ニコン NIKKOR Z 14-30mm f/4 S レビュー|ダイナミックなポートレートを楽しむ

水咲奈々

ニコン NIKKOR Z 14-30mm f/4 Sで撮影したポートレート画像

はじめに

 ニコン「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」は、どなたでも気軽に一日中持ち歩ける小型軽量な超広角ズームレンズです。超広角ズームレンズは広い範囲を撮影できることから、風景や建物の撮影だけに使っているという方もいらっしゃると思います。

 今回のポートレート撮影では、標準から中望遠のレンズではなく、あえて本レンズをチョイスしました。作例をご覧いただきながら広角レンズでのポートレートの楽しみ方についてお話ししたいと思います。

高い描写性能で抜けるような空と海をダイナミックに表現

ビビッドで撮影したポートレート

■使用機材:ニコン Z 6 ストロボ・NDフィルター使用
■撮影環境:F4 1/500秒 ISO400 WBオート
■モデル:大城優紀

 普段標準から望遠画角のレンズで撮影することが多い筆者は、正直なところ最初はあまり本レンズに注目していませんでした。ですが、あるタイミングで開発に関わった方のお話を伺う機会があり、とても興味が湧いて、旅行時の風景写真撮影用に購入しました。

 ですが、今回沖縄でポートレートの作品撮りをするにあたって、抜けるような青空や特徴的な雲、どこまでも続く海をモデルと共に描き出すのにぴったりのレンズなのでは?と思い撮影したところ、ダイナミックなシーンが表現できる楽しいレンズだと再認識できました。

 この作品では、背景にサンセットの海を入れたかったので、白トビしないようにNDフィルターを使って全体を暗くしています。その上で、モデルだけが明るくなるように、モデルの体の斜め前からストロボを強めに当てて撮影することで、岩陰や雲のない青空部分をわざと暗くして、トンネル効果を演出しました。

超広角ズームレンズなのにNDフィルターが装着できる

NDフィルターを使って撮影した画像

■使用機材:ニコン Z 6 ストロボ・NDフィルター使用
■撮影環境:F4.5 1/250秒 ISO100 WB晴天
■モデル:松田ゆうな

 沖縄らしい青い空、白い雲、透明感のある海に白い砂を爽やかに描き出してくれたのは、本レンズの高い描写性能のお陰でしょう。

 また、前述しました通り本レンズは超広角ズームレンズではありますがフィルターの装着ができます。広角端14mmという超広角の焦点距離で、レンズ先端にフィルターを装着できるのは大変ありがたいです。光の強い沖縄では、ポートレートのセオリー通り逆光で撮影すると、背景が真っ白になってしまうことが多く、空や海の青色と、モデルの肌を明るくさせることの両方を保とうとすると、NDフィルターが大活躍します。

 通常の広角レンズですと、レンズが球状に飛び出している形態が多く、フィルターの装着は難しいのですが、本レンズは全面がフラットなのでフィルター装着が行えることが、今回の撮影では最大のメリットとなりました。

防塵・防滴性能で足場の悪い撮影場所でも安心感をプラス

足場の悪い場所で撮影したポートレートの画像

■使用機材:ニコン Z 6 ストロボ・NDフィルター使用
■撮影環境:F4.5 1/250秒 ISO100 WB晴天
■モデル:松田ゆうな

 本レンズで楽しかったのが、広い空間を写し込めるので、明暗の差を作ることでした。この岩場は強い光が届かない日蔭ですが、カメラの近くからストロボでモデルの顔を中心に強めの光を当て、岩肌が暗くなる露出にして‘見せない’演出にしました。ぱかっとすべてが明るいよりも、見えないことによって見たくなるのが、ポートレートの楽しさだとも思います。

 撮影時の筆者は、岩場に左足を乗せて、体とカメラをなるべく岩場に近付けて、右足を波が打ち寄せる海中に置いていました。波しぶき、砂交じりの風と機材のダメージが気になる環境ではありますが、レンズの銅鏡部分にも防塵・防滴のシーリングを施した本レンズでは、安心して撮影できました。

ナノクリスタルコート採用で抜けのいい青空に!

ナノクリスタルコートの効果を確認できるポートレート画像

■使用機材:ニコン Z 6
■撮影環境:F4 1/250秒 ISO100 WB5000K
■モデル:アイリ フランシス

 アメリカンな街並みが楽しいスポットが多いのも、沖縄の魅力です。筆者は近年、年に3~4回沖縄に行っているのですが、行くたびに太陽が大きくて近いと感じます。順光でスナップを撮影する分には、被写体の色と形がはっきりと描き出されていいのですが、モデルの顔に順光を当てたくないポートレートとなると話が違ってきます。ここで活躍したのが、本レンズに施されているナノクリスタルコートです。

 ナノクリスタルコートとは、フレアやゴーストを抑えてくれる、ニコン独自のレンズのコーティング技術です。レンズフードはもちろん装着していますが、このように太陽の反射光の影響を思いっきり受けそうな状況でも、ナノクリスタルコートのお陰でクリアーな画を得ることができました。

Z 6とはベストコンビネーション

ニコン NIKKOR Z 14-30mm f/4 Sで撮影したポートレート画像

■使用機材:ニコン Z 6 ストロボ・NDフィルター使用
■撮影環境:F5.6 1/160秒 ISO100 WB晴天
■モデル:大城優紀

 干潮と満潮でガラっと表情を変えてくれるこちらのビーチでは、本レンズの隅々までしっかりと描き切る描写性能と、NDフィルターが使える形状、逆光に耐えられるナノクリスタルコートと、足場の悪い撮影環境で安心感を与えてくれる防塵・防滴性能のすべてが、頼もしく作用してくれました。

 以前から干潮時に磯遊びでよく訪れていたビーチですが、絶対に広角レンズでの日中シンクロポートレートが似合う!と思っていまして、今回、やっと実践できました。初の作品撮りが本レンズとZ 6とのコンビで良かったと思えたのは、前述のメリットはもちろん、Z 6の顔認識、瞳AF機能と、暗いところでのピント合わせが可能になるローライトAF機能の恩恵があります。

 作品の出来上がりはモデルの表情がわかるくらい明るいですが、これはストロボで照らしているからです。撮影時は背景が白トビしないように背景に露出を合わせているので、モデルはシルエットのように真っ黒になっています。その状態でピントを合わせてから、シャッターを押してストロボを光らせるので、肉眼ではピントが合っているのかがほぼわからないのです。

 そのようにピントを合わせたい被写体が真っ暗な状態でも、全身の場合は顔に、寄れば瞳にピントを合わせてくれる機能があったからこそ、ダイナミックな構図での撮影がピント合わせに煩わされることなく行えました。

超広角レンズは風景だけに使っていたらもったいない

 風景用に購入した本レンズですが、これからはポートレート撮影にもっともっと活躍してもらおうと思います。特に沖縄では、このレンズにプラスして、オフカメラできるストロボとNDフィルターがあれば、青い空とエメラルドグリーンの海の色を損なわないナチュラルなポートレートも、主役のモデルが浮き出るような日中シンクロらしいドラマチックなポートレートも楽しめますよ!

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