OM SYSTEM OM-5 Mark IIレビュー|アウトドアだけじゃない!ワガママに笑って付き合ってくれるタフでクールなマルチロールカメラ
はじめに
2025年7月にOMデジタルソリューションズより発売された「OM SYSTEM OM-5 Mark II」は、マイクロフォーサーズ規格に準拠したミラーレスデジタル一眼カメラだ。イメージセンサーには有効画素数約2037万画素の4/3型 裏面照射積層型 Live MOS センサーが採用されており、同社のOM SYSTEMシリーズにおいて中級機にあたる機種となる。
前モデルとなるOM SYSTEM OM-5は2022年11月に発売されているが、実質的には同社のブランド変更に伴いそれまでに販売していたOM-D E-M5 Mark III(2019年11月発売)をベースとし、筐体もそのままでいくつかの機能向上を行なったマイナーチェンジ製品であったことからも、今回のOM-5 Mark IIは、およそ4年半ぶりに筐体デザインも含めフルモデルチェンジされたカメラだ。そこでここでは新登場となったOM-5 Mark IIの外観、機能面の特徴をOM-5との比較も交えつつ確認していくことにしよう。
OM-5 Mark IIの特徴と主なスペック
■マイクロフォーサーズ規格準拠レンズ交換式カメラ
■有効画素数約2037万画素4/3型Live MOS センサー採用 スーパーソニックウェーブフィルター搭載
■画像処理エンジンTruePic IX
■アスペクト比4:3
■5軸補正撮像センサーシフト式ボディ内手ぶれ補正 画面中央6.5、周辺5.5段分/対応レンズ使用でシンクロ手ぶれ補正中央7.5、周辺6.5段分の効果
■視野率約100%/約1.23倍~約1,37倍 アイポイント約27mm 約236万ドットOLEDビューファインダー
■3.0型2軸可動式(バリアングル)液晶背面モニター 約104万ドット(静電容量方式タッチパネル)
■UHS-I/II対応 SD/SDXC/SDHCメモリーカードスロット (スロット数1)
■常用ISO感度 200-6400 / 拡張ISO感度 LOW64・100(ISO64・100相当)・8000-25600
■メカニカルシャッター1/8000~60秒/バルブ・ライブタイム・ライブコンポジット、電子先幕シャッター1/320~60秒、電子シャッター1/32000~60秒
■連写 最高約6コマ/秒・低振動連写 最高約5.5コマ/秒・静音連写H 約30コマ/秒(ブラックアウト無し ピントと露出は1コマ目の値に固定)・静音連写 最高約10コマ/秒
■プロキャプチャー 連写H 最高約30コマ/秒(ピントと露出は1コマ目の値に固定)・連写 最高約10コマ/秒(要対応レンズ使用 絞り開放~F8.0)
■ハイスピードイメージャAF クロスタイプ位相差AF 121点/コントラストAF 121点
■顔優先AF/瞳優先AF あり
■ライブND あり(ND2/4/8/16) S、Mモードで使用可、フラッシュ禁止
■ライブGND なし
■三脚ハイレゾショット(JPEG 50M/25M・RAW 80M画素相当)/手持ちハイレゾショット(JPEG 50M/25M・RAW 50M画素相当)
■MOV(MPEG-4AVC H..264)、 C4K・4K ・FHD、4Kタイムラプス動画、縦位置動画、S&Q動画 (スロー動画/クイック動画/ハイスピード動画)
■外部端子 USB2.0 Hi-Speed(Type-C)、HDMIマイクロコネクター (Type-D)、リモコン端子φ2.5ミニジャック、外部マイク入力端子φ3.5 ステレオミニジャック
■無線LAN(IEEE 802.11b/g/n 2.4GHz/5GHz)・Bluetooth(Ver.5.2 Bluetooth Low Energy)内蔵
■電源 リチウムイオン充電式バッテリーBLS-50 撮影可能枚数 標準:約310枚/低消費電力撮影モード:約640枚、USB給電充電対応、USB PD非対応
■防塵防滴IP53/IPX1 OMDS(オリンパス)製IP53/IPX1対応レンズとの組み合わせ時に有効
■耐低温仕様 動作保証気温-10℃~+40℃(動作時)
■大きさ 約125.3mm(W)×85.2mm(H)×52.0mm(D)
■質量 付属充電池およびメモリーカード含む、アイカップなし418g
OM-5 Mark IIの仕様を前機種のOM-5と比較する。表ではOM-5 Mark IIで新しくなった仕様を赤文字で、機能が抑えられた仕様を青文字で表している。OM-5とOM-5 Mark IIではセンサーの画素数はともに約2037万画素、画像処理エンジンもTruePic IXと共通している。そのほか多くの基本的な仕様もOM-5のものを継承していることからスペック面での大きな違いは感じられない。むしろCPボタンの新設やUSB端子のType-Cへの変更&USB給電への対応など使い勝手の面での向上が主な変更点だ。

OM-5 Mark IIに搭載されたイメージセンサーは有効画素数約2037万画素4/3型Live MOS センサー。4:3比率のセンサーなので、3:2比率である35mm判に換算すると装着したレンズの実効的な焦点距離(画角)は実焦点距離の2倍に相当する(例:焦点距離100mmレンズは200mmレンズ相当の画角となる)。
センサーの前面には外部から入る砂塵やカメラ内メカニカルダストなどのゴミの付着を防止するスーパーソニックウェーブフィルターが搭載されている。電源をONにする度に30,000回/秒以上の超高速振動を瞬時に発生させることで、センサーからゴミを弾き飛ばすことができる。このダストリダクションシステムは極めて強力なので、センサーにゴミが付着することで発生する画像への影の写り込みを限りなく抑えることができるのだ。
OM-5 Mark IIの外観を見る

OM-5 Mark IIに単焦点レンズのM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 IIを装着。とてもコンパクトなレンズだが、それに負けず劣らずOM-5 Mark IIボディもコンパクトであることから、シンプルでありながらも極めて凝縮感の高い姿となる。それでいてカメラ上面に配置されたダイヤル&レバー類は十分な大きさであり、操作性はしっかりと確保されている。

OM-5 Mark II上面。右手側の限られたスペースに露出モードダイヤル、前ダイヤル、後ダイヤルの三つの大きなダイヤルが並ぶ。さらに前ダイヤルの回転軸上にはシャッターボタンが収められている。また左手側の端には電源スイッチレバーを配置。操作頻度が高い操作系を右手側に集中させたことで、右手と左手の役割は明確に仕分けられている。

カメラ上面右手側。ダイヤルおよびシャッターボタンが絶妙な位置関係となっており、OM-1 Mark IIなど大きなカメラのレイアウトに慣れた筆者でもまったく違和感なく操作できる。ただ今回新設されたCPボタンや親指付け根の位置に設けられたISOボタンは、筆者の場合はカメラをグリップしたままだと近すぎて指が曲がらないので少々押すのに難儀してしまった。

カメラ上面左手側。大きな電源スイッチレバーはとても操作しやすい。OM-1 Mark IIおよびOM-3のいずれよりもスマートにON/OFFができる。電源レバーの軸上にはドライブボタンとLVボタンが配置されている。これらのボタンをカメラのファインダーを覗きながら操作することはあまりないので、この位置であってもさほど困ることはないだろう。

コンパクトなカメラボディであるだけにカメラ背面の大部分は3.0型液晶モニターで覆われている。背面の右手側に十字ボタンとOKボタン、その上にMENUボタンとINFOボタン、下側には再生ボタン、消去ボタンが配置されている。またファインダーとグリップの間にはFnレバーと一体化されたAF-ONボタンが配置。カメラを保持したままでも親指で楽に操作可能だ。

背面モニターは2軸可動バリアングル式を採用。ボディからモニター部を開き自在な位置に展開することができる。ローアングル&ハイアングルでの撮影にとても便利。約104万ドット3.0型。静電容量方式タッチパネルを採用しているので、直接モニターにタッチしての操作が可能だ。

UHS-I/II対応のSD/SDXC/SDHCカードスロットを1基搭載。防塵防滴対応のためスロットカバーには浸水防止リングが装着されている。

バッテリー室は底部にあり充電池はOM-5と共通のリチウムイオン充電式バッテリーBLS-50を採用。BLS-50はE-M5 Mark III、E-M10 Mark IVなどでも採用されている充電池でもあるので、これらの機種のユーザーであれば充電池の流用が可能だ。

外部入出力端子部。上から3.5mm径マイク端子/リモートケーブル端子/タイプD HDMI端子/USB Type-C端子となる。HDMI出力は外部モニターへ映像とカメラ情報を表示させる[モニターモード]、外部レコーダーへ保存用の映像を出力する[記録モード]が選択できる。リモートケーブル端子にはオプションのリモートケーブルRM-CB2およびRM-WR1/RM-WR2(有線ケーブル使用時)が接続可能。RM-WR2はOM-5 Mark IIとBluetooth接続することでワイヤレスリモコンとしても使用可能だ。なお従来のワイヤレスリモコンRM-WR1とOM-5 Mark IIはBluetooth接続ができないので注意が必要だ。
OM-5のUSBの端子はUSB Micro-Bだったが、OM-5 Mark IIではUSB Type-Cに変更された。同時にモバイルバッテリーからの充電・給電にも対応。ただしUSBの規格はUSB3.0(Superspeed)ではなくUSB2.0 (Hi-Speed)となるのでデータ通信速度は従来通りのままだと思われる。

OM-5 Mark II(左)とOM-5(右)を並べて比較する。カメラの大きさ、全体の形状の印象はとてもよく似通っているが、OM-5ではカメラトップカバーの形状が段差のあるデザインであったものがOM-5 Mark IIでは窪みのない滑らかな形状となっている点が大きな違いだ。これはアウトドアでの撮影時に発生する砂埃や水滴などが付着した場合でも、容易に拭うことができるようにしたものと思われる。

OM-5 Mark II(左)とOM-5(右)を並べて上面から見る。両機の実寸はほぼ同じだがOM-5 Mark IIはカメラトップカバーの形状がなだらかになっていることで、印象が柔らかくなると同時によりコンパクトに感じる。さらに露出モードダイヤルとシャッターボタンが黒くなったことで、引き締まった印象のデザインとなった。

OM-5 Mark IIではカラーバリエーションとしてシルバー/ブラックに加えてサンドベージュも選択することができる。OM SYSTEMとしてはアウトドアシーンでの使用を想定してのカラー設定とのことだが、OM-5 Mark IIの軽量コンパクトさによる持ち歩きやすさから、街中での使用でも映えるカラーなので、今後は同様のカラー展開が為されることもあり得るかもしれない。ところで最近の一眼カメラの色としては珍しいものではあるが、かつてフィルム一眼レフカメラの最盛期には、記念モデルとしてオリーブ色の特色カラーのカメラなども存在していたこともあり、おじさんユーザー的には懐かしさを覚えてしまう。

OM-5 Mark IIを小学校高学年の娘に手にしてもらったところ。こどもの手の大きさでも大きすぎるようなこともなく安定して撮影することができた。このサイズ感と軽量さはアウトドアなどでの撮影でも大きなアドバンテージとなるはずだ。(OM-5 Mark II 418g+ M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II 156g =約574g)
OM-5 Mark IIとOM-5の基本画質の比較検証
OM-5 Mark IIとOM-5のスペックを見る限りでは、基本的な画質に関しては同等と考えられる。そこでここでは両機の撮影実画像を比較して基本画質を確認しよう。確認事項は通常撮影時の解像力と高ISO感度撮影時の解像感とノイズの発生具合である。

OM-5 Mark IIおよびOM-5で同じ建物の構造物を撮影。撮影画像をピクセル等倍に表示したうえで中央部を切り出し、両機の画像を比較した。撮影時の焦点距離は100mm(35mm判換算200mm相当)、絞りは開放絞り値であるF4.0から一段分となるF5.6まで絞り込み、レンズの解像力を高めた状態にしてある。
OM-5 Mark IIおよびOM-5のイメージセンサーは共に有効画素数約2037万画素4/3型Live MOS センサーを採用しており、画像エンジンも同じTruePic IXである。実際にピクセル等倍に拡大した撮影画像を見比べても、いずれも同等の解像感となっていることから両機に解像力の点において差異はないと判断してよいだろう。

OM-5 Mark II にてISO感度を拡張低感度域の下限64から標準感度、そして拡張感度域上限25600まで1EVごとに変えながら撮影した。画像の一部を等倍で切り出し比較する。注目点は建物壁面のノイズとディテールの精細さとする。
まず常用感度域であるISO200から1600までは遜色なく、躊躇うことなくこの感度域を選択できる画質。ISO3200ではISO200と比較すればわずかながら暗部にノイズを感じるが、目を凝らして比べなければ判らない程度だ。ISO6400になると暗部のノイズもそれなりに増えるが高感度撮影としては十分に許容できるレベルだろう。拡張高感度域のISO12800を超え25600となると暗部でノイズが目立つようになり壁面のディテールが緩くなってくる。一方、低感度の拡張域となるL64およびL100ではISO200の描写とほぼ違いは見られないので、スローシャッター撮影時など必要に応じて選択すると良いだろう。ただし低感度の拡張域では画像のコントラストが低下する傾向があるので不必要に選択する理由はない。なお比較用サンプルとしてOM-5で撮影したISO6400画像も掲示してあるが、双方の描写に違いはほぼ見られないことからISO感度特性は両機において同等と判断しても構わないだろう。
このようにOM-5 Mark IIおよびOM-5で撮影した、画像の解像力および高ISO感度撮影の画像を比較した結果、両者の画質に違いを見出すことはできなかった。このことからOM-5 Mark IIとOM-5は同じ画質であると判断した。
撮影時の手ぶれを大幅に抑えてくれる手ぶれ補正機能
OM-5 Mark IIには撮影時に発生するカメラの手ぶれを抑えてくれる手ぶれ補正機構が搭載されている。実はカメラの手ぶれは手持ちでの撮影時には程度の違いこそあるものの必ず発生するものであり、ぶれが大きくなるほど撮影した画像が流れて記録されてしまい画質が大幅に低下する原因となる。ぶれの程度は撮影時のシャッタースピードが速ければ少なくなり実質的には影響が目立たなくなる(ぶれているように見えなくなる)が、一方シャッタースピードが遅くなると影響が大きくなってしまうため、ぶれを抑えるための対策が必要となるわけだ。
一般的に手ぶれを起こしやすくなるシャッタースピードは、レンズ焦点距離の逆数より遅くなった場合だと言われている。たとえば500mm(35mm判換算)のレンズでは1/500秒より遅いシャッタースピードになると手ぶれを起こしやすくなると判断される。ただ撮影時の明るさなどの状況で1/500秒以上のシャッタースピードを選択できないような場合であっても、カメラの手ぶれ補正機構を利用することで手ぶれを抑制することができるのだ。この効果の度合いはシャッタースピードの段階数で表示している。
OM-5 Mark IIではボディ単体中央6.5、周辺5.5 段分、シンクロ手ぶれ補正対応レンズとの組み合わせなら中央7.5、周辺6.5 段分となる。つまり500mm(35mm判換算)のレンズであっても計算上はボディ単体でシャッタースピードにしておよそ1/8秒前後まで、シンクロ手ぶれ補正対応レンズとの組み合わせなら1/4秒前後まで手ぶれ補正の効果が期待できることになる。もちろん撮影状況によって差は発生するが、手持ち撮影であってもよりスローなシャッタースピードでも手ブレを起こしにくくなるわけだ。このように手ぶれ補正機能の効果は高く画質の保持において極めて有効な手段となる。

■撮影環境:F5.6 1/60秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写S-IS Auto
今回のモデルチェンジに伴いOM-5 Mark IIにも「手持ち撮影アシスト」機能が搭載された。これは手ぶれ補正の効果をより確実にするためのアシスト機能だ。カメラを被写体に向けた状態でシャッターボタンを半押しすると、ファインダー(モニター)の上にグラフィカルな手ぶれの状況表示がなされる。これを見ながらぶれに連動して動く点を枠内に収めるようにしっかりとカメラを保持することで、手ぶれをより抑制することができるというものだ。ある程度撮影に慣れたユーザーであれば感覚的に手ぶれを抑制することができるが、初心者など経験値の少ないユーザーであってもこのアシスト機能を有効にすることで効果的に手ぶれを抑えることができるだろう。なかなか面白いアシスト機能だ。
被写体に合わせて自在に選べるAFシステム
OM-5 Mark IIのAFシステムはイメージャ位相差AFとイメージャコントラストAFを併用しており、ミラーレス一眼であることを最大限に活かした自由度の高いものだ。さらにイメージセンサーの広い範囲に埋め込まれた121点の像面位相差AFセンサーは、全て被写体の繰り返しパターンの影響を受けにくいクロスセンサーとなっており、これにより縦横両方向での位相差情報が取得できる。これに画像エンジンTruePic IX による高速演算能力を組み合わせることで、さまざまな被写体において高精度かつ低輝度AF限界-3.5EVでのAFを可能としている(ISO 100相当、F2.8レンズ装着時)。
AFエリアはAllターゲット(121点)、Singleターゲット(1点標準)、Singleターゲット(1点スモール)、Crossターゲット(5点)、Middleターゲット(9点)、Largeターゲット(25点)とユーザー自身で点数と移動ステップ数を設定できるカスタムターゲット(4パターン設定可)が選択可能。フォーカスモードはシングルAF、シングルAF+MF、コンティニュアスAF、コンティニュアスAF+MF、マニュアルフォーカス、追尾AF、追尾AF+MF、プリセットMF、星空AF、星空AF+MFのうちから任意のモードを選択できる。






ピントを合わせる位置は、表示された被写体の映像を見ながら背面モニターの表面を指先でタッチすることでも変更することができる。ファインダーの画面よりも大きな背面モニターの画面を見ながら撮影できるライブビュー撮影は、直感的に操作できる撮影方法なので一眼カメラでの撮影にあまり慣れていない初心者にもおすすめだ。


ライブビュー画面を見ながらじっくりと撮影するときには、背面モニターを直接指先でタッチする「タッチAF」「タッチAF+シャッター」がおすすめ。ここでは道端に並んで咲く彼岸花を複数本手前から奥まで構図に入れて撮影。その際に手前の花をタッチしてピントを合わせて背景をぼかすのか、奥の花をタッチしピントを合わせることで前の花をぼかすか、いずれを選択しようかと考えながら撮影している。
初心者にもやさしいAUTOモード搭載
OM-5 Mark IIはさまざまな撮影に対応できる最新のミラーレス一眼カメラだ。ユーザーは自らの判断でカメラの撮影モードや露出設定など各種設定を行い最適な撮影を行うことができる。ただこれらのカメラ設定を行うにはそれなりにカメラの知識と撮影経験が必要であり、デジタル一眼カメラを初めて手にする初心者は少々難しく感じてしまうこともあるだろう。そこで初心者におすすめしたい撮影モードが「AUTOモード」だ。

AUTOモードに設定した際のライブビュー画面。レンズの絞り値やシャッタースピード、ISO感度などほぼ全ての設定が自動で行われる。AFを合わせる位置は十字キーもしくはタッチAF機能を利用することで任意の場所を選ぶことができる。
AUTOモードではカメラを構えてシャッターボタンを半押しすることで、カメラが自動的に撮影シーンを判別し、適したシーンモードをセレクトしてくれる。あとはユーザーがシャッターボタンを押すだけで撮影ができてしまう便利な機能だ。もちろん状況によっては必ず最適なシーンモードが選ばれるとも限らないが、高画質なミラーレス一眼カメラでの撮影を初心者でも楽しめるメリットはとても大きいだろう。
AUTOモードでも撮影時の明るさや色の鮮やかさ、色温度設定、被写界深度設定(ぼけ具合)などを加味することができる。設定の調整はモニター画面に表示させた各パラメーターを指先でタッチして変更する。いずれもパラメーターの変化を画面の画像を確認しながら直感的に調整できる。






シーンモードは撮影モード「SCN」からも選択することができる。6つの撮影テーマごと計22種類が用意されたなかから撮影シーンにあったものを直接選んで撮影する。これも初心者におすすめできる撮影モードだ。ただし明るさや色の鮮やかさなどの設定を変更することはできない。






デジタルクリエーションを身近にするコンピュテーショナルフォトグラフィ機能
より高解像度な画像を生成することができるハイレゾショット
OM-5 Mark IIにはOM-5同様にハイレゾショット機能が搭載されている。ハイレゾショットとはカメラ内に搭載されたセンサーシフト方式の手ぶれ補正機構を転用した機能で、イメージセンサーを0.5ピクセル単位でずらしながら複数枚の画像を撮影し合成処理することにより、センサーの解像度を補完する機能だ。

OM-5 Mark IIに搭載されたハイレゾショットにはカメラを三脚などに固定して撮影を行う「三脚ハイレゾショット」と、手持ちでの撮影を行う「手持ちハイレゾショット」の二種類がある。OM-5 Mark IIおよびOM-5では通常は約2037万画素(5184 x 3888)で記録される撮影画像を、三脚ハイレゾショットでは8枚の画像を撮影し合成処理することにより最大で約8000万画素相当(10368 x 7776)にまで拡張し保存することができる。また手持ちハイレゾショットにおいては12枚の連写が行われ、そのコマ間に撮影者の揺れで発生するわずかな画角のずれを、ハイレゾショットでの補完用画像サンプルとして利用し合成処理を行うことで、最大5000万画素相当(8160 x 6120)にまで拡張した画像を保存できる。

■撮影環境:F11 1/200秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 静音単写 手持ちハイレゾショット
通常の撮影においてはOM-5 Mark IIが生成する約2037万画素の撮影画像でも十分な解像度となるが、より大きな解像度の画像が必要な場合や、自然風景の木々や枝などの細やかな描写が必要な際にはハイレゾショットを利用して、より精細な画像を得ることができる。ただし一回の撮影で複数枚撮影した画像を合成し生成するため、被写体は静止したものである必要がある。被写体が動いていると合成時に像がずれてしまい、状況によっては合成自体が不可能となってしまうからだ。このような制約はあるがこの機能をうまく利用することで、センサーが持つ本来の解像度を大きく拡張することができるというのは、実にユニークな機能だといえるだろう。
擬似的にNDフィルター効果を発揮できるライブND
ライブNDはカメラへ取り込む光量を減衰させるNDフィルター同様の表現効果をデジタル処理にて擬似的に得られるものだ。OM-5 Mark IIではND2(-1EV)から1EV間隔でND16(-4EV)まで選択が可能。シャッター優先モード、マニュアルモードで使用可能となる。

OM-5 Mark IIではND2(-1EV)、ND4(-2EV)、ND8(-3EV)、ND16(-4EV)が設定可能。ライブNDは短いシャッタースピードで撮影した複数枚の画像を合成して、疑似的に露光時間を延ばして撮影したものと同様のスローシャッター効果を生み出すモードだ。撮影時にはモニターにもスローシャッター効果で生み出された映像が映し出されるので、撮影前に仕上がりのイメージを確認することができる。

■撮影環境:F20 10秒 ISO200 シャッター優先モード -1.0EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 静音単写 ライブND16
清らかな湧水溜まる池の様子を、ライブND16を使用して10秒のスローシャッタースピードで撮影した。湧水が池に白糸のように落ちる様子や池の中を泳ぐ鯉たちが流れるように写っている。通常肉眼では見ることができない時間の流れを、スローシャッター撮影で可視化できるところがNDフィルター効果の面白いところだ。
OM-5 Mark IIに搭載されたライブNDは、本来レンズにかけるフィルターの効果をデジタル処理によって疑似的に再現する機能だ。通常はガラス製のNDフィルターを使用しないと極端なスローシャッター撮影を行うことは難しいが、ライブNDを利用することで簡単にスローシャッター撮影を行うことができる。またカメラ内処理であるということは、レンズ前玉がドーム状のM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROや魚眼レンズのM.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PROなど、通常であればフィルターを装着することが難しいレンズでも、特別なフィルターホルダーを用意することなくND効果を活かした撮影ができるというメリットもある。ただし、これらを使用する際にはハイレゾショットなどの他のコンピュテーショナルフォトグラフィ機能は同時に使用ができないという制限があるので注意が必要だ。
ハイレゾショットやライブND、深度合成、HDR撮影、多重露出撮影などはOM SYSTEMが提唱するコンピュテーショナルフォトグラフィの機能だ。カメラ内にて撮影画像をデジタル処理することで、本来ならばPC内の画像編集ソフトで作成する画像を手軽に、かつ高いクオリティで生成することができる。OM-5 Mark IIではこれらの機能を直接起動することができる「CPボタン」が搭載されている。カメラ右手側上面に配置されたCPボタンを押しながら前ダイヤル/後ダイヤルを回すことで各機能を切り替えることができる。また、いったん起動したコンピュテーショナルフォトグラフィ機能はCPボタンを押すことによりON/OFFが可能だ。

OM-5 Mark II実写作例

■撮影環境:F8.0 1/200秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF S-IS Auto 単写 ドラマチックトーンI

■撮影環境:F2.0 1/2500秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 単写

■撮影環境:F5.6 1/250秒 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF S-IS Auto 単写

■撮影環境:F1.8 1/13秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 単写

■撮影環境:F4.0 1/1.6秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF S-IS Auto 単写 ネオノスタルジー

■撮影環境:F4.0 1/1250秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF S-IS Auto 単写 ヴィンテージIII

■撮影環境:F8.0 1/500秒 ISO200 絞り優先モードWBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto単写

■撮影環境:F4.0 1/80秒 ISO200 絞り優先モード -1.0EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 静音単写 手持ちハイレゾショット

■撮影環境:F5.6 1/1600秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 単写

■撮影環境:F5.6 1/1250秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF S-IS Auto 連写 ポップアートI

■撮影環境:F5.6 1/13秒 ISO200 絞り優先モード -0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto ブリーチバイパスI

■撮影環境:F5.0 1/100秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto ヴィンテージI

■撮影環境:F5.6 1/400秒 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto ポップアートI

■撮影環境:F5.6 1/200秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WB晴天 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto ジオラマI

■撮影環境:F5.6 1/640秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF S-IS Auto 単写 デイドリームI

■撮影環境:F8 1/500秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF S-IS Auto 単写 クロスプロセスI

■撮影環境:F2.8 1/4秒 ISO200 マニュアルモードWBオート 仕上がりモードNatural S-AF S-IS Auto 単写 ドラマチックトーンI
ユーザーのワガママを笑って受け止める懐の深さが最大の性能
OM-5シリーズはOM SYSTEMのミラーレス一眼カメラシリーズにおいて中核となるシリーズモデルだ。その源流はOM SYSTEMの前身となるオリンパスの頃に、同社初のファインダー内蔵型ミラーレス一眼として登場した「OM-D E-M5」にある。このE-M5はシリーズ初代機でありながらも「電子ファインダーを覗いて撮影するスタイル」を確立させ、また手ぶれ補正機能の搭載やアートフィルターというデジタルカメラならではの表現方法を確立させたモデルでもあった。さらに強力な防塵防滴性能により雨天においてもまったく問題なく撮影を行うことができるなど、現在のOMシリーズのタフな撮影スタイルの原型とも言える存在であった。
そして、その正統な直系であるOM-5 Mark IIは、OM SYSTEMの現ラインナップにおいて中級機という位置付けでありながらも、より上級なユーザーの厳しい要求にも十分に応えることができる機能・性能を有したカメラとなっている。さらにそれだけではなくカメラや写真の詳しい知識を持たない撮影経験が浅いユーザーであっても、直感的な操作によって望む仕上がりの写真を簡単に撮影することができるカメラでもあるのだ。初心者から上級者まで、迷わずにお勧め出来てしまう、実に懐が深いカメラなのである。
OM SYSTEMではこのカメラをアウトドア撮影向けとして強く推している。強力な防塵防滴性能と軽量コンパクトを両立させているOM-5 Mark IIは、自然のなかでの撮影には最適なセレクトのカメラであることは間違いない。だがそれだけではなく、カメラの大きさや重さという負担を気にすることなく持ち歩けるという点においては、日常生活においても写真という楽しみを存分に堪能することができるカメラでもある。一台のカメラで高性能と多機能、そして持ち歩きの楽さまでも手に入れてしまったOM-5 Mark II。まさに、ワガママな我々にもピッタリな相棒ではないか。

■写真家:礒村浩一
広告写真撮影を中心に製品・ファッションフォト等幅広く撮影。著名人/女性ポートレート撮影も多数行う。デジタルカメラ黎明期よりカメラ・レンズレビューや撮影テクニックに関する記事をカメラ専門誌に寄稿/カメラ・レンズメーカーへ作品を提供。国境離島をはじめ日本各地を取材し写真&ルポを発表。全国にて撮影セミナーも開催。カメラグランプリ2016,2017外部選考委員・EIZO公認ColorEdge Ambassador・(公社)日本写真家協会正会員















