ、野鳥のさえずりが聞こえてくる日も間近に迫ってきています。
今年こそは、年に一度の撮影の機会でもある春の花々と野鳥の共演を撮影しようと考え、撮影を計画している方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、野鳥と春の花絡みの撮影方法をビギナーの方にも分かりやすく写真を交え解説していこうと思います。
花が絡む撮影地を探す
春の代表的な花は、何といっても「桜」です。桜は山間部や都市公園など、日本では比較的ポピュラーな樹木です。開花直後の花蜜やそれらに集まる虫を求めて、たくさんの野鳥が花の周りに集まります。
また、河川敷や田畑などの農耕地に咲く「菜の花」や里山の「ふきのとう」などの野花類も一見地味ですが、春の季語にもなっていることから、春らしい趣ある野花として、ぜひ野鳥と絡んでほしいと願う妄想を抱いていると、春の創作意欲がひしひしと湧いてきます。

■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR + XF1.4X TC WR
■撮影環境:ISO640 F8 1/320 AF-S/シングル 手持ち撮影
花蜜好きなスズメも盗蜜のため、満開の桜に集まります。蜜を吸う際、桜の花を根本からまるごとちぎって嘴で花を咥えるため、キュートな作品が比較的簡単に撮れるので、ビギナーにも非常に人気です。都市公園のスズメは警戒心も比較的薄いので、長時間じっくりと撮影可能な野鳥です。
桜の木の下に花がまるごと落ちているときは、スズメがいる証拠です。辺りを探してみると良いでしょう。野鳥撮影は風のない早朝が狙い目です。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1600 F11 1/160 AF-S/シングル 手持ち撮影
メジロも桜や梅などの花蜜に集まる野鳥の代表格です。集団で木々を点々としているので、1羽発見すると近傍に複数羽いる場合が多いです。
満開直後の桜の木は、花蜜量も豊富なので比較的長時間滞在してくれますが、開花後半は花蜜量の減少に伴い、すばしっこい動きをするので、撮影モードの設定等には注意が必要です。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2 + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO2500 F8 1/450 被写体検出「鳥」 手持ち撮影
農村部でも様々な野鳥が撮影可能です。田植え前の田んぼで辺りを窺うニホンキジのオス。春は繁殖期に入るため、目の周りの肉垂の赤も色の濃度が増し、鮮やかになります。
畔に咲き誇る「ホトケノザ」の紫、「ナズナ」の白、「菜の花」の黄が春めいた季節感を演出してくれました。
花と絡めた野鳥撮影の設定
桜や梅といった樹木と野鳥を絡めた撮影の場合、3分~5分咲きくらいまでは、被写体検出AFを「鳥」に設定、又はフォーカスモードをAF-C(コンティニュアスAF)に設定し、AFエリアはシチュエーションに合わせてシングルポイントやゾーンを切り替えて使用しています。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2 + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1250 F8 1/320 AF-S/シングル 手持ち撮影
満開前後や山桜など葉桜になる場合、花や葉が混みあい野鳥が花などに被ってしまうようになってきます。撮影の難易度も多少高くなり、良い条件で野鳥の見える回数が限定されてきます。
そのような場合には、フォーカスモードとAFエリアをAF-S(シングルAF)/シングルポイントに設定し、花の間から現れる野鳥をじっくり待ち、一瞬のタイミングを確実に捉えるようにしましょう。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2 + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1250 F8 1/125 AF-S/シングル 手持ち撮影
ふきのとうの中に佇む、日本では北海道のみに生息するエゾライチョウのオス。
春の野花との共演は、厳冬の冬が終わりを告げ、大地が目覚め息吹を増していく力強さを感じることができ、野生の中で生きる逞しさが写真に溢れ出ます。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1250 F10 1/250 AF-S/シングル 手持ち撮影
被写界深度を深くして(F値を大きくして)撮影することにより、野鳥だけではなく周囲の花々にもピントが合致し、より平面的な写真に仕上がってきます。
花と絡めた野鳥撮影の構図
あれこれ試行錯誤しながら構図を考え撮影することは写真撮影の魅力ですが、花と絡めた野鳥撮影においても構図を考え撮影することはとても大切です。
創意工夫して撮影を楽しんでいればあっという間に一日が終わってしまいます。アップの被写体や日の丸構図の写真から脱却するため、常に「この状況下で何ができるのか?」を考えて撮影を楽しみましょう。

■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR + XF1.4X TC WR
■撮影環境:ISO400 F6.8 1/250 AF-S/シングル 手持ち撮影
枝が入り組んだ満開の桜の枝に止まる一羽のツグミ。そのままではどう考えても「ただ撮っただけ」の写真にしかならないです。
そこで、桜全体をよく観察し枝で三角形が組める位置を見つけ出し、構図の「骨」を作ります。そこから更に後方に下がり、垂れる桜の枝々を活用して前ボケを作り、可能な限り桜の前ボケで茶色の余計な枝を消していきました。
被写体に飛ばれないように、自身が動く際は細心の注意が必要ですが、その場で「ただ撮っただけ」の写真を撮影するよりも、試行錯誤して撮影する方が、時間を忘れ真剣に写真と向き合えるので、撮影した写真にも自然と愛着が湧いてくるものです。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF200mmF2 R LM OIS WR + XF1.4X TC F2 WR
■撮影環境:ISO200 F2.8 1/125 AF-S/シングル 手持ち撮影
桃畑に現れたニホンキジのオス。桃の花は桜の花より濃いピンク色をしています。春のホトケノザは紫の小さな花を集団で咲かせるので、引きで撮影すると春めいた印象になります。
普段はアップで撮影するような場面でも、今一度周囲の状況を確認し、たくさんの花々と絡める場合は、被写体を適切な位置に配置して大観的な写真が撮影できるように心掛けましょう。
ボケ味を活かした撮影
写真の中に前後の立体感や奥行感を表現する手法の一つに「ボケ」の活用があります。咲き乱れる沢山の花々を活用し、写真に効果的な演出をしてくれるボケ味を楽しむのも春の花絡みの撮影の醍醐味です。

■撮影機材:FUJIFILM GFX100 II + GF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO800 F5.6 1/1700 AF-S/シングル 手持ち撮影
ラージフォーマットカメラの薄い被写界深度を活用すれば、被写体が佇むライン以外は、とろけるようなボケ味のグラデーションで写真を魅せることが可能となるので、新たな表現への挑戦が可能となります。

■撮影機材:FUJIFILM X-H2 + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO800 F8 1/40 AF-S/シングル 手持ち撮影
単調な写真であっても、咲いているレンゲの前ボケを効かすことで、写真の印象がガラリと変わります。被写体が春の花々と絡みそうなシーンでは、諦めることなく、花絡みの条件を考えて撮影場所の小移動を繰り返すことで、状況が好転する場合がよくあります。

■撮影機材:FUJIFILM X-T4 + XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR + XF1.4X TC WR
■撮影環境:ISO1600 F9 1/160 AF-S/シングル 手持ち撮影
シンプルな構図でしたが、背景に桜の花の玉ボケを入れることで、華やかさが際立ち美しい写真へと劇的に変化しました。
撮影する際は、常に「背景を意識」して撮影する着意を持つことが重要になってきます。
まとめ
春の野鳥と花絡みを狙うための撮影について、写真を交えて解説してきましたが如何だったでしょうか?
年に一度の大チャンスをモノにするために、シーズン直前の「今から」撮影機材の設定や撮影地のチェックなどの準備を万全に行いましょう。
フィールドで失敗せず楽しく撮影するために、事前に作品のイメージを膨らませ、頭の中の撮影テクニックの引き出しを増やしていくことはとても重要なことです。
読者の皆さまの春のスタートダッシュが無事に決まるように、記事を参考にしていただければ幸いです。
■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員













