LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT レビュー|マイクロフォーサーズの新しい領域を切り開く マニュアルフォーカス専用超広角単焦点レンズ

礒村浩一
LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT レビュー|マイクロフォーサーズの新しい領域を切り開く マニュアルフォーカス専用超広角単焦点レンズ

はじめに

マイクロフォーサーズ規格はフォーサーズ規格の拡張規格として、主にミラーレス一眼カメラの規格として2008年に登場した。現在はOM SYSTEMとパナソニックが中心となりカメラ・レンズの製品を開発・販売を行なっているが、オープン規格であることから賛同会社の各メーカーからも意欲的な製品が発売されている。

そのなかでもLAOWA(ラオワ)がラインナップしているマイクロフォーサーズ用交換レンズは、他社にはないユニークな製品が特徴的だ。2023年2月に発売された「LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT」は、マイクロフォーサーズ用交換レンズとしてもっとも画角の広い広角レンズとして注目を集めている、35mm判換算にして12mm相当の超広角レンズであり、画角にして121.9°もの広い範囲を画像に収めることができる。さらに超広角レンズとしては珍しい開放絞りF2.0という明るさも魅力的だ。

そこでLAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTをOM SYSYTEMのフラグシップ機であるOM-1と組み合わせて実際に撮影を行い、その画質や特徴について検証してみたいと思う。

LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTの主なスペック

■マイクロフォーサーズ規格マウント
■焦点距離6mm (35mm判換算12mm相当)
■レンズ構成 9群13枚
■最短撮影距離 0.09m
■最大撮影倍率 0.18倍(35mm判換算 0.36倍相当)
■フォーカシング機構 マニュアルフォーカス
■絞り羽枚数 5枚
■開放絞り値 F2.0
■最小絞り値 F16
■大きさ 最大径61mm 全長52mm フィルターサイズ58mm
■質量 約188g (レンズキャップ、レンズリアキャップを除く)
■防塵防滴仕様 なし

レンズ外観

 OM SYSTEM OM-1に装着したLAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT。単焦点レンズであることから筐体は小さい。フォーカスリングは幅広で操作しやすく、マニュアルフォーカス専用レンズならではの適度なトルクのある回転で不満はない。
 開放絞り値F2.0と明るい広角レンズだが前玉レンズはとても小さい。超広角レンズは前玉レンズが大きくなる傾向があるなかで、比較的珍しいレンズだといえる。
 専用フードを装着。35mm判換算12mm相当と画角の広いレンズだがフードを使用できる。小さなフードなので遮光性能はあまり期待できないが、物理的にレンズをぶつけた際にショックから保護する役割も担う。
 前玉レンズは筐体前枠内に収まっているので、ねじ込み式円形フィルター(58mm径)も装着することができる。ただし出来るだけ薄枠のフィルターを使用するなどして、画角周辺がケラれないようにしたい。
 レンズマウント部は金属マウントを採用。頻繁なレンズ脱着による摩耗や歪みにも強い構造。LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTはマイクロフォーサーズ規格に準拠していることから、カメラとの情報通信にも対応しており、そのための端子が設けられている。これにより撮影時には自動的に設定絞り値へと絞り込める「自動絞り機能」に対応。また、撮影画像のExifデータにはレンズ名や撮影時の絞り値などが書き込まれる。
 LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTを手に持つとその小ささと軽さがより際立つ。筐体の外装品質も高く指の触りの感触も良い。

実写による解像力の検証

LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTをOM SYSTEM OM-1に装着して、絞りを開放F2.0からF16まで変えながら撮影した画像を、等倍に拡大して中央部および周辺部の画像の解像具合を確認する。

絞り値を変えながら撮影した画像中央部の画像を等倍で切り出して解像感を比較。開放絞りF2.0ではほんの僅かに解像力の緩さがみられるが、F2.8〜F5.6の間で解像力がもっとも高まる。F8.0を超えると小絞りの影響が出てくるようで解像感が徐々に低下し、F16では解像力が大きく下がる。

絞り値を変えながら撮影した画像周辺部の画像を等倍で切り出して解像感を比較。開放絞りF2.0では解像感が低いうえ周辺へ像が大きく流れる。F2.8で解像感は向上しF4〜F5.6の間で解像力がもっとも高まる。F8.0を超えると中央部同様に小絞りの影響により解像感が徐々に低下し、F16では影響がさらに大きくなる。

上記の検証結果から、LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTでもっとも解像力が高まるのはF4.0〜F5.6の間といえるだろう。ただその前後の絞り値でも実用的には問題がないレベルでの解像力を持っているので、状況に合わせて適切な絞り値を選択することで、最適な画質を得ることができるはずだ。ただし今回の検証撮影において、OM-1との組み合わせでは設定絞り値の違いで若干露出のばらつきが見受けられたことから、実際の撮影時には撮影後の画像をその場で確認のうえ、必要に応じて露出補正を行うことが望ましい。

なお、このレンズの最大絞り値はF16までとなっているが、実際にはさらに一絞り分進めることができる。この状態で撮影を行うとカメラはF22に設定されているものと認識して撮影を行うが、実際にはF16までしか絞り込まれない。したがってオート露出モードでの撮影画像は露出オーバーとなる。なぜこのような設計とされているのか意図は不明だが、あえてF22として設定するメリットは見受けられないので、撮影時には不用意に設定しないように注意したい。

マイクロフォーサーズ用交換レンズでもっとも画角の広い広角レンズ

LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTの画角は35mm判換算で12mm相当となり、この記事の執筆時点(2023年4月)ではマイクロフォーサーズ用交換レンズとしては、魚眼レンズを除いて最も広い範囲を撮影可能なレンズとなる。121.9°の広い画角はOM SYSTEMのM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROの広角端7mm(114°)での撮影画角より広い。

同じ位置からLAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTとM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROで都市風景を撮影。焦点距離6mmと7mmでは数値的には1mmの差でしかないが、実際には広角レンズにおいてこのわずかな広がりの差が画作りに大きな変化を生む。このLAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTの画角の広さには何ものにも代え難い魅力がある。

LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTにはレンズ先端に58mm径の円形フィルターを装着できる。超広角レンズには、前玉レンズがドーム状に張り出した形状のものが多くあり、その構造からそのままではフォルターを装着することが難しい。風景撮影などではC-PLを多用することから、円形フィルターをそのままレンズに装着できるメリットはとても大きい。

ここでは58mm径から67mm径に変換するステップアップリングを併用して、薄枠タイプの67mm径のC-PLフィルターを装着した。本来のフィルター径より1サイズ大きなフィルターを使用することで、画角周辺のケラれの発生を避けている。

C-PLフィルターには光の反射を抑えることでコントラストを調整する効果がある。ここではC-PLフィルターを使用して都市風景を撮影した。建物のガラスへの写り込みを抑えるとともに空気中の水蒸気による光の乱反射を除去することで、遠景の白い霞みを抑制できている。

LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT実写作例

■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F5.6 1/125秒 ISO200 絞り優先モード +1EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写S-IS Auto
■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F4.0 1/250秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写S-IS Auto
■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F4.0 1/1250秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写S-IS Auto
■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F8.0 1/125秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写S-IS Auto
■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F8.0 5秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural MF 単写S-IS Auto
■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F8.0 3.2秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural MF 単写S-IS Auto
■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F8.0 4秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural MF 単写S-IS Auto
■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F2.0 1/100秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural MF 単写S-IS Auto
■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F2.0 30秒 ISO200 マニュアルモード WBオート 仕上がりモードNatural MF 単写S-IS Auto
H&Y Magnetic White Promistフィルター1/2使用

新しい可能性にチャレンジするLAOWAレンズの超域広角レンズ

マイクロフォーサーズ(フォーサーズ)規格は、そのセンサーサイズの特性から使用するレンズの実焦点距離を2倍した数値が35mm判換算の焦点距離となる。これにより望遠側は200mmレンズでも400mmレンズ相当の望遠効果が得られるといったメリットがあるが、反対に広角側は極端な短焦点距離のレンズを設計することが難しく、これまで7mmが最短の焦点距離であった。また画質を上げる為にはレンズ自体を大きくする必要があり、本来のマイクロフォーサーズの利点である小型軽量とは相反する製品となっている。

そのなか、今回発売されたLAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTは、これまでにはなかった6mm(35mm判換算12mm相当)といった超広角撮影を実現した画期的なレンズだ。さらにマニュアルフォーカス専用レンズであるとはいえ、マイクロフォーサーズシステムのメリットである小型軽量を最大限に活かせる大きさ・軽さとなっている。

LAOWAレンズは中国で比較的新しく立ち上げられたメーカーによる製品だが、2016年の日本上陸から着実に技術力を上げ現在では数多くのカメラ・フォーマットに対応した製品を展開している。新興メーカーであることから既存の形態に捉われることなく、ユーザーが求めるものを製品化し続けることで信頼と人気を積み重ねてきた。このLAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTも、まさにユーザーに求められ生まれた製品だ。画質検証では若干厳しい結果も出ているが、これは筆者が日常的に使用しているOM SYSTEM PROレンズの画質を基準としての判断であるということを付け加えておきたい。印象としては同じくOM SYSTEMのスタンダードクラスレンズの画質と同質と考えてよいだろう。

結論としてはこのレンズは製品の価格帯を考えると十分な画質を保持しており、さらに像の歪みを徹底的に排除した設計となっていることに加え、他にはない35mm判換算12mm相当の広い画角と歪みのないすっきりとした描画が可能であることから、建築物写真、風景写真はもちろん、都市風景、夜景、星景撮影などで活躍してくれるはずだ。さらに、超広角な画角を活かした個性的な遠近感表現によるユニークな作品を生み出すこともできる。フォーカス方式はマニュアルのみだが、ミラーレスカメラならではのライブビュー拡大表示機能を併用すれば、むしろAFよりも正確にフォーカスを合わせることもできるはずだ。これらのメリットを最大限に活かし、このLAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTでより個性的な作品にトライしてはいかがだろうか。

■使用機材:OM-1 + LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
■撮影環境:F5.6 1/500秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid MF 単写S-IS Auto
■撮影協力:香豆珈琲 – kou’s coffee

 

■model:夏弥

■写真家:礒村浩一
写真家。女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーの講師を担当。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆も多数。写真編集を快適に行うためのパソコンのプロデュースも担当。

 

 

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