リコー GR IV Monochrome レビュー|銀塩写真の風合いを実感できるモノクローム専用機

リコー GR IV Monochrome レビュー|銀塩写真の風合いを実感できるモノクローム専用機

はじめに

構想から約5年の歳月をかけ、一から開発した新型のモノクロ専用イメージセンサーを搭載した「GR IV Monochrome」がいよいよ登場します。
単なる色を抜いただけではない、モノクロ専用センサーだからこそ到達できた圧倒的な階調と質感。GRならではの機動力とモノクロ専用機としての深化。
画質設計が活かされたイメージコントロールの特徴を捉えながら、唯一無二の表現力をいち早く体験してきました。

デザイン・外観・特長

速写性、携帯性に優れた基本デザインとサイズはRICOH GR IVをベースに、モノクロームの世界観を表現したGR IV Monochrome専用のデザインになっています。
しっとりとした手触りでマットな質感を感じる心地よいしつらえに、セミグロスブラックのロゴ、白色の電源ボタンライトなど、その見た目からも妥協のない姿勢を感じます。

左)GR IV Monochromeはキメ細かなマットブラック / 右)GR IV
本体サイズ:W109.4mm×H61.1mm×D32.7mm
重量:約262g(バッテリー、microSDメモリーカード含む)
有効画素数:約2574万画素
焦点距離:18.3mm(35ミリ判換算で約28mm相当)、F2.8~F16

搭載レンズはベースモデルのGR IVと変わらず、35mm判換算28mm相当で、解像力、豊かなグラデーション、低ディストーションなど、GRレンズの優れた光学性能を余すことなく引き出します。

GR IVと操作感は変わらず使用できる
電源ボタンライトとアクセスランプは白色で、全てにおいてモノトーンというまとまり

GR IVに搭載されていた内蔵NDフィルターの代わりに、レンズユニット内にワンタッチでON/OFF可能な赤色フィルターを内蔵。最高1/16,000秒の電子シャッター撮影機能が追加され、さらにISO感度はISO160〜409600まで拡大しています。

Fnボタンには赤色フィルターのON/OFFが割り当てられ、十字キーの下のWBボタンがイメージコントロールに変更となっている

モノクロ専用機といえば、PENTAX K3-Mark III Monochromeも同社の製品ですが、今回は新たに開発設計されたGR IV Monochrome専用のセンサーを搭載しています。
カラーフィルターを完全に取り除いたモノクロ専用センサーは、一つひとつの画素が光を「色」ではなく、純粋な「光の量」として直接捉えるため、解像感が極めて高く、光と影が混じり合う複雑なシーンでも圧倒的な描写力で、暗い場所でもノイズの少ない滑らかなグラデーション(階調)が得られます。

単に「色を抜いた白黒写真」という言葉では表現しえない〝GRらしいモノクロームの世界観〟を引き出してくれる数々の機能が凝縮された一台です。

内蔵赤色フィルターによるコントラストのコントロール

モノクローム撮影においてカラーフィルターを活用することは、写真の印象を変える手段の一つです。これまでGR IIIとIVでは、撮影する際にイメージコントロール内の詳細設定にあるカラーフィルターを活用してきましたが、GR IV Monochromeでは、内蔵赤色フィルターを使うことでその役割を担っています。

左)赤色フィルターONにするとレンズ前にフィルターが現れる / 右)赤色フィルターOFF
左)赤色フィルターON:薄暮時間の空とビルのトーンが強調された / 右)赤色フィルターOFF

多彩なイメージコントロール+粒状感

モノクロ写真としての表現に対応するべく、新たに開発されたイメージコントロールは、「スタンダード」「ソフト」「ハイコントラスト」「HDR」の他に、「ソリッド」と「グレイニー」が加わりました。キー、コントラスト、調色や明瞭度の微調整もこれまでどおり設定可能です。

さらに、「HDR」以外の5つのイメージコントロールで白黒フィルムを増感処理した際の粒状表現と似た効果を加えることが可能になりました。粒状感が加わることでドキュメンタリー的要素の強い演出ができます。

イメージコントロールからFnボタンを押下すると詳細設定画面。その最後に「粒状感」があり、項目を選んでからさらにFnボタンを押下すると、大きさ・強度を選択できるようになっている
左)ソリッド / 右)グレイニー 
それぞれ粒状感(大きさ2・強度1)を加え、赤色フィルターをONにしています

自分のお気に入りの撮影設定ができたら、イメージコントロール内のカスタム登録「C1~3」のいずれかに設定しておけば、いつでもオリジナルのイメージコントロールを呼び出すことができます。

新・イメージコントロール「ソリッド」と「グレイニー」

ハイライトとシャドーのバランスが程よく、キビキビとした印象が心地よい上に、リアルな描写の「ソリッド」。「スタンダード」よりも硬調なトーンカーブで、コントラストが高めになっており、輪郭を品位よくくっきり描写し、メリハリの効いたスッキリとしたシャープな印象です。GR III、IVでは自分好みの設定で似たような調整をしていたので、個人的に気に入りました。

黒がキュッとしまった印象が好みの「ソリッド」
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(クロップ50mm)
■撮影環境:F4 SS1/250 ISO6400 +0.7EV
■イメージコントロール:ソリッド+赤色フィルター
路地から眺める高層マンション。新旧の街並みのギャップをとらえてみた。明暗差で白トビしやすい空を赤色フィルターでグラデーションを生み出す
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F4.5 SS1/30 ISO500 -0.3EV
■イメージコントロール:ソリッド+赤色フィルターON
木肌の質感、枝の細部、ガラスに映り込んだビルまで繊細かつシャープに描写された
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F4.5 SS1/160 ISO6400 -0.7EV
■イメージコントロール:ソリッド+赤色フィルター

「グレイニー」は強い粒状感が特徴的です。ハイライトは完全に白く飛ばさず、暗部は黒く塗りつぶさず粒状感が際立ちます。ひと昔前の白色度の低い更紙に印刷された、新聞や週刊誌のような風合いを感じられるドキュメンタリーな仕上がりです。

2階調のような印象の強いグレイニーですが、シャドー部までしっかりと写し込み、赤色フィルターをONにすることで、よりハイコントラストな印象が強まります。しかしながら、ハイライト部はとばないという素晴らしい表現力を持ち合わせています。

ハードボイルドな印象。客観的で簡潔な描写になる
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F2.8 SS1/30 ISO6400 +1.3EV
■イメージコントロール:グレイニー+赤色フィルターON
歩きながら撮影した。ブレた描写も「グレイニー」にはふさわしい
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F6.3 SS1/30 ISO2000 +1EV
■イメージコントロール:グレイニー+赤色フィルターON
映り込んだ光景はかなりコントラストが高いが、細部まで写し込んでいる
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F4 SS1/30 ISO4000 +0.7EV
■イメージコントロール:グレイニー+赤色フィルターON

端正な「ソリッド」とハードボイルドタッチな「グレイニー」。どちらもGRならではのスナップシューティングの魅力と醍醐味を感じられるでしょう。

階調がとびぬけて美しい「ソフト」の質感

個人的にGR III、IVでは活用することが少なかったイメージコントロール「ソフトモノトーン」ですが、GR IV Monochromeの「ソフト」はかなり軟調で、ふんわりとした淡く優しいトーンにグッと心を掴まれてしまいました。
ソフトフィルターを使ったかのような柔らかさを感じるのですが、決して輪郭をぼかした表現ではなく、優しく光をキャッチする滑らかで柔和な雰囲気です。これぞモノクロームの美しさ。

一足早い春を運ぶ『冬のさくら』として知られている「啓翁桜」をハイキーにとらえた
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(クロップ50mm)マクロモード
■撮影環境:F2.8 SS1/250 ISO320 +1.7EV
■イメージコントロール:ソフト+赤色フィルターON

その美しさは特にハイライト側に引き出され、あえて曇天の日や、白く明るい被写体、羽や毛などの繊細な質感描写に加え、逆光で捉えると、一層優しい空気に包まれます。

喫茶店で出される水の入ったグラス。普段目にするものの美しさに驚きます
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(クロップ50mm)マクロモード
■撮影環境:F2.8 SS1/30 ISO500 +0.7EV
■イメージコントロール:ソフト
グラデーションのよる質感が美しい光を受けた窓枠
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F2.8 SS1/30 ISO1600
■イメージコントロール:ソフト+赤色フィルターON
曇天こそ「ソフト」の階調表現を実感できる
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F3.5 SS1/200 ISO320 +0.3EV
■イメージコントロール:ソフト+赤色フィルターON

白から黒までの間にグレーの階調がどれだけ豊富にあるか。この階調がスムーズなほど写真は立体的で上品に見えます。モノクロ写真と一口に言っても、コントラストの効いた写真だけではないということが実感できるイメージコントロールです。

洗練された印象の「スタンダード」もいい

GR IV Monochromに搭載されたイメージコントロール「スタンダード」は、単なる基本設定ではありません。モノクローム専用センサーによるハイライトの輝きからシャドーの際まで、ひとつの色(Mono+Chrome)が織りなす無限のグラデーションを、緻密に描き出すための基盤といえます。

まるで低感度のモノクロフィルムで静かにシャッターを切ったときのような、雑味のない美しさと落ち着きを感じられるうえ、被写体の輪郭や質感を伝えるクリアな描写は、まさに洗練された描写です。

光が反射するガラス越しに、店内まで精細に写し込んだ
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(クロップ35mm)
■撮影環境:F4.5 SS1/3200 ISO6400 -0.3EV
■イメージコントロール:スタンダード
カトラリーはモノクロで撮りたくなる被写体のひとつ。粒状感の細やかさも見事だ
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(クロップ50mm)マクロモード
■撮影環境:F3.2 SS1/500 ISO6400 -0.3EV
■イメージコントロール:スタンダード
ハイライトからシャドーまで建材の質感を細部にわたり再現している
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F3.5 SS1/40 ISO6400 +0.7EV 
■イメージコントロール:スタンダード
人が往来する瞬間をとっさに撮影した一枚。スポットライトの灯りだが白トビは感じられない
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F2.8 SS1/30 ISO4000
■イメージコントロール:スタンダード+赤色フィルターON

モノクローム専用センサーという贅沢な道具を使うからこそ、余計な味付けをせず、光のグラデーションだけで勝負する「スタンダード」。結局のところ、迷いのない基礎的表現力への回帰かもしれません。モノクロ写真の写真表現の原点に立ち返り、光を撮ることの豊かさを教えてくれるような気がしました。

おわりに

GRシリーズではおなじみの「ハイコントラスト」も健在
■撮影機材:リコー GR IV Monochrome:18.3mm(28mm)
■撮影環境:F4 SS1/2500 ISO6400 +1.3EV
■イメージコントロール:ハイコントラスト+赤色フィルターON

色の情報が消えると、脳は表面の凹凸や光の反射から素材感を感じ取ろうとするため、さまざまな質感がカラー写真よりも生々しく、あるいはドラマチックに表現されます。
実際に撮影してみると、「カラーかモノクロか」の二択で迷うのではなく、「色に頼らず光と形だけで勝負する」という潔さがあり、今まで見落としていた光と陰影が、驚くほど目に飛び込んでくるようになるものです。

モノクロ専用のセンサーを搭載したことによる、光の捉え方、細部にわたる描写はかなりハイグレードで、これまでのデジタルモノクロ写真の想像を超え、銀塩写真に近似した表現力を実感しました。
シーンに合わせてイメージコントロールを変えながらの撮影も非常に楽しく、GR IV Monochromeでしか表現しえないモノクロ写真の奥深さを感じられるでしょう。

-ますますモノクロ写真が好きになってしまう一台です。

 

 

■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
日本作例写真家協会会員・PhotoPlus+主宰

 

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