なぜこの写真を撮ったのか|コハラタケル × Kimura Hinami #01(前編)
はじめに
みなさん、こんにちは。
今回は、コハラタケルとKimura Hinamiが、東京・日暮里を一緒に歩きながらスナップ撮影をしてきました。撮影したあと、お互いの写真を見ながら、「なぜこの写真を撮ったのか?」をテーマに話をしています。
写真を見返しながら、「どこに惹かれたのか」「何を見ていたのか」をお互いに聞いてみました。ふたりの視点の違いを楽しみながら読んでいただけたら嬉しいです。
どこに惹かれたのか 何を見ていたのか

■撮影環境:絞りF3.2 SS1/500秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami
コハラ「この場所を見て”かわいい”と思ったポイントはどこ?」
Hinami「まず、お花と鉢の組み合わせがかわいいですよね。あと、オレンジっぽい花の色と夕暮れの光の雰囲気がすごく合っているなと思いました。」
コハラ「なるほど。」
Hinami「この写真、自転車をあえて入れているんです。普段から日常の風景を撮ることが多いので、自転車のような誰もが見慣れているものを入れることで、より日常感が出せる気がして。だから意図的に画面へ入れました。」
コハラ「それはすごくわかる。自転車が入っていなかったら、写真が綺麗すぎる印象になるよね。」
Hinami「そうなんです。もちろん、お花だけを撮るという選択肢もあったんですけど……」
コハラ「綺麗にまとまりすぎると、生活感が薄くなることがあるよね。だから、自転車が入ることで『普段見ている景色』として自然に受け取れる気がする。」
Hinami「そうですね。そんなところが、この写真の好きなポイントです。」

■撮影環境:絞りF4.5 SS1/320秒 ISO400
■写真:コハラタケル
Hinami「私はたぶん、この写真は撮らないです。」
コハラ「それ、逆に聞きたい。なんで撮らないと思ったの?」
Hinami「まず、全体が影になっていて光があまり入っていないですよね。それに、私は普段、お花のような少し色味のあるものを撮ることが多いので、この写真は少し地味に感じてしまうんです。」
コハラ「自分はそういうところが好きなのかもしれない。派手な色があまり入っていないこともそうだし、単純に緑が好きっていうのもある。それと、この白い壁が背景になることで木のフォルムが引き立って見えるんだよね。途中で枝が切られている形も含めて、この独特の形が目立つ場所だった。ほかにも木がある場所はあったけど、白壁を背景にして木の形を見せれる場所が今回はここしか見つけられなかった」
Hinami「なんというか、芸術性がありますよね。この写真。」
コハラ「そうなのかな(笑)」
Hinami「偉人が描いた絵みたいな雰囲気があります。」
コハラ「そう言ってもらえるとうれしいね。話してみると、自分は形をすごく大事にしてるかもしれない。」
Hinami「形ですか?」
コハラ「うん。色と形。この二つを大事にしてる。」

■撮影環境:絞りF4 SS1/200秒 ISO400
■写真:コハラタケル

■撮影環境:絞りF3.5 SS1/160秒 ISO400
■写真:コハラタケル

■撮影環境:絞りF2.5 SS1/500秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami

■撮影環境:絞りF2.5 SS1/125秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami

■撮影環境:絞りF3.2 SS1/400秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami
コハラ「こういう写真って難しいと思うんだよ。花の写真は色が華やかだし、主題が明確だから撮りたくなる理由はわかる。でも、この写真には目立つものや派手な色があるわけじゃない。だからこそ、なんでここを撮ろうと思ったのかが気になる。何に惹かれたの?」
Hinami「さっき、派手すぎないけど少し華やかなものが好きとお話ししたんですけど、最近はどうしても、みんなが好きそうなものを撮ろうとしてしまうことが多くて。お花やキラキラしたもの、青空って、やっぱりみんな好きじゃないですか。でも、私は地味な風景も好きなんです。コハラさんが撮っているような、なんでもない道だったり、そういう景色にも惹かれます。この場所は夕方の光が差し込んでいて、奥行きを感じられるところがいいなと思いました。」
コハラ「この緩やかなカーブも効いてるよね。」
Hinami「そうなんです。この先には何があるんだろうって、見る人が少し気になるような構図を意識しました。」
コハラ「マンホールの蓋もいいよね。三つ並んでいて、手前から奥に向かって小さく見える。道標のようになっていて『この先には何があるんだろう』っていう想像がさらに膨らむ気がする。」
Hinami「実は奥がもう少し見える構図でも撮っていたんです。」
コハラ「じゃあ、あえて奥が見えないほうを選んだんだ。」
Hinami「はい。こちらのほうが、ワクワク感があるかなと思って、こちらを選びました。」
コハラ「奥が見えないことによるワクワク感か。それは面白い視点だね。」

■撮影環境:絞りF4 SS1/250秒 ISO400
■写真:コハラタケル

■撮影環境:絞りF3.5 SS1/200秒 ISO400
■写真:コハラタケル
コハラ「これは、さっきのHinamiちゃんの写真の左側にあった花だね。Hinamiちゃんは気づかなかったって言ってたけど。」
Hinami「気づかなかったです。」
コハラ「自分は、鉢植えが立っていたら撮ってない。倒れていたから撮った。でも、『面白い』というよりは、『かわいそう』っていう気持ちのほうが強かったかな。かわいそうだから残しておきたいという感覚。自分は写真を撮る理由のひとつに、幼少期の頃の自分を救うっていうテーマがある。だから、こういうかわいそうな存在だったり、ふつうの中からはみ出しているものを見ると、撮りたいというより撮らなきゃいけないという感覚になる。だから、どうしても撮っちゃうんだよね。」
Hinami「そうなんですね。」
コハラ「もちろん、人によって見え方は違うと思う。面白いと感じる人もいるだろうし、違和感があっていいと思う人もいるかもしれない。でも、自分はかわいそうだなって思った。人で例えるなら、転んでしまっているような。」
Hinami「でも、起こそうとはしなかったんですね。」
コハラ「しなかったね。」
Hinami「ただ、これが意図的にこうなったのか、それとも風で倒れたのかはちょっと気になりました。」
コハラ「風じゃないかな。まだ生きている花だし。誰かがわざと倒したんだとしたら、それはちょっと悲しいな。」
Hinami「そうですね。あと、光がないところも悲しいですよね。」

■撮影環境:絞りF2.5 SS1/500秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami

■撮影環境:絞りF4 SS1/500秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami

■撮影環境:絞りF5 SS1/400秒 ISO400
■写真:コハラタケル

■撮影環境:絞りF5 SS1/400秒 ISO400
■写真:コハラタケル

■撮影環境:絞りF2.8 SS1/500秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami
コハラ「実際、撮ってるときってそんなに考えないよね。こうやってふたりで話してるから、『そういえば、こうだったな』ってあとから言葉にできるけど、撮ってる瞬間は違う。」
Hinami「そうですね。撮っているときはあまり考えずに、『なんかいいな』っていう感覚で撮っています。」
コハラ「そうだよね。だから今は、その『なんかいい』の中身をふたりで紐解いてる感じだよね。」
Hinami「そうですね。」
コハラ「そういえば、光より影のほうが好きって言ってたよね。」
Hinami「はい。それは昔から変わらないです。スナップ写真を撮るようになってから、光と影の魅力にすごく惹かれるようになりました。もちろん、お花や自転車、カーブミラーみたいな、わかりやすい被写体も好きなんですけど、スナップで最初に見ているのは光と影なんです。その次に、お花やそういう被写体を見ることが多いです。」
コハラ「へぇ。一番なんだ、光と影が。」
Hinami「はい。一番です。この写真も、葉っぱそのものを撮ったというよりは、葉っぱによって壁にできた光と影を被写体として撮った、という感覚ですね。」

■撮影環境:絞りF3.2 SS1/160秒 ISO400
■写真:コハラタケル
コハラ「この場所、Hinamiちゃんは寄りのカットしか撮ってなかったっけ?」
Hinami「はい。寄りの写真だけです。」
コハラ「花だけを寄って撮ったってことか。」
Hinami「そうですね。今回は焦点距離のこともあって。」
コハラ「たしか50mmだったよね。」
Hinami「はい。」
※道幅が狭く、50mmだと引いて撮ることができない環境だった。コハラ「この写真は影になっているところの緑が好きなんだよね。撮ったのは夕方6時から6時半。手前には少し光が当たっていて、奥はもう影になっている。この弱い光の中で光の強弱がある感じが好きなんだ。こういう柔らかい光の環境だと、影に入った緑は深みが増して、光を受けた黄色は自然と浮かび上がって見える。そのコントラストがきれいなんだよね。」
Hinami「たしかに、光が強いと黄色は飛びやすいですもんね。」
コハラ「そうそう。このシーン、自分は寄りと引きの両方を撮ってるんだ。でも、最終的には引きの写真のほうが好きだった。」
Hinami「私も引きのほうが好きかもしれないです。」
コハラ「自分は基本的に寄りも引きも両方撮るようにしてる。一枚で写真を完成させるというより、複数枚で見せるほうが好きだから。展示も写真集もそうだけど、一枚で完結させるというより、写真同士の関係性を大事にしてる。」
Hinami「あと、この黒い汚れみたいな部分が影にも見えて、面白いですね。」
コハラ「こういう汚れも好きなんだよね。綺麗な壁もいいけど、汚れやシミがあるほうが時間の流れも感じられる。自分は綺麗すぎるものより、少し汚れがあったり、生活感があったりするもののほうが好きかな。人間らしさというより、日常感なのかもしれない。さっきHinamiちゃんが話していた自転車と同じで、こういう要素が入ることで、普段見ている景色に近づく気がする。」
おわりに
今回は、日暮里を一緒に歩きながら写真を撮り、そのあとにお互いの写真を見ながら話をしてみました。普段は感覚で撮っていることも、話をしてみると「そういうことだったのか」と気づくことがありました。
前編は以上となります。後編もお楽しみに。
コハラタケル
1984年、長崎県生まれ。東京在住。建築業、フリーライターを経てフォトグラファーに転身。幼少期から手足の多汗症(掌蹠多汗症)に悩んできた経験を背景に「症状の認知を広げること」を動機のひとつとして制作を続けている。主な個展に2022年『未だ知らないで』(FUJIFILM WONDER PHOTO SHOP)2023年『撮縁』(ライカギャラリー東京・京都)2025年『Contrast』(イリスギャラリー)。
Kimura Hinami
1996年、神戸生まれ。大学時代にカメラと出会い、以来、写真の世界に魅了される。理学療法士として働く傍ら、日常の風景やポートレートを撮り続け、2025年8月よりフリーランスフォトグラファーとして独立。日々の中に潜む光や美しさを見つめ、現在は写真集出版や個展など、作品発表を中心に活動している。2025年10月、写真集「In Light, I Live」(ミツバチワークス)を発表、11月に個展「In Light, I Live」を開催。












