第9回フィルムカメラを始めよう!夏のポートレートにもおすすめ!万能中級機:キヤノン EOS 7s編

鈴木啓太|urban
第9回フィルムカメラを始めよう!夏のポートレートにもおすすめ!万能中級機:キヤノン EOS 7s編

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はフィルムカメラを始めよう!シリーズ第9回として、万能フィルムカメラのCanon EOS 7sを紹介していきます。フィルムカメラの最後期にあたる2004年に発売されたEOS 7s、上位機種にも迫るバランスの良いカメラの魅力を紐解いていきたいと思います。

Canonフィルムカメラ最後の中級機 EOS 7s

EOS 7sとバッテリーパックBP-300

Canon EOS 7sは2004年3月に登場したフィルムカメラであり、その後CanonのフィルムカメラはEOS Kiss 7の発売をもって幕を閉じることになります。このEOS 7sはデジタル世代のEOSシリーズのレンズも使用できるなど、デジタルEOSと遜色のないカメラに仕上がっています。

公式には「当時のデジタルAF一眼レフカメラ『EOS 10D』と同等の最新AFシーケンスの採用などにより、ワンショットAF時において、発売時クラス最速のAFスピードを達成」とあります。筆者はEOSシリーズをEOS kiss X7、6D、5D Mark IV、R6と使用してきましたが、体感は6Dに匹敵するくらいのAFスピードがあります。

Canonが誇る、誰にでも使い易いインターフェースと今でもストレスなく使える強力なAFを兼ね備えた万能機種です。正にCanonフィルムカメラ技術の粋を結集して作り上げたと言っていいでしょう。ではそのスペックを見ていきましょう。

Canon EOS 7sスペック

形式 35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフカメラ
発売年 2004年
使用フィルム 35mmフィルム
画面サイズ 24×36mm
レンズマウント キヤノンEFマウント(完全電子制御方式)
ファインダー 視野率上下90%/左右92%、倍率:0.70倍
フォーカシングスクリーン 固定式、AFフレーム(7点)付き全面ニューレーザーマットスクリーン
測光方式 35分割SPC使用・TTL開放測光
AF測距点 7点
フィルム使用感度 ISO6~6400(DXコード自動設定ISO25~5000)
シャッター 1/4000秒~30秒(1/2段ステップ)、X=1/125秒
多重露出 9回まで設定可能
使用電池 リチウム電池(CR123A)2個
大きさ 146.7(幅)×103.0(高さ)×69.0(奥行き)mm
質量(重さ) 585g(本体のみ・電池除く・電池込みは+32g)

 

よく質問でEOS 7と7sどちらを購入した方が良いですか?と聞かれることが多いですが、筆者は「7s」をおすすめします。

その理由の1つは、故障のリスクがより低い点です。EOS 7は2000年発売で、EOS 7sは2004年となり、約4年の差があります。4年ともなればそれだけ使用年数、保管年数も長くなり、故障確率も上がります。修理ができない機種になりますので、少しでも新しい機種を購入し故障のリスクを軽減したいところです。勿論、7sでも外装から過度に使い込まれていることがわかるボディは避けた方が良いでしょう。

2つ目の理由は、デジタル時代のEFマウントレンズが使用できるようになっていることです。EOS 7ではTAMRONやSIGMAと言ったサードパーティー製EFマウントレンズの最新レンズは動作しないことが多いですが、7sになってからは、最新モデルのレンズ(※)まで動作するようになっています。

これはあくまで筆者が実際に使って動作を確認したに過ぎず、公式アナウンスではありませんので注意が必要ですが、非常に強力なメリットと言えるでしょう。デジタル一眼レフのEOSシリーズを使っている方、EOS RシリーズにEFマウントレンズをアダプター込みで使っている人にとってはレンズを共有できるという強みがあります。純正レンズのみを使用する方は、7の方がより安価ですので、状態の良いボディが見つかれば7でも問題ないと考えます。

※筆者動作確認済みレンズ一例
TAMRON 17-35mm F/2.8-4 Di OSD (Model A037) [キヤノン用]
TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD (Model F045) [キヤノン用]
SIGMA 35mm F1.4 DG HSM|Art [キヤノン用]
SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art [キヤノン用]

フィルムと相性の良い現行レンズたち

■フィルム:AGFA ULTRA 100

さて、ここからはフィルムと相性の良いEFマウントレンズを紹介していきます。EOSもミラーレスのRシリーズへと進化を遂げていますが、一眼レフ時代のEFマウントレンズもまだまだ現役。フィルムで使うのであれば、中古価格も落ち着いており手ごろな価格で買えるとあって、ボディと合わせて揃えやすいのもグッド!

ここでは4本のレンズを紹介しますが、これ以外にも様々な銘玉がありますのでぜひご自分に合ったレンズを探してみてください!

TAMRON 17-35mm F/2.8-4 Di OSD (Model A037) [キヤノン用]

1本目はタムロンの小型広角ズームレンズです。F2.8の明るさに加え17mmから35mmまで使えるので、旅行などに非常にオススメです。サードパーティーEFマウントレンズの中でも後期モデルですので、性能の高さと価格のバランスが良く、1本持っておきたいレンズです。

■フィルム:富士フイルム FUJICOLOR C200
■フィルム:Kodak Gold200

SIGMA 35mm F1.4 DG HSM|Art [キヤノン用]

2本目はシグマのレンズを一躍有名にした、Artシリーズから35mmの紹介です。抜群の解像度と広角ながら浮かび上がるボケはフィルムでも健在。デジタル時代のレンズですが、ソフトウェア補正に頼り切らない設計によりフィルム機とも好相性です。

■フィルム:富士フイルム FUJICOLOR C200
■フィルム:富士フイルム FUJICOLOR C200

SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art [キヤノン用]

続いてSIGMA Artシリーズを語るなら外せない一本、50mmF1.4です。35mmフォーマットにも関わらず、中判カメラの様な立体感に驚く事間違いなしのレンズ。重さも800gオーバーと重量級ですが、後述するバッテリーパックBP-300と組み合わせることで、ホールディングバランスが良くなります。

■フィルム:AGFA ULTRA 100
■フィルム:Kodak Gold200

EF 50mm F1.8 STM

最後は筆者最もおすすめのレンズ、ド定番標準レンズのEF 50mm F1.8 STMです。1987年発売の1型から構成が変わっていないオールドレンズ+現代コーティング化された2015年発売のレンズです。1万円台で購入できる価格と、オールドレンズテイストの描写、硬くなりすぎない表現は正にポートレート向きと言えるでしょう。ここからは海で撮影したその描写をぜひご覧ください。

■フィルム:AGFA ULTRA 100
■model:稲松悠太
■フィルム:AGFA ULTRA 100
■model:南条葉月
■フィルム:AGFA ULTRA 100
■model:南条葉月
■フィルム:AGFA ULTRA 100
■model:南条葉月
■フィルム:AGFA ULTRA 100
■model:南条葉月
■フィルム:富士フイルム FUJIFILM 200
■model:稲松悠太
■フィルム:富士フイルム FUJIFILM 200
■model:稲松悠太、南条葉月

EOS 7sおすすめの使い方

■フィルム:富士フイルム FUJICOLOR 100

EOS 7sは最後期のフィルムカメラですが、市場には一定数出回っており、年代も比較的新しめとあって状態の良いものが多い印象です。グリップは加水分解しやすく、べたついているものが多いのが難点ですが、アルコールなどで拭いてあげることでメンテナンスは可能です。ここではぜひ使っていただきたい組み合わせについて記載します。

1. バッテリーパックBP-300との組み合わせ
バッテリーパックBP-300は単3電池を使用可能にし、バッテリーパックのシャッターボタンにより縦位置で構えた時にも使いやすい優れものです。ボディとセットで販売されていることが多く、狙い目。単体で購入しても数千円程度ですので、探してみると良いでしょう。

バッテリーパックを付けることでSIGMA Artシリーズの重量級レンズもホールドし易くなるメリットがあります。シャッターボタンが増えるのも使い易いポイント。

2. オールドレンズとの組み合わせ
EFマウントは、一眼レフにしては様々なマウントアダプターがリリースされているマウントです。EF-YASHICA/CONTAX、EF-NIKON F、EF-M42、EF-PENTAX Kなどが今でも市場に流通しており、オールドレンズ遊びをすることも可能です。おすすめはM42マウント、YASHICA/CONTAXマウントでSuper-TakumarやPlanarと言った銘玉をSS1/4000のボディで使えるのは非常に便利。ファインダーは全面マットスクリーンのため慣れが必要ですが、フィルム機で使いたい方は持っていて損はないでしょう。

■フィルム:富士フイルム FUJIFILM 200
■model:稲松悠太
EF 50mm F1.8 STMも初期型のレンズ構成を踏襲しており、逆光で使用すると柔らかいフレアを発生させることができます。

まとめ

■フィルム:富士フイルム NATURA1600

今回はマニュアルでのピント合わせの楽しさよりも、利便性に重きを置いたAFフィルム中級機を紹介しました。価格とスペックのバランスが良く、かつ最後期のモデルということでまだまだ故障が少ないのもメリットのひとつです。

ポートレートといった相手がいる撮影では、フィルムのオートロードも便利な機能のひとつ。テンポよく正確なAFで切り取っていくスタイルはデジタルカメラと遜色のない使い勝手だと考えています。36回というフィルムカメラならではのシャッター回数制限をうまく使い、構図を考えながら様々なバリエーションを作り出せると良いですね!

より実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるフィルムワークショップ「フィルムさんぽ」にもご参加いただければ嬉しいです!ではまた、次の記事でお会いしましょう!

 

■モデル:
・稲松悠太(@yutainamatsu
・南条葉月(@nanjo_hazuki

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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