DJI Osmo Pocket 3 で楽しむベトナムの旅|水咲奈々
はじめに

2023年10月に発売されたDJIの「Osmo Pocket 3」は爆発的な人気を博し、最強のVlogカメラとしてYouTuberはもちろん、カメラ業界でも取材用のカメラを本機に乗り換えた方が沢山いらっしゃいました。筆者は、旅行の動画撮影に良さそうだなとか、スチール撮影中の状況動画が楽に撮れそうなどと思いながらも、撮影時の機材を増やすのがためらわれて、なんとなく買いそびれていました。
ですが、今回のベトナム旅行をきっかけに思い切って(衝動的に)購入しました!ということで、筆者と同じように購入を悩んでいる方、これってどんなカメラなの?と興味を持たれた方向けに、使用感満載のレビューをお送りします。
Vlog用途で気になるマイク性能
まずは本機の基本スペックのご紹介から。1インチCMOSセンサー搭載のジンバル一体型のカメラで、4K/120fpsの撮影が可能、背面には回転式タッチスクリーンを搭載し、これをクルッと回転することで、縦位置と横位置の撮影を瞬時に切り替えられます。
3軸メカニカルスタビライズ機構搭載で、足場の悪い道を歩きながらの撮影でも、揺れを軽減した見やすい動画にしてくれます。顔自動検出の性能が高いので、自分の顔にピントを合わせ続けた撮影をワンオペで簡単に行えます。
AF性能については、もう数え切れないくらいの方々がレビューしている機種ですので、それはもうストレスなく使用できますと、短い感想で終えたいと思います。ただ、人物認識能力は高いのですが、それ以外の任意の被写体にタッチでピントを合わせようとすると、たまにAFが迷子になることはありました。
筆者が今回購入したのは、本体にプラスして、DJI Mic 2 トランスミッター、広角レンズ、バッテリーハンドル、ミニ三脚、キャリーバッグがセットになったクリエイターコンボです。内蔵マイクと外付けマイクとの違いはかなりはっきりと出たので、ぜひ動画でご覧ください。
本機を購入する方は無言の動画を撮るよりも、話しながらもしくはその場の状況の音も入れた動画撮影を踏まえている方が多いと思います。筆者もアフレコではなく、その場で音声収録をすることを前提にしていたので、外付けマイク付きのクリエイターコンボにしたのですが、この選択は大正解でした。
静かな室内で撮影する分にはそれほど変わらないでしょうが、環境音が大きい屋外で自分の声も収録するとなると、外付けマイクは必須だと感じました。ノイズのない、クリアーな音声が収録できる小型・軽量のマイクは、単独でもっと追求したレビューがしたくなるほど優秀です。
このマイクには小さなマグネットがセットになっていて、服の裏側にこのマグネットを仕込むことで、クリップで挟まなくても服に装着できます。動画をご覧いただくとわかると思いますが、立ち襟でマイクのつけにくい服でも、宙に浮いているように装着できます。本当に便利でした!
内蔵マイクの性能ですが、環境音のみを収録しながらの録画には最適で、前後左右の音の立体感を丁寧に収録しています。比較動画はぜひヘッドホンでご覧いただきたいです。
急速充電できるけどバッテリーハンドルがあればさらに安心!
普段はほとんど撮らないタイムラプスですが、楽しそうなシチュエーションと、撮影しやすいテーブルがある状況でしたので珍しく撮ってみました。群衆モードで0.5秒インターバル、撮影時間10分で撮影。
見返してみると楽しくて、どんどん撮りたいと思いましたが、このような人が多い状況でカメラを動かさないように保持するのは、10分が限界かなとも感じました。意外と小心者なので、カフェの自分の席で撮っていても、邪魔になっていないか気になっちゃいます・・・。
撮影時はクリエイターコンボセットのミニ三脚を使用しています。Osmo Pocket 3の本体単体には三脚穴がないため、1/4インチねじ穴付きのハンドルか、クリエイターコンボセットのバッテリーハンドルを本体に装着して、そこにミニ三脚を着けることになります。
このバッテリーハンドルは、そこそこ長さがあるのでコンパクトさにはかけるのですが、駆動時間を約62%延長できるので、こまめに充電できない移動が多い旅行などでは、予備バッテリーとして持っていると安心感が断然違います。
Osmo Pocket 3の本体のみの場合、166分の連続動作が可能で、16分で80%まで、32分で100%までの急速充電が可能なスペックとなっています。筆者は編集の大変さを考えて、あまり長回しで撮影することはしなかったのですが、今日は沢山撮ったなー!と思った日は、目に見えて電池が減っていました。
他のカメラを使わずにこのカメラだけで撮影する場合や、長回しの撮影が多い方は、途中でバッテリー切れに泣かされないように、バッテリーハンドルを用意したほうが安心でしょう。
写真撮影

本機は動画だけではなく、写真の撮影ももちろん可能です。スマホアプリの「DJI Mimo」は、撮影した動画を見たり編集したりできますが、遠隔操作で撮影もできるので、ワンオペでの自撮りの際に便利でした。
背面液晶はその小ささから、なんとなくの構図確認くらいしかできないので、ピントの有無を確認しようと思ったらスマホアプリが必須です。まあ、本機はピントは完全にカメラにお任せして!という意図があるのでしょうが、やっぱりなんとなく確認したい筆者は、スマホの大きな画面で確認ができるのは便利でした。
この作例は写真モードで、スマホアプリの遠隔操作とカウンドダウン(タイマー)機能を使って撮影しています。3秒、5秒、7秒のタイマー時間が選択できますが、このくらいの距離感だと3秒が使いやすかったです。
この線路上は人が多くて三脚が置けなかったので、同行者にカメラを持ってもらい、スマホの画面を見ながらカメラ位置を調整、タイマーを操作し、タイミングを見ながらカメラに向かって歩く動作をして撮影しました。
カラーモードと低照度撮影
特に設定を変えないノーマルのカラーモードでも、十分に綺麗な映像になるのですが、筆者はちょっとコントラストが高くて、色味も派手だなと感じたので、撮影設定を詳細に変えられるPROモードにして、カラーモードを「D-Log M」に、映像調整のシャープネスをマイナス2にして撮影しました。
そうして撮影したデータを編集ソフトのFinal Cut Proを使用し、DJI公式サイトから「DJI OSMO Pocket 3 D-Log M to Rec.709」をダウンロードして、40%から70%前後の強さで充当すると、簡単に自分好みの色味にできました。
今回はレビュー用に公式のLUTを使用しましたが、思っていたよりも幅広いレンジで録画されているので、これから色々とカラーグレーディングして遊んでみたいと思いました。
夜の撮影では低照度モードを使用すると、簡単に綺麗な動画を撮影できます。ただ、今回の作例のように、イルミネーションやランタンが賑やかに灯っているような明るめの夜撮影では、明るくなりすぎてしまって夜のムードが乏しくなってしまうので、露出の設定はオートのまま、マイナス0.7EV、ISO感度を50-800に設定すると、ちょうど良い露出になりました。明かりが少ない夜の撮影なら、露出の調節なしでもいいかもです。
公式サイトには「DJI OSMO Pocket 3 Rec.709 to Color Grading LUTs」もあり、4種類のLUTをダウンロードできます。低照度モードとの比較で、D-Log Mで撮影した動画と、それぞれのLUTを充てた比較動画を作成しましたので、こちらご覧いただくと色味の違いをおわかりいただけると思います。
デジタルズームと広角レンズ
本機のレンズは焦点距離20mm(35mm判換算)の単焦点レンズですが、写真、動画共にデジタルズームを使用できます。写真は3840×2160で撮影時に2倍、動画は4K撮影時に2倍、2.7K撮影時に3倍、1080p撮影時に4倍、UVC (USB Video Class)もしくはライブ配信は1080p撮影時に4倍のズーム撮影ができます。
ズーミングを最大倍率まで滑らかに行うには、かなりの鍛錬が必要だと感じました。ズーミングの作動は滑らかなのですが、グッとボタンを押しているつもりでも、途中で止まってしまうことが多々ありました。ズーム自体には問題もなく、AFも被写体を追い続けてくれるので、ズームしている部分をカットして繋げる使い方なら、修練を積まなくても気軽に使用できると思います。
逆に、もっと広い範囲を撮影したいときは、クリエイターコンボセットの広角レンズを使用すると、焦点距離15mm(35mm判換算)の画角が使用できます。マグネット式なので、パチっと簡単に装着できるのがメリット。今回は景色で試しましたが、自撮りしながら歩いているようなシーンで、背景をより多く写し込みたいときに重宝しそうです。ただ、ものすごく小さいので、無くしそうでドキドキするアイテムでもあります。
最後の動画は、少し明るめに撮影したD-Log Mに「DJI OSMO Pocket 3 D-Log M to Rec.709」を70%で充てると、お祭りらしい鮮やかな動画になりました。通常のイルミネーションならもう少し鮮やかさを抑えたいところですが、ベトナムらしい色彩にするなら、これくらい派手でもいいかもと思いました。
どんな人に向いているカメラ?
旅行好きな方、日々のVolg撮影をしたい方、インタビューや状況動画撮影をする機会が多い方、アクションカメラ好きでもう色々買い揃えてしまった方、スマホの動画撮影からランクアップしたい方、ガジェット好きな方にオススメしたいカメラです。筆者も迷いに迷って購入しましたが、今は、去年エジプトに行く前に衝動買いを決行しておけば良かったーと、後悔しています。欲しいときが買いどきですね!迷っている方の背中を押す役目ができたなら、幸いです。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。














