ポートレート写真での編集のコツ ~逆光編~|あらまこと

あらまこと
ポートレート写真での編集のコツ ~逆光編~|あらまこと

イントロダクション

皆さん、こんにちは。フォトグラファーのあらまことです。

今回は、ポートレート写真編集のコツ~逆光編~を紹介していきます。
前回は青空編として、晴れ間での撮影の際に、青空をより綺麗に見せていくにはどうしたらいいかをお伝えしました。

今回は逆光編です。逆光を使う撮影はとても印象的な写真になるので、よくポートレートの写真では見られる光の向きです。
ですが、逆光の撮影は、編集でサポートしていくことを前提に撮影段階で対策をしながら撮影をすることが求められる撮影方法のため、少し難易度が高いですよね。

そのため、今回の記事では編集方法だけではなく、どのような撮影方法で逆光の写真を撮影して、編集でより綺麗に仕上げていくのかを紹介させていただけたらと思います。

逆光で撮影する時に考えていること

まず、逆光の写真がどのように仕上がるのかを見て、その編集のゴールを考えてみることから始めましょう。

こちらの写真のように、逆光の写真は太陽がカメラ方向にある状態で撮影をするため、光がふわっと入り、印象的な写真になります。
ただし、何も意識せずに、カメラのオートモードでこの向きで撮影しようとすると顔が真っ黒になってしまって 上手く撮影できなかったという経験をした方も多いのではないでしょうか?
逆光の写真は、太陽の強い光を白飛びしない範囲で残すために暗めに撮影をしていくことが求められます。

ただし、この「暗め」というのが少し厄介で、あまりにも暗めに撮りすぎると編集してもノイズがのってしまい、あまり綺麗に仕上げられないことがあります。そのため、白飛びを防ぎつつ、被写体も黒潰れしない程度の暗さで撮影をする必要があります。
これを実現するには、マニュアル設定で光量を微調整していく工夫が必要です。
ここがまず逆光撮影の第一関門です。

この「白飛びを防ぎつつ、被写体も黒潰れしない程度の明るさ」を理解するには、たくさん撮影して、自分で編集した時に仕上げやすいかそうではないかトライアンドエラーを繰り返す必要があり、 ここはどうしても練習あるのみといった形になります。
よって、今回の記事のように、他の方が撮影した写真のカメラ設定値は自分自身が撮影する参考になりません。
あくまで、設定値ではなく、撮影した写真の暗さ加減を参考にしてください。

■撮影機材:SONY α7 III + Carl Zeiss ZEISS Batis 2/40 CF
■撮影環境:ISO200 F2.0 1/8000

今回の写真の撮って出しの明るさはこちらとなります。
太陽の中心は白飛びしていますが、それ以外はギリギリ白飛びしない程度にしつつ、モデルさんの顔が暗くなりすぎない程度の明るさで撮影をしています。

ここでポイントなのが、「桜で太陽をどのくらい遮るか」です。
太陽光がそのままカメラに当たっている場合と、太陽光を桜で遮っている写真だと、光の周り方が変わってくるのがわかるかと思います。

■撮影機材:SONY α7 III + Carl Zeiss ZEISS Batis 2/40 CF
■撮影環境:ISO200 F2.2 1/8000

顔のディテールをどの程度残して撮影をするか、フレアをどの程度許容するかをカメラの角度を微調整しながら撮影をしていきます。
今回は顔の表情をしっかり見せたいので、フレアが顔にかからない程度に桜で太陽の光を遮って撮影をします。

このように撮影時にどのくらい光を入れて撮影をするかで逆光の写真の印象はここまで変わります。
そのため、編集で綺麗な写真に仕上げていくのはもちろん大事ですが、撮影の段階で逆光の光をどの程度写真に残していくのかを考えながら撮影をすることもとても大切です。

自分の欲しい表現の写真にどんな光が必要なのかを撮影する際に意識していくことで、なんとなく撮れたのではなく、ちゃんと狙ってその光を撮影する感覚に近づいていきます。
そうすると、どんどん逆光を理解しながら撮影をすることができるようになってくると思います。

逆光写真の編集~基本補正~

ここからは実際に逆光の写真を編集していきます。
まず、基本補正から調整をしていきます。

ここでポイントとなるのは、逆光の写真の撮って出しはかなりコントラストが強い状態なので、これを和らげていく必要がある事です。

コントラストが強い状態というのは、明るい部分と暗い部分の明るさの差が大きいということ。
つまり暗すぎる部分と明るすぎる部分が出来てしまう状態を示します。
この状況を明暗差が激しいと言ったりするので、この言い回しも覚えておくといいですね。

そのため、この明暗差が激しい状態をまずは滑らかにして、明るすぎる部分は光量を落とし、暗すぎる部分を明るくして、写真全体のコントラストを低くしていく作業を行います。

今回の設定値はこちらです。

撮って出しの状態だと、少しマゼンタが強い印象だったので色温度を低めに、色かぶり補正を緑寄りにすることで、全体的に青緑っぽい印象を強くして爽やかにします。

その後、太陽光が強すぎるのでハイライトと白レベルを最低値まで下げて、太陽光の印象を弱めます。
あとは、全体的なコントラストを低くし、露光量を調整します。微調整で黒レベルとシャドウを調整し、上記画像のような設定値にします。
これで撮って出しの時よりはコントラストが弱まり、光の階調がなだらかになったのがヒストグラムからも確認ができます。

ただ、このままだとモデルさんの明るさがフラットになりすぎていて、眠たい印象になっているかなと思います。

逆光写真の編集~トーンカーブ~

ここからはモデルさんの髪の毛や洋服は暗いまま、肌の明るさを上げてメリハリをつけていきます。
この微調整はスライダーでは難しいので、トーンカーブを使用して自分の理想に近づけていきます。

設定としてはこちらのようにトーンカーブを調整します。

こちらの画像のように、シャドウ部分は露出を下げて、髪の毛の明るさがあまり明るくなりすぎないようにしつつ、モデルさんの肌の明るさである中間調の明るさを上げます。
そして、背景の空が明るくなりすぎないようにポイントを追加して、ハイライトを抑えるような形でトーンカーブを調整します。

このように調整をかけることで、コントラストを低くして眠たくなった印象の写真を、モデルさんの肌感により効果が出るように調整して、立体的にすることができました。

今回は、色の調整に関してはそのまま基本補正のみの状態で、すっきり爽やかに仕上がっているので、このままで完成にします。
あまり項目をいじりすぎても、違和感が出てしまうので無理に触らず、写真の素材の良さを活かしてみたいと思います。

このように、編集前と後を見比べてみると、全体的なコントラストは下がっているけれどモデルさんの肌感は損なわず、立体的に見えるように調整できているかなと思います。

以上のように、私の逆光写真の調整方法としては

1.全体的なコントラストを下げて、フラットな光にする
2.モデルさん周辺の光を調整して、立体的に調整していく

この流れで、進めていくことが多いです。

2のように、モデルさんだけに調整をかけていく方法としては、モデルさんへマスクをかけて、別途調整する方法もあります。

被写体を選択し、露光量などを調整してモデルさんにだけ効果を適用することで、背景に変化をつけることなく調整することもできます。
もう少し光を追い込みたい場合は、このようにマスクをかけて別途調整していくのもありだと思います。

大切なこととしては、写真を編集する上でツールはたくさんあるので、それらをどのように利用して、写真をどういう印象にしたいのかのゴールを明確にすることです。
このゴールさえ見失わなければ、どんな手段を使ってもいいと思います。

最後の仕上げは、トーンカーブを利用しましたが、どんな方法を使ってもいいと思います。
この記事が読んでくれた方の編集する上でのTipsになってくれていたら嬉しいなと思います。

今回で、ポートレート写真編集のコツの連載は終了となります!いかがだったでしょうか?
この3つの記事を順番に読み進めていくことで、編集する際に意識することが見えてくると思うのでぜひ参考にしてもらえたら嬉しいです。

 

■モデル:溝畑幸希

■写真家:あらまこと
神奈川県生まれ。関東を拠点に活動。ポートレート、スナップを中心にファッションや広告案件、出張撮影でのウェディング撮影などで活動している。SNS総フォロワー6万人以上を有し、SNSでの発信力を活かしながら写真活動の幅を広げている。

 

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