キヤノン RF100-400mm F5.6-8 IS USM レビュー|携帯性抜群の大注目望遠ズーム

GOTO AKI

03_作例.JPG

はじめに

 望遠ズームレンズといえば「重い・大きい・お値段も立派!」というイメージをお持ちの方も多いと思います。今回レビューさせていただく「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」は、今までの常識を覆すような「軽く・小さく・リーズナブル」と三拍子揃った大注目の人気レンズです。もちろん、RFレンズならではのシャープな高画質もウリの一つです。早速、写真をご覧いただきながら、レンズの特徴をお伝えしていきたいと思います。

デザイン・外観

01_RF100-400mm外観.jpg

 望遠ズームは大きくて重いという先入観も手伝い、初めて手にした時のスッと持ち上がる感触に「軽い!」と驚いたのが第一印象。約635gの重量は、標準ズームレンズ「RF24-105mm F4L IS USM」の約700gよりも軽量で、RFマウントのショートバックフォーカスによる自由度の高いレンズ設計の恩恵を感じます。

 グリップのゴム部分は幅が広く、握りやすいデザイン。私の手の大きさは平均的なサイズですが、手が小さい方も大きい方にも馴染みそうなグリップです。回転のストロークも滑らかで、ファインダーを覗きながらの操作も硬すぎずストレスがありません。さらに、このレンズはLレンズではありませんが、コントロールリングが独立していて、左手でレンズを支えながら、ISO感度や絞りなど割り当てた機能を簡単に操作できるのも評価したいポイントです。

 今回のレビューでは富士山方面へ足を運びましたが、レンズの全長は約16.5cmで、カメラバッグへの収まりも良く、現場での携帯性と機動性にも優れたレンズであることを実感しながらの撮影旅行でした。

02_ロックレバー.jpg
鏡筒が伸びてしまうのを防ぐロックレバーも搭載

レンズの解像力:F8~F11がおすすめ

 小さい、軽いといったモノとしての良さはすぐにわかりますが、レンズで大事なのはもちろん描写力です。

 「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」の解像力は中央部分では開放からF16ぐらいまで良好で、線の描写が最もシャープなのは絞り数値のF8~F11と感じました。風景を撮影している方はよく使う絞り値ですね。F22以上は回折現象でわずかな線の滲みがみられます。データ現像をCANON純正の無料現像ソフトDPP(DIGITAL PHOTO PROFESSIONAL)で行い、デジタルレンズオプティマイザ(DLO)をオンにしすれば、回折現象で低下した解像感がある程度復活しますので、深い絞り数値で撮影した場合はDLOを活用することを強くおすすめします。

 皆さんがお使いのカメラにデジタルレンズオプティマイザのメニューがありましたら、ONにして撮影すると撮影時に収差を自動的に調整して、解像度の高い描写のままにデータを現像できるので便利です。私が使っているEOS R5は、デフォルトでONになっています。ご自身のカメラをチェックしてDLOを確認してみてください。

 紅色に染まる夕景の富士山をF8で撮影。焦点距離は270mm。色補正やシャープネス補正なしの撮ったままの写真です。

03_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/160秒 ISO500 焦点距離270mm

 上の写真の翌日、12月半ばの14:30頃の撮影です。大沢崩れ周辺の山肌がカリッとシャープに描写されています。こちらは絞りはF11、焦点距離400mmで撮影した一枚。色再現やコントラストは、Lレンズである「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」に軍配があがりますが、その差にどれだけの人が気づくかはわからないレベルです。

04_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F11 1/2500秒 ISO400 焦点距離400mm

 枯れ枝の細かな表情をどれぐらい再現できるか試した作例です。微細な描写力は非Lレンズとしてはかなり詳細な描写力だと感じます。RFレンズおそるべし、ですね。

05_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/250秒 ISO400 焦点距離400mm

 こちらは小さな滝の流れですが、フィルターなどは使用せずISO感度を100に落とし、絞り数値をF16で撮影しています。流れを強調するには、静止している部分の細部がシャープであることが大事です。岩肌の描写は、日陰の低照度環境での撮影としては、かなりの質感表現ができていると感じます。線の細かさが、繊細な風景の息吹を伝えてくれます。

06_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F16 0.8秒 ISO100 焦点距離214mm

焦点距離400mmの実力

 「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」が発売後、「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」との比較を聞かれるかなと思っていたのですが、意外と多かったのが「EF70-300mm F4-5.6 IS II USM」ユーザーの方からの乗り換え相談でした。風景を撮る方にはこの焦点距離100mmの差はとても大きく、山や川や湖などで「これ以上被写体に近づけない!」という場面でも、100mmプラスされることで切り取りの強度が違います。400mmで撮り慣れてしまうと、焦点距離100mmでも広角に感じるくらい画角差は大きいです。

 同じ場所で撮影した2枚の写真をご覧ください。まず、焦点距離100mmで撮影した雲に覆われた富士山。絞りはF8、手持ち撮影。400mmの写真と比べるとずいぶん広く感じます。

07_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/500秒 ISO400 焦点距離100mm

 こちらは焦点距離400mmで撮影した作例です。山が迫ってくるような引き寄せ効果が特徴です。

08_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/800秒 ISO400 焦点距離400mm

超速AF

 「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」のAFはとても優秀。超音波モーターのナノUSMで、静止画撮影では高速AFが静かに、そして正確にぴたっと合います。Lレンズと比べると低コントラスト、暗い場所では反応が少し鈍いかなという程度の差です。作例ではAFが合いにくそうなシーンでわざと撮っていますが、低照度、低輝度のシーンでも食いつきの良いAF性能です。フォーカスリミッターがあれば尚いいなぁと思いますが、非Lレンズですからその辺は不要という判断でしょう。動画のAFも滑らかです。

 雲がかかり、陰でコントラストが低下した山の風景。赤い四角の部分がピントを合わせた箇所になります。

09_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/800秒 ISO400 焦点距離300mm
10_作例.JPG
赤枠部分がフォーカス位置。コントラストが低い箇所でもしっかりピントが食いつく

 風で揺れる湖面と反射する光を描写した動画。複雑な動きのある被写体をAFで記録しています。

手ブレ補正で手持ち撮影も楽々

13_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F7.1 1/25秒 ISO800 焦点距離214mm

 こちらは早朝の時間帯に手持ちで撮影した作例です。焦点距離は214mmで、シャッター速度は1/25秒。息をゆっくり吐きながらの丁寧なシャッターですが、1/25秒はぶれてもおかしくない低速シャッター。この作例では湖と山の境目にピントを合わせて、動いていない山の部分は静止して描写。動いている水面は、被写体ブレとして動きのある表情で捉えています。

 カメラがEOS R5の場合、カメラ側の手ブレ補正機構との協調制御で約6段分の補正効果が、カメラボディ内の補正がないEOS Rでも約5.5段分の補正効果があり、手持ちでの撮影シーンが広がっています。

最短撮影距離 0.88m

 「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」の最短撮影距離は88cm(焦点距離200mm時)、最大撮影倍率は0.41倍(400mm時)です。レンズの前玉からですと72cmぐらいの距離にある被写体まで近寄って、疑似マクロのように大きく描写することが可能です。軽くて携帯性がいいだけでなく、近接撮影までできるという撮影範囲の広さも魅力のレンズです。

14_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/500秒 ISO400 焦点距離214mm

ボケの描写も気持ちいい

 望遠ズームの面白さの一つがボケの表現です。よくF値が明るくないとボケが綺麗ではないという方もいらっしゃいますが、このレンズでは頭を柔らかくして、焦点距離の違いでボケの大きさを変えてみましょう。下の2枚は両方とも絞り数値をF8で撮影していますが前ボケの描写が異なります。この違いはなんでしょうか?

 焦点距離200mmで撮影し、前ボケは小さめに描写した作例。

15_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/320秒 ISO400 焦点距離200mm

 こちらは焦点距離300mmで撮影し、前ボケを大きく描写した作例。

16_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/500秒 ISO400 焦点距離300mm

 この2枚のようにレンズの焦点距離を変えたり、物理的に被写体との距離を近づけたり離れたりすることでボケの描写が簡単に変えることができます。

 こちらは同じく焦点距離300mmで後ろボケを意識して撮影した一枚です。「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」のF値が暗くても、これだけの焦点距離があれば背景はふわっとボケて柔らかな描写が可能です。

17_作例.JPG
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/1000秒 ISO400 焦点距離300mm

まとめ

 小さくて軽くていいことばかりのような「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」ですが、Lレンズとの差としては防塵防滴でないこと、レンズフードが別売りということで、プロが撮影するシビアな撮影環境では足りないなという部分も正直あります。しかし、写真愛好家の皆さんが休日や家族旅行などで撮りに行く分には十分な性能と描写力。軽さと小ささのメリットの方が防塵防滴がないデメリットよりも遥かに素晴らしく、取り回しの良さから風景を愛するアマチュア写真家さんに大推薦したいレンズです。

 今回、作例にはありませんがエクステンダーを装着すれば、最大で焦点距離800mm、開放F16の超望遠ズームレンズとしても使用可能ですので、気になった方は是非検討してみてください。

■写真家:GOTO AKI
1972年、川崎生まれ。1993~94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科・日本大学芸術学部写真学科 非常勤講師、キヤノンEOS学園東京校講師。

その他の商品はこちらから

関連記事

人気記事