出会いは一期一会。スナップで桜の表情を楽しむ方法|金森玲奈

金森玲奈
出会いは一期一会。スナップで桜の表情を楽しむ方法|金森玲奈

はじめに

まだまだ寒い日が続きますが、梅も綻びだし少しずつ春の足音も聴こえ始めているように思います。今回は春の代名詞とも言える「桜」を撮る時のちょっとしたコツやさまざまな撮り方をご紹介します。

光の向きやシーンに合った露出を意識しよう

■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + New Petzval 55 mm f/1.7 MKII
■撮影環境:1/60sec F– +2 2/3EV補正 ISO200 WBオート
※キヤノンとライセンス契約のないレンズのため絞り値は記録されないので「F–」と表記しています。

青空をバックに撮りたいのに何故か空が白くなってしまったり、見た目よりも花が暗く写ってしまったという経験がある人もいると思います。まず、青空をバックに撮りたい時は自分が太陽を背に被写体を見る方向でカメラを構えてみましょう。

青い空に真っ白な桜が映えます。
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF50mm F1.8 STM
■撮影環境:1/8000sec F1.8 +1/3EV補正 ISO100 WBオート

被写体に正面から光が当たる「順光」の状態で撮ることで、空の青さを残しつつ桜の色も綺麗に再現できるでしょう。反対に被写体である桜の背後から光が当たる「逆光」状態の場合は、カメラの方を向いている桜の正面は影になるため、実際に見るよりも暗く写ってしまいます。そんな時は露出をプラスに補正することで暗くなった桜も明るく再現することができます。ただし、露出をプラス補正した分、ハイライトである空なども同じだけ明るくなるので白く飛んでしまいますが、空の階調を残すのか、花の色味を優先するのかはご自身の好みで選択してみてください。

露出をプラスに補正することで八重桜のピンク色を綺麗に再現できました。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + New Petzval 55 mm f/1.7 MKII
■撮影環境:1/200sec F– +3EV補正 ISO100 WBオート

反対に、周囲が暗めのシチュエーションの場合は周りの暗さを生かすために露出をマイナスにしてみるのもオススメです。また、露出をマイナスにすると色味も濃く再現されますので河津桜や八重桜など、色の濃い桜を撮る時にも生かせると思います。

暗い中に桜の花の白さが引き立ちます。
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF24-70mm F2.8 L IS USM(56mm)
■撮影環境:1/1000sec F2.8 -1 2/3EV補正 ISO100 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF50mm F1.8 STM
■撮影環境:1/200sec F1.8 -2EV補正 ISO100 WBオート

桜を撮るならやっぱり晴れの日がいい?

花より団子、は置いといて。
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF24-70mm F2.8 L IS USM(24mm)
■撮影環境:1/400sec F2.8 +1 2/3EV補正 ISO100 WBオート

気持ちの良い晴れた日の桜はことさら輝いて見えるものです。ただし太陽が真上に来る時間帯だと影も強く出てしまうため、晴れた日は陽が昇りきらない午前中や光が斜めに差し込む午後の時間帯を狙ってみるのがオススメです。

早朝や夕方は地面に伸びる影も狙い目です。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + Voigtlander NOKTON 50mm F1 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/400sec F1.2 +3EV補正 ISO100 WBオート

個人的には光がやわらかくまわる薄曇りの日が好きです。コントラストが下がるのでメリハリのある写真はあまり撮れませんが、影が強く出ることも強い光で白飛びする心配もないのでとても撮りやすいと思います。ただし、空を広めにフレーミングすると空の白さと桜が同化してしまう場合もあるのでフレーミングを工夫するか、明るさを調節してやわらかな雰囲気の中の桜を楽しんでみてください。

満開直後のソメイヨシノはまだ少しピンクがかっていてとても綺麗。
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF70-200mm F2.8 L IS USM(200mm)
■撮影環境:1/250sec F7.1 +1 1/3EV補正 ISO400 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF50mm F1.8 STM
■撮影環境:1/125sec F1.8 +2 1/3EV補正 ISO100 WBオート

そして、意外にオススメなのが雨の日です。さすがに土砂降りの中での撮影は大変ですが、小雨や止んだ直後などは晴れの日とはまた違った桜の表情を楽しむことができます。

花散らしの雨もまた一興。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF24-105mm F4 L IS USM(105mm)
■撮影環境:1/160sec F4.0 +2/3EV補正 ISO250 WBオート
枝に花びらのデコレーション。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF24-105mm F4 L IS USM(105mm)
■撮影環境:1/125sec F4.0 +1 1/3EV補正 ISO640 WBオート
水鏡の中のソメイヨシノ。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF24-105mm F4 L IS USM(105mm)
■撮影環境:1/160sec F4.0 +1 2/3EV補正 ISO1250 WBオート
満開の時期は大勢の花見客でごった返す近所の都立公園。大雨でほとんど人がいなかったからこそ撮れた奇跡の一枚。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF24-105mm F4 L IS USM(88mm)
■撮影環境:1/100sec F4.0 +1 2/3EV補正 ISO800 WBオート

動きのある桜写真にトライ

動きのある桜の写真というとやはり桜吹雪を思い浮かべる方が多いかと思います。目の前が真っ白になるほどの花吹雪を撮れたらそれはもう至福の瞬間ですが、こればかりは運の要素が強いため狙って必ず撮れるとは限らないのがつらいところ。そこでもう少しハードルの低い花筏で動きのある写真を狙ってみましょう。

川面に浮かぶ桜の花びらは普通に撮っても綺麗ですが、シャッタースピードを遅くすることで水の流れに沿った花びらの軌跡を写すことができます。
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF70-200mm F2.8 L IS USM(79mm)
■撮影環境:1/20sec F2.8 -1 1/3EV補正 ISO6400 WBオート (三脚使用)

スローシャッターで撮影する時は三脚があると手ブレを防止し、綺麗な軌跡を写せます。
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF70-200mm F2.8 L IS USM(79mm)
■撮影環境: 20sec F8.0 -1 1/3EV補正 ISO100 WBオート (三脚使用)

また、水の流れが速い場合はそこまで遅いシャッタースピードでなくてもダイナミックな水流が描く動きのある花筏を撮ることができます。

■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical RF-mount
■撮影環境:2sec F32 +2/3EV補正 ISO100 WB白熱電球

白と黒が描く静かな世界

桜はモノクロとの相性が良い被写体だと思います。色の情報がなくなる分、花びらのフォルムや質感により目が向きますし、白と黒という二色の中に横たわる数えきれないほどの中間トーンの美しさに気付くことができます。最近はカメラ内でモノクロ表現を楽しめるフィルターなども各カメラメーカーが搭載していますので、ぜひ試してみてほしいです。

花筏と鷺。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/100sec F8.0 +1/3EV補正 ISO100 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF50mm F1.8 STM
■撮影環境:1/160sec F1.8 -2EV補正 ISO100 WBオート
色がある時は重い印象を与えがちな桜の幹も画面を引き締めるのに一役買う存在に変身。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF24-105mm F4 L IS USM(50mm)
■撮影環境:1/100sec F4.0 ISO320 WBオート クリエイティブフィルター(ラフモノクロ)
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF24-105mm F4 L IS USM(33mm)
■撮影環境:1/80sec F4.0 ISO320 WBオート クリエイティブフィルター(ラフモノクロ)

桜のある景色を楽しむ

何気ない日常のスナップも桜が写り込むだけで少し心が踊るような気がします。

■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF24-105mm F4 L IS USM(105mm)
■撮影環境:1/160sec F4.0 +2 1/3EV補正 ISO1600 WBオート
ボートを楽しむカップルを見るとつい心配してしまう井の頭公園。
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF24-70mm F2.8 L IS USM(70mm)
■撮影環境:1/1250sec F2.8 +1EV補正 ISO100 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF135mm F1.8 L IS USM
■撮影環境:1/160sec F1.8 +1/3EV補正 ISO125 WB白熱電球
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF24-105mm F4 L IS USM(80mm)
■撮影環境:1/160sec F4.0 +1/3EV補正 ISO100 WBオート
八重桜の鮮やかなピンク色だけを残したくてあえてアウトフォーカスで。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + New Petzval 55 mm f/1.7 MKII
■撮影環境:1/400sec F– +2 2/3EV補正 ISO100 WBオート
今はもうなくなってしまった景色。
■撮影機材:OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO(21mm)
■撮影環境:1/2500sec F2.8 +1EV補正 ISO200 WBオート

おわりに

「春=桜」とシンプルに連想するほど、私たち日本人にとっては春になれば当たり前にそこに在る存在と言えるかもしれません。そんな当たり前で特別な桜との出会いは一期一会。今年はどんな桜に出会えるのか、今からとても楽しみです。皆さんもぜひ今年の桜撮影を楽しんでください。

■撮影機材:Canon EOS R6 + RF50mm F1.8 STM
■撮影環境:1/100sec F1.8 +1EV補正 ISO100 WBオート

 

■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。雑誌やwebマガジンなどでの撮影・執筆のほか、フォトレッスン「ケの日、ハレの日」を主宰。祖師谷大蔵の自身のアトリエでプリントや額装のワークショップなども行っている。2025年3月からカメラのキタムラ写真教室にて『日常スナップ写真部』講師を担当。個展・企画展多数。

 

 

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