富士フイルム X-H2 ~最新技術がぎゅっと詰まった階調豊かな高画素モデル~|萩原れいこ

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富士フイルム X-H2 ~最新技術がぎゅっと詰まった階調豊かな高画素モデル~|萩原れいこ

はじめに

Xシリーズ最高画素数を誇るフラッグシップ機「FUJIFILM X-H2」が、いよいよ2022年9月29日に発売されました。新開発の裏面照射型センサーは約4020万画素、動画は8K/30Pの映像を撮影でき、静止画と動画ともにオールマイティに活躍する待望のデジタルミラーレスカメラです。

早速、秋の志賀高原にて撮影を行い、実際の使用感を試してみました。

 

Xシリーズ最高画素数約4020万画素

風景写真を主に撮影する私にとって、やはり一番の注目は、最高画素数40MP(約4020万画素)の新開発センサー「X-Trans CMOS 5 HR」です。APS-Cサイズの小型軽量ボディで、フルサイズ機と同等の約4020万画素は非常に嬉しいところ。野山を歩いたり、レンズ交換を積極的に楽しんだりする者としては、小型軽量であるというのはとても重要なポイントです。

巷では一部で「フルサイズ信仰」がありますが、最高画素数約4020万画素であれば、表現力は引けをとらないはず。描写力に妥協はできないのが風景写真ですので、そのあたりを検証してみました。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF16-55mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:焦点距離31mm 絞り優先AE(F16、1/5秒) ISO200 晴れ

霧がただよう森の中から、池を覗いて撮影しました。枝先や木肌の緻密な描写力が際立つとともに、雫や霧の湿度感なども豊かに再現されています。高解像センサーの大きな魅力は、精細な描写だけでなく、その場の空気感やニュアンスを表現できるところですが、第四世代の約2610万画素のセンサーに比べて、格段に表現力が高まっていると感じます。

この解像感を最大限引き出すのであれば、最適なレンズ選びと、三脚を使った丁寧な撮影を心掛ける必要があります。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF16-55mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:焦点距離31mm 絞り優先AE(F16、1/45秒) ISO800 晴れ
■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF16-55mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:焦点距離40mm 絞り優先AE(F8、1/20秒、+1.7EV補正) ISO400 晴れ

また、撮影した感触として、逆光方向での撮影時にシャドウやハイライトが以前より粘るように感じました。高解像に伴って階調が豊かになったおかげで、トーンジャンプが発生しにくく、光のグラデーションをより滑らかに表現できます。
朝夕の撮影が多い風景写真の現場において、とても心強い進化といえます。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF16-55mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:焦点距離20.6mm 絞り優先AE(F11、1/30秒、-0.7EV補正) ISO200 晴れ

そして、小型軽量のシステムを活かして、約30分ほど歩いて巨木を撮影に行きました。深い森に入ると、魅力的な被写体との出合いがたくさんあります。森の中での撮影は、木肌や苔、葉の葉脈など、解像感が試されるシーン。約4020万画素あれば、写真展などで大きくプリントしても、森の緻密な表情を楽しむことができます。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:焦点距離9mm 絞り優先AE(F11、1秒、-1EV補正) ISO400 晴れ

また、Xシリーズ初となる「ピクセルシフトマルチショット」を搭載し、1回のシャッターで20枚の画像を撮影し、専用のソフトウェアで合成することにより約1.6億画素の画像生成が可能になりました。これぞという被写体を撮影する際に活躍しそうです。

ボディ1台、レンズ4本をザックに入れて歩いても苦にならないのがAPS-Cシステムの魅力。積極的にハイキング撮影やレンズ交換が楽しめます。

しかし、高解像になるほど気になってくるのが、高感度ノイズの出現です。X-H2は高解像ながら、画像処理エンジンのアルゴリズムと組み合わせることにより、高いS/N比を維持しているとのことで、試しに星空を撮影してみました。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:焦点距離12mm 絞り優先AE(F2.8、12秒、-0.3EV補正) ISO6400 オート

上の画像はISO感度6400で12秒かけて撮影した、撮って出しのJPEG画像です。カメラ内の「高感度ノイズ低減」や「長時間ノイズ低減」の効果をかけずとも、暗部のノイズは気にならず、見事な描写に驚きました。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:焦点距離8mm 絞り優先AE(F2.8、12秒、+0.7EV補正) ISO12800 オート

ISO6400でノイズが気にならなかったので、ISO感度を12800まで上げて撮影してみました。そのままではさすがにノイズが目立ってきたので、「高感度ノイズ低減」を「+2」に設定してみると、とても滑らかな描写になりました。「高感度ノイズ低減」や「長時間ノイズ低減」は「+4」まで効果をかけることができます。

 

富士フイルムならではの色づくり

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影環境:焦点距離140mm 絞り優先AE(F11、1/25秒) ISO400 晴れ

富士フイルム愛好家が声を揃えて言うのは「色がきれい」というところ。私のお気に入りポイントでもあり、多様なフィルムシミュレーションは新製品発表に伴う楽しみの一つです。

GFX100Sの開発とともに登場した人気の「ノスタルジックネガ」も搭載され、既に発表されている全19種類を完備。レトロで情緒的なトーンの絵づくりは、スナップだけでなく、風景写真においても新たな魅力を引き出してくれます。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影環境:焦点距離71.5mm 絞り優先AE(F5.6、0.7秒、+0.7補正) SO800 晴れ ノスタルジックネガ
■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
■撮影環境:焦点距離124mm 絞り優先AE(F2.8、1/420秒、+0.3補正) ISO160 晴れ ASTIA ソフト

また、肌のレタッチを自動で行う「スムーススキン・エフェクト」がXシリーズで初搭載され、人物の肌をより滑らかに写し出すことが可能になりました。

AIによる高精度なオートホワイトバランスも実現し、街灯が灯る夜景風景などおいても真価を発揮しそうです。

 

驚異の8K/30P動画撮影

X-H2では、Xシリーズ初となる8K/30Pの動画撮影が可能になりました。正直、この価格帯で8K映像が撮影できるのは驚きです。気軽に8K映像を楽しめる時代が到来したように感じます。

映像の解像感、奥行き感は、やはり8Kならではの美しさ。X-H2Sには8K内部収録は搭載されておらず、この点においてはX-H2に軍配が上がるでしょう。8Kの高品質なデータから4K映像を切り出す「4K HQ」モードも新搭載し、よりハイクオリティな動画撮影を気軽に楽しめるようになりました。

バリアングル、手ブレ補正機構が搭載され、映像撮影にも最適化したボディとなっています。

初心者にとっては映像編集のハードルはとても高いもの。しかし、フィルムシミュレーションは完成度の高い色づくりのため、撮って出しでも魅力的な映像を撮影することができます。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF16-55mmF2.8 R LM WR , XF35mmF1.4 R
「4K HQ」モード、フィルムシミュレーション「クラシックネガ」で撮影した、撮って出しの森の動画。解像感が際立ち、独特の魅力的な色合いで、雰囲気のある映像が撮影できます。

もちろん、動画撮影を本格的に楽しみたい方にもおすすめです。
「F-Log2」を新搭載しているので、カラーグレーディングでお好みの色合いに調整することも可能。

さらに、Apple ProResコーデックで収録することもでき、プロの現場やより高度な映像制作も可能となっています。
X-H2S同様の放熱構造を採用するだけでなく、別売りアクセサリーの冷却ファンを装着することで、動画撮影の時間を大きく増やすことができます。

 

進化した被写体検出AF

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:焦点距離300mm 絞り優先AE(F5.6、1/500秒、-0.3補正) ISO400 晴れ

X-H2には、もうひとつ大きな魅力があります。
X-H2Sで起用された画像処理エンジン「X-Processor 5」を搭載することで、高速連写性能やAF性能が格段に進化。瞳AFの性能は格段に向上し、新たに装備された被写体認識機能では、動物、鳥、自動車や飛行機など被写体別に認識することが出来るようになりました。

実は、風景写真の撮影において、被写体のAF追従性能を特段求めることはありませんでした。しかし、風景を撮影している時にふと野生動物と出合うことも多く、すかさず撮影したいと思う場面は多々ありましたが、瞳にフォーカスする前に逃げてしまい、悔しい思いをすることがありました。

X-H2なら、突然現れるシャッターチャンスを逃しません。撮影中に出合った動物たちの表情も捉えることができました。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:焦点距離300mm 絞り優先AE(F5.6、1/1000秒、+0.3補正) ISO400 晴れ

上の画像は、草やぶから突然現れた小鳥。フォーカスポイントが多様に変化し、被写体に食いついてくれました。手前の植物にもフォーカスが迷うことなく、小鳥を主役として認識してくれて、AF性能の進化を実感しました。

高速連写枚数はX-H2Sが最高約40コマ/秒に対し、X-H2は最高約20コマ/秒。超高速で動き、些細な表情を見逃せない被写体を狙うならX-H2Sが優れていますが、人や動物など比較的ゆったりと動く被写体なら、充分に高速撮影が楽しめます。ただし、X-H2はローリング歪みが発生することもあるということなので、その点は注意が必要です。

■撮影機材:富士フイルム X-H2 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:焦点距離171mm 絞り優先AE(F5.0、1/500秒、-0.3補正) ISO640 晴れ

猿の群れが現れたので、子猿を狙ってみました。カスタム設定に動物撮影用の登録をし、すぐに設定を呼び出して撮影することができます。動いている動物をうまく構図するのは難しいですが、約4020万画素の高画素になったおかげで、多少のトリミングも行えるようになった点は心強いです。

 

機能的なボディデザイン

外観のデザインについては、X-H1に搭載されていたシャッタースピードやISO感度のダイヤルはなくなり、よりわかりやすいコマンドダイヤルを採用。X-H2Sと同一のボディが採用され、そのルックスは両機種でほぼ同様となりました。天面の液晶画面も、GFXやX-H2Sの仕様を継承しています。

グリップは深く、女性には少し大きいものの、男性の手にはとてもフィットする大きさです。X-T4より50gほど重いですが、握りやすい構造で重量を感じさせないバランスのよいボディとなっています。

また、ボディ内手ブレ補正は5軸7.0段と申し分なく、動画撮影の際にも心強いです。バリアングルモニターの採用で、ローアングルの縦位置撮影や、自撮りなどがより快適になりました。防塵・防滴・耐低温構造も進化し、雨天時や厳冬期など、ハードな状況での撮影も安心です。

記録メディアはCFexpress Type BカードとSDカードに対応したデュアルスロットを採用。高速書き込み処理ができるCFexpress Type Bカードを使用することで、8K動画の撮影や様々な機能に対応することができます。

 

まとめ

Xシリーズのフラッグシップ機らしく、最新技術がぎゅっと詰まった贅沢なカメラ。このクオリティをこの価格で手にすることができるのは、シンプルに凄いと感じます。APS-Cならではの小型軽量も嬉しいポイントです。

約4020万画素の高解像で、静止画や動画、風景や人・動物などオールマイティに撮影できるX-H2なら、写真ライフがますます楽しくなることでしょう。X-H2は次世代の新しいスタンダードになるのではと、今からワクワクしています。

 

■写真家:萩原れいこ
沖縄県出身。学生時代にカメラ片手に海外を放浪。後に日本の風景写真に魅了されていく。隔月刊「風景写真」の若手風景写真家育成プロジェクトにより、志賀高原 石の湯ロッジでの写真修行を経て独立。志賀高原や嬬恋村、沖縄県をメインフィールドとして活動中。撮影のほか、写真誌への寄稿、セミナーや撮影会講師等も行う。個展「Heart of Nature」、「Baby’s~森の赤ちゃん~」を全国各地にて開催。著書は写真集「Heart of Nature」(風景写真出版)、「風景写真まるわかり教室」(玄光社)、「美しい風景写真のマイルール」(インプレス)、「極上の風景写真フィルターブック」(日本写真企画)など。

 

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