冬景色の光と向き合うための基本とテクニック|斎藤裕史

斎藤裕史
冬景色の光と向き合うための基本とテクニック|斎藤裕史

はじめに

風景写真は、光をどう扱うかでその表情が大きく変わります。ホワイトバランスで色の温度を選び、露出補正で明るさの印象を整え、段階露光でわずかな違いを拾い上げる。降る雪をどう捉えるか、C-PLフィルターで空や雪の質感をどう引き出すか──これらはすべて「光を読む」ための大切な手がかりです。

同じ景色でも、設定ひとつで厳しさにも、やさしさにも、静けさにも変わる。だからこそ、風景写真は奥深く、そして面白い。今回の記事では、冬の風景を中心に、光と向き合うための基本的な考え方と実践的なテクニックを紹介します。

露出補正で「正しい明るさ」を導く──黒・白・グレーの紙で学ぶ基本

黒、グレー、白──この3色の紙をそれぞれ画面いっぱいに撮影すると、どれも似たようなグレーに写ってしまうことがあります。これは、カメラに内蔵された露出計が「中間トーンのグレー(18%グレー)」に写るように設計されているためです。
つまり、カメラは「どんな被写体でも平均的な明るさに調整しよう」とする性質を持っています。そのため、真っ黒な紙を撮ると明るく補正され、白い紙を撮ると暗く補正されてしまうのです。

このような状況では、撮影者が意図に応じて露出補正をかける必要があります。黒を黒く、白を白く写すためには、マイナス補正やプラス補正を使って、カメラの判断を「人の目」に近づけてあげることが大切です。
露出補正は、写真の印象を左右する重要な要素。まずはこの「紙の実験」で、カメラの癖を体感してみるのもおすすめです。

氷瀑の透明感を引き出す──露出補正で「見たままの美しさ」へ

■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF70-200mm F4L IS USM
■撮影環境:F11(+1.5・1/30秒)・ISO200・太陽光
■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF70-200mm F4L IS USM
■撮影環境:F11(±0・1/90秒)・ISO200・太陽光

氷瀑を撮影した際、露出補正をかけずにそのまま撮ると、実際よりも色がくすんで見えてしまいました。氷の青みや透明感が失われ、どこか濁った印象になってしまったのです。
そこで、プラス補正を加えてみると、目で見たときの印象にぐっと近づいた色調で写すことができました。氷の澄んだ青、光を透かす質感──それらが写真の中にしっかりと現れてくれたのです。

氷瀑のような明るい被写体は、カメラの露出計が「暗い」と判断してしまうことが多く、結果として実際よりも暗く写ってしまいます。だからこそ、撮影者自身が意図を持って露出補正を行うことが大切です。
「見たままの美しさ」を写真に宿すために──露出補正は、光を読む力を養う第一歩です。

白い雪景色でも「マイナス補正」が効く──光と影のバランスを整える

■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF24-105mm F4L IS II USM
■撮影環境:F11(-1・1/1000秒)・ISO200・太陽光
■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF24-105mmF4L IS II USM
■撮影環境:F11(±0・1/500秒)・ISO200・太陽光

一面が白く輝く雪景色──そんな場面でも、実は「マイナス補正」が必要になることがあります。たとえば、中央アルプス・宝剣岳の頂を撮影したとき。画面左には深い影が落ち、右側には強い光が差し込んでいました。カメラは暗部を明るくしようと自動で判断しますが、その結果、雪の質感が失われてしまいました。そこで、意図的にマイナス補正をかけることで、明るい部分の階調が保たれ、雪の繊細な質感や立体感がしっかりと表現されました。光と影のコントラストが強い場面では、露出補正によって「見た目に近いバランス」を整えることができるのです。雪景色=プラス補正、という固定観念にとらわれず、現場の光をよく観察して補正を使い分けることが、写真表現の幅を広げてくれます。

露出補正で風景の「表情」を引き出す──段階露光のすすめ

■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM
■撮影環境:F8(±0・1/350秒)・ISO200・太陽光
■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM
■撮影環境:F8(+1.5・1/125秒)・ISO200・太陽光

写真は、露出補正ひとつで印象が大きく変わります。露出のわずかな違いが、作品の表情を大きく左右するため、風景撮影の際、私は0.5段刻みでの「段階露光」を欠かしません。
たとえばこのシーンでは、段階露光を行ったことで、まったく異なる2つの世界を捉えることができました。アンダー気味のカットは、冬の厳しさを感じさせる画に。対してオーバー気味のカットは、やさしい光に包まれた朝のぬくもりを描いてくれました。

段階露光で撮影しておけば、パソコン上のサムネイルで並べて比較検討することができます。もし一枚だけの露出で撮っていたら、この二つの表情を見つけることはできなかったでしょう。
デジタルカメラの時代になり、フィルムの枚数を気にする必要はありません。だからこそ、段階露光は積極的に取り入れてほしいテクニックです。風景の「光の表情」を見極めるために露出の違いを味方につけてみませんか。

光の色を味方にする──ホワイトバランスの固定で冬の静寂を描く

■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF24-105mm F4L IS II USM
■撮影環境:F8(±0・8秒)・ISO400・太陽光
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カメラの「ホワイトバランス」は、太陽光や電球、蛍光灯などの光源を検知し、白いものを白く、自然な色合いに補正する機能です。けれども、光そのものにも色があります。たとえば朝日や夕陽は赤みやオレンジ色を帯びていますよね。そんな光の色をそのまま写真に取り込むには、ホワイトバランスを「太陽光(メーカーによっては『晴天』など)」に固定して撮影するのがおすすめです。

長野県木曽町の白川氷柱群を夜明け前に撮影したとき、ホワイトバランスを「太陽光」に設定すると、画面全体に青みが増して写りました。この「青み」は寒色であると同時に、冬の冷たさや静けさを印象的に表現してくれます。実際に写真を見た方の中には、「白熱電球」設定で撮影したのでは?と感じる方もいるかもしれません。
確かに「白熱電球」設定でも青みは強調されますが、どこか人工的な印象を受けることがあります(写真1)。一方、オートホワイトバランスで撮影すると(写真2)、カメラが青みを補正してしまい、現場の空気感が薄れてしまうことも。

撮影後にホワイトバランスを調整できる、RAW形式で記録しておくと安心です。画像編集ソフトを使えば、PC上で理想のホワイトバランスを選択しイメージ通りの色味に仕上げることができます。
冬の光は、冷たくも美しい。ホワイトバランスを固定することで、その一瞬の空気感をより深く写しとることができるのです。

降る雪をどう写すか──シャッター速度で変わる「雪の表情」

■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM
■撮影環境:1/250秒(±0・F4)・ISO200・太陽光
■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM
■撮影環境:1/60秒(±0・F5.6)・ISO100・太陽光
■撮影機材:キヤノン EOS 5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM
■撮影環境:1/4秒(±0・F27)・ISO100・太陽光

降る雪を写真に収めるとき、画面内に暗い部分を取り入れることで、雪の粒がよりくっきりと浮かび上がります。そして、シャッター速度の設定によって、その印象は大きく変化します。

一般的に、1/60秒で撮影した雪の動きは、肉眼で見たときの印象に近いとされています。一方で、1/60秒より速いシャッター速度では、雪の粒が止まったように写り、まるで空中に浮かぶ白い点描のような印象に。逆に、1/60秒より遅いシャッター速度では、雪が線状に流れ、幻想的で絵画的な表現になります。これはまさに「写真ならではの表現」といえるでしょう。

なお、カメラの背面モニターとパソコンの大きな画面では、雪の写り方や印象が異なることがあります。撮影時にはシャッター速度を変えて複数枚撮影し、最終的にはパソコンのモニターでじっくりと仕上がりを確認するのがおすすめです。
雪の表情は、光と時間のかけ合わせで無限に変化します。シャッター速度を味方につけて、あなたらしい冬の一枚を探してみてください。

ストロボで降る雪を描く──前ボケの美しさを引き出すテクニック

■撮影機材:キヤノンEOS 5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM
■撮影環境:F2.8(+2.5・1秒・調光補正-1)・ISO200・太陽光
■撮影機材:キヤノンEOS 5D Mark IV + EF70-200mmF2.8L IS II USM
■撮影環境:F2.8(+2.5・1秒・調光補正±0)・ISO200・太陽光

降る雪を印象的に写す方法のひとつに、ストロボを使った撮影があります。望遠レンズを使用し、ストロボの光が届いた雪を前ボケとして捉えることで、幻想的な雰囲気を演出できます。この手法が特に効果を発揮するのは、朝夕のうす暗い時間帯。日中よりも背景とのコントラストが生まれやすく、降雪が浮かび上がるように写ります。

画面全体の明るさは、通常の撮影と同様に「露出補正」で調整します。一方、前ボケとして写る雪の明るさは、ストロボの「調光補正」でコントロールします。たとえば、前ボケの雪が強く主張しすぎてしまった場合(写真下)は、調光補正をマイナス側に調整することで、より自然な仕上がりになります(写真上)。
このように、「露出補正」と「調光補正」を組み合わせることで、理想的な雪景色を描くことができます。雪の中での撮影は機材操作も難しくなりがちです。だからこそ、日頃からこれらの設定をスムーズに扱えるよう練習しておくことが、作品づくりの鍵となります。

雪景色×C-PLフィルター──美しさと違和感の境界線を見極める

■撮影機材:キヤノンEOS 5D Mark IV + EF24-105mm F4L IS II USM
■撮影環境:F11(+0.5・1/180秒)・ISO100・太陽光
■撮影機材:キヤノンEOS 5D Mark IV + EF24-105mm F4L IS II USM
■撮影環境:F11(±0・1/90秒)・ISO100・太陽光

風景写真を撮るなら、ぜひ一本は持っておきたい「C-PLフィルター」。中には常に装着しているという方もいるかもしれません。特に晴天時の雪景色では、フィルターを回転させることでファインダー内にその効果がはっきりと現れ、空の青や雪の白がより印象的に写ります。

ただし、ここで注意したいのが「偏光ムラ」「片効き」「効果の効かせすぎ」といった現象です。広角レンズで撮影する場合、画角が広いため、偏光効果が強く出る部分とそうでない部分が混在し、空の色が不自然に分断されてしまうことがあります。また、雪の白に露出を合わせた際、偏光効果が強く効いた空が濃く、時に濁ったように写ってしまうことも。

これらの違和感は、撮影後にパソコン上で調整するのが難しいため、現場での判断がとても重要です。念のため、C-PLフィルターを装着したカットと、フィルターなしのカットを両方撮っておくと、後の選定で安心です。
C-PLフィルターは、風景の魅力を引き出す強力なツールですが、使い方次第で印象が大きく変わります。雪景色の繊細な光を味方につけるために、効果の「さじ加減」を見極める目を養っていきましょう。

さいごに

写真は、カメラ任せでは決して写らない「光の表情」を、撮影者の判断で引き出すことができます。ホワイトバランスで色を選び、露出補正で明るさを整え、段階露光で可能性を広げる。雪の写り方をシャッター速度で変え、ストロボで前ボケを演出し、C-PLフィルターで空や雪の質感を調整する。これらの積み重ねが、作品の世界観を形づくります。

デジタル時代の今、試行錯誤は自由です。複数の設定で撮り比べ、後からパソコンでじっくり選ぶこともできる。だからこそ、現場での判断と工夫が、作品の幅を大きく広げてくれます。光を読むことは、風景と対話すること。その瞬間にしかない空気を写し取るために、これからも一つひとつの設定を丁寧に扱いながら、冬の風景と向き合っていきたいものです。

 

 

■写真家:斎藤裕史
1968年千葉県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、関西をベースに雑誌、コマーシャル撮影をおこなう。2000年より写真教室や撮影ツアーなどの講師業をスタート。写真雑誌などへの寄稿も。「楽しく撮った写真はいい写真」がモットー。blog「ふっても晴れても写真日和

 

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