飛行機&野鳥写真家のカメラバッグの中身|海外取材時の機材を解説
はじめに
筆者は野鳥と飛行機を撮影しているが、撮影内容や撮影地の状況により機材のチョイスは大きく異なる。通い慣れた撮影地であれば前回の撮影をもとに必要な機材が見えてくるものだが、初めて行く場所では半ば行き当たりばったりだ。とくに海外取材のように持ち運べる機材の制約がある場合は、最低限の機材で最大限の成果を得られるよう機材を選ぶことにしている。
2025年は例年より多く計5回にわたり海外渡航しているが、持参する機材は毎回ほぼ同じだ。ここでは9月に行った2週間のイギリス取材を例に、海外取材時のカメラバッグの中身とその運用を紹介しよう。
撮影内容
今回の渡航の主目的は、軍用機の低空飛行訓練の撮影である。2022年公開の映画「トップガン マーヴェリック」でも戦闘機が敵のレーダー探知を避けるために低空で峡谷を駆け抜ける迫力の映像が記憶に新しいが、これは映画の演出ではなく実際に行われている飛行方式だ。ヨーロッパやアメリカには低空飛行訓練を撮影できる場所がいくつかあり、筆者は20年以上にわたり谷を攻める戦闘機の撮影を続けている。中でもイギリスのウェールズや湖水地方は低空飛行訓練撮影地として知られており、山の上から戦闘機を見下ろしで撮影できるという夢のような環境に魅了されるフォトグラファーは少なくない。
とはいえその場に立てば必ず撮れるというものではなく、毎回の成果はごくわずかだ。訓練予定が公表されるわけではないし、どんよりとした天気でおなじみのイギリスの中でも、西側の山岳丘陵地帯はさらに悪天候になりやすい地域なので、視界不良のため低空飛行訓練できないことも多い。日本からはるばる現地に行ったとしても、天候と訓練頻度を考慮するとリスクの高い撮影なのである。
少しでも撮れ高を稼ぐため2週間滞在することにした。今回の渡航期間中はイギリス空軍ワディントン基地とカニングスビー基地で航空演習を実施していることもあり、谷がダメならバックアップとして基地で外撮りしようと考えていた。また、軍用機の訓練がない土日はロンドン・ヒースロー空港やマンチェスター空港で旅客機の撮影や、チャンスがあれば野鳥撮影することも考慮しており、確度の高い天気予報を見て行き先を決めるというフレキシブルな旅程とした。
撮影機材

そんな行き当たりばったりな旅程なので、撮影機材もそれに対応できるようなシステムとした。まずカメラはニコンZ9とZ8の2台、加えて動画および状況撮影用にZ50IIを持ち込んだ。
レンズは600mmの超望遠レンズでありながら軽量コンパクトなNIKKOR Z 600mm f/6.3 VR Sをメインレンズとし、中望遠ズームとしてNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S、標準ズームとしてNIKKOR Z 24-120mm f/4 S、さらにテレコンバーターZ TC-1.4xを持参した。
撮影内容によりカメラはZ8を2台にしたり、Z 600mm f/6.3をZ 600mm f/4 TCにしたり、Z 100-400mm f/4.5-5.6をZ 180-600mm f/5.6-6.3に変更することもあるが、「カメラ2台+レンズ3本+テレコン」というのが筆者の撮影システムの基本構成だ。
今回の取材において、それぞれの撮影対象ごとの機材構成をおさらいすると、以下の通りだ。
○戦闘機低空飛行訓練撮影用
・メイン:Z8+Z 600mm f/6.3 VR S / Z50II+Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR(動画撮影用)
・サブ:Z9+Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR SまたはZ 24-120mm f/4 S
○旅客機撮影用
・メイン:Z9+Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S
・サブ:Z8+Z 24-120mm f/4 S
○野鳥撮影用
・Z8+Z 600mm f/6.3 VR S+Z TC-1.4x
・ZEISS SFL 10×30(双眼鏡)


これらの機材を収納・携行するバッグはカメラ用を使いたいところだが、超望遠レンズを収納できるカメラバッグというのは大型で重くなりがちだ。海外取材における最初の難関は、飛行機のオーバーヘッドビンに収納することであり、大型のカメラバッグが機内持ち込み手荷物としてクリアできるか不安要素も大きい。
そこで筆者は30Lクラスの登山用バックパックに撮影機材一式を詰め込むことでその不安を解決している。登山用バックパックのメリットは、同サイズのカメラバッグよりも軽量で多くの荷物を持ち運べるし、一見するとカメラが入っていると思われないので盗難対策にもなる。
現在使用しているのはカリマーのリッジ30(旧製品)で、Nikon Z9、NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S、NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S、NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR、ZEISS SFL 10×30双眼鏡、14インチラップトップPC (ThinkPad X1 Carbon)、予備電池や充電器等を収納している。その他サブバッグとしてマウンテンスミス製のウエストバッグにNikon Z8、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、Nikon Z50II、NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRを収納している。
撮影機材をこれらのバッグに収納する際はソフトケースに入れている。ソフトケース類のこだわりは、軽量かつ未使用時はコンパクトにたためるものをチョイスしているが、最近は純正レンズにケースが同梱されないものも増えており、社外品でもあまり良い製品が見当たらないのが困りものだ。
そんな中、ニコンが「NIKKORレンズソフトケースL」を発売した。これはカワセミストラップとともに筆者が監修した製品で、NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S+Z TC-1.4xやNIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRにフィットするサイズに設計されている。今回はZ 600mm f/6.3をこのNIKKORレンズケースLに収納したほか、その他の機材はこれまで使ってきたソフトケースの中からサイズの合うものをチョイスしている。
具体的にはZ 100-400mmはオリンパス(現OM SYSTEM)の望遠レンズ用ケース「LSC-1127」に収納。Z 24-120mmにはニコンの一眼レフ用レンズに付属していたセミソフトケース「CL-M3」を、ウエストバッグに入れたときに取り出しやすいよう蓋をカットしたものを使用した。Z TC-1.4xも同じく一眼レフ時代から使っているニコンのソフトケース「CL-0715」を流用している。また、カメラ用としてはメーカーのプロサービス(プロサポート)から支給されたソフトポーチを使用している。

撮影成果その1 空港での旅客機撮影

■Nikon Z8 + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S (46mm)
■f/8 1/1500 ISO100 WB晴天
9月中旬、ロンドンには夜の到着だったので、レンタカーを借りてヒースロー空港近くに投宿した。予報によると翌日のロンドンの天候は晴れとのことなので、まずはヒースロー空港にて旅客機撮影から始めた。海外では場所によって空港周辺での撮影を咎められることがあるが、イギリスではロンドン・ヒースロー空港やマンチェスター空港では比較的安全に撮影できる場所がいくつかある。
ヒースロー空港ではランウェイ27Lへの着陸機を好条件で撮影できるので、撮影初日はことで1日を過ごすことにした。次々に着陸機が降りてくるが、機種は全長73mあるエアバスA380から全長22mのATR42までさまざまだ。ここではほとんどの撮影を24-120mmレンズ1本で済ませた。

■Nikon Z8 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S (270mm)
■f/8 1/1000 ISO200 WB晴天

撮影成果その2 基地での戦闘機撮影
イギリスでは基地の多くがイングランド東部に集中しており、数日で効率的に巡ることができる。今回はイギリス空軍のワディントン基地とカニングスビー基地でちょうど演習実施中だったので、外柵から撮影することにした。ワディントンではおもに重連のタキシングを、カニングスビーではおもに着陸機を撮影した。いずれも100-400mmが活躍した。

■Nikon Z8 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S (400mm)
■f/8 1/1000 ISO200 WB晴天

■Nikon Z9 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S (310mm)
■f/8 1/1000 ISO100 WB晴天
撮影成果その3 軍用機の低空飛行訓練

メインの撮影はウェールズと湖水地方での低空飛行訓練だ。撮影ポイントにもよるが、30分~1時間の登山が必要かつ1日を山中で過ごすので、撮影機材に加えて防寒着、雨具、食料など、撮影機材以外の荷物が多い。そのこともあってカメラ用バッグよりも登山用バックパックのほうが都合がよいのだ。
今回の渡航の1週目はいつもどおり悪天候続きだったが、2週目は季節の変わり目で珍しく晴天が続いたのと、低空飛行訓練エリアへの飛来機数もいつもより多く、多くの成果を得ることができた。


■Nikon Z8 + NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
■f/9.5 1/750 ISO200 WB晴天

■Nikon Z8 + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
■f/6.7 1/1000 ISO200 WB晴天
撮影成果その4 野鳥

今回は結果的に飛行機撮影が多くなり、野鳥撮影できたのは半日だけだったが、いくつかの種を撮影することができた、野鳥撮影では飛行機撮影よりも長いレンズが必要になるため、Z8に600mm f/6.3を組み合わせ、さらに1.4xテレコンを装着して840mm f/9とし、それでも焦点距離が足りない場合はDXクロップして1260mm相当とした。

■Nikon Z8 + NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S + Z TC-1.4x(840mm)
■f/9.0 1/1500 ISO400 WB晴天

■Nikon Z9 + NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S(900mm相当)
■f/6.3 1/1000 ISO140 WB晴天
(c)Koji Nakano/写真の無断転載禁止
■写真家:中野耕志
1972年生まれ。野鳥や飛行機の撮影を得意とし、専門誌や広告などに作品を発表。「Birdscape~絶景の野鳥」と「Jetscape~絶景の飛行機」を二大テーマに、国内外を飛び回る。著書は「侍ファントム~F-4最終章」、「パフィン!」、「飛行機写真の教科書」、「野鳥写真の教科書」、「飛行機写真の実践撮影マニュアル」など多数。














