キヤノン EOS R6 Mark IIでバスケットボールを撮る|中西祐介

中西祐介
キヤノン EOS R6 Mark IIでバスケットボールを撮る|中西祐介

はじめに

 キヤノン EOS R6の発売から約2年4ヶ月という短い間隔でEOS R6 Mark IIが発売されました。正直にいうとこの短い期間で何が進歩したのだろうと思っていましたが実際に使用してみるとAF、解像感、操作性など多くの部分が改善され実践投入しやすいカメラになっていました。

 これまでR6をサブカメラとして現場に持っていくことはあってもEOS R3やR5と併用していると使用頻度が少なくなっていましたが、R6 Mark IIを導入後は様々な撮影で出番が大幅に増えています。

 もちろんR3と同じ土俵で比較は出来ませんがトラッキングAFは大きな武器ですし、高感度時の解像力も魅力です。電子シャッターの歪みはR6と比べると改善されています。R3と比べると気になるシーンがあるのは事実ですが、シーンによって使い分けが出来るレベルではあると思います。

 カメラ全体を見るとR6からカメラとしての安心感が増したというのが率直な感想です。それは全体的に機能が底上げされているからかもしれません。安心して撮影に臨めることは、撮影現場でカメラに求める条件の中で大きなウェイトを占めます。

 本記事では私がクラブオフィシャルカメラマンを務めるプロバスケットボールチーム「ファイティングイーグルス名古屋」のホームでの公式戦で撮影した写真を見ながらお伝えしたいと思います。

■使用機材:キヤノン EOS R6 Mark II +RF24-70mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO10000 SS1/1600 F2.8

R6から大幅に使いやすくなったAF性能

 スポーツ撮影でカメラに求める最大の部分はAF性能です。R6では至近距離で素早く動く選手を追うには少々不安がありましたが、R6 MarkIIではAFスピード、正確性が一段上がった印象です。特にトラッキングAFは本当に便利です。

 バスケットボールの場合は画面内で数人の選手が交錯する場面が多く、メインとしたい被写体の前を別の選手が通過するなどトラッキングAFでは難しいシーンがあります。その場合はボタンカスタマイズでワンボタンの操作でトラッキングのオンオフが出来るようにしています。フリースローやベンチ周り、選手同士の交錯が少ない場面ではトラッキングをオンにしてシーン別で適宜使い分けをしている状況です。

 また地明かりが暗転してショーアップ照明になった選手入場時はかなり暗く、R6ではAFの掴みが難しくフォーカスを外しているカットが多くありましたがR6 Mark IIでは合焦確率が上がったと感じています。このようなシーンでもトラッキングAFを使用しています。フリースローでは瞳(顔認証)AFがとても役に立っています。これがないと顔の手前に来る両腕にフォーカスがいってしまうケースが多いのですが、このような悩みはなくなりました。

 また、フォーカスポイントを気にすることなくフレーミングに集中できるのは大変ありがたいです。R3でも同じような使い方をしていますが、サブ機になるR6 Mark IIに持ちかえても違和感なく撮影ができています。

■使用機材:キヤノン EOS R6 Mark II +RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO8000 SS1/2000 F2.8
■使用機材:キヤノン EOS R6 Mark II +RF400mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO6400 SS1/1600 F2.8

2420万画素の高い解像感

 R6の2010万画素からR6 Mark IIでは2420万画素にアップしました。発表前は3000万画素程度を期待していましたが、実際に使用してみると高感度性能とのバランスを考慮してこの画素数になっているのかもしれません。

 ちょっと残念だなと思っていましたが、撮影したデータを見ていくと想像以上に解像感が高く被写体の質感や輪郭、空気感がよく表現されていました。シャープネス処理が新しくなり、嫌なシャープさではなく心地よく濃密な画像を作り出してくれています。

 画素数こそ2420万画素と強いインパクトはないですが、必要十分な性能を持ち合わせていました。特にISO8000以上の高感度をよく使用する者としてはとても使いやすいです。これまで画素数に大きなウェイトを置いていましたが、今後はその考えを改めてもいいのかもしれません。

■使用機材:キヤノン EOS R6 Mark II +RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO8000 SS1/1250 F2.8

優れた高感度性能

 先にも触れましたが、バスケットボール等の屋内スポーツでは被写体の動きを止めるために高速シャッターを切ることが多くなります。競技にもよりますが私は1/1000秒を基準にしています。これはあくまで基準でこれ以上高速シャッターを切りたい場面は多くあります。そんな時はカメラの高感度性能に頼ることになります。

 今回撮影したアリーナではシャッター速度を1/1000秒以上、絞りをF2.8にするとISO感度は6400から12800を使用しています。高感度になればなるほどノイズが増して解像力が劣っていきますが、どこまで許容できるかは撮影者によって異なりますのでいくつまでが大丈夫と断言するのは難しいのですが、私の許容範囲は少し余裕を見てISO12800としています。

 使用媒体等を考え、ノイズや解像感のバランスを見ていくとこのくらいまではいけるだろうと判断しています。優先順位として動きをしっかりと止めることを一番としてシャッター速度を決め、その次に絞り (ほとんどは開放絞り)、その後にISO感度を決定します。ISO12800まで上げることができれば開放絞りが変化するズームレンズや開放絞りが暗いレンズでも屋内スポーツを楽しめるのではないでしょうか。高感度性能の向上は本当にありがたい性能です。

■使用機材:キヤノン EOS R6 Mark II +RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO12800 SS1/2000 F2.8
■使用機材:キヤノン EOS R6 Mark II +RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO8000 SS1/1600 F2.8

扱いやすくなった操作系

 R6 Mark IIではスイッチ等の操作系に対する変更がありました。その中でも一番使用するのは電源スイッチです。今回スイッチは右上に位置され、マルチ電子ロックスイッチが同じ場所に追加されました。R6は左側にスイッチがあったので初めて手にした時は少々戸惑いましたが、右側にセットされたことで右手でグリップを握る際にスイッチに触れることが出来る方が快適だと思うようになりました。

 また、事前にマルチ電子ロックで操作を禁止する部分を指定してロックオンにしておけば、持ち運び時に不用意に操作がされることを防ぐことが出来ます。これも右に集約されたのは使いやすい点です。

 次にマルチコントローラーの形状変更がありました。細かい点かもしれませんがこれは私にとっては大きな改善点です。表面に少し丸みをつけたことで、親指で触れた際の感触がよく、AFエリアの移動がとてもやりやすくなりました。頻繁にAFエリアを動かす私としてはとても嬉しい変更です。

 もう一つ、シャッターの耐久回数がR6の30万回から40万回にアップしました。R6 Mark IIはメカシャッターで1秒間に12コマの高速連写が可能です。コマ速が上がるとシャッターを切る回数が上がってしまうので、耐久回数のアップは安心感につながります。以前に撮影現場でシャッター耐久回数を超えて撮影出来なくなったという経験を持つ者としてはこのような改善点は必要なのです。

■使用機材:キヤノン EOS R6 Mark II +RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO10000 SS1/1600 F2.8
■使用機材:キヤノン EOS R6 Mark II +RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO8000 SS1/1250 F2.8

まとめ

 本記事ではバスケットボールを撮影した際に気になった機能等をお伝えしました。ここで書ききれなかった部分も多くあります。AFでは瞳AFの精度向上や動物検出の中に「馬」が追加されたこと、電子シャッター時に1秒間に40コマの高速連写が可能になり、RAWバーストモードが追加されたりと多くの機能追加がありました。

 全ての機能を試したわけではありませんが、カメラ全体の基礎体力が上がっているのが一番の印象です。どんな場面でも安心してカメラを操作出来て、自分の意図通りにAFが動き安定して仕上がりを求めることが出来る、それがR6からR6 Mark IIへ切り替えた最大の理由です。

■使用機材:キヤノン EOS R6 Mark II +RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO10000 SS1/1250 F2.8

■撮影協力:ファイティングイーグルス名古屋

■写真家:中西祐介
1979年東京生まれ 東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。講談社写真部、フォトエージェンシーであるアフロスポーツを経てフリーランスフォトグラファー。夏季オリンピック、冬季オリンピック等スポーツ取材経験多数。スポーツ媒体への原稿執筆、写真ワークショップや大学での講師も行う。現在はライフワークとして馬術競技に関わる人馬を中心とした「馬と人」をテーマに作品制作を行う。

・日本スポーツプレス協会会員
・国際スポーツプレス協会会員

 

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