岩倉しおりさんに聞く ~フィルムカメラの魅力と作品づくり~|PENTAX 特別企画展「It’s time for film!」スペシャルインタビュー

ShaSha編集部
岩倉しおりさんに聞く ~フィルムカメラの魅力と作品づくり~|PENTAX 特別企画展「It’s time for film!」スペシャルインタビュー

はじめに

フィルムカメラを新たに創り出すチャレンジとしてPENTAXが進める「フィルムカメラプロジェクト」に共感し、今回特別企画展「It’s time for film!」を一緒に開催する事となった、写真家の岩倉しおりさんへフィルムカメラの魅力や作品づくり、本プロジェクトへの想いについてインタビューさせて頂きました。

■写真家 岩倉しおりさんプロフィール
香川県在住の写真家。うつろう季節、光を大切に、おもにフィルムカメラにて撮影している。地元、香川県で撮影した写真を中心にSNSで作品を発表する他、写真展の開催。CDジャケットや書籍のカバー、広告写真などを手掛ける。2019年3月、初の写真集『さよならは青色』(KADOKAWA)を出版。

・HP:https://iwakurashiori.wixsite.com/photo
・instagram:iwakurashiori

フィルムカメラの魅力と作品で見てもらいたいこと

― フィルムカメラを使う理由や魅力について教えてください

フィルムで撮るとデジタルとは色の感じが違うのと、立体感があるように感じていて使い続けています。下の写真はのんびりしたいなと思って地元の無人島へ行って撮った写真です。透明でキレイな海の青色を再現することができたり、角度を調節して撮った白く輝く光のつぶもイメージ通りに表現できたり、立体的感のある仕上がりにもなっていて気に入っています。

またフィルムカメラは撮った写真をその場で見られないので、出来上がってくるワクワク感が好きです。現像後イメージしていた以上のものが見られたりする時は、とても嬉しい気持ちになります。

 

― 写真で表現したいことや伝えたいことはどんなことですか

子供の時から何かものを作ったり、何か表現するのが好きで、その何かを表現できる人になりたいなという思いがありました。そして高校生の時に写真と出会って写真を続けて行くうちに、もしかしたら自分の表現手段として写真はあっているのかなというふうに思うようになりました。

ただ今やっていることが、表現と言えるのか、伝えたいことと言えるのかどうかは分からないでいます。
身近にある自分が見つけた光景を写真に残して、こんな光景が実は隠れていたんだよ、というのを見てもらえたら嬉しいという感覚でいるので。

素晴らしい光景の見つけ方やイメージしていること

― どのようにして素晴らしい光景を探して写しとめているんですか

遠くに出かけなくても、近くのこの場所の何でもないところも、もしかしたら輝く瞬間があるんじゃないかなと考えていて、その輝く瞬間を撮りに行くようにしています。

この場所だったらこの天気で、この時間で、この季節だったらこういう風に見えるかもって想像するんですけど、想像するのが好きなので、普段から気になる場所があったら色々と想像を膨らませています。そして、こういう瞬間がベストってなったら、その時を狙って撮りに行くようにしてます。行ってみて今日じゃないなと思うこともあって、そういう場合は撮らないです。

またイメージを言葉にしてメモをとっています。どことはまだ決まっていない場合でも架空の場所を考えて、こういうシチュエーションで、この組み合わせになったら、すごく素敵になるんじゃないかなみたいなものをまとめています。そういった組み合わせをイメージして撮影にのぞんでいると、あの時にメモしたイメージに今近いかもしれない!ってなってそれを絵画のように切り撮る感覚で撮影しています。

上の写真は夕日でもなく、暗くもなく、その間の数分の時間帯を狙って撮りました。夕日だと赤や黄色が入るので、暗くなる前の青の透明度が出てくるようにしてラムネを主役に夏祭りのひと時を写しています。

 

― イメージは周りから影響を受けたりしますか

映画、音楽、絵、アニメだったり、写真以外の色んなものから影響を受けています。違う分野のものを写真に変換した時にどのように見えるのかな?って考えるのも凄く好きで、そこからメモが出来ることもあります。

素敵だなと思う写真も沢山あるんですけど、それは作品として完成しているものですので、写真以外のものを写真に落とし込もうと考えています。

 

― 素敵な青色が作品の中で多く使われている理由を教えてください。

子供の頃から何故か青色が好きで、青とか水色とか単純に色として好きということがあります。もしかすると青色が好きな理由は瀬戸内海に住んでいると海に囲まれ、内に入っても川がありますしまわりに青が多かったことも影響しているかもしれません。

大人になってからも自然と青とか水色とかを探して撮っていて、いらないと思う色があった時は撮らなかったりしているのでこういった色の統一感の作品になっているのかなあと思っています。

撮影時の状況や物語性について

― 撮影中はどのようなことを考えていますか

もしかしたら色々考えているのかもしれないのですが。。。
実は写真をどうやって撮ったかあまり覚えていない事が多いです。夢中になっていて36枚も、気づいたら、あっ、終わってる!ていうような感じで。いいと、思った時にシャッターを切っているんですけど、考えるよりも手が先に動いている感じですね。

 

― 作品に物語を感じるのですがストーリー性のある写真を心がけているんですか

1枚1枚に明確なストーリーを持たせているわけではありませんが、作品撮りするぞっ!って行くのが苦手で友人との遊びの中で撮影しているので、物語のようなものを感じる作品になっているのかもしれません。

作品撮りの為だけに行くと、良いイメージが浮かばない時は1日撮れなかっただけで終わってしまうんですけど、友達と遊びに行って、いい光景を1個見つけられたらいいなと思うし、見つけられなかった時でも、カフェに行ってお話ししたり、別の遊びをしたりと楽しむことが出来るので、このようなスタンスで撮影しています。

夜遅い時間や早朝などの撮影も多くモデルさんに負担がかかってしまうと申し訳ない気持ちになるので、私と同じように一緒に景色を楽しみたいという気持ちの方とでかけるようにしています。例えばこの日は星が凄くキレイなので、一緒に見に行きたい人いますか?って募集かけて、行きたい、見たいって言ってくれた人と、夜のドライブをしながら撮影に行くようにしています。

このように楽しんで撮影するのが一番だと思っているから知らず知らずの内にストーリーが入り込んでいるのかなあと思います。

ここは結構深い川なんですけど、モデルさんと浮き輪で浮いてスタンバイし、潜る瞬間に浮き輪をよけて、せーので2人で潜りました。私は片手で泳いでもう片方の手でカメラを構えて撮りました。子供の時から川遊びは日常的な感じなので、潜ることへの抵抗もなく自然な感じで楽しみながら撮影しています。

子供の時に見た水中での光景もとてもキレイだったと記憶していますが、大人になってから水中に潜るともっとキレイに感じることに気づきこういった光景を写真におさめています。

フィルムカメラプロジェクトへの想いとモノクロ作品

 

― 新たにフィルムカメラを創り出すことにチャレンジしているPENTAXさんのフィルムカメラプロジェクトをどのように感じていますか

新しいフィルムカメラを作ろうとしている気持ちにとても感動しました。
フィルムの価格高騰で思うように写真が撮れなくなってきていて、最近はもうこの現状を受け入れて行くしかないのかな。と思うようになり、撮れるところまで撮っていこうという気持ちでいました。

そんな中、同じように思っている方がPENTAXさんの中にもいる事が分かった時、とても嬉しかったです。カメラ業界の方が本気で考えてくださるのであればこれはもしかしてと、希望の光を感じました。新しいフィルムカメラができる事でフィルム業界が盛り上がり、フィルムカメラで撮り続けられる未来があるといいなと思いました。

またそういう想いからフィルムカメラプロジェクトに参画させて頂き今回の特別企画展「It’s time for film!」をPENTAXさんと一緒に行わせて頂くこととなりました。

 

― イルフォードのモノクロフィルムでの撮りおろし作品を展示されていましたが、撮影はいかがでしたか

モノクロとの出会いは高校生の時で、まわりと違う写真が撮れたのでおしゃれとか面白いとか、そういった感覚で楽しく撮っていました。高校を卒業してからカラーで撮影した時に色のある世界っていいなと感じてからはモノクロは撮ってなくて、今回凄く久しぶりにモノクロでの撮影を行っています。色に頼れない分、より光を意識しながらの撮影となりました。またモノクロでの作品展示は今回が初めてとなりとても貴重な良い経験となりました。

 

― 今回のモノクロ撮影では「PENTAX LX」と「PENTAX 67」を初めて使われたとお聞きしたのですが

実は前から凄く使ってみたかったのでとても良い経験となりました。特に中判サイズの「PENTAX 67」は今の機材と、この大きい機材を持ち歩く事を考えるとハードルが高くて、なかなか踏み出せてないでいました。「PENTAX 67」はファインダーが凄く気に入りました。今まで見た中で、とてもクリアーな描写で立体感があって、覗いた瞬間撮りたくなりました。
このカメラでのモノクロの撮影もとても楽しかったですし、今度はカラーでも撮りたいと思いました。

左が「PENTAX LX」、右が「PENTAX 67」です。展示の「PENTAX 67」は45mmのレンズが装着されています。岩倉しおりさんの撮影では105mmが使われました。

 

― 特別企画展「It’s time for film!」へは来場者の方からどのような反応がありましたか

凄い応援してくれました。
たぶん皆さんも私と同じように、どうにかフィルムを衰退させたくないけど、どうすることも出来ないって歯がゆく思っていたのだと思います。そんな中PENTAXさんがフィルムカメラプロジェクトを立ち上げてくれたおかげで、一緒に盛り上げたいという気持ちになり、応援してくれたのだと思います。

特別企画展 「It’s time for film!」

■PENTAX フィルムカメラプロジェクトwith岩倉しおり 特別企画展 「It’s time for film!」
2023年7月1日(土)~7月31日(月)@新宿 北村写真機店
https://www.kitamuracamera.jp/ja/event/photoexhibition_2023_filmproject

 

 

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