⾵景写真にPLフィルターは必須。でも「色を信じる」には選び方が⼤事

八木千賀子
⾵景写真にPLフィルターは必須。でも「色を信じる」には選び方が⼤事

光には、私たちが気づかない「向き」がある

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF24-70mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:焦点距離 24mm 絞り優先AE(F 5.0、1/160 秒、-0.3 EV) ISO 200 太陽光
PLフィルターで反射を抑えると、海の深さや透明感が現れる。

⾵景を⾒ているとき、私たちは「反射」という存在にほとんど気づいていません。でも、カメラはとても正直で、葉のテカリや水面のギラつきまで逃さず写し取ります。

実は光には「偏光」という性質があります。
光は、物に当たると特定の方向に揃った振動(偏光)を持つようになります。この偏光が強いと、葉っぱはテカり、空は白っぽくかすみ、水面は中が見えなくなる。
PLフィルターは、この偏光を選んで取り除く、光をコントロールするフィルターです。

強い反射を抑え、葉の緑や水の透明感、空の深さを、目で見た以上に引き出してくれる。
ただ反射を消すだけではなく、「どの光を残し、どの光を消すか」を選ぶ。それはまるで景色と静かに相談しているような、不思議で楽しい時間です。

経年劣化と色かぶり…いつの間にか変わってしまう色

古いフィルター:⾊かぶりが出る(黄ばみ、浅い青)

本来のイメージ:自然な色、深い青、瑞々しい緑黄

PLフィルターは、反射を抑えて色を引き出すために⽋かせない存在です。
でも、どんなに大切に使っていても、紫外線や熱、湿気といった環境の影響で少しずつ劣化していきます。

その結果として表れるのが「色かぶり」です。
特に多いのが、葉の緑が黄ばんでしまったり、空の青が濁る現象。
撮影後にモニターを見て「あれ、こんな色だったかな」と思ったことが何度もあります。

⼀度気になってしまうと、後から補正するしかありませんが、その作業には多くの時間と神経を使います。
できることなら、現場で見た「そのままの色」を残したい。
色かぶりは、小さなストレスではなく、撮影への集中をそぐ大きな問題だと感じています。

PLフィルターのコーティングはとても繊細で、目に見えないほど小さなダメージが積み重なることで、光の選別性能が落ちていきます。
これが、色の偏りや濁りにつながる理由です。

フィルター選びで変わる、色の「信頼度」

マルミ光機 PRIME PLASMA SPUTTERING C-P.L
海が深く澄んでいて、木々の緑も自然で瑞々しく写っています。

他社PLフィルター
ぱっと見は鮮やかですが、海の青が浅く、木々の緑に黄味がかかっているのがわかります。

この2枚は、どちらも同じ⽇に同じ設定で撮影したものです。
1枚⽬(PRIME PLASMA SPUTTERING C-P.L)は、海が深く澄んでいて、木々の緑も自然で瑞々しく写っています。
2枚⽬(他社PLフィルター)は、ぱっと見は鮮やかですが、海の青が浅く、木々の緑に黄味がかかっているのがわかります。
特に木の緑の自然さ、海の青の深さを見比べてみてください。
同じ場所でも、フィルター次第で景色の「信頼度」がこんなに変わるんだと感じてもらえると思います。

PLフィルターは、劣化による色かぶりだけでなく、そもそも製品ごとの「色再現性」に大きな違いがあります。
つまり、新品の状態でも、フィルターによっては黄色っぽく転んだり、空が浅く写ったりすることがあるのです。
「色を信じられるかどうか」は、撮影中の安⼼感に直結します。
見ている色をそのまま写したいのに、どこかで「補正すればいいや」と思いながら撮るのは、気持ちがすっきりしません。
マルミ光機のPRIME PLASMA SPUTTERING C-P.Lは、特殊なプラズマ・スパッタリング技術でムラのない偏光膜を作り、徹底したカラーバランスの忠実さを追求しています。

実際に使ってみると、緑は瑞々しく、空は深く、思い出の中の色に限りなく近い仕上がりになります。現場で「色を信じて撮れる」ということが、こんなにも気持ちを自由にしてくれるのか…。
初めて使ったときにそう強く感じました。これから先も、ずっとこの色で撮り続けたい。
そう思わせてくれるフィルターです。

動画で体感する、PLフィルターの⾯⽩さ

フィルターの有無と回転による変化を比べると、光のコントロールの面白さが伝わります。

PLフィルターは、反射を抑えたり、空や水面の深さを引き出したりする「光をコントロールするためのフィルター」です。
でも、実際にどのくらい違いが出るのか、言葉だけではなかなか伝わりません。そこで、フィルター「あり」「なし」、そして回転させたときの見え方を動画にまとめました。

⼀度見てもらうと、どれだけ景色の表情が変わるか、きっと「へぇ!」と感じてもらえると思います。
反射を抑えるだけではなく、光の加減を選ぶことで、空の青さや緑の深さが変わり、写真がまるで呼吸を始めたように見えてきます。
使いこなしの楽しさは、まさに「景⾊と相談する時間」そのものです。

効かせすぎない。景色と相談する時間

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:焦点距離 81mm 絞り優先AE(F 8.0、1/20 秒、-1 EV) ISO 200 太陽光
反射を取りすぎないよう、PLフィルターは1/3ほど回して調整。

PLフィルターは、効かせれば効かせるほど反射が消えて鮮やかになります。
でも、実は「効かせすぎない」というのが大切なポイントだと思っています。
葉の艶をほんの少し残したり、⽔⾯の反射をあえて残してみたり…。
そうすることで、景色の呼吸や空気感が写真の中に残ります。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF24-70mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:焦点距離 24mm 絞り優先AE(F 9.0、1/200 秒、-1 EV) ISO 100 太陽光
反射を出す⽅向に回すと、虹の⾊がくっきり現れる。

実は、PLフィルターは「反射を抑える」だけでなく、「あえて反射を出す方向」にも使えます。
例えば虹を撮るときには、反射を抑えすぎると虹そのものが消えてしまいます。
葉の艶や湿った質感を表現したいときも、あえて反射を残すことで、みずみずしさや⽴体感が際⽴ちます。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:焦点距離 100mm 絞り優先AE(F 8.0、1/15 秒、-1.33 EV) ISO 200 太陽光
反射を出す方向に回すと、シダの葉に艶が出て生き生きした雰囲気に。
PLフィルターなし

PLフィルターをフルで効かせた状態

PLフィルターの効果は、太陽と被写体の位置関係によって変わります。⼀番効果が強く出るのは、順光や、撮影者から見て左右や上の45度あたりから光が差し込むときです。
光がちょうど斜めから⼊ると、反射をきれいにコントロールできます。
逆に、太陽が被写体の真後ろや真上にあるときは、思ったほど効果が出ないこともあります。

こうした光の向きとフィルターの回転⾓を組み合わせながら、「どのくらい反射を残すか」「どのくらい景色を透かすか」を調整する——
その小さな選択の積み重ねが、写真に静かな奥⾏きを与えてくれる気がしています。
「どこまで反射を抑えるか」「どんな光を残すか」を決めるのは、景色と相談するような静かな時間です。
撮るたびに「これでいいかな」と問いかけながら、⾃分だけのバランスを探す楽しさがあります。

PLフィルターはただの道具ではなく、表現を⼀歩深めるためのパートナー。そんな気持ちで使うと、景色の表情が少しずつ変わって見えてくるはずです。

⾊を信じるという贅沢

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF24-70mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:焦点距離 56mm 絞り優先AE(F 11、1/200 秒、-0.67 EV) ISO 200 太陽光
PLフィルターで空の⻘と草の緑を引き出した、春の⼀枚。

色を信じることは、景色をそのまま信じることだと思っています。
「あとで直せばいい」じゃなくて、「今、この色をちゃんと撮りたい」って思えるのは、すごく楽しいことだなって感じます。
PLフィルターは、その気持ちを⽀えてくれる大事な道具です。
特にPRIME PLASMA SPUTTERING C-P.Lを使ってからは、「あ、これが見たままの色だ」って素直に思えるようになりました。
撮った後に「あのときの色だな」って迷わず思えると、気持ちがすっきりします。

⼀度この感覚を知ると、もう戻れないかもしれません。
「色をちゃんと信じたいな」と思ったら、⼀度試してみてください。
この夏、もっと気楽に、楽しく撮れると思います。

 

 

■写真家:八木千賀子
愛知県出身。幼い頃より自然に惹かれカメラと出会う。隻眼の自分自身と一眼レフに共通点を見いだし風景写真家を志す。辰野清氏に師事し2016年に【The Photographers3 (BS 朝日)】出演をきっかけに風景写真家として歩み始める。カメラ雑誌、書籍など執筆や講師として活動。

 

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