キヤノン RF50mm F1.4 L VCMで記録する夏の思い出

金森玲奈
キヤノン RF50mm F1.4 L VCMで記録する夏の思い出

はじめに

2024年末にキヤノンから発売された「RF50mm F1.4 L VCM」は動画と静止画の両方を楽しめる大口径単焦点レンズです。50mmという焦点距離は私たち人間の視野に近い画角と言われており、写真を始めたばかりの人が最初に手に取るレンズのひとつではないでしょうか。私が写真の勉強を始める時に最初に買ったのが、まさに今回ご紹介するレンズの前身と言えるキヤノンの「EF50mm F1.4 USM」でした。永い時を経てミラーレス用に進化を遂げた「RF50mm F1.4 L VCM」の魅力をご紹介していきます。

仕様・デザイン

レンズの最大径×全長は約Φ76.5×99.3mm、重量は約580gですが、ボディ(今回はEOS R6 Mark IIを使用)に装着した時のバランスが良いおかげか、実際よりも軽やかに感じられました。最短撮影距離は40cmとそこまで寄ることはできませんが、もう一歩寄りたいという時はクロップ機能を使ってみるのもオススメです。

レンズ前玉側からコントロールリング、フォーカスリング、そしてクリック感のない無段階での絞りの変更が可能なアイリス(絞り)リングが装備されており、動画撮影時の絞り変更の自由度が格段に高まった点も大きな特長のひとつと言えるでしょう。

アイリスリングを使用する場合はレンズ側面の「IRIS」レバーを操作し、リングでの絞り変更に切り替えをします。ただし、静止画での使用は現時点ではEOS R1とEOS R5 Mark II、EOS R50 Vに限られているため、この3機種以外でのスチール撮影時は通常のダイヤルでの絞り操作となります。

やさしいボケ味と凜とした描写性能のマリアージュ

開放F1.4の大口径単焦点レンズである「RF50mm F1.4 L VCM」はボケが美しいのはもちろん、絞り開放撮影時の描写にも隙はありません。ピントの合った面のキリッとした描写をやわらかく滲むようなボケが包み込む空気感はボケ好きな人にはたまらないと思います。

淡いブルーの紫陽花を木漏れ日の玉ボケがやさしく包み込んでいました。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/80sec F1.4 +1 2/3補正 ISO100 WBオート

反対に絞り込むことで被写体の質感に重厚さが増すように思いました。

薄くなめした革細工のようにも見える花びらの質感に驚き。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/100sec F8.0 -2補正 ISO125 WBオート (1.6倍)クロップ

なめらかなAF駆動で広がる動画の可能性

AFの駆動はVCM(ボイスコイルモーター)によるフォーカスレンズ群の駆動とナノUSMによるフローティングレンズの駆動を組み合わせた電子式フローティングフォーカス制御を採用しており、これによって高速でなめらかなフォーカシングが可能になっています。

今回はこのフォーカシングを体感してみたくてMFでアウトフォーカスにした状態からAFに切り替えてピントが合う状況を観察してみました。じんわりとフォーカスが移動する様子とピントが合った瞬間に被写体の紫陽花が浮かび上がるような描写は、動画だからこそ静止画とはまた違ったレンズの性能そのものを感じられたように思いました。

■撮影機材:Canon EOS R6Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/100sec F1.4 -1 2/3補正 ISOオート WBオート

「RF50mm F1.4 L VCM」で残す夏の思い出

来るのを忘れてしまったかのような空梅雨だった2025年の東京。それでも梅雨明け宣言がされたと同時に蝉が鳴き出し、夏の到来を感じ始めた7月の思い出を「RF50mm F1.4 L VCM」で記録しました。

母お手製のシソジュースは我が家の夏の風物詩のひとつ。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/100sec F1.4 +2/3補正 ISO100 WBオート (1.6倍)クロップ
暑い日はクラゲみたいにふわふわ漂っていたい。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/200sec F1.8 -1 2/3補正 ISO4000 WBオート
レトロ喫茶でひと休み。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/80sec F1.4 ISO160 WBオート
窓際にもちょこんとクリームソーダ。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/200sec F1.8 +2/3補正 ISO100 WBオート
数年ぶりに川越へ小旅行。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/500sec F1.4 +2 1/3補正 ISO100 WBオート
猛暑を乗り切るお守りを拝受。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/320sec F1.4 +1 1/3補正 ISO100 WBオート
昔なつかしい駄菓子屋さん。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/125sec F1.4 +2/3補正 ISO100 WBオート
レトロ喫茶でひと休み・第二弾。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/200sec F1.4 ISO100 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R6Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/1600sec F1.4 +1 2/3補正 ISO100 WBオート

実家で姪っ子たちと遊びつつ写真を撮っていたのですが、帰って見返すとなんと知らぬ間に設定が「クロップ撮影」に変更になっていたことが発覚。最短撮影距離40cmの「RF50mm F1.4 L VCM」はあと一歩寄りたい!という時に寄りきれず若干フラストレーションが溜まる場面もあったのですが、今日は気持ち良く撮れたなと思っていたら1.6倍されていたというまさかのオチがついてしまいました。とはいえ、1.6倍されてはしまいましたが、撮りたい瞬間に気持ち良くシャッターを押せたので結果オーライと言えるかもしれません。

■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/100sec F1.4 ISO125 WBオート (1.6倍)クロップ
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/250sec F1.4 -1/3補正 ISO400 WBオート (1.6倍)クロップ
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/80sec F1.8 +1/3補正 ISO1250 WBオート (1.6倍)クロップ
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/125sec F1.4 +1補正 ISO100 WBオート (1.6倍)クロップ

日常も旅先も、「そのまま」の良さを写し止めるレンズ

はじめに50mmレンズは私たち人間の視野に近い画角のレンズだとお伝えしましたが、自分の目で見て撮りたいと思った瞬間をそのまま素直に記録してくれるのが50mmレンズの持つ良さだと思います。だからなのか、今回「RF50mm F1.4 L VCM」で撮った写真は構図を意識して撮った記憶がほとんどなく(知らない間にクロップされているというアクシデントはありましたが)、「目で見て、良いなと思って、シャッターを切った」、そんな写真ばかりでした。

最新のAF性能や動画に特化した機構など、新しい進化が著しい「RF50mm F1.4 L VCM」ですが、シンプルに「写真を撮る楽しさ」にもしっかり寄り添ってくれる頼もしい相棒になると思います。

夏に向かって走れ走れ。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF50mm F1.4 L VCM
■撮影環境:1/3200sec F1.4 -1/3補正 ISO400 WBオート (1.6倍)クロップ

 

■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。フォトレッスン「ケの日、ハレの日」を主宰。祖師ヶ谷大蔵のアトリエで写真をプリントする楽しさを伝えるワークショップなども開催しつつ、毎週金曜日は写真と雑貨のお店としてアトリエをオープンしている。個展・企画展多数。

 

 

関連記事

人気記事