優美に彩る大輪の花ダリア|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

吉住志穂
優美に彩る大輪の花ダリア|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

はじめに

ダリアは花の中でも大柄ですが、品種が豊富で、小ぶりなものから中輪、大輪、巨大輪までと大きさも様々になります。色も白、赤、ピンク、黄、オレンジなどと多様で、一輪の中で色がグラデーションになっているのもあって美しいです。また、品種改良が盛んに行われ、花びらの形もユニークです。シンプルな一重咲きのほか、ボール咲き、ポンポン咲きと呼ばれるような丸い形をしたもの、花びらが細く尖ったカクタス咲きなどがありますので、形状にも注目したいですね。ダリアは花全体を狙うのもいいですが、大輪の花は部分的なクローズアップがしやすいので、特徴的な花びらの造形をマクロレンズで切りとるのもいいでしょう。

青空を効果的に使う

■撮影機材:OMシステム E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO
■撮影環境:絞り優先・80mm・F4.0・ISO200・1/800秒

背景に青空を入れたかったので順光を選びました。均一的に感じる青空の中でも順光側の空が最も青色が濃く写ります。ぜひ一度青空を眺めて、濃い部分と薄い部分があることを確認してみてください。しかし、順光は花に対して正面から光が当たるため、硬い印象になるので通常は避けているのですが、青空を入れるときは順光で狙うことがほとんどです。秋の澄んだ青空と重ねることで季節感を感じさせることもできます。さらに、PLフィルターを使うと青空と白い雲のコントラストを高めることができます。望遠ズームを使っていますが、背景の雲の雰囲気を広めに出すために、80mm相当の中望遠の画角で撮影しました。

逆光で明るくやわらかに

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先・60mm・F2.8・ISO200・1/320秒

花びらがとても明るく、やわらかな印象に写っています。これは逆光で撮影したためです。ダリアの花は立体的なものが多いので、順光で撮ると花びらのコントラストが高くなり、硬い印象になってしまいます。もちろん意図してメリハリを出すのはいいのですが、ふんわりした雰囲気が欲しい時は強い影が出ないように工夫しましょう。逆光では手前が全て影になるので、コントラストが低くなります。しかし、逆光は暗く写るので、プラス2EV補正という大幅な露出補正をかけて、明るく写しています。黄色からピンクへのグラデーションも美しく、お気に入りの一枚です。

水滴を主役に

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO320・1/250秒

ポンポン型と呼ばれる丸い形をしたダリアです。球体のような形をしていてかわいいですね。この日は雨が降っていたので、花に水滴が付いていますが、周囲の茎にも同じように水滴が付着していました。背景にある白い丸ボケは茎に付いた水滴のボケです。水滴は白い空を映し込むので、白い部分ができ、そこがボケることで丸ボケができるのです。水滴は花に天候の様子を感じさせる役にも、きらめき感を出す役にも、そして、ときには主役にもなれる被写体です。ちなみに、水滴の付いた茎はボケているのではっきりとは見えていませんが、このボケ量が少ないと目立ってしまうので大きくぼかしましょう。

水滴への映り込みを見逃さない

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先・60mm・F2.8・ISO640・1/100秒

秋晴れが続くこともあれば、秋の長雨というように雨続きの日もあります。雨の中での撮影は面倒ですが、やはり水滴が撮れるというのは魅力ですね。花びらの先に水滴が付着していますが、よく見ると黄色いです。これは背後にある黄色いダリアが映り込んでいるためです。水滴は後ろ側にあるものを映し込むので、すぐ後ろに花があればそれが映り込みます。拡大すると花の形もはっきりとわかりますよ。映っている花と水滴の表面ではピント位置が異なるので、映り込みをはっきり見せたいときはそちらにピントを合わせましょう。AFでは意図したように合わない場合があるのでMFでのピント合わせがおすすめです。

明暗差を生かす

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/800秒

雨の写真が続きますが、ここでは背景選びにご注目ください。真っ黒な背景に鮮やかなダリアの花色が冴えますね。この黒バックは背景に黒いものがあるのではなく、暗いものがあると作れるのだと覚えておいてください。光が当たっていると黒いものでも光を反射してグレーのように写りますが、色があるものでも暗ければ黒く写るのです。雨の日なので光は弱いですが、それでも花は光が当たる部分にあり、背景は鬱蒼とした林なので、花と背景とで明暗差が生じて黒く写ったというわけです。花と背景、両方が暗い場所にあると明暗差がないので黒バックにはなりません。あくまでも両者の明暗差が必要になります。

前ボケを駆使する

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO250・1/250秒

白いダリアの花びらの先が注目されるように工夫しました。しかし、たくさんの花びらがあるダリアの中で一箇所だけに視線が行くようにするためには、主役の一枚以外を目立たなくする工夫が必要です。まず、主役の花びらは他の花びらと重なっていない単独の花びらを選びました。左上の花びらは重なり合っていますね。一方、下の花びらも単独ですが、これが目立たなくなるように前ボケで隠しています。前ボケはふんわりとした雰囲気を作る役割の他に、主役の一部を隠すこともできるのです。また、主役が白いので、濃い色の背景と重ねて白が引き立つようにしました。味付けとして、ホワイトバランスをカスタムで3600Kにしたことで、青白くなり、密やかに咲いている雰囲気が出てきました。

マクロレンズでクローズアップ

■撮影機材:OMシステム OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先・60mm・F2.8・ISO400・1/30秒

ダリアの花びらは平たいもの、細長いもの、そして、このような丸まった形をしたものもあって、どれを見てもおもしろいですね。写真を見ただけではどんな花だとわからず、これはなんだろう?と思わせるのもいいと思います。美しい色、美しい形を探してダリアをクローズアップしてみましょう。使用したのはマクロレンズです。ここまでのクローズアップとなると通常のレンズではピントが合わないので、花を撮るならマクロレンズは1本持っておくと便利です。単焦点レンズなのでズームはできませんが、花に寄ったり引いたりして、画面内の大きさを決めてください。使い方は他のレンズと同じなので、誰でもすぐに扱えますよ。

多重露光で表現する

■撮影機材:OMシステム E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F4.0・ISO200・1/2000秒

最後の一枚は多重露出機能を使って撮影したものです。まずはピントを合わせて真ん中に一輪を配置して写します。このとき、背景を黒バックにすると次に重ねる色がきれいに乗ります。そして、そのまま近づいてピントをわざとぼかした写真と重ねました。これで多重露出の写真ができ上がりましたが、私の使用したカメラではさらに画像を重ねていくことができるので、2枚重ねた画像にさらにもう1枚、花をぼかし切ってオレンジ一色だけの画像を重ねました。すると、黒い背景がなくなり、全体がオレンジ色になりました。核となるピントの合った写真、少しぼかして滲んだようになった写真、背景を色で埋めるボケの写真という3枚の画像が重なっているわけです。

さいごに

ダリアは花の密集度が少ないので、背景がただの緑色にならないように工夫をしましょう。作例にもあったように、青空を入れるほか、黒バックを取り入れたり、花の彩りをぼかすのもいいでしょう。水滴のボケを入れた写真もありましたが、木漏れ日のボケを入れるのもいいですね。主役にきれいな花を選ぶのはもちろん、常に意味のある背景を選ぶようにしてみてください。ダリアは夏から秋にかけて咲く、開花期の長い花です。花の少ない時期にも楽しめるのが嬉しいですね。全国にダリアを専門に栽培しているダリア園もあるので、ぜひお気に入りの品種を見つけて撮影してみてください。

 

 

■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。

・日本写真家協会(JPS)会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員

 

 

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