シグマ 12mm F1.4 DC Contemporary|APS-C用 F1.4の超広角単焦点レンズ
はじめに
2025年9月4日にSIGMAの「12mm F1.4 DC Contemporary」が発売されました。世界で初めて※大口径F1.4において焦点距離12mmを実現。35mm判換算18mmの超広角単焦点で、大口径ズームより明るい開放値F1.4のAPS-C用交換レンズです。富士フイルムのXマウント、ソニーのEマウント、キヤノンRFマウント用があります。
サイズ感は手のひらに乗るぐらいコンパクトで、長さ6.8cm、重さはたったの235g(富士フイルムXマウント)。また、3枚の非球面レンズと2枚のSLDガラスを効果的に配置することで開放値F1.4から高い光学性能があり、サジタルコマフレアも補正されているので画面全域まで鮮明な描写が得られます。小型&軽量F1.4のContemporaryシリーズとして16mm、23mm、30mm、56mmに続き5本目となる超広角レンズでラインナップも充実しました。カメラとのバランスも◎で、ジンバルに乗せてもストレスなく撮影できます。
※AF対応のAPS-Cカメラ用交換レンズとして。2025年8月現在、Sigma調べ

描写力と機動性、価格も魅力的
星の点が羽を広げるような収差「サジタルコマフレア」を抑えた高い描写性の超広角は、空一面をすっきりと美しく捉えることができ、星景を撮る方に魅力的です。マウント部分や各部のシーリングは防塵防滴、レンズ最前面は撥水防汚コートになっているので、結露や水滴、埃などが気になるアウトドア系のスナップや登山でも安心です。
AFはステッピングモーターの高速&高精度で機動性が高く、スナップや動画にも最適。またF1.4で大きな美しいボケや暗いシーンでダイナミックな表現を楽しめます。大口径レンズは重量感や価格が高めなものが多いですが、SIGMAのF1.4シリーズは高画質で軽量かつ10万円以下というのもユーザーとしてはうれしいですね。


レンズフード(LH652-01)付きで、フィルターサイズは62mm。富士フイルムのXマウントとソニーのEマウントは絞りリング、キヤノンRFマウントはコントロールリングになっています。
超広角レンズ1本でお散歩スナップ
今回は富士フイルムのXマウント用の「SIGMA 12mm F1.4 DC Contemporary」、カメラはFUJIFILM X-E5とX-T5で撮りました。SIGMA 12mm F1.4 DCはあまり大きくないわたしの手のひらにもカメラのボディとレンズがのるサイズ感で、そのままレンズに指をかけて軽くホールドしたときの感触がよく、ピントリングの動きも軽すぎず滑らかです。操作音が無いので、動画でピントを送るシーンでも使いやすいと思います。絞りリングはF値を変えた時の音の響きがやわらかく、撮りたい気持ちが湧いてくるようです。操作感もスムースで使いやすいです。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.5(+0.7EV)・1/400s・ISO500・WBオート
前ボケと反射面の広がりがあるアングルで、時を感じる空気感を捉えました。ピント位置のシャープさとボケ感が両立しています。窓の向こうから入る光を壁やテーブルの反射で捉えることができるので、窓枠やフレームのデザインが際立ちます。上と下2枚の写真は窓との距離、アングルの高さを変えて撮ってみました。見比べると別のレンズで撮影したように感じます。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.5(+0.7EV)・1/350s・ISO500・WBオート
上の写真より窓に近づいて撮りました。窓のフレームに色収差もなく、フレアも極力おさえた自然な描写性です。撮影アングルで反射面の広さを変えたり、ポジションを変えて遠近感を強調したり、表現を大きく変えられるのも超広角の画角ならでは。建物の中で印象的に写したいときは超広角レンズが向いていると思います。

■撮影環境:絞り優先AE・F14(+0.7EV)・1/100s・ISO800・WBオート
見上げたサルスベリの隙間から太陽の光が見えたので、F値を絞り込んで光芒を入れました。キレのあるシャープなラインが目をひきます。逆光でも木の幹や葉、花の色も鮮やかで色ノリが良いので見た時の印象のように写すことができました。
建物内、屋外、どちらも逆光のシーンでフレアやゴーストが抑えられた自然な描写力は逆光好きにはうれしい性能です。

■撮影環境:絞り優先AE・F13(+0.3EV)・1/15s・ISO250・WBオート
フロアを広くいれて影の長さを強調したフレーミングも12mmの画角だからこそ撮ることができます。普段見ている光景がレンズの効果で少しドラマティックに表現できるのも新鮮です。上の天井、右下の植物を見てみると、流れることなく緻密な描写で画面が引き締まっています。

■撮影環境:絞り優先AE・F11(+0.3EV)・1/500s・ISO500・WBオート
運河を散歩しながら、手前から奥までを広く捉えてみたら、ゆったりとした視線や時間を感じるような雰囲気になりました。肩の力を抜いて気軽に、パンフォーカスで小気味よく撮るのもいいですね。

■撮影環境:絞り優先AE・F8(+0.3EV)・1/1000s・ISO500・WBオート
運河の鉄橋を見上げると放射状に鉄骨が伸びるように広がっています。超広角はダイナミックで、想像以上の豪快さにわくわく感も上がります。天気も良く、空を広々と写すにも最適です。ちょうど羽田へ向かう飛行機がやってきたのでフレームインを狙いました。狭いスペースでピントを合わせ続けて、フレームインのタイミングでシャッターを押せば狙い通りの位置で撮れるのがうれしい。高速&高精度AFは頼りになります。

■撮影環境:絞り優先AE・F8(+0.3EV)・1/180s・ISO500・WBオート
足元のレリーフが可愛い。影を斜めに広く入れられると、時間帯も表現できるのでイメージが広がります。自分の足元と長く伸びる影を一緒に、身長162.5cmの目線ではこのような広さで写せます。水平垂直を意識して撮ったところ、歪みをほぼ感じません。被写体が近い場合も、このレンズなら気にせず撮ることができるように思いました。

■撮影環境:絞り優先AE・F6.4(+1.3EV)・1/90s・ISO500・WBオート
壁に近づく木の枝とアルファベットの文字を印象的にするためにモノクロで。這うような枝や広がりも近づいて捉えると、レンズの効果で勢いも加わるように描写できます。カメラの設定で粒状感を効かせていますが、画面周辺までクリアな描写性を実感した一枚です。

■撮影環境:絞り優先AE・F1.4(+0.3EV)・1/15s・ISO320・WBオート
スイーツやテーブルフォトで超広角レンズを使うことが少ないので、この機会にどのように撮ることができるかチャレンジ。縛りはF1.4、ボケと画角の広さ、被写体に近づきオシャレに撮る!です。
店内の玉ボケが丸く、画面右端のあたりも崩れず丸になっています。被写体の向こうの空間を広く入れられると臨場感もアップします。

■撮影環境:絞り優先AE・F1.4(+0.3EV)・1/15s・ISO320・WBオート
影に気を付けながら、前のめりでジグザグになるようなアングルで俯瞰してみました。白はテーブル、チェックは床の模様です。画角が広いと意外なアングルで撮ることができておもしろいです。ボケ感で雰囲気アップできました。

■撮影環境:絞り優先AE・F16(+1.7EV)・30s・ISO400・WBマニュアル
最後は三脚を使った夜景です。高速道路が交差する場所を見上げて、外灯に光芒がでるようにF値を絞り込み、スローシャッターで光跡も入れてキラキラした雰囲気を狙いました。隅々まで鮮明な描写感でシャープ。光芒や鉄骨もスッキリとしたラインで空間を感じる立体感が美しいです。撮ってみると改めて思いますが、12mmは普通の広角では入りきらない独特のダイナミックな表現になるのでインパクトがあります。
まとめ
いつものようにスナップをしてみましたが、12mmで捉える世界は想像以上に特別に感じられました。楽しい!コンパクトで軽く、カメラにセットして普段のバッグにいれて歩くのはもちろん、旅や登山、風景を撮るために、あと一本持って行きたい時に選びたい画角のレンズです。超広角レンズはVlogでも使いやすく、F1.4の明るさはAPS-Cでも大きなボケのある描写になり雰囲気もアップできます。普段ズームレンズを使っている方、Contemporaryシリーズで単焦点レンズデビューにおすすめです。
■写真家:ミゾタユキ
猫や日常、旅先でみつけた情景を作品として撮り続け、近年では2023年Nikon THE Galleryで「Pastel~夢をめぐる」、2024年FUJIFILM HoP Galleryで「Time to cross」個展を開催。カメラ誌やWEBでの執筆、カメラメーカーのセミナー講師、フォトコンテストの審査などを通じて写真の楽しさを伝える活動にも携わる。著書「カメラでパチリ へやねこ そとねこ」、共著「美しいボケの教科書」など多数。
撮影会&web講評「フォトプラネッタ」主宰
ニコンカレッジ講師
FUJIFILMメタバースHouse of Photographyアンバサダー
日本作例写真家協会会員【JSPA】
















