ソニー FE 16-25mm F2.8 Gレンズで撮る星景写真|北山輝泰

北山輝泰
ソニー FE 16-25mm F2.8 Gレンズで撮る星景写真|北山輝泰

はじめに

星景写真家・写真講師の北山輝泰です。今回はソニーフルサイズミラーレス用レンズ「FE 16-25mm F2.8 G」で撮る星景写真についてご紹介します。広角域に特化し、かつ開放F値が2.8と明るく、まさに星景写真用レンズといっても過言ではないスペックですが、実際のところ描写や使い勝手は良いのかを作例と共に解説したいと思います。

FE 16-25mm F2.8 Gの特徴

16mmから始まるズームレンズと言えば、16-35mm F2.8 GM IIが思い浮かびます。GMラインナップの看板とも言えるレンズですが、サイズ・重量を比べてみると、FE 16-25mm F2.8 Gが一回り小さく、また重さも約138gと軽いため、改めてそのコンパクトさを実感します。私は撮影地まで徒歩で移動することが多く、時には山に登ることもあるため、機材一つ一つのサイズや重さはとても気にするのですが、この持ち運びやすいサイズ感は非常に魅力的です。

また、最近増えてきた動画制作の現場においても、基本ワンオペで業務をこなす私にとって、片手持ちできる電動ジンバル雲台に機材を載せられるかは非常に気にするところです。FE 16-25mm F2.8 Gは、Vlog撮影用で使っているZV-E1と組み合わせても892g(バッテリー、カード込)と1kgを下回り、ジンバルを使った撮影でもバランスを取りやすいため、動画撮影の現場でも重宝しています。

また、レンズのフィルター径も67mmと汎用性のあるフィルター径を採用しているため、ソフトフィルターや光害カットフィルターなど、色々なフィルター撮影を楽しみやすいというのも魅力的です。82mm径のフィルターは値段も張りますので、財布に優しい67mm径はとてもありがたいです。

FE 16-25mm F2.8 Gの作例

それでは実際にFE 16-25mm F2.8 Gで撮影した星景写真をいくつかお見せします。2月中旬以降~4月にかけては、夜明け前の美しい薄明の空に昇る天の川を撮影することができますが、この天の川撮影こそ広角ズームレンズが活躍するシーンです。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 16-25mm F2.8 G
■撮影環境:ISO3200 F2.8 6秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離25mm

この写真は天の川撮影の定番スポット真鶴岬にて撮影したものになります。海に立つ奇岩が特徴的で、天の川との絡みも良く、天の川撮影の始まりはここで迎えることが多いです。この日はほぼ満月に近い月明かりがあり、残念ながら天の川はあまり濃く写りませんでしたが、薄明の美しい空と星たちの共演を存分に楽しむことができました。

こちらはテレ端25mmで撮影していますが、さそり座や射手座周辺の天の川中心方向と地上景を撮影するのにはちょうどよく、縦横のアングルを変えても構図が決まりやすい使い勝手の良さがあります。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 16-25mm F2.8 G
■撮影環境:ISO6400 F2.8 20秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離16mm

こちらはまた別の場所で撮影した天の川の星景写真です。断崖の端からは垂直に聳える巨大な奇岩を見ることができ、奇岩の全体像を入れつつ天の川を撮影するために縦構図16mmを選択しています。地上景も星空もどちらも妥協したくない時に16mmという広さが活きてきます。ちなみに崖下は海という状況で、機材のセッティングも不安定な状態で行わなければなりませんでしたが、レンズが短く軽いためバランスが取りやすく、安心して撮影を行うことができました。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 16-25mm F2.8 G
■撮影環境:ISO6400 F2.8 20秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離16mm

この日は天の川を追いかけるように月齢24.7の細い月が昇るという日でした。大陸から飛来してきた黄砂の影響を受けて、空全体が薄いベールで包まれているような悪条件下での撮影でしたが、逆にこの黄砂の影響で月の白飛びが最小限に抑えられ、高感度で長時間露光をしても月の形がしっかり分かる面白い写真を撮影することができました。自分が機材を置いていた場所を構図に入れることで広角ならではの奥行きを感じられる写真に仕上げています。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 16-25mm F2.8 G
■撮影環境:ISO6400 F2.8 6秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離25mm

天の川がある程度撮影できたので、焦点距離を変えて奇岩と月をテーマに撮影を行いました。25mmという短い焦点距離ながらも、細い月の地球照が分かる写真を撮ることができました。16mmからたった9mmの変化ですが、16mmが「目の前に広がる世界全部を構図に入れて撮影する」という印象があるのに対し、25mmは「その中にある主役を際立たせて撮影する」という違いがあります。9mmの違いでどれだけ視覚イメージに差が出るかは、ぜひ一度お手に取って確かめていただければと思います。

逆光にも強い

私は月をテーマに撮影することが多いですが、満月や細い月だけでなく、さまざまな月齢の月を撮影しています。半月程度の月明かりがあれば、地上の景色も月明かりの恩恵を受けて明るく撮影することができますし、星もある程度写すことができます。ただ月が太くなればなるほど、逆光で撮影した時にゴーストなども発生しやすくなるためレンズ選びが重要になってきます。

こちらはとある森の中で月齢20.7の月を撮影したものになりますが、ゴーストも発生せず、非常にシャープに撮影できました。抜けている空であればゴーストの部分だけ画像処理で消してしまうこともできなくはありませんが、このような木々で覆われている状況ではレタッチも難しくなります。FE 16-25mm F2.8 Gの逆光耐性を実感した瞬間でした。

月明かりがあるからこそ撮れる星景写真も多く、私はすべての月齢に色々な可能性があると考えています。月があるから撮影に行くのをやめようではなく、月を使って何か撮れないかと考えることが重要だと考えます。

■撮影機材:ソニー α7S III + FE 16-25mm F2.8 G
■撮影環境:ISO3200 F2.8 6秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離16mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 16-25mm F2.8 G
■撮影環境:ISO6400 F2.8 15秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離16mm

星景写真の入り口に最適なレンズ

FE 16-25mm F2.8 Gを特におすすめしたいのは、すでにGMレンズを使いこなしているヘビーユーザーの方というよりも、これから星景写真を始めたいと思っているビギナーの方です。α7Cシリーズや、ZV-E1など、フルサイズでも小さいというボディが増えてきた中で、車移動というよりも公共交通機関で行ける範囲でもっと気軽に星景写真を撮影したいというニーズも増えてきたように感じています。

そういったライトな志の方々にGMレンズをおすすめするのは少々違うのでは?と思っていた中でこのレンズが発売され、今はレンズを迷っているビギナーの方がいたらまずこのレンズをおすすめするようにしています。もちろん、私のように登山や長距離移動をしながら星景写真を撮影するスタイルの方にも最適なレンズですので、ぜひ一度店頭にてそのサイズと軽さを実感していただければと思います。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 16-25mm F2.8 G
■撮影環境:ISO3200 F2.8 8秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離23mm
■撮影機材:ソニー ZV-E1 + FE 16-25mm F2.8 G
■撮影環境:ISO500 F2.8 4秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離24mm
■撮影機材:ソニー ZV-E1 + FE 16-25mm F2.8 G
■撮影環境:ISO1600 F2.8 8秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離25mm

まとめ

FE 16-25mm F2.8 Gの特集記事、いかがでしたでしょうか?16mmで星空と風景を目一杯に。または25mで風景を主役にして撮影など、ズームレンズならではの撮影を楽しめつつ、小さくて軽くて持ち運びしやすいという携帯性を兼ね備えた星景写真向けのレンズです。これからの天の川の撮影シーズンに向けておすすめできる一本ですので、ぜひみなさんもFE 16-25mm F2.8 Gでの撮影を楽しんでいただければと思います。星景写真家の北山輝泰でした。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

■写真家:北山輝泰
東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。天文台インストラクター、天体望遠鏡メーカー勤務を経て、2017年に写真家として独立。世界各地で月食や日食、オーロラなど様々な天文現象を撮影しながら、天文雑誌「星ナビ」ライターとしても活動。また、タイムラプスを中心として動画製作にも力を入れており、観光プロモーションビデオなどの制作も行っている。星空の魅力を多くの人に伝えたいという思いから、全国各地で星空写真の撮り方セミナーを主催している。セミナーでは、ただ星空の撮り方を教えるのではなく、星空そのものの楽しさを知ってもらうために、星座やギリシャ神話についての解説も積極的に行なっている。

 

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