ソニー FX2 実践撮影レビュー|FX3との比較と現場での実力検証 ~山城淳一~
はじめに
カメラで“写真も動画も一台でこなしたい”と思うクリエイターにとって、SonyのFX2は非常に気になるモデルです。33MPのセンサーで高画質な写真を撮りつつ、7K→ 4K(4K60pは4.6K→4k)のオーバーサンプリングで動画も美しく残す。このハイブリッドな使い方を、実際の撮影現場で試してみました。
また、約5年使ってきたFX3との比較もお伝えします。




FX2とFX3の主なスペック比較
まずはおさらい的に、主なスペックを並べておきます。
| Sony FX2 | Sony FX3 | |
| センサー | 33MP 35mmフルサイズ裏面照射型 |
12.1MP 35mmフルサイズ裏面照射型 |
| デュアルベースISO | 800/4,000 | 800/12,800 |
| 最大動画解像度 | 4K60p 4K60p時はAPS-C(Super35mm) 約1.5倍クロップ 4K120p |
4K120p時はフルサイズ 約1.1倍クロップ |
| 静止画性能 | 33MP (7008×4672 px) Log Still 対応 LUT適用可能 |
12MP (4240×2832 px) |
| EVF | チルト式電子ビューファインダー | 非搭載 |
| モード切替 | MOVIE/STILL物理レバー | メニュー操作 |
| 冷却ファン | 内蔵 | 内蔵 |
| ダイナミックレンジ | 約15+ストップ | 約15+ストップ |
| AF検出方式 | ファストハイブリッドAF | ファストハイブリッドAF |
| AIプロセッシングユニット | 搭載 | 非搭載 |
| 手ブレ補正 | スタンダード/アクティブ/ ダイナミックアクティブ |
スタンダード/アクティブ |
| メディアスロット |
CFexpressA/SD(UHS-II) × 1 SD(UHS-II) × 1 |
CFexpressA/SD(UHS-II) × 2 |
| 外付けハンドル | (XLR対応) 別売り | 付属 |
| 価格 (2025年12月カメラのキタムラ) |
375,210円 | ー |
スペックを見るだけでも、FX2が写真と動画のハイブリッドを意識して設計されていることが伝わるのではないでしょうか。
撮影スタイルと今回の現場環境
今回の撮影は、観光冊子用のスチル写真をメインに、同時にSNSやウェブ向けの動画素材も撮影する現場でした。これまではFX3を動画に、α7R Vをスチルに使う二台体制で動いていましたが、今回は『限られた時間で効率よく撮る』ことを重視し、手持ち撮影でFX2一台の運用に統一し全てを完結させました。

スチル撮影:高解像度の良さ×Log Still
FX2の33MPセンサーは、一歩踏み込んだ表現を求められる現場にも十分に応えてくれます。
逆光気味のシーンでも、肌のなめらかさや髪の一本一本まで丁寧に描写され、豊かな階調がしっかりと残るため、センサー性能の高さを実感できました。
なお、全体がやや白っぽく見えるのは逆光時に発生したベーリンググレア(フレア)によるものだと思います。FE 28-70mm F2 GMは、特に逆光下で開放付近を使用するとベーリンググレア(フレア)が出やすい傾向があるように感じています。


また、FX2ではスチル撮影でもS-Log3が使用可能になり、動画と静止画を同一のLogガンマで収録することができます。これにより、動画編集ソフト上でトーンの整合性を保った色調整がしやすくなり、ムービーとスチルを横断する一貫したビジュアルづくりが可能になります。
もちろん、動画のフレームを切り出すことで静止画を用意することもできますが、FX2で得られる33MP(7008×4672ピクセル)の高解像スチルは、紙媒体や大型ディスプレイ用などにも十分に対応可能です。
こうした「スチル+ムービーでビジュアルの整合性を取りたい」現場では、FX2の高解像センサーとLog Still対応の組み合わせが、撮影から納品までの作業効率やクオリティに大きく影響することを改めて実感しました。
動画撮影の使い勝手:クリエイティブフローを崩さない設計
FX2は4K60pまでの対応ながら、4.6Kからのオーバーサンプリングによって非常に高精細な映像を記録できるのが特長です。また、4K24p・30pでは7Kオーバーサンプリングによるフルサイズ記録が可能で、FX3と比べて解像感の高さを感じられます。
一方で、4K60p撮影時にはSuper35mm(APS-C)モードとなり約1.5倍クロップされるため、広角撮影時には注意が必要です。ただし、望遠側を稼ぎたいシーンや、被写界深度のコントロールを重視したい場合には、このモードが効果的に働きます。
さらに、Super35mmモードが使えることにより、APS-C用レンズも使用可能になるため、小型・軽量で価格も手頃なレンズを選択肢に加えられるのも大きなメリットです。特に、機動性を求められる撮影や、コストを抑えたい現場ではありがたいポイントと言えるでしょう。私はバスケットボールの試合の長回し用にFX2とAPS-C用のE PZ 10-20mm F4 Gの組合せでゴリラポッドに載せ、体育館の手すりに取り付けて4k60Pで撮影しています。ボディとレンズで857gと軽く、見た目の圧迫感もないので、とても重宝しています。

クロップについては意見が分かれるところですが、FX3では使えないSuper35mmモードを活用できる点は、撮影時の選択肢を広げ、表現の幅を高めてくれる要素といえるでしょう。実際の現場でも24pと60pを切り替え、画角を調整したりできたので、レンズ交換なしに色々な素材が撮影でき重宝しました。Bロールで望遠気味が欲しい時などに便利だと感じました。個人的にはクロップはFX3にはない大きな強みで、とても気に入っています。
切り替えと一台運用:MOVIE / STILLレバーの存在感
撮影中に「今スチルを撮りたい」「動画に戻したい」という瞬間は多く訪れます。FX2の物理的なレバーで瞬時に切り替えられるのは、現場のテンポを大きく崩さない強みだと感じました。機材を持ち替えずに、構図を変えずにモードを切り替えられる安心感は、時間に追われる現場では重宝します。

チルト式EVF:現場で感じた快適さ
屋外の明るい環境では、液晶モニターだけでは構図の確認が難しくなる場面があります。そんなとき、FX2のチルト式EVFが大きな力を発揮してくれました。視認性の高さやピントの確認における安心感は、段違いです。
また、腰~胸の位置で構えるような低めのアングルでも、EVFをチルトさせることで自然な視線を保ったまま撮影が可能。無理のない体勢を維持できるため、スムーズにシャッターを切ることができました。
これまでFX3を使用していた際は、つい無意識に本体に目を近づけてしまうことがありましたが、FX2ではしっかりとしたEVFが備わっているので、そうした違和感もなく、撮影に集中できる感覚がありました。

クリエイティブルック FL2 / FL3
クリエイティブルックのFLはこれまでもフィルムライクな雰囲気を演出できる点が気に入ってよく使用していましたが、FX2から加わったFL2とFL3は、さらに質感の幅が広がり、より好みの表現がしやすくなりました。
いずれもノスタルジックな雰囲気を持っていますが、
FLは、彩度とコントラストのバランスがよく、自然なフィルムらしさを感じられる汎用的なトーン
FL2は、彩度控えめでコントラストはやや高め、少し褪せたフィルムのような落ち着いたトーン
FL3は、明るさと抜け感があり、軽やかなフィルムのニュアンスを感じられるトーン
という違いが感じられます。
実際に使ってみて、どちらもFLよりも落ち着いた自然な感じがして、フィルムっぽい「ほぼ完成系」に近い絵が出るので、編集時間を抑えたい時には頼りになる存在でした。また、RAWで撮影しておけば、SONYのImaging Edgeで簡単に他のクリエイティブルックに変更して書き出せるのも便利です。
| ルック | 特徴 | 雰囲気 |
| FL | 自然で落ち着いた色味とコントラスト | フィルムらしいしっとり感 |
| FL2 | 彩度は控えめながら、陰影は程よく引き締まる | ノスタルジック、記憶の風景 |
| FL3 | 明るく抜け感のある色再現 | 爽やかで軽やか |
使用中に感じた制限・注意点
良い点が多い反面、実写現場で気をつけておきたいポイントもあります。
今回は手持ち撮影だったため、手ブレ補正を「アクティブ」または「ダイナミックアクティブ」に設定しました。
・アクティブモード:約1.1倍のクロップ
・ダイナミックアクティブ:約1.3倍のクロップ
・4k60p 撮影時:約1.5倍のクロップ(Super35相当)
これらを重ねると 最大約1.95倍のクロップになる可能性があります。
今回使ったレンズはFE 28 70mm F2.8 GMですが、60p撮影時には画角が大きく変わるため、構図が狭く感じられる場面がありました。特に広角側を使いたいシーンではこの調整が必要です。
なお、24p/30pでの撮影では約1.5倍のクロップは発生せず、7K→4Kオーバーサンプリングでフルサイズ記録が可能です。したがって、スローモーションが必要ないシーンでは、60pを選ばない判断が有効でオーバーサンプリングの解像感の高い画質が得られます。
実際に広角側が必要なときは24pに切り替え撮影を行いましたので、特に問題なく対応ができました。
FX2が現場で実感した強み
・写真と動画の質感を揃えやすい Log Still / LUT 適用
・撮って出しに強い FL2 / FL3のルック
・可変 EVF による安定した構図確認
・MOVIE / STILL レバーによる即時切り替え
・長時間運用でも安心な冷却設計
・高解像度を活かしたトリミング耐性
まとめ:シームレスという言葉がふさわしい、真のハイブリッドカメラ
FX2はスチルとムービーの垣根を感じさせない、まさにシームレスな操作感を実現したカメラです。Cinema Lineシリーズにありながら、スチル撮影でも妥協のない性能と使い勝手を備えており、「写真も動画も本気で撮る」というクリエイターにとって、非常に心強い存在です。
個人的には、これまで写真と動画を明確に使い分けてきた現場でも、「この1台でいい」と思わせてくれる完成度の高さを感じました。FX2はCinema Lineに属するモデルとして、スチルとムービーの境界線を取り払った初めてのカメラと言っても良いのではないでしょうか。
実は私自身、3,300万画素というスペックには大きな魅力を感じつつも、ファンを搭載していないα7C IIの購入には踏み切れず、またα7 IVについても最終的に手放してしまいました。
そんな中で登場した、EVFと冷却ファンを備えたFX2は、まさに「待っていました」と言いたくなる1台で、発売と同時に思わず手を伸ばしてしまいました。
運用としては、120p撮影や高感度性能が求められるシーンではFX3を、日常的な撮影ではFX2をメインに、ハイブリッドなスタイルで活用していこうと考えています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
■執筆者:山城淳一
福岡県在住。デザイン事務所を運営。地域や自治体、企業の思いを形にするクリエイティブな企画を得意とする。Beginning of cultureをテーマに写真、動画、WEB、SNS、イベントを複合的に展開し、それぞれの場所で新たな要素を生み出し続けている。

















