OM SYSTEM OM-5 Mark II レビュー|OM-5 Mark II と歩く北アルプス。上高地から焼岳へ。
- はじめに…山を楽しく歩けるのはOM SYSTEM のおかげ
- 防塵・防滴対応ミラーレス一眼カメラの最軽量クラス
- 軽くても機能は豊か。カメラひとつで感動を思いのままに
- 約5000万画素の高解像写真が撮れるハイレゾショット
- 手軽にスローシャッター効果を楽しめるライブND
- 幻想的な撮影を楽しめる多重露出
- 星空撮影に嬉しいライブコンポジット
- 山での撮影が楽しくなるアートフィルター
- 4K動画を手持ちで手軽に
- OM-5 Mark II の進化と、便利だと感じたこと
- CPボタン
- USB Type-C端子に対応
- 手持ち撮影アシスト
- メニュー画面
- レンズが小型軽量だと山でのメリットが大きい
- 近接撮影が得意なので高山植物撮影が楽しい
- まとめ。山にも街にも
- この記事に使用した機材
はじめに…山を楽しく歩けるのはOM SYSTEM のおかげ
川野は山に登り始めて約9年経ちます。カメラを持って山に登るので、さぞかし体力があるのでは…と思われがちですが、そんなことはありません。山に登る以前は運動とは無縁だったのですから。そんな私でも、山を楽しく撮り歩けているのは間違いなくOM SYSTEM のおかげです。

山で持ち歩くカメラに求めることはとにかく「軽くて小さい」こと、そして雨でも雪でも天候を選ばない「耐候性」があることです。これらの条件を満たすカメラはいくつか候補がありますが、それでもOM SYSTEM OM-5 Mark II を選ぶには理由があります。これからその理由について触れていきますが、山に登らない人にもメリットの大きいカメラです。ぜひ最後までお付き合いください。
防塵・防滴対応ミラーレス一眼カメラの最軽量クラス
川野がOM-5 Mark II を選ぶ理由、それは、防塵・防滴対応のミラーレス一眼カメラにおいて最軽量クラスに属するからです。OM-5 Mark II は、本体のみで約370g。バッテリーとメモリーカード含めると約418gで、500mlペットボトル1本にも満たない軽さです。
本体重量400gを切る軽さでIP53等級の防塵・防滴性能というのも凄いことですが、加えて-10℃の耐低温性能を持つ機種は稀有。雪山を歩きたい、寒冷地を旅したい、雨の日も撮影したい、そんなときも安心して撮影できる。それが、OM-5 Mark II を選ぶ理由なのです。
ちなみに、キットレンズで、川野が愛用しているM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(約254g)はIPX1等級の防塵・防滴性能なので、雨の日も気にすることなく撮影できます。重たいザックを下ろしてカメラを仕舞う、そのストレスから解放されるのは本当にありがたいことなのです。
軽くても機能は豊か。カメラひとつで感動を思いのままに
OM-5 Mark II が発表された日、川野は北アルプスを歩いていました。目指す山は、活火山として知られている焼岳(2,455m)。上高地から入山し、小梨平キャンプ場でテント泊。翌日、焼岳に登りました。

■撮影環境:f/10 1/125秒 ISO200 WB5800K 焦点距離15mm(35mm判換算30mm) カラークリエーター 手持ちハイレゾショットにて撮影
梓川越しの焼岳。これから登る山を見ると、どのような絶景が見られるのかとワクワクしてしまいます。
テント場に不要な荷物を置き、軽めの荷物で登りました。ですが、上高地から焼岳の標高差はおよそ1,000m。小梨平からは往復で約8時間のコースになります。加えて、鎖場や長いハシゴもあるルート。体力を消耗しやすいルートこそ、小型・軽量であることのありがたみを実感します。
約5000万画素の高解像写真が撮れるハイレゾショット
小型軽量とはいえ、撮影機能は充実しています。そのひとつがハイレゾショットです。複数枚の画像を合成することにより、ノイズを約2段分軽減しながら、約5000万画素の高解像写真を残すことができます。

■撮影環境:f/8.0 1/500秒 ISO200 WB5800K 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) カラークリエーター 三脚ハイレゾショットにて撮影
焼岳で一番に見たかったのが、この焼岳北峰からの絶景。赤い山肌に映えるエメラルドグリーンの湖が神秘的でした。画面左下の山肌がうっすら黄色いのは噴気孔から吹き出す硫黄によるものです。地球が生きていることを実感できるのも山の魅力のひとつですよね。
この作品は、三脚ハイレゾショットを使用して撮影しました。通常撮影でも十分美しいのですが、ハイレゾショットで撮影すると岩肌の質感や色も精細に捉えてくれるので、立体感に違いが出てきます。

■撮影環境:f/8.0 1/500秒 ISO200 WB5800K 焦点距離19mm(35mm判換算38mm) カラークリエーター 三脚ハイレゾショットにて撮影
後ろを振り返れば穂⾼連峰、その眼下には梓川と上⾼地。三脚ハイレゾショットにより、⽊々の⽴体感もさることながら、⾚や緑の⼭⼩屋も鮮明にとらえることができました。


⼩さなボディーだけれど、こんなに⾼画質だなんて凄いですよね。

■撮影環境:f/8.0 1/400秒 ISO200 WB5800K 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) カラークリエーター 手持ちハイレゾショットにて撮影
三脚は重たいから持ちたくない…という方には、手持ちハイレゾショットがおすすめです。川野も普段は手持ちハイレゾショットを使います。なぜなら、三脚をセットしていると、山歩きのリズムが崩れてしまいますし、撮りたい瞬間を逃してしまうからです。三脚ハイレゾショットのほうがより高画質ですが、登山道では三脚が立てられないこともあるので、そのような場合は手持ちハイレゾショットが便利なのです。
三脚/手持ちハイレゾショットは合成処理が入るので、動く被写体はブレが生じます。風で草木の葉が揺れているときは不自然に仕上がることがあるので注意が必要ですが、この作品のように歩く人のブレが躍動感のある写真に仕上がることも。ですので、状況に応じてハイレゾショットか通常撮影かを選ぶようにしています。
ちなみに、OM-5 Mark II には新しく「CPボタン」が加わったので、ハイレゾショットやライブNDなどのコンピュテーショナル フォトグラフィ機能をすばやく呼び出せるようになりました。各種機能ヘの切り替えや機能解除もCPボタンから行えるので、「あっ」と思った時にシャッターチャンスを逃さないのが嬉しい進化だと感じています。
手軽にスローシャッター効果を楽しめるライブND
清流や雲の流れ、風に揺れる草木の葉など、動く被写体をぶらして撮影したくなることがあります。そのようなときは、ライブNDを使用してスローシャッター撮影を楽しんでいます。OM-5 Mark II では、CPボタンからライブNDを呼び出せるようになったので、これまで以上に使用する回数が増えました。

■撮影環境:f/14 1/4秒 ISO200 WB5800K 焦点距離22mm(35mm判換算44mm) カラークリエーター ライブND16にて撮影
梓川と焼岳。川の流れをぶらすため、1/4秒のスローシャッターで撮影しました。水流に岩が当たる箇所はブレがわかりやすいですね。よく見ると葉にもブレが生じていて、風さえも写真に残すことができました。
スローシャッター撮影をしたいなら、シャッター優先モードに切り替え、シャッター速度を遅く設定したら良いのでは?と思いがちですが、明るい場所でスローシャッター撮影を行うと光量が多すぎて露出オーバー、つまり意図せず明るすぎる写真になってしまいます。
ですので、通常はNDフィルターというサングラスの役割をする物理フィルターをレンズに装着し、光量を減らすのですが、ライブNDは物理フィルター不要でスローシャッター効果を得ることができるのです。

■撮影環境:f/14 1/2.5秒 ISO200 WB5800K +3STEP 焦点距離45mm(35mm判換算90mm) カラークリエーター ライブND16にて撮影
木々の間から見える梓川の流れをぶらし、梓川ブルーのグラデーションが引き立つ一枚にしました。ライブNDは、ND2 / 4 / 8 / 16 の4段階から選べます。モニターで効果のかかり具合を確認できるので、思わず「わぁ!すごい」と声が出てしまうことも。それがまた楽しいのです。
ライブNDが使えれば、物理フィルターを持ち歩く必要がないので、荷物の軽量化につながります。フィルターの出し入れや装着の手間も省けるので、山では嬉しい機能なのです。
幻想的な撮影を楽しめる多重露出
多重露出とは、複数枚の画像を重ね合わせて撮影する機能です。この機能を使って撮影すると様々な表現を楽しむことができます。多重露出もCPボタンから呼び出すことができます。

■撮影環境:f/4.0 1/100秒 ISO200 WB5800K 焦点距離45mm(35mm判換算90mm) 多重露出にて撮影
登山道ではイワカガミがちらほら。咲いている花が少なかったので、多重露出で同じ花を重ね合わせ、賑やかな印象に仕上げてみました。

■撮影環境:f/11 1/1250秒 ISO200 WB晴天 焦点距離150mm(35mm判換算300mm) カラークリエーター 多重露出にて撮影
群生する小さな花々と、種類の違う花を重ね合わせてみたら「あっ!これ素敵だな」って感じました。多重露出の面白いところは、違う被写体を重ね合わせたときの化学反応にあります。一枚ではなんてことのない写真でも、もう一枚重ね合わせると思いも寄らない画に仕上がるので、写真のバリエーションが広がるのですよね。
画像をRAW形式で保存していれば、撮りためた写真と重ねて多重撮影することもできますし、モニターに重ね合わせた結果が表示されるので、構図を整えながらの撮影もできます。
ちなみに、この作品はカラークリエーターを併用しています。カラークリエーターとは、色相と彩度を自由に調整できる機能で、この作品では緑色を加えつつ、色鮮やかに仕上げました。この作品の他にも多数使用しているのですが気づきましたか?川野の場合、彩度を調整したいときに使用しています。
星空撮影に嬉しいライブコンポジット
星空観察日和だったので、テントの外に三脚を立て、星空撮影を楽しみました。星空は難しい被写体のひとつですが、OM-5 Mark II は星空撮影を手助けしてくれる機能が豊富なので、手軽に撮影を楽しむことができます。

■撮影環境:f/2.0 50秒 ISO1600 WB晴天 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) カラークリエーター ライブコンポジットにて撮影
ライブコンポジットを使用して、星の軌跡を撮影しました。この作品は50秒×30コマ=1500秒、つまり25分間撮影しています。25分間の星の軌跡を写真に残せるなんて、なんだかロマンチックですよね。
ライブコンポジットは複数の写真を重ね合わせるのですが、重ねるという点では多重露出に似ています。ですが、明るく変化が生じた部分のみ重ね合わせるので、写真が明るくなり過ぎることがありません。しかも、カメラ内で合成してくれるので、PCによる複雑な編集も一切不要。星空撮影になくてはならない機能のひとつです。
撮影中はモニターで経過を確認できます。「星の軌跡が育ってきた、よしよし」と観察しながら温かい飲み物を片手に過ごす時間は至福ですので、みなさんもぜひお試しを。その際、防寒対策をお忘れなく。

■撮影環境:f/2.0 30秒 ISO3200 WB晴天 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) アートフィルター:ネオノスタルジー
点像の星空撮影で面白いのが、アートフィルターのネオノスタルジー。暗部にグリーン、明部にマゼンタが加わるので、天の川が際立ってくれるのです。右下に天の川の端っこが写っていますよね。ハイライト&シャドウコントロールでMidtoneを少し明るく、Shadowを少し暗く調整すると、より天の川が際立ちます。
星空撮影は基本の設定を覚えてしまえば難しくありません。ですが、通常の撮影と異なり、暗闇での操作になるのが厄介なところ。そこで役立つのがOM SYSTEM の強みでもある、星空撮影をアシストする機能たちです。
1つ目は星空AFです。通常のオートフォーカス(AF)では暗闇の小さな星にピントを合わせるのは困難で、マニュアルフォーカス(MF)に切り替え手動でピントを合わせるのが基本です。ところが、星空AFを使えば自動で星にピントを合わせることが可能です。
2つ目はOM-5 Mark IIの新機能であるナイトビューです。暗所の場合、通常モードではモニターが真っ暗になってしまいますが、ナイトビューを使うと星も地上の景色も認識できるので、構図を整えやすくなります。
3つ目はカスタムモードです。よく使う撮影設定を登録できる機能で、設定に名前を登録することもできます。川野は、星の撮影設定を「Starry sky」、いつもの撮影設定を「usually」という名前で登録し、簡単に切り替えできるようにしています。星空の撮影設定は昼間の設定とはまったく異なるので、暗所で設定しているとボタンが見えずストレスがたまります。星空撮影が快適になる機能が満載なのも山では嬉しいのです。
山での撮影が楽しくなるアートフィルター
天候が悪かったり、求めていた絶景に出会えなかったりすると写欲が下がることも。ですが、状況にあわせてアートフィルターを選ぶと撮影がぐっと楽しくなります。川野が多用するアートフィルターは以下の2つです。
・ラフモノクロームII … 曇りの日や岩稜帯で

■撮影環境:f/8.0 1/250秒 ISO200 WB晴天 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) アートフィルター:ラフモノクロームII(ピンホール効果)
夏山では午後になるとガスが発生しやすく、山頂に到着するころには日差しや青空が隠れてしまうことも。景色に色鮮やかさが無くなったときは、思い切ってモノクロ系のラフモノクロームIIを使い、クールな印象を楽しんでいます。「ピンホール効果」の追加もできるので、画面中央に視線が集中するように仕上げてみました。

■撮影環境:f/8.0 1/640秒 ISO200 WB晴天 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) アートフィルター:ラフモノクロームII
ラフモノクロームIIは粒状感と高コントラストな仕上がりが特徴。荒々しい岩稜帯にも相性の良いフィルターです。色の情報を削ると陰影や質感が際立つため、岩の造形を楽しみたいとき多用します。曇りや雨の日の空もこのフィルターで撮影すると空の表情がクールに仕上がるのでおすすめです。
・ポップアートII … 緑の多い稜線や樹林帯で

■撮影環境:f/8.0 1/320秒 ISO200 WB5800K 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) アートフィルター:ポップアートII
ポップアートIIは色に深みが欲しいときや、より立体感を出したいときに使います。この作品を撮影したときは奥にそびえる穂高連峰が少しかすんでいましたが、ポップアートIIのおかげでクリアに仕上がりました。

■撮影環境:f/10 1/60秒 ISO2000 WB晴天日陰 -2STEP(G) 焦点距離25mm(35mm判換算50mm) アートフィルター:ポップアートII
樹林帯では特に愛用しています。森のしっとりとした雰囲気を引き出してくれるからです。樹林帯に差し込む光と影を際立たせてくれますし、朝露に濡れた木々の深い色味なども再現してくれます。

■撮影環境:f/4.0 1/60秒 ISO250 WB5800K +4STEP 焦点距離25mm(35mm判換算50mm) アートフィルター:ポップアートII(ピンホール効果)
倒木を苗床にしたマイヅルソウの群生。その存在感に惹かれ、静かにシャッターを切りました。薄暗い森から花が浮き上がる様子や葉の立体感が美しいですよね。群生の存在感を高めるため、ピンホール効果を使用しました。
アートフィルターは16種類搭載されています。モニターやファインダーで効果を確認しながら選べるので、思いがけず「これ良いな…」と感じるフィルターに巡り合うことも。ただし、コンピュテーショナル フォトグラフィ機能との併用はできない場合があるのでご注意を。
4K動画を手持ちで手軽に
静止画の撮影と併行し、動画で残したいな…と感じたシーンは4K動画で記録しました。静止画の仕上がりと同じ設定でも撮影できるので、動画と静止画に統一感を出せるのは個人的に気に入っています。
■撮影環境:4K24fp カラークリエーター および OM-Cinema1 で撮影した動画を編集でつなげています
OM-5 Mark II は5軸手ぶれ補正が強力なので、手持ち撮影でも大きなブレもなく映像を残せました。この手軽さが「動画も残そう」という気持ちにつながりますね。8秒前後のカットを編集でつなげただけですが、やはり動くものは動画で残すのが良いですね。動画の最終カットで岩ツバメが飛んでいるのですが、気付きましたか?
ちなみに、動画ピクチャーモードに「OM-Cinema1」と「OM-Cinema2」が新たに加わり、手軽にシネマライクな色合いの映像を楽しむことができるようになりました。
また、OM-Log400に対応しているので、カラーグレーディングによる本格的な映像表現も可能です。録画状態が分かる赤枠表示や、録画ランプ(タリーランプ)搭載されるなど、動画撮影機能も着実に進化しています。
OM-5 Mark II の進化と、便利だと感じたこと
OM-5 Mark II は派手な進化ではありませんが、OM-5と比較すると着実に便利な機能が増えました。すべてを紹介しきれませんが、川野が便利だと感じたものをピックアップして紹介します。
CPボタン
ハイレゾショットやライブNDなどのコンピュテーショナル フォトグラフィ機能を素早く呼び出せるようになったのが本当に便利でした。各機能への切り替えはCPボタンを押しながらダイヤルを回すだけです。
手袋をしていると操作しにくいと感じるときもありますが、それを差し置いてもやっぱり便利だなと。特にハイレゾショットやライブNDは山で多用する機能なので、無くてはならない存在です。
USB Type-C端子に対応
これはかなり嬉しい進化です。なぜなら、これまでUSB Micro-BとUSB Type-Cとライトニングケーブルと…など、数種類のケーブルを持たなければならず、わずらわしく感じていたからです。電子機器がUSB Type-C対応なら1種類のケーブルだけで済むので荷物が減らせます。

さらに、モバイルバッテリーからの充電が可能なので携帯する充電池の数も最小限にできますし、給電にも対応しているのでライブコンポジットなどの長時間撮影も安心して楽しめます。結果的に荷物の軽量化につながり、とても助かっています。
手持ち撮影アシスト
四角い枠内に手ぶれの状態が表示される機能です。枠内に手ぶれ表示がおさまるようにカメラを保持することで手ぶれしにくい構えになり、結果的に手ぶれ防止につながります。

長秒撮影時に役立つ機能ですが、川野はライブNDやライブコンポジット、ハイレゾショットなどの合成処理が入る機能にも活用しています。
OM-5 Mark II は5軸手ブレ補正(ボディー内最大6.5段、シンクロ最大7.5段)と強力なので、手ぶれの心配をすることはほとんどありません。ですが、手持ち撮影アシストを使うほうが良い結果につながったので、よほどの長秒撮影を行わないのなら三脚なしで山歩きができます。荷物の軽量化にもつながる優れた機能ではないでしょうか。
メニュー画面
OM-1シリーズや、OM-3と同様のメニュー構成になったので、初めてOM SYSTEM を操作するかたも、既にOM SYSTEM のカメラをお持ちのかたも、操作がわかりやすくなりました。

レンズが小型軽量だと山でのメリットが大きい
レンズが小型軽量だと携帯性に優れるだけでなく、レンズ交換のストレスから解放されるメリットがあります。

川野が山で持ち歩くレンズは主に3本、たまに4本です。標準ズームレンズ、単焦点レンズ、望遠ズームレンズです。広い景色を雄大に撮る、登山道から離れた花を引き寄せて撮る、被写体の背景を大きくぼかして撮る、星空を撮るなど、レンズごとに得意な描写が異なるので、必要に応じて持ち歩きます。
レンズ交換こそが魅力のミラーレス一眼カメラではありますが、レンズが大きいと荷物が重くなってしまいますし、交換レンズを持つのも嫌になってしまいます。

そのような理由から、レンズも小さい OM SYSTEM を選ぶのです。川野が愛用しているレンズはすべて、500mlペットボトルより小さいので、サコッシュやポケットに入れて持ち運ぶことができます。

さらに、ボトルホルダーにも入るので、(落下を防ぐために注意は必要ですが)ザックのショルダーベルトにホルダーを装着することでレンズ交換も楽になります。レンズをザックにしまうとザックを降ろさなければならず、それがストレスでレンズ交換を諦めることもあったのですが、そのようなストレスから解放されてからは積極的にレンズを交換しています。
近接撮影が得意なので高山植物撮影が楽しい
OM SYSTEM は近接撮影が得意なレンズが多いのも魅力です。特に、キットレンズであるM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO については、最短撮影距離は広角端で12cm、望遠端で23cm、ズーム全域で最大撮影倍率は0.5倍(35mm判換算)になります。名刺がモニター画面におさまるくらい、寄って撮影できます。ですので、高山植物などの小さな花でも存在感たっぷりに撮影できます。

■撮影環境:f/4.0 1/200秒 ISO200 WB晴天 -1STEP(R) -7STEP(G) 焦点距離45mm(35mm判換算90mm) アートフィルター:ポップアートII
被写体に寄れるので、美しいボケも楽しめます。カラマツソウの背後を大きくぼかしたことで、玉ボケが幻想的な一枚になりました。

■撮影環境:f/4.0 1/160秒 ISO200 WB5800K 焦点距離45mm(35mm判換算90mm) アートフィルター:ポップアートII
小指の先くらいの葉についた朝露でさえも美しく残せました。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO は景色も花も、水滴さえもこの一本で撮影できるので、レンズ交換が厳しい天候時は、このレンズを装着して山を歩きます。間違いなく山では欠かせないレンズです。
まとめ。山にも街にも
OM-5 Mark II の使い心地について語りましたが、いかがでしたでしょうか?

■撮影環境:f/9.0 1/250秒 ISO200 WB5800K 焦点距離22mm(35mm判換算44mm) アートフィルター:ポップアートII

■撮影環境:f/8.0 1/200秒 ISO200 WB5800K 焦点距離75mm(35mm判換算150mm) カラークリエーター 手持ちハイレゾショットにて撮影
「OM-5 Mark II の進化と、便利だと感じたこと。」の項でも述べましたが、OM-5 Mark IIは派手ではないものの、メリットの大きい進化をとげています。
また、この価格帯でありながら、山岳風景の撮影に役立つコンピュテーショナル フォトグラフィ機能が充実していて、防塵・防滴で、手ぶれ補正も非常に強力。しかも、機能が豊富なのに小型軽量で-10℃の耐低温設計。そうそう、ダストリダクションシステムのおかげで、レンズ交換時のゴミやホコリの付着も気になったことがありません。これらの特徴からも、同価格帯のカメラと比べて圧倒的に山に向いているといえるでしょう。

■撮影環境:f/1.2 1/5000秒 ISO200 WB晴天 -3STEP(G) 焦点距離25mm(35mm判換算50mm) アートフィルター:ライトトーン

■撮影環境:f/8.0 1/200秒 ISO320 WB晴天 -4STEP(G) 焦点距離93mm(35mm判換算186mm) アートフィルター:ライトトーン
AI被写体認識AFは非搭載なので、素早く飛ぶ鳥など動く被写体を撮影したい方には物足りないかもしれません。ですが、山など静止している被写体を撮影するのがほとんど、という方には十分満足いただけると思います。
過酷な環境で使いやすいということは「街」でも使いやすいといえます。ミラーレス一眼カメラだと壊れそうで持ち出しにくい…という心配も無用。小さなOM-5 Mark II と一緒に大きな感動を共有できたなら、川野としては嬉しい限りです。
■写真家:川野恭子
「日常と山」を並行して捉え、文化や営みが交わる点を軸に作品制作を行う。ここ数年は山小屋勤務を経験しながら、山の歴史・文化に造詣を深めることに努めている。メディアへの写真提供、撮影、執筆、講師、テレビ出演(NHKにっぽん百名山ほか)など、多岐に渡り活動。京都芸術大学通信教育部美術科写真コース非常勤講師。著書に、写真集『山を探す』(リブロアルテ)、織田紗織氏との共著『山の辞典』(雷鳥社)ほか多数。



















