キヤノン RF10-20mm F4 L IS STM|自然のなかで超広角の自由を味わう

GOTO AKI
キヤノン RF10-20mm F4 L IS STM|自然のなかで超広角の自由を味わう

はじめに

こんにちは。写真家のGOTO AKIです。キヤノンの「RF10-20mm F4 L IS STM」は、フルサイズ一眼用ズームレンズとして世界で初めて「焦点距離10mm」を実現した画期的な超広角ズームレンズです。これまでの常識では画角と画質、そして機動力のトレードオフがつきものだった超広角領域において、見事にバランスを取りながら新たな可能性を感じさせてくれる一本です。

自然風景の作例を見ながら早速チェックしていきましょう。

スペック・操作性

「RF10-20mm F4 L IS STM」は「EF11-24mm F4L USM」の後継に位置づけられますが、その重量は約半分の570gと驚くほど軽量です。防塵防滴構造に加え、フッ素コートの前玉は高い撥水・撥油性を備え、山の中など自然環境の天候変化にも心強いスペックです。

手ブレ補正はレンズ単体で5.0段、ボディー内ISを搭載したカメラと組み合わせると、協調制御により6.0段の手ブレ補正効果が得られます。光量が足りない室内や薄暗い時間帯での手持ち撮影も安心です。動画撮影では動画電子ISと連携することでさらに強力な手ブレ補正効果に。STM駆動によるAFは静音性に優れ、動画でも滑らかなピント移動を実現。手に取った瞬間の機敏さ、そして撮影中に邪魔にならないサイズ感は、作品制作のリズムを崩さない大事なポイントです。

ワイドマクロ的撮影で遠近感を強調

まず注目したいのが、10mmという画角がもたらす極端なパースペクティブです。木の幹に接近して撮影すると、その質感と空間の遠近が同時に描写され、狭い空間をより広く、まるで「被写体の内部に入り込む」ような視覚体験が得られます。ワイドマクロ的撮影として、風景の中にある小宇宙を表現するのに最適です。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:10mm F8 1/80秒 ISO400
■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:20mm F4 1/250秒 ISO400

林内の鬱蒼とした空間など肉眼では窮屈に感じる場所も、10mmの広がりが光の入り方や空間構成を引き立て、新たな表現の余地を与えてくれます。視点を変えることで現実を再構成できるのが写真の魅力であり、このレンズはまさにその「道具」として機能します。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:20mm F4 1/800秒 ISO400

手前から奥まで広い空間を丸ごと捉える

火山斜面の開けた視界では、この10mmの広がりが真価を発揮しました。遠くの山並みから手前の岩礫地まで、すべてが画面の中に収まります。しかも画面周辺まで解像感は高く、色収差や滲みも極めて少ない描写力です。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:10mm F5.6 1/4000秒 ISO400
■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:20mm F5.6 1/3200秒 ISO400

地面に這うような苔や倒木、空へと伸びる木々たち。レンズの前玉すぐにあるモチーフを捉えながら、その背後にある空間全体までも写し撮る。まるで自分自身が森の一部になったような感覚でシャッターを切るたびに、新しい視点と距離感の可能性に気づかされます。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:10mm F4 1/60秒 ISO800
■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:10mm F4 1/1600秒 ISO400

普通の光景もダイナミックに描写

林間の遊歩道を撮影すると、レンズ特有の強いパースペクティブが奥行きを大胆に描き出します。見慣れた日常的な風景でも、写真にした途端に「風景としての力」が宿り、何でもない風景が別の何かになる体験。これはこのレンズだからこそ得られる感覚です。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:20mm F4 1/320秒 ISO400
■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:10mm F4 1/400秒 ISO400

最短撮影距離

最短撮影距離25cmという近接性能は、小さな植物や苔のディテールを高解像で描写しながらも、背景の空間情報も記録するというワイドマクロ的な撮影が可能です。高解像度で被写体の質感を捉えると同時に、背景の空間も捉える「質感」と「空間性」の両立は「RF10-20mm F4 L IS STM」が持つポテンシャルの一つです。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:10mm F4 1/1250秒 ISO400

ストレートな描写力

10mmというとクセが強く扱いが難しい印象もありますが、「RF10-20mm F4 L IS STM」の焦点距離20mm付近は「素直な描写」です。背景の歪みを抑えながら、被写体のフォルムを忠実に写し出します。構図をしっかり決めれば、主題の説得力はぐっと高まり、視覚的インパクトと情報性を両立できます。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:20mm F4 1/160秒 ISO400
■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:20mm F4 1/30秒 ISO800
■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:20mm F4 1/25秒 ISO800

10mm端でない広角域も魅力

超広角ズームでは広角端が注目されますが、10mmまでいらない場面も多く、10mmと20mmの中間の焦点域もよく使います。パースを抑えつつ、自然な遠近感で風景全体を包み込むような構図も得意なレンズです。作例は13mmで撮影しています。1本で大胆な広がりとナチュラルな引き、どちらにも対応できるのは作品制作において大きな武器になるでしょう。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF10-20mm F4 L IS STM
■撮影環境:13mm F11 1/1250秒 ISO400

動画

作例を撮影した日は風が弱かったため、自然風景の細やかな動きをタイムラプスで撮影してみました。フラットな光の中でも被写体の微細な表情を捉えてくれるレンズです。

まとめ

「RF10-20mm F4 L IS STM」は単に画角が広いだけではなく、「写真によって見え方が変わる」という撮影と表現の喜びが詰まっているレンズです。高い光学性能と携行性、操作性を兼ね備え、山、森、苔、そして光と空気感などを描写する自然風景の撮影においてもその能力を余すことなく発揮するでしょう。「RF10-20mm F4 L IS STM」でまだ見たことのない「距離感」と「奥行き」を皆さんもぜひ体感してみてください!

 

 

■写真家:GOTO AKI
1972年 川崎生まれ。1993~94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。日本大学芸術学部 准教授・武蔵野美術大学造形構想学部 非常勤講師・キヤノンEOS学園東京校講師。

 

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