キヤノン RF35mm F1.4 L VCMレビュー|やはり最新クラスのレンズは半端じゃない性能

杉本優也
キヤノン RF35mm F1.4 L VCMレビュー|やはり最新クラスのレンズは半端じゃない性能

はじめに

こんにちは。今回はCanon RF35mm F1.4 L VCMのレビューをします。

基本性能

いつものパターンで基本性能から入りたいと思います。
質量は約555gです。
レンズ名にも含まれている「VCM」という表記ですが、これは公式では下記のように紹介されています。

RF/EFレンズとして初採用のVCM(ボイスコイルモーター)によるフォーカスレンズ群の駆動、ナノUSMによるフローティングレンズの駆動を組み合わせた電子式フローティングフォーカス制御を採用。重い大口径フォーカスレンズ群を高推力のVCMで、軽量なフローティングレンズを省電力・小型のナノUSMで駆動し、それぞれの移動量を制御することにより、大口径レンズにおいて高速でスムーズなフォーカシングを実現しました。

公式ですから当然VCMについてはしっかりした説明がされていますが、実際に撮り手にとって大切なことはスムーズなフォーカシングのところですね。

僕自身使っていて実感したのですが、AFは極めて優秀です。ちなみに今回使用しているカメラはEOS R6 Mark IIです。そもそもカメラ側のAF性能が高いので、このレンズが速くて驚くというよりはシステムとしての完成度の高さが際立っている感じです。

レンズのフィルター径は67mmです。開放F値が1.4ですので重量もサイズも妥当なところではないでしょうか。僕はある程度重さのある機材に慣れているので全く苦ではなかったのですが、軽量化を求める方には少し大きく重く感じるかなと思います。
家電量販店で実際に手に取ってみるのが安心です。最近は実機を触ることなく予約したり購入したりする方が増えているそうです。僕のようなアナログな人間ですと少々怖さを覚えるのですが時代の流れでしょう。

F1.4の威力

■撮影機材:キヤノン EOS R6 Mark II + RF35mm F1.4 L VCM
■撮影環境:SS1/250 F1.4 ISO100

開放値の1.4で撮影しています。美しくボケていますね。
少し離れているので段階的にボケていく様がわかると思います。

こちらは拡大したものです。エッジの部分は極端にスパッと切れるようなボケではなく馴染んでいくようなナチュラルさも持ち合わせていて心地いいです。
極端な分離性のあるレンズと馴染むようなボケとでは好みの差があるので良し悪しで語るのは難しいのですが、少し広く撮影した時に違和感なく存在感を演出してくれるのでとても助かります。

■撮影機材:キヤノン EOS R6 Mark II + RF35mm F1.4 L VCM
■撮影環境:SS1/1250 F1.4 ISO125

こちらはもう少し近寄った例です。開放のピントの浅さがすごいです。ただ、やはり前後に強烈にボケるというよりは自然な感じを維持してくれているなと感じます。それゆえに繊細に見えて気持ちがいいです。

特筆すべきなのは、あまり派手な周辺減光がないことですね。先ほどの朝焼けの海は撮って出しですし、こちらも最低限に留めていますので、僕がレタッチや現像で薄めている訳ではありません。全くない訳ではないのですが、グラデーションがかなり美しいです。

周辺減光が極端なレンズはいい意味で味があるのでそれはそれで楽しめるのですが、レタッチなどで薄くしようと思うとそれなりに大変です。盛っていく分にはそこまで難しくないので、開放で撮った時の自由度が高いのはこのレンズの魅力だと思います。逆にある程度派手な周辺減光が好きな方には少し物足りなくうつるかもしれません。

周辺の流れ

■撮影機材:キヤノン EOS R6 Mark II + RF35mm F1.4 L VCM
■撮影環境:SS1/500 F8.0 ISO100

35mmを広角とするか標準域とするかは意見が別れるところだと思います。いわゆる広角レンズほど歪みも無く、当然広さもないのですが、では歪みがないかというとそんなこともないので境目に位置するのかなと。ちょっと意地悪と言いますか、右下に植物が入るように撮影してみました。しかし端っこもあまり極端には流れませんね。ですので、画面を広く使えます。あまりというかほとんど流れていない気がしますね。もう少し内側に引っ張られるかなと思っていましたがかなりスマートです。

周辺減光の際にも感じたのですが、いい意味で癖の無いレンズですね。もちろん周辺減光や歪みが一切ないわけではないのですが、写真撮影において端っこにまで意識が向くかというとなかなか難しいと思います。少し雑になってしまっても気にならないというのは明確にアドバンテージになると言っていいと思います。ポートレートにおいてもそんなに歪みに神経質にならず撮れると思います。

絞った時の解像感

■撮影機材:キヤノン EOS R6 Mark II + RF35mm F1.4 L VCM
■撮影環境:SS1/200 F8.0 ISO100

これはもうバッチバチに写ります。線が細い印象ですのでややこしい背景でも綺麗に写ります。光をかなり綺麗に細かく取り込んでいるのでしょう。僕のカメラは約2400万画素ですが、EOS R5系統のような高画素機ではもっと繊細に写るはずです。このレベルのレンズを完全に使いこなそうと思うと高画素機が視野に入ってくるのはとてもよくわかります。

これほど無限遠側が見通せる環境ではF8.0だと最奥部は少しボケています。おそらくF11くらいまで絞ればパンフォーカスになるかなと思いますが、通常範囲内ではF5.6でも綺麗に感じるはずです。SNSの隆盛も追い風となって開放でボケた写真の人気は凄まじさを増す一方ですが、こうした絞った写真を品質高く撮影しようと思うと最新クラスのレンズは半端じゃない性能まで来たんだなと改めて感じました。開放イコール立体感のような価値観もよく耳にしますが、絞ってもしっかり立体感があるあたりはとても頼れます。

逆光耐性

■撮影機材:キヤノン EOS R6 Mark II + RF35mm F1.4 L VCM
■撮影環境:SS1/5000 F1.4 ISO 100

おそらく癖のなさと繋がる点なのですが、逆光時でもフレアやゴーストは見当たりません。
昨今のレンズはこういった点で非常に優秀なものが増えていきていますが、このレンズも例に漏れず非常に高性能、高品質にアプローチされて設計されたのがよくわかります。

こちらは少し極端なレタッチを施していますが、RAWデータの品質も問題ないですね。
僕が個人的に最も好きな焦点距離の一つが35mmなのですが、ここまで完成度が高いと本当に惚れてしまうレンズの一つです。

■撮影機材:キヤノン EOS R6 Mark II + RF35mm F1.4 L VCM
■撮影環境:SS1/6400 F1.4 ISO125

こちらは撮って出しです。端っこに光源を配置しましたがそれでも変な光は入って来なかったです。オールドレンズのようなフレアやゴーストを楽しみたい方はこのレンズでは無理なので使い分けになりますね。こういった高品質なレンズと味のあるレンズを一本ずつ持っておくと面白いかもしれません。

他の選択肢もある

Canonは一眼レフの時にはEFマウントというマウントを採用しており、現在のミラーレス機ではRFマウントに変更されました。
35mmF1.4というレンズもEFマウントのものは存在します。そちらは760gくらいの重さがあるのでかなりの軽量化に成功したと言って良いと思います。

ただしEFの35mmの方は価格でいうとRFのものよりも安価です。またEFには35mmF2のレンズも存在します。前回EF50mm F1.8 IIのレビュー記事でも書いたように、マウントアダプターを使用すればそれらのレンズもミラーレス機で使えます。

この辺りのレンズと悩む方もいると思いますが、解像感や最新の光学性能を求めるなら確実にこのRF35mm F1.4 L VCMに軍配が上がることでしょう。EF時代のレンズも名レンズとして名高くファンの多かったという印象です。そちらのレビューも書きたいと思いますので気長にお待ち頂ければ幸いです。

 

 

■写真家:杉本優也
東京都生まれ東京都在住。妻を撮影し続けている活動がテレビメディアに特集されたことを機に、フォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせる。ライブ撮影やメーカーへの作例提供、機材レビューなどの活動をしている。

 

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