ふと顔を上げると、塀の上には自分と並んで歩く犬の姿が。サントリーニの犬たちは、カメラを向けると楽しそうにのぞきこんでくる。
■カメラ:コニカミノルタα-7 レンズ:17-35mm 絞り:f11 シャッタースピード:オート フィルム:ベルビア100F 撮影地:ギリシャ サントリーニ

───先生は以前、撮影テーマである「楽園」のひとつの考え方として、人の心にゆとりが生まれ、そのことにより他人にもやさしい気持ちで接することができるようになる所が「楽園」であるとおっしゃっていましたが、ホテルではどのような部分がそれに該当するのでしょうか?

 ホテルは建物というひとつの箱ですが、その中にはきれいな美術品や工芸品があり、それらに囲まれるだけでも気持ちに変化が生まれます。
 また、ベッドのかたちも様々です。敷かれているシーツややわらかい質感のふとんも、普段の生活では使っているものとは明らかにちがいます。このように非日常的な所に自分を置くことで、気持ちの中に普段感じることの無い、安らぎが生まれるのです。
 心地よさに包まれて写真を撮るときは、気持ちの高まり方や盛り上がり方が違っています。ですから、そうそういつもできることではないと思いますが、国内外を問わず、たまにはいい宿に泊まってみるのも楽しく意義のあることだと思います。
 そのような所で受けるサービスはとてもいいものです。食事も贅を尽くした手間のかかった料理は、舌で味わうことはもちろん、目でも味わうことができます。また、器も楽しみのひとつです。
 このように非日常的なシチュエーションに自分を置くことで、心にゆとりが生まれ、気持ちや感性が変化し、いい写真が撮れるようになっていきます。


ハロン湾は「海の桂林」と言われる。ジャンク船で巡る世界遺産。
■カメラ:ペンタックス645NII レンズ:35mm 絞り:f16 シャッタースピード:オート フィルム:プロビア100F 撮影地:ベトナムハロン湾

───写真集に掲載されているホテルのセレクトは、先生ご自身がおこなわれたのでしょうか?

 すべて自分で選びました。以前から気になっていたところばかりでしたが、実際に行ってみると、期待していたのとは違っていたところもありました。そのようなところは掲載していません。
 また、自分が気に入ったところには何回も足を運び撮影しました。中には10回も通ったところがありました。それは、ホテルだけが良かったのではなく、その土地やそこの空気などにも魅力を感じたからです。


世界でここだけのユニークな建築。
■カメラ:ペンタックス645NII レンズ:80-160mm 絞り:f8 シャッタースピード:オート フィルム:ベルビア100F 撮影地:フィジー ヴァトゥレレ

───そのようなところは歴史のあるホテルなのでしょうか?

 歴史に裏付けられている伝統のあるホテルもいい条件のひとつではありますが、やはり、私の価値観に合ったところを選んでいます。ですから、すべての人にとって楽園かどうかはわかりませんし、人によっては当てはまらないところもあると思います。
 また、最近のリゾートホテルの傾向として、エステやスパが充実してきています。10年程前はなかった「エステ&スパ」という看板をよく目にします。
 これらのサービスを受ける場所も客室ではなく、海の上や、ヤシの木陰など、自然に包まれながらサービスを受けることができます。
 やはり同じマッサージを受けるにしても、東京の繁華街や地下街にあるマッサージとでは、全然違うはずです。また、温泉地などの旅館でマッサージを頼んで揉んでもらうのとも違いますよね。
 空気のいい自然の中で受けるサービスは楽しいものです。

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