ソニー FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS レビュー|野生動物写真家おすすめの超望遠ズームレンズ

野口純一
ソニー FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS レビュー|野生動物写真家おすすめの超望遠ズームレンズ

はじめに

今回は本格的な野生動物撮影の第一歩として絶対お勧めの超望遠ズームレンズ、ソニー「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」を紹介する。αユーザーなら誰もが気になっているであろうこのレンズ、実はこれ1本で野生動物撮影の多くのシーンをカバーできてしまう万能レンズである。

プロの野生動物写真家といえば巨大な大口径超望遠レンズを手にする姿がお決まりのパターンだが、実は大口径超望遠レンズに匹敵、あるいはそれを凌ぐ頻度で使用しているのが超望遠ズームレンズである。私自身もこのFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSの使用頻度は極めて高く、大口径超望遠レンズのサブレンズとしてでは無くダブルエースとしての地位を確立している。

では何故この「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」がそれほどまでに野生動物撮影に有効なのか、実際にこのレンズで撮影した作品をご覧頂きながらお話ししていく。

ズームレンズの優位性

野生動物の撮影でまず第一の問題は被写体を見つける事・被写体と出会う事。これについてはまた別の機会にお話ししたいと思うが、今回運よく思い願った被写体と出会うことができたとしよう。そして、その次の段階で直面するのが撮りたいイメージに対する被写体との距離の問題である。そもそも警戒心の強い野生動物たちはなかなか人間の接近を許してはくれないうえ、彼らの生活環境である自然の中の地形・状況は我々が身動きすることさえ困難な場所も多い。

さらに相手はこちらの思惑などお構い無しに動き回り飛び回る。逆に近すぎるからといって離れることもままならなかったりして、「頼むからそこから動かないでくれ!」と心の中で祈りながら木の根にしがみつき急斜面を後ずさるといった事もある。そんな時にズームリングを回すだけで自在に画角を変化させることができるズームレンズの有り難さは、何ものにも代え難いと言えるだろう。

ナベヅル
■撮影機材:SONY α9 II + FE 200-600mm F5.5-6.3 G OSS (200mm撮影)
■撮影環境:F5.6 1/1000秒 ISO100
オオワシ
■撮影機材:SONY α1 + FE 200-600mm F5.5-6.3 G OSS (600mm撮影)
■撮影環境:F8 1/2500秒 ISO800

また、足場等に関係なく被写体そのものの表情に迫ったり、彼らの生きる環境ごと空間を写したい時など、表現の自由度という部分で即座に複数のパターンを撮影できるというのもズームレンズの極めて強力な魅力の一つだ。

ズームレンズは連続的に焦点距離(画角)を変化させることができるので、単焦点レンズでは設定のない中間的な画角で撮影できる事も大きな特徴だ。これは自分が移動する事なく撮影する場面において、単焦点レンズを交換する事ではなし得ない大きな利点である。

また、野生動物の動画撮影においては特にズームレンズの微妙な画角変化のしやすさがとても重要となる。一つの状況で静止画・動画を取り分けたい場合、私は単焦点レンズとズームレンズが1本づつあるときは単焦点レンズを静止画、ズームレンズを動画撮影用として使い分けている。

エゾシカ
■撮影機材:SONY α1 + FE 200-600mm F5.5-6.3 G OSS (478mm撮影)
■撮影環境:F6.3 1/1000秒 ISO320
エゾリス
■撮影機材:SONY α7R V + FE 200-600mm F5.5-6.3 G OSS (470mm撮影)
■撮影環境:F6.3 1/200秒 ISO3200

機動性

FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSを語るうえで外せないのが機動性である。野生動物の撮影は彼らが生きている自然の環境に自らも入り込み、彼らと同様の道程を辿りながら撮影する事が多々ある。憧れの動物に出会う為に急斜面を登り降りし、時には小河川を渡りつつ長い時間・距離を移動することもある撮影時には、機材の軽量性とコンパクトさが求められる。それも決して表現の自由度を失う事無しにだ。

FE 200-60mm F5.6-6.3 G OSSはフルサイズ対応600mmまでの焦点距離をカバーしながら、全長318mm・重量2115gととても600mmレンズとは思えない程小さく軽い。そしてインナーズーム機構を採用することにより、ズーミングしても全長変化が無く重量バランスもほぼ一定に保たれる。繰り出し式のズームレンズのように望遠側で全長が長くなり、携帯時は小さくとも実際の撮影時には長くて振り回し難いということも無い。また、繰り出し部分から埃や水が侵入する可能性も無く、長年の使用による消耗で繰り出された鏡筒に傾きが起こり描写力が低下する心配も無い。結果的に長い年月その堅牢性を維持し、性能劣化の心配もせずに済む。

加えて、このレンズは最短撮影距離も2.4mと短く、更には1.4倍・2倍のテレコンバーターにも対応していて最大1200mmの画角で撮影する事が可能だ。APS-CクロップモードやAPS-Cフォーマットのボディを使えば、更なる引き寄せ効果を得ることも出来る。三脚座の作動性やフードの取り付けもしっかりしているし、レンズ前面にはフッ素コートも施されていて汚れも簡単に落とす事ができる。撮影においてあらゆるストレスを感じることが無いのも大きな利点だ。

筆者はこのFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSをアフリカのサバンナから厳冬期の北海道まで、過酷な環境で使用し続けているがどんな状況でも信頼して撮影に望めるのがこのFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSである。

捉える力と描写力

どんなに小さく軽く利便性が高くとも、AF性能や絶対的な描写力に不満を感じるレンズでは大切な被写体と過ごす時間を託すわけにはいかないだろう。

その点、このFE 200-600mm F5.5-6.3 G OSSはAFの反応も良く、厳冬期北海道の撮影でも飛来してくるウミワシたちを次々にフォーカスし、正確にその姿を追い続ける事が可能だ。動体に対するピント精度が高く、ワシの鋭い眼光や翼の質感の変化まで見事に描き分けてくれる。そして、飛翔するワシを追いながらの撮影では手ブレ補正の能力も高く集中力を乱すことも無い。

オオワシ
■撮影機材:SONY α9 II + FE 200-600mm F5.5-6.3 G OSS (289mm撮影)
■撮影環境:F8 1/3200秒 ISO640

また、光量の乏しい夕暮れの森や光の反射の強い河面の撮影でも、レンズにとって厳しい状況にも関わらず森の樹々の葉の一枚一枚、佇むシマフクロウの姿、そして厳しい寒さに霧氷のついた河畔林と朝日を浴びて動き出したタンチョウたちの姿の一つ一つまで、素晴らしい描写で描き出してくれた。

FE 200-600mm F5.5-6.3 G OSSは優れたAF性能、高い解像感と豊かな階調再現力を併せ持ち、メイン機材としても充分に満足できる能力を示してくれる。

シマフクロウ
■撮影機材:SONY α1 + FE 200-600mm F5.5-6.3 G OSS (211mm撮影)
■撮影環境:F6.3 1/40秒 ISO3200

最後に

様々な変化に富んだ環境下、縦横無尽に動き回る野生動物たち。その姿を捉える為のズームによる自由度、小型軽量ゆえの優れた携行性と振り回しやすさ、構造的な強さと防塵防滴に配慮された造りからなる堅牢性。そして、それらを備えたうえでの高度なAF性能と手ブレ補正機構・優れた描写力。

600mmという超望遠域をカバーしながら求めやすい価格を実現したFE 200-600mm F5.5-6.3 G OSSは、これから本格的な野生動物撮影を始めたいと思っている方々に自信を持って第一にお勧めしたいレンズである。そしてこのレンズは決して入門用の間に合わせの物ではなく、プロがメインレンズとしても使っている非常に優れたレンズである。今後ステップアップしていく中でも長きに渡り頼りになる相棒となってくれるだろう。

皆さんも是非このFE 200-600mm F5.5-6.3 G OSSを手にして、魅力あふれる野生動物たちの姿を写していって欲しい。

タンチョウ
■撮影機材:SONY α7S III + FE 200-600mm F5.5-6.3 G OSS (291mm撮影)
■撮影環境:F8 1/500秒 ISO100

 

 

■写真家:野口純一
1968年、埼玉県生まれ。北海道在住。2輪、4輪のエンジニア時代にバイクツーリングで訪れた北海道に惹かれ、2000年に移住。キタキツネの撮影をきっかけに、2002年より写真家として活動を開始。カメラメーカーの製品作例等を手掛ける他、雑誌やカレンダー等に作品を提供し、国内・海外問わず、野生の命と自然風景を求め活動を続けている。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。

 

関連記事

人気記事