レンズが見た異国の日常「Leica Summicron 35mm F2 (6枚玉)」で撮る香港:Day2

鈴木啓太|urban
レンズが見た異国の日常「Leica Summicron 35mm F2 (6枚玉)」で撮る香港:Day2

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回は中国香港にLeica M10とLeica Summilux-M 35mm F1.4 ASPH.(FLE I)、Leica Summicron 35mm F2(6枚玉)と共に撮影旅行に出かけてきました。

全2回の第2回目となる本記事では、Summicron(6枚玉)について記載していきます。Summicronはライカのザ・標準レンズと呼べるレンズシリーズで、ライカボディと共にセットで購入されることが多いと感じます。第1回で公開したSummiluxとは開放F値で1段の差がありますが、Summiluxよりも小さくよりスナップ向けのレンズです。

現行のASPHERICALシリーズに加え、球面レンズタイプも非常に人気の高いSummicron、この香港ではどのようなシーンを見せてくれるのか、今回も旅の様子と共にその描写を見ていきたいと思います。

香港2日目:スナップの良き相棒Summicron 35mm

■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f8 1/250秒 ISO100 WBオート
バッジのカラーなどに独自カスタマイズを施した筆者のLeica M10。
前回紹介したSummiluxと比較し、全長も短くかなりコンパクト。大口径でボケの大きいSummilux、小型軽量かつ高解像のSummicronと棲み分けができています。

まだ対中国情勢も安定していた2025年11月の中旬に訪れたここ香港。旅は2日目に突入です。たまたまSummicronを持ち合わせていた友人と、1日目に使用していたSummiluxを交換してもらい、心機一転、朝の香港からスタート。目指すは「南丫島(Lamma Island/ラマ島)」。香港のリゾート地でもあり、香港島から高速船で30分ほどの距離にあるこの島は、ざわめく香港の喧騒とは異なる、自然豊かな小さな港町です。

スナップ天国・香港を、トリガーハッピーの侵略者が如くぐんぐんと進行してきたわけですが、2日目にしてなおその魅力は尽きることはありません。日本でもなかなか見ることのない、高層ビル&マンションジャングルから射す朝陽は、スナップシューターの我々を本来の目的地から遠ざけてしまう、美しい迷いの森とも言えます(実際に綺麗な光に釣られ何度も道を外れたりしました 笑)。

1日目は香港中心の観光地をSummiluxで、2日目はラマ島をSumicronで撮影。ピンの所が宿泊したパンダホテルで、中心部へのアクセスも30分程度とバッチリ。2日目は赤枠の香港島からフェリーで南下し、青枠のラマ島へ向かいました。
■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/30秒 ISO100 WBオート
なんだかんだ言ってもまずは腹ごしらえ。中国と言えば!の飲茶を体験します。
■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f5.6 1/60秒 ISO100 WBオート
香港は高層ビルが立ち並びますが、ビルの合間を縫って射す光が美しいコンクリートジャングルの世界です。
■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/2000秒 ISO100 WBオート
開放F2での撮影。 Summicronと言えば、軽量、高解像をイメージしがちですが、球面レンズ構成の6枚玉には柔らかさが残ります。中心は高解像、周辺はにじみとSummiluxとはまた異なる魅力があります。
■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/60秒 ISO100 WBオート
ショッピングモールに現れたコーヒーショップ。こちらも手前の棚が開放のにじみに包まれています。

さて、今回の旅行で使用している、Summicron 35mm F2(6枚玉)は1969年から1979年まで製造されたレンズ。6枚玉の中でも細かく前期、後期があり、本レンズは後期型になります。世代でレンズを語るならば、今では超高額となってしまった8枚玉が第一世代で1958年から1969年頃までのリリース。6枚玉は第二世代、7枚玉はKing of Bokehと呼ばれる第三世代で1979年から1997年の約20年間、改良を加えられながら製造されてきました。これ以降は非球面レンズが採用され、現行レンズが続きます。

さて、ここからスペックについても確認していきましょう。

対応マウント Leica Mマウント
サイズ 最大径Φ51 × 全長約30mm
質量 約180g(付属品なし)
焦点距離 35mm
フォーカス MF(マニュアルフォーカス:距離計連動型)
レンズ構成 4群6枚(前期)、5群6枚(後期)
対応撮像画面サイズ 35mmフルサイズ
最短撮影距離 0.7m
絞り F2~F16
フィルター径 39mm

現行のSummicronを知る人はSummicron=高解像を想像しがちですが、8枚玉はSummicron銘ながらSummiluxを想起させるにじみと柔らかさを併せ持つレンズです。7枚玉になりようやくボケと解像力のバランスが取れたレンズとなり、6枚玉はやや影が薄いものの8枚玉と7枚玉を合わせたようなバランスを持つ描写をします。三世代の中でも最も安価で購入しやすいのも魅力な特徴だと考えています。

香港のリゾート島:南丫島

■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f5.6 1/350秒 ISO100 WBオート

お目当てのラマ島は、セントラルフェリーから高速船に乗り30分ほどの距離にあります。香港はスマホにオクトパスカードというアプリを入れて、チャージをしておくことでほぼすべての交通機関を日本の交通系ICと同じように使用することができます。香港のベストシーズンは天候が安定する10月~3月頃まで。11月は日本の9~10月と同じくらいの気候かつ適度に乾燥しているので、Tシャツ1枚で快適に過ごせるでしょう。

■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f8 1/90秒 ISO100 WBオート
超ざっくり言ってしまうと、湘南にある江ノ島をよりリゾートチックにしたのがラマ島。雲の多い天気でしたがカラフルな街並みに癒されます。
■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/1500秒 ISO100 WBオート
小さな商店が続くラマ島のメインストリート。日本人はほぼ皆無で、異国情緒あふれる路地が続きます。
■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/250秒 ISO100 WBオート
香港のビールと言えばこのBlue Girl。さっぱりとした飲み口で日本のラガー程苦みもなく、暑い季節には最高のクラフトビールです。ちなみに6枚玉は最短撮影距離0.7mとライカ標準。作例は最短距離で撮影しましたがテーブルフォトには少々使いにくいです。
■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/1000秒 ISO100 WBオート
ラマ島ではマラソンやミュージックフェス、フリーマーケットなどいくつかのイベントが開催されており、島全体が賑やかな雰囲気に包まれていました。開放F2はややぐるぐるとしたボケに加え周辺のにじみなど、ポートレートにも使いやすい要素が詰まっています。
■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/500秒 ISO100 WBオート
こちらも開放F2の描写。F1.4のSummiluxと比べると被写体を浮かび上がらせる力は弱いですが、艶のある描写は正にライカそのもの。

ラマ島は2泊3日程度の香港旅行に癒しを与える、とてもおすすめのルートです。香港が近代的な街並みなのに対して、ロハスな生活が垣間見えるラマ島のギャップは香港をより魅力的に感じさせてくれます。ラマ島も島全体を通して香港島とはまた異なる活気に満ち溢れていて、海の綺麗さ、海産物の新鮮さなど都会の喧騒を忘れさせてくれるそんな場所です。週末の度に香港島から通う人が多いのも納得のリゾート地でした。

6、7、8枚玉のSummicronあなたはどれを選ぶ?

■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/60秒 ISO200 WBオート

さて、ラマ島から戻り香港島のナイトマーケットへ。いったいいつ休まるのか分からないくらいパワーがある香港ですが、夜も夜でとても活気があります。香港最後の夜は深水埗(シャムスイポー)のおもちゃマーケットや各種市場が集まるエリアへ。ここは中古カメラ店やレストランまでありとあらゆるお店が連なる場所。筆者は家族へのお土産を買い漁り大荷物で帰路につき、2日目の夜は更けていくのでした。

■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/125秒 ISO200 WBオート
青果店で買い物を楽しむ現地の人々。スイカやドラゴンフルーツ、ドリアンまでありとあらゆる南国のフルーツが店頭に並びます。
■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/60秒 ISO2500 WBオート
香港はグラフィカルアートも多彩。わずかに残るネオンなど、サイバーパンクが漂う夜の香港は、映画のワンシーンとリアルの境界を曖昧にします。

さて、6枚玉Summicronを1日使用して感じたのは、7枚玉、8枚玉との差です。ここからは簡単にですがその描写の違いに触れていきましょう。開放描写について結論からざっくり言ってしまうと、1st Summicronである8枚玉は非常に柔らかくSummiluxに近しいにじみが得られ、6枚玉はにじみが抑えられており解像力も向上、7枚玉は写真全体のにじみが更に抑えられ被写体を浮き上がらせる力に長けているといったところでしょうか。実際に開放の作例を見てその違いを確認していきましょう。

▼8枚玉

■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(8elements)
■撮影環境:f2 1/1500秒 ISO100 WBオート
8枚玉はSummicronとは思えない程、ドリーミーなレンズです。描写の傾向はSummiluxに近しいと感じます。

▼6枚玉

■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f2 1/60秒 ISO100 WBオート
続いて6枚玉。この時点でかなり完成されていますが周辺部はにじみを纏い、8枚玉の様なドリーミーさが現れます。

▼7枚玉

■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(7elements)
■撮影環境:f2 1/125秒 ISO100 WBオート
7枚玉は最も後期なだけあり立体感が際立つレンズです。一方背景はぐるぐるボケの傾向があり、King of Bokehと言われつつもややうるさく感じるシーンも見られます。

値段の差もそれぞれで、8枚玉が群を抜いて高く、7枚、6枚と続きます。8枚玉の描写が最も好みだが金額的に手が出ないという方はLight Lens Labから出ているM 35mm F2(通称:周八枚)を購入するのもおすすめです。本製品は8枚玉の完全再現を目指したレンズで、オリジナルと比較しほぼ遜色ない描写を有しています。純正にこだわらないのであれば大いに選択肢に入ってくる製品です。

7枚玉、6枚玉の価格は前者が高いもののそこまで大きな差はありませんので、描写を比較して購入するのが良いでしょう。すべて使用した筆者の好みは7>6>8となり、7枚玉がデザイン、描写共にややツボと言うところでした。それぞれに特徴はありますが、どれを選んでも後悔しないレンズではありますので、しっかり悩んでぜひ検討してみてください。

まとめ

■撮影機材:Leica M10 + Summicron 35mm F2(6elements)
■撮影環境:f8 1/250秒 ISO100 WBオート

これにて2泊3日の香港旅行が終了しました。香港エクスプレスのセールを利用したものの、往復航空券、ホテル代、現地生活費すべて含んで8.7万円は円安傾向の昨今、かなりリーズナブルな旅行になったと思っています。今回使用したSummicron、そしてSummiluxの描写からライカレンズの魅力を少しでも感じていただけていれば嬉しいです。同じ35mmでも表情はそれぞれですので、前回記事と合わせてぜひ楽しんでいただければと思います。

この記事でLeicaレンズにも興味を持っていただけたのであれば、僕が執筆している「ポートレートのためのオールドレンズ入門」そして「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」に数多くのオールドレンズの作例と詳細な設定等解説を載せておりますのでぜひご覧ください。

また、実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるオールドレンズワークショップ「フランジバック」にもご参加いただければ嬉しいです。では、次の記事でお会いしましょう!

 

 

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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