小型・軽量・画質の魅力を凝縮した富士フイルム X-T30 III レビュー|こばやしかをる

小型・軽量・画質の魅力を凝縮した富士フイルム X-T30 III レビュー|こばやしかをる

はじめに

富士フイルムXシリーズの中でも人気のX-T2桁シリーズに、小型軽量ボディでありながら、高度な機能を求めるユーザーに応えてくれる満足度の高いカメラX-T30 IIIの登場です。

いつでも持ち歩きたくなるサイズ感の軽快なカメラX-T30 IIIに、XF27mmF2.8 R WRと、XF33mmF1.4 R LM WR、それぞれの組み合わせでいち早く撮影を堪能してきました。

X-T30 IIIの特徴

画像処理エンジンに最新のX-Processor 5を搭載しつつ、センサー画素数を第4世代と同様の裏面照射型約2610万画素X-Trans CMOS 4としたことで、日常のスナップ撮影には十分すぎる高性能。
上位機種「X-T50」との大きな違いは画素数ということになりますが、約2,610万画素もあれば解像感や描写に不足を感じることは少なく、撮影後のことを考えると、むしろ扱いやすい適切なデータサイズといえます。また、A3ノビサイズまでの作品プリントなら余裕の仕上がりです。

ボディ内手ブレ補正は非対応ですが、DIS(Digital Image Stabilization)による手ブレ補正を搭載し、レンズやセンサーを物理的に動かすのではなく、ソフトウェア(画像処理)によってブレを補正しています。

画素数と処理速度のバランスが保たれ、最新の高性能を凝縮したモデルとして非常に魅力的な一台で、高いコストパフォーマンスを発揮してくれるカメラになっています。

サイズ感とデザインの良さ

クラシカルな雰囲気のデザインはそのままに、伝統的なX-T2桁系の操作感に加え、天面には「X-T50」や「X-M5」などと同様に、フィルムシミュレーションが瞬時に切り替え可能なフィルムシミュレーション専用ダイヤルが搭載されており、デザイン的な特徴と操作の楽しさを実感できます。

重さはバッテリーとSDカードを含んでもわずか約378gとかなり軽量。今回装着したXF27mmF2.8 R WRとのルックスは抜群!携帯性も素晴らしく、スナップ撮影時の定番になりそうな予感です。

ボディカラー:シルバー、ブラック、チャコールシルバーの3色あります
サイズ:W118.4×H82.8×D46.8mm
質量:約378g(バッテリー、SDメモリーカードを含む)
左側に設けられた、特徴的なフィルムシミュレーションダイヤル
0.39型約236万ドットの有機ELファインダーと、3.0型162万ドットのチルト式タッチパネル背面モニターを搭載

従来モデルから好評のポップアップ式フラッシュや「オートモード切替レバー」による「AUTO」撮影など、初めてXシリーズのカメラを扱う人にとっても安心できる機能が搭載されているのも嬉しい点です。

X-Processor 5による大きな進化

X-T30 IIIがX-T30 IIと比べて圧倒的に優位となったのは、最新のX-Processor 5を搭載したことです。これにより、上位機種(X-T50、X-H2など)と同等の機能が利用可能になりました。

動体AFの大幅強化

被写体検出AFが強化され、カメラが自動で被写体を認識し追尾し続けます。X-T30 IIまでのAFは、主に人物の顔・瞳に特化していましたが、X-T30 IIIはAIにより、動物や乗り物を自動で認識し、高精度に追い続けることができるようになりました。動く被写体を撮る機会が多い場合は、この差が決定的なシャッターチャンスの違いになるでしょう。

MENU設定画面:カメラ側がAUTOモードに設定されている場合は、被写体認識もAUTOになり、カメラに任せた被写体選択になりますが、かなり的確にセレクトしてくれます
被写体認識:電車/通過する急行列車をしっかりとキャッチ
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF27mmF2.8 R WR (35mm判換算41mm)
■撮影環境:SS1/150秒 F/2.5 ISO320 AUTO WB雰囲気優先 +0.3EV
■フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
被写体認識:動物/この後サッと逃げられてしまった
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF27mmF2.8 R WR (35mm判換算41mm)
■撮影環境:SS1/100秒 F/5.6 ISO2000 AUTO WB雰囲気優先 -0.3EV 
■フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

従来機種では、小さな飛行機や遠くを飛ぶ飛行機にピントを合わせ続けるのは難しかったのですが、とっさのタイミングでも複雑なAF操作なしに高い精度でピントを合わせ続けることができます。
動画性能も飛躍的に進化し、X-T30 IIでは4K/30Pだったフレームレートは、6.2K/30Pや4K/60Pの撮影に対応し、プロの現場でも使える高解像度・高フレームレートでの動画撮影も可能になっています。

20種類になったフィルムシミュレーション

フィルムシミュレーションは、富士フイルムのカメラの大きな魅力の一つですが、X-T30 IIIではX-Processor 5の恩恵を受け、その表現力も飛躍的に向上しています。
X-T30 IIまでは18種類のフィルムシミュレーションが搭載されていましたが、X-T30 IIIでは最新の画像処理エンジンX-Processor 5を搭載したことで、これまでになかった、「REALA ACE」と「NOSTALGIC Neg.」二つの最新のフィルムシミュレーションが追加され、さらに色作りや画作りの幅が広がります。個人的には「REALA ACE」が使えることがかなり嬉しい点です。

直感的なダイヤル操作で切り替えることができる

さらに、FSレシピ(フィルムシミュレーションレシピ)に対応しており、 フィルムシミュレーションダイヤルの「FS1」「FS2」「FS3」の3つのポジションには、画質設定を組み合わせた自分だけのオリジナルレシピを登録し、即座に呼び出すことが可能です。
登録方法はI.Q.メニューから以下の手順で行います。

フィルムシミュレーションをハイライト、シャドウ、カラーなどをカスタマイズして登録でき、自分らしい色調表現がエンドレスに楽しめる

X-T30 IIからX-T30 IIIへの進化は、単なるマイナーチェンジではなく、心臓部が新世代に置き換わったことで、AF、動画、色表現のすべてが最新レベルになったといえるでしょう。

カメラとともにご近所散歩

外を歩くのにちょうど良い季節。間もなく冬とは思えない暖かい日に外に出たところ、ようやく色づき始めた木々や空模様から季節の変化を感じられるようになりました。出合うものに合わせながらフィルムシミュレーションをあれこれと変えてX-T30 IIIを楽しむゆっくりとした一日。やっぱりご近所フォトは楽しいものです。

色づき始めたハナミズキが光を浴びてキレイでした
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF27mmF2.8 R WR (35mm判換算41mm)
■撮影環境:SS1/100秒 F/5.6 ISO640 AUTO WB雰囲気優先 +0.7EV
■フィルムシミュレーション:ASTIA
空が高くなり、雲の様子も冬になりつつあります。クレーンの細部まで描写が素晴らしい
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF27mmF2.8 R WR (35mm判換算41mm)
■撮影環境:SS1/450秒 F/8 ISO320 AUTO WB雰囲気優先  
■フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi
街中から姿を消しつつある個人商店。店舗の隣で道路の開発が進んでいます
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF27mmF2.8 R WR (35mm判換算41mm)
■撮影環境:SS1/100秒 F5.6 ISO2000 AUTO WB雰囲気優先 -0.3EV 
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
お花屋さんでハシビロコウの鉢植えと目が合う
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF27mmF2.8 R WR (35mm判換算41mm)
■撮影環境:SS1/100秒 F/5.6 ISO3200 AUTO WB雰囲気優先 -0.3EV 
■フィルムシミュレーション:リアラエース

近所を歩く楽しみの一つ、喫茶店めぐり。この日は老舗の喫茶室へ。撮影をしていたら、お店の方が「僕も写真好きで、月や風景撮ったりしているんですよ」と話しかけてくれました。そんな出会いも、気さくな会話もご近所ならではです。

サロンといわれる喫茶室。こんなデザインを楽しめるのは今しかないのかもしれません
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF33mmF1.4 R LM WR (35mm判換算50mm)
■撮影環境:SS1/100秒 F/3.6 ISO1250 AUTO WB雰囲気優先 
■フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi
プリンアラモードを美しくかわいらしい色Neg.Hiで
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF33mmF1.4 R LM WR (35mm判換算50mm)
■撮影環境:SS1/100秒 F/2.8 ISO1250 AUTO WB雰囲気優先 +0.7EV 
■フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi

昭和ノスタルジーを感じるタイムスリップ

X-T30 IIIとXF33mmF1.4 R LM WRの組み合わせで、昭和の名残を色濃く感じる町へでかけました。狭い路地をすり抜けながらたどり着く、ノスタルジーを感じる町並み。大正から昭和初期を生き抜いた人々が大切にしてきた丁寧な暮らし方や、町の活気。そうしたものが失われつつある今こそ残したい姿。
XF33mmF1.4 R LM WRのシャープで繊細な描写と、空気を包み込むかのような柔らかいトーンが冬の日差しの中に、切なさを感じる光景を描いてくれました。

XF33mmF1.4 R LM WR を装着するとこのようなサイズ感

冬空に夏みかん。そんな街角もあまり見なくなりましたね。順光でのストレートな写りが気持ちいい一枚です。

■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF33mmF1.4 R LM WR (35mm判換算50mm)
■撮影環境:SS1/250秒 F/5.6 ISO160 AUTO WB雰囲気優先 +0.3EV 
■フィルムシミュレーション:リアラエース

軒下の乾物、室内に差し込む暖かい日差し。リアラエースの絶妙なトーンの柔らかさを表現できるXF33mmF1.4 R LM WR。

■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF33mmF1.4 R LM WR (35mm判換算50mm)
■撮影環境:SS1/100秒 F/2 ISO800 AUTO WB雰囲気優先 +0.3EV 
■フィルムシミュレーション:リアラエース
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF33mmF1.4 R LM WR (35mm判換算50mm)
■撮影環境:SS1/280秒 F2.8 ISO320 AUTO WB雰囲気優先 
■フィルムシミュレーション:リアラエース

狭い路地を往来する人を、傍らに咲くキバナコスモスが見守っていました。この細い路地は昭和の頃の道幅で残されています。

■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF33mmF1.4 R LM WR (35mm判換算50mm)
■撮影環境:SS1/480秒 F1.4 ISO160 AUTO WB雰囲気優先 +0.3EV 
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF33mmF1.4 R LM WR (35mm判換算50mm)
■撮影環境:SS1/750秒 F/1.4 ISO160 AUTO WB雰囲気優先 +1.3EV 
■フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi

坂道を登り切ったら、夕陽に向かって歩く元気な子どもたちの姿に遭遇。輝度差の大きいシーンですが、X-T30 IIIとの相性の良さも、逆光耐性の強さも実感できた瞬間です。

■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF33mmF1.4 R LM WR (35mm判換算50mm)
■撮影環境:SS1/1250秒 F/5.6 ISO320 AUTO WB雰囲気優先 -0.3EV 
■フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

おわりに

■撮影機材:富士フイルム X-T30 III + XF27mmF2.8 R WR (35mm判換算41mm)
■撮影環境:SS1/8秒 F/6.4 ISO500 AUTO WB雰囲気優先 -1.3EV 
■フィルムシミュレーション:Velvia

思い描いているシーンを表現できる一台として、個人的にすごく魅力を感じました。
X-Trans CMOS 4の採用で、抑えられた価格もかなりポイントが高いです。
初めてのXシリーズユーザーにとって、魅力的な選択肢となるでしょう。性能の高いサブ機を求めているXユーザーの欲求を満たしてくれること間違いなしです。
かく言うわたしも欲しくなってしまった一人。「どのボディカラーにしようかな」。なーんて考えてしまいました。

 

■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
日本作例写真家協会会員・PhotoPlus+主宰

 

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